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番外2狙っても手を出せない、そのわけは…

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皆さん、ご無沙汰しております。
え?
声優 白鳥三春の仕事仲間、そして、今は、白鳥さんの大切な人となってしまった彼(篠田 要)を隙あらば狙おうとしていた奴です。
安芸 栄と言いまして、これでも、今、一番輝いている実力派声優です。
ちなみに、イケメンって呼ばれているんです。
記憶が確かなら、俺、安芸と白鳥さんは、同じタイミングで篠田君を見つけたはずだ。
…なのに、気が付けば、目の前で白鳥さんには持って帰られ、まだ、自分の物にしてないと聞いて、俺は色々と、彼と関われる機会を作ろうと、出来る限り頑張った。
飲み友の後輩には、紹介しろと頼み、高木さんには、相談した。
なのに、なのに…!!
後輩は、
「安芸さん、人間、諦めって必要っすよ…」
肩をポンポン…

高木さんに至っては、
「いやぁん、安芸君、先輩の物に手を出すの?すごいわよね…」
(まじか、お前、白鳥の物に手を出したら、この業界の僻地にやられるぞ)
と、笑顔で交わされた。
こうなれば、直接、白鳥さんに紹介をしてもらおうと、頼んだ。
「ん?
 あぁ、彼?
 いいよ?」
超あっさり。
え?
最初にすればよかったのに?
俺も、そう思う。


そうして、とあるカフェで彼と白鳥さんと待ち合わせをした。
これでも、今日まで、彼の情報を仕入れてきたさ。

彼は、声フェチらしい。
俺、ラッキーじゃん。
これでも、昨年度、今年度と続けてイケボランキング(ほほほリサーチ調べ)第一位を獲得中!!
着ましたよ、高いスーツ、持ちましたよ、記念トロフィー。
もちろん、みんなチェックしてるよね?

そんな俺、チャンスがあるっしょ。
白鳥さん、まぁ、少し、年上だから余裕の表情をしてるけど、全体腹の中、どうなってるかわかんないよ。

ま、一応白鳥さんには言っておこう。
「白鳥さん、無理を言ってすみません」ペコリ
(もしかしたら、彼をとっちゃうかも、すみません)ペコリ

俺の言葉の意味をストレートでとったのか、白鳥さんはニコニコとしている。

ちょっと浮かれてる?

カランカラン‥
今は休憩時間の様子のカフェの扉を白鳥さんは、特に遠慮することなく普通に入っていく。
「あ、白鳥さんっ!!…と、…安芸 栄?!?!?」
厨房の方から姿を見せてきたのは一人の女性。
俺たちを見て、興奮している。

俺は白鳥さんを見た。
「要君、いるかな?」
―!?
ここに?

しばらくすると、キッチン用の仕事着を着ている例の彼が来た。
「えっと、み…白鳥さん、お待たせしました」
そう言って、彼はこちらにも会釈をして白鳥さんの傍にいく。

何?この位置。

俺、どうして白鳥さんと対面してるの?
しかも、例の彼は白鳥さんの隣に座っている。

「おまたせしました」
女性が飲み物をだしてくれるのだが、俺の目の前には、色紙。
―…・
戸惑うよね?
「あ、ごめん、安芸くんを連れて来るって言ったから、OKしちゃった。
 書いてあげて?」
白鳥さんの笑顔が何故か、不穏に感じてしまう。

「では、要君に彼を紹介しよと思って…」
俺は第一印象を良くしようとできるだけ、普通に話しかけた。
「初めまして、声優をしています。
 安芸 栄です。
 いつも、白鳥さんにお世話になっております」
完璧すぎるイケボモードの俺、一切の手加減ナシ。

様子を見ている彼女は、俺の声が聞こえたのか、ときめいている。
ふふふ。どうだっ!
って、彼を見た。

普通だ。
可愛らしい顔をしているのだが、表情はとても普通だ。

「え、あ、こちらこそ、ミ、白鳥さんにはお世話になっております。
 篠田 要です」
ペコっと頭を下げてお辞儀をする仕草が可愛らしく感じてしまう。
だが、すぐに横にいる白鳥さんの服を引っ張って、何か話をしている。
白鳥さんは彼の言葉を聞き逃さないように耳を彼に近づけるし、彼はその方向に密着していくし…

見ていて、ドキドキとこっちがしてしまう。
「うん、そうそう、よくわかったね」
白鳥さんが仕事では見せない、柔らかい笑顔で彼を見る。
じっと、白鳥さんを見ている彼は、その言葉に嬉しそうに笑っている。
―なに、このいちゃつきモード。

で、
白鳥さんが、今度は反対に、彼の耳に何かを囁く。
―!!!
目の前の彼が、急に感じる様な表情をする。

オイオイ、マジか…

俺の声は反応しないのか?
様子を見ていて、俺は、我慢ができなくなった。
「伝言ゲームですか?楽しそうっ!」
そう言って、彼の耳元に囁いた。
「俺の事、知ってる?」
低音イケボ炸裂っ!
今の声はBLCDで、攻めの役をした声ね。
俺は彼の表情を見た。
「…すみません、ちょっと近いですっ…」
どう見ても、歓迎モードではない。
むしろ、距離をとりたいって感じがする。
困惑気味な彼。

話を進めようと彼が会話を続けようとする。
「声優さんなだけ、良い声ですね」
はい、社交辞令ってやつを頂きました。

チラッと、俺は白鳥さんを見る。
ニヤリ
―!!!
俺、気付いた。
分かっていたんだ。
彼が、俺の声に反応しないことを…

「お飲み物のおかわりはいかがですか?」
絶妙なタイミングでやってくる、彼女。
俺の傍に来た時、こそっと耳打ちをされた。
俺は、一気に、頭の中の温度が失っていく瞬間を、体験したのだった。

「安芸さん、まさか、邪魔しようとしてます?
 そうなると、腐女子の全力を見させていただきたいと思います」
―?!?!?!?!
怖い…

俺のやる気は一気に落ち、微かに蘇ることもなく、彼と白鳥さんを見守ることにした。
「…どうかしましか?
 安芸さん?」
要君、だっけ?君は、何も知らないほうがいい。

―!!?
俺、今気づいた。
若干、服の間から見える、ネックレスのチェーン…
白鳥さんの首にも、ちらり。要君の首にも同じ物がチラリ。

「…・」
俺、最初から勝負になってないじゃん…
「ううん、何もないよ…」
俺はとりあえず誤魔化すことしかできない。

「ふふふ、どうしたんだろうね」

白鳥さんの声がざわざわと俺の感情を落としていく。
今、完璧に勝者と敗者に別れた。

もちろん、…俺は、敗者となった…
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