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とうとう、本物の魔女が出現?3

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まぁ、金持ちらしいっていう感じだと思ったんだが、意外と派手さもなく、意外な様子だった。
もっと、金ぴか!とか、ギラギラ!とか、どっかーんとかあるのかと思っていたが予想外だ。
だが、やはり細かいところに、贅を見ることができた。
趣味がいいって思った。

こんな家、住んでいても楽しいかもしれない。
そう思える家だった。
「おやおや、ミハルおぼっちゃま、お帰りなさいませ」
如何にも、お手伝いさんっていうおばあさんが、家の奥から出てきた。
―おぼっちゃま…
やっぱり現実にもいたんだ。
こんな風に呼ばれて育つ環境の子ども。
俺は、どこか客観的に見ていると、ミハルさんに手を繋がれたままだと気づいた。
離そうとするけれど、離せない。
―?
あれ?
見上げるとミハルさんがどこか、硬い表情をしている。
それに気づいたミハルさんは俺の顔をじっと見つめる。
―あ。
目を見ていると、本当にこの人は、俺の事を好きなんだなって思う。
そう思ったら、この場にはそぐわない、笑いが込み上げてきた。
「フフフ…
 クックック…」
―!
俺が笑い出したのに、ミハルさんは一瞬、キョトンとした顔をしている。
「やっぱ、ミハルさんが緊張をしている」
俺は、精一杯の笑顔をする。
―!!!
ミハルさんは、そんな俺を見て、何を感じたのかわからない。
けど、先ほどまでの硬い表情ではなく、穏やかないつもの表情だ。

よかった。

相変わらず手を繋いだままだが、この際、どうでもいい。
ミハルさんと一緒なら、怖くない。
自分を見失っても、俺を導いてくれたミハルさんを俺も離さない。
そう思った。

「いつも、その笑顔を見せてくれたらいいのに…」
ミハルさんの小言も、今はスルーしていく。
「笑顔の安売りはしませんよ?」
俺も負けない。

屋敷の中を二人で歩く。
どこに向かっているのかと前方を見ると、大きな座敷が見えた。
そこには、何人かいるようで話し声がする。

今の時間は夜、7時。
あたりは暗くなってきているが、まだ日中の暑さが残っている。
2人は流石に、一度握っていた手を離す。
手汗は冷や汗なのか、脂汗なのかわからない。
けど、一度その汗をぬぐい取った手をお互い合わせた。
「失礼します。
 ミハルです」
一声かけて、座敷に入る。
―!!!
そこには、ミハルさんの面影をどこか匂わす老夫婦、その横には、たぶんお兄さんたちが並んでいる。
どの人も、みんなパリッといいスーツを着ている。
―!
あ、俺、カジュアルスタイルだ…っ!?
ミハルさんは、静かに畳の上に座る。
俺も、それにまねて横に座ることにした。
もちろん、手を離そうとした。
当たり前だ!
挨拶ぐらい、しっかりとしておきたい。
俺は、ブンブンと手を離そうとする。
だが、ミハルさんはまっすぐ、彼らの方を見たままなのに、手を離そうとしない。
―?!?!
えぇぇぇっ!!
「ミハルさん、手を離して。
 挨拶したい。
 また、繋いであげるから…ね?」
俺の必死なささやきは彼らには、聞こえていたみたいだ。
「はははははっ!
 これは、珍しいっ!
 ミハル、お前、いつからそんな可愛いことしてんだ?」
たぶん、ミハルさんのお父さんと思われる人が大爆笑をしている。
―!!
俺は慌てるよっ!!
だめじゃん、カッコイイミハルさんを見てもらわないと…っ!!
「あらあら、困らせたらだめじゃない。
 ミハル、手を離しなさい」
お母さんと思われる女性の声で、ミハルさんは手を仕方なく、離す。
―いい仕事、しましたよ、お母さんっ!(たぶん)
パッ
と離れた手を俺はすかさず、揃えて、とりあえず、ミハルさんの様子を見る。
けれど、挨拶をするわけでもないので、俺は勝手ながら自発的に挨拶をした。

無事に挨拶をして、やれやれと気を許していたら、俺はまたミハルさんに手を繋がれていた。
―!
はやっ!
ミハルさんは、じっと覚悟?勇気?なんだか、色々と自分の中で考えているようだ。
俺も彼を待つ。

パッとミハルさんの雰囲気が変わった。
あ。

そこには、白鳥三春でもなき、白鳥ミハルでもない、息子、ミハルだった。
「お父さん、お母さん、お兄さん…
 ご無沙汰しております。
 今日は、お願いがあり、集まってもらいました。

 私は、もう、何年もこの篠田 要さんとお付き合いをしています。
 数年前からは同居もしています。
 お互い、添い遂げれるようにと段階を踏んではきました。

 ですが、私の仕事上、彼をずっと待たせてきていました。
 曖昧な関係から、一歩進みたいのです。

 どうか、私と、彼との関係を認めていただきたい」
――!!
俺は、そんな深い話までするとは聞いていなかったけれど、願いは同じだ。
ミハルさんが頭を下げて願うなら、俺も同じように傍にいる。
頭を下げようとすると、
「要さんは、しなくてもいいわよ」
お母さんが声をかけてくれる。
その言葉は、とても穏やかだ。
「仕事柄、結婚はどうするのかと、心配をしていたけれど、良い人がいたんだね」
―!
その言葉を言ってくれたのは、お兄さんたちの一人。
――!?
あれ?
「え?
 あれ?
 お兄さん、バーの…」
俺の使用している事務所の横にあり、ミハルさんとの思い出は詰まっているバーラウンジのスタッフ。

ミハルさんの、お兄さん?!
「いつも、ご利用ありがとうございます」
―えぇぇぇ
ミハルさんを見ると、うん、と頼りない返事。
本当に俺の聴きたいことをわかっているのかな?
「ミハルさん、紹介して?」
もう、遠慮はしない。
ミハルさんに教えてもらって俺は、色々と驚いた。
白鳥家の両親は、大手音楽機材の社長。
長男は不動産経営を主にしているが、今住んでいるマンションも、もとは一番上のお兄さんの物だったらしい。
次男は、バーのお兄さん。
でも、かなり若く見える。
ミハルさんのお兄さんと言われても、分からない。
「基本、我が家は若く見えるみたいでね、本当の年齢を知ると、驚くよ」
こっそりと教えてくれるミハルさんも人の事を言えないと思う。
「ミハル、私たちは、もう特にあなたに押し付けるつもりはないのよ?」
お母さんの言葉に、ミハルさんは頷く。
「ありがとうございます、実は…」

その後の方が大変だった。
結論から言うと、俺は白鳥家に簡単に受け入れられた。
弟のような感覚だと、可愛がられるのだ。
一人っ子だった俺としては、少し、嬉しい。

ミハルさんが、今回の行動に至った実情を話すと、みんな激怒した。
それも、みんなミハルさんを怒るんだ。
当然と言えば当然なんだけど、傍で聞いていて、可哀想だった。
「バカヤロウ!」「ヘタレ」「情けない…」
「お前は帰ってこなくていいから、要君はいつでもおいで」
なんて言われている。
兄弟が多いと、口撃も激しさを増すようだ。

目の前にいるミハルさんは、多くの言葉によるダメージで弱っている。
他人に言われるのではない。
血の繋がっている家族からの言葉は、流石にキツイ。

俺は、ミハルさんの顔を覗く。
―!
戦いきった顔をしている。
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