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完全に俺の思考を読んでいる彼は、次から次へと自分の事を話していく。
「隼人が逃げるように出ていったあの日、追いかけたんだ。
一人、暗いところですごく凹んでベンチに座ってたし、心配だったし…
結局、ちゃんと帰れるか心配で、家まで後を付いて行って。
そしたら、完璧にストーカーじゃん。
自分でも、するなって思うんだけど、やっぱりほっとけなくて…
そしたら、隼人の家の人が、外に出てきて…
「隼人の気持ちを少し考えて欲しい」って言われて。
でも、自分ではすごく隼人のことを思っている。
一緒に居るには、どうしたらいいんだとか、親が納得するには、どうしたらいいんだとか。
でも、それよりも、俺は自分の事を知らなかったんだ」
静かに彼の話を聞いている中で、俺の知らないことがあった。
親がそんなことをいうなんて、知らなかった。
でも、制服を見たら、学校が違うことはわかる。
だから、余計にそれを言ったのかもしれない。
「自分の事を知らなかったって、どういうこと?」
最後の言葉が、やけに気になった。
すると、彼は、
「高校の奴らは、同じような環境で育ったから、特に、他人に興味もなく過ごしていたんだ。
けれど、大学は、色んな境遇の人がくる。
当然、当たり前だと思っていたことが、少しずつ他の人と違っている部分を見つけて。
その部分を人に付け込まれるようになって、自分の環境を知ったんだ」
「…それで、俺と距離を‥?」
自分の事は棚に上げて言うことじゃない。
だけど、口にしていた。
「このまま隼人は俺を拒絶するって何となくわかって。
でも、どうにかしたくて…でも、どうすればいいのか、わからなくて。
このまま、ダメになるのかもしれない。
でも、いつか、会えるかもしれない。
そう思っていたんだ」
そんなにも、俺の事を思ってくれているのか…
――!
「ちょ、ちょっと!?…隼人?」
俺は気が付くと篤紀を抱きしめていた。
「…ごめん。
本当に…ごめん…」
あの頃の弱かった自分。
それと変わらず、篤紀から逃げようとしている自分。
どれも、自分勝手で、理由を色々並べているけど結局、自分のことを優先して。
一番、優先していると思っている人を、俺はずっと傷つけて…
大切にしたいのに…傷つけたくなかったのに…
俺は、胸が張り裂けそうなまま、震える声で、彼に自分の弱い部分を吐き出すように伝えた。
「篤紀が俺の事を大切にしてくれてるのが、すごく嬉しかったんだ。
でも、「キスしたい」とか言われてもできない。
…俺も、篤紀にしたいって思ったことはたくさんあった。
それが、思うたびに苦しくなるし、言われると謝ることも、辛かったし。
…病院で言われたことで、これ以上、待たせれないって思った。
治るかわからない人間をさ、待つなんて、俺はそんなことをさせたくないって思った。
俺も、篤紀が大切だから。
…あのさ…これを言ったら、怒ると思う…から…」
怒ると思う。
俺を忘れてほしいって思っていたと知ったら、昨日の上司に向けたような怖い篤紀になると思う。
「怒る?…何?」
俺の顔を見ようと身体を離そうとする篤紀。
でも、それをされたら、容赦ない怒りを受けることとなる。
彼の身体から離れないように抱きしめる力を強くする。
首を振って姜妃の姿勢を主張する。
「言って?ねぇ…隼人」
俺を宥めようと、篤紀は頭を撫でる。
「…俺、篤紀に俺を忘れてもらうつもりだったんだ。
ちょっと仲が良くなった友人。
その程度でいいと思ったんだ。
だから、病院に入院することになったときも、俺は何もしなかった。
大学に入る前に話した時も‥‥会わないようにした。
…弱くて、ごめん」
「はぁ…」
頭の上で大きくため息をつく彼。
「怒るっていうより、まぁ…選ぶんだろうなって思うかな?
でも、少しは、怒っている」
身体を起こして、彼の顔を見ると、どこか納得している様子だ。
俺も、こうやってあの頃のことを話せると思っていなかったから、少し気分が楽になったような気がする。
「それでですね、白羽さん…」
いきなり仕事モードの口調に、俺は、彼を見る。
今まで見たことのないような真剣な眼差しで俺を見ている。
「隼人が逃げるように出ていったあの日、追いかけたんだ。
一人、暗いところですごく凹んでベンチに座ってたし、心配だったし…
結局、ちゃんと帰れるか心配で、家まで後を付いて行って。
そしたら、完璧にストーカーじゃん。
自分でも、するなって思うんだけど、やっぱりほっとけなくて…
そしたら、隼人の家の人が、外に出てきて…
「隼人の気持ちを少し考えて欲しい」って言われて。
でも、自分ではすごく隼人のことを思っている。
一緒に居るには、どうしたらいいんだとか、親が納得するには、どうしたらいいんだとか。
でも、それよりも、俺は自分の事を知らなかったんだ」
静かに彼の話を聞いている中で、俺の知らないことがあった。
親がそんなことをいうなんて、知らなかった。
でも、制服を見たら、学校が違うことはわかる。
だから、余計にそれを言ったのかもしれない。
「自分の事を知らなかったって、どういうこと?」
最後の言葉が、やけに気になった。
すると、彼は、
「高校の奴らは、同じような環境で育ったから、特に、他人に興味もなく過ごしていたんだ。
けれど、大学は、色んな境遇の人がくる。
当然、当たり前だと思っていたことが、少しずつ他の人と違っている部分を見つけて。
その部分を人に付け込まれるようになって、自分の環境を知ったんだ」
「…それで、俺と距離を‥?」
自分の事は棚に上げて言うことじゃない。
だけど、口にしていた。
「このまま隼人は俺を拒絶するって何となくわかって。
でも、どうにかしたくて…でも、どうすればいいのか、わからなくて。
このまま、ダメになるのかもしれない。
でも、いつか、会えるかもしれない。
そう思っていたんだ」
そんなにも、俺の事を思ってくれているのか…
――!
「ちょ、ちょっと!?…隼人?」
俺は気が付くと篤紀を抱きしめていた。
「…ごめん。
本当に…ごめん…」
あの頃の弱かった自分。
それと変わらず、篤紀から逃げようとしている自分。
どれも、自分勝手で、理由を色々並べているけど結局、自分のことを優先して。
一番、優先していると思っている人を、俺はずっと傷つけて…
大切にしたいのに…傷つけたくなかったのに…
俺は、胸が張り裂けそうなまま、震える声で、彼に自分の弱い部分を吐き出すように伝えた。
「篤紀が俺の事を大切にしてくれてるのが、すごく嬉しかったんだ。
でも、「キスしたい」とか言われてもできない。
…俺も、篤紀にしたいって思ったことはたくさんあった。
それが、思うたびに苦しくなるし、言われると謝ることも、辛かったし。
…病院で言われたことで、これ以上、待たせれないって思った。
治るかわからない人間をさ、待つなんて、俺はそんなことをさせたくないって思った。
俺も、篤紀が大切だから。
…あのさ…これを言ったら、怒ると思う…から…」
怒ると思う。
俺を忘れてほしいって思っていたと知ったら、昨日の上司に向けたような怖い篤紀になると思う。
「怒る?…何?」
俺の顔を見ようと身体を離そうとする篤紀。
でも、それをされたら、容赦ない怒りを受けることとなる。
彼の身体から離れないように抱きしめる力を強くする。
首を振って姜妃の姿勢を主張する。
「言って?ねぇ…隼人」
俺を宥めようと、篤紀は頭を撫でる。
「…俺、篤紀に俺を忘れてもらうつもりだったんだ。
ちょっと仲が良くなった友人。
その程度でいいと思ったんだ。
だから、病院に入院することになったときも、俺は何もしなかった。
大学に入る前に話した時も‥‥会わないようにした。
…弱くて、ごめん」
「はぁ…」
頭の上で大きくため息をつく彼。
「怒るっていうより、まぁ…選ぶんだろうなって思うかな?
でも、少しは、怒っている」
身体を起こして、彼の顔を見ると、どこか納得している様子だ。
俺も、こうやってあの頃のことを話せると思っていなかったから、少し気分が楽になったような気がする。
「それでですね、白羽さん…」
いきなり仕事モードの口調に、俺は、彼を見る。
今まで見たことのないような真剣な眼差しで俺を見ている。
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