彼女は変わらない

水の味しかしない

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「いいざまだな。」

開口一番にかけられた言葉には侮蔑が込められていた。
それを牢の柵扉越しにミディリアはぼんやり聞いた。

牢のこちら側をのぞくいくつもの顔。その中に常ならばミディリアの弟、メイが王子のそばにいるはずだが今日はいないな、とミディリアは王子たちの言葉を左から右に聞き流し別のことに意識を向けていた。

「ふん、こちらに言い返す気概もないとは…つまらんやつだな。」
「それほどショックなのでしょう。ぼんやりとして上の空です。」
「まあ、茫然自失となるのも仕方ない。すべてを失ったのだからな。」

「これがあの気高い孤高と言われたミディリア様だなんてお可哀そう。」


『それほど牢が怖かったのかしら?』
くすくすと漏れる失笑にもミディリアは薄い膜にでも覆われているかのように
まるで反応がない。それに最初は上から見下して見ていた王子のサリフィスが突然顔を歪めて怒鳴った。

「何も反応を返せぬとは無様だな、ミディリア。もっと気概があるかと思えば不甲斐ない。所詮優れていると言われても女の身。牢屋が恐ろしかったか?だがなお前に降りかかるのはこんな牢屋などより恐ろしい未来だ。お前がしたことはそれほど罪深いのだ。…いつもとりすまして聖女のようにふるまってその裏でシャーロンをいたぶっていた悪女にはそれ相応の処罰が必要だ。修道院など生ぬるい、貴族の身分をはく奪するだけでは足りない。すべてを失い、さらに未来さえも救いのない奴隷の身分に貴様を落としてやる!!」

吠えるに等しい怒鳴り声で一気に言い切る。そして言い切って満足したのか
満面の笑みを浮かべると周りもそれに同調した。

それはいい、彼女にはお似合いです。と口々に賛同する言葉が並ぶ。

ミディリアは反応こそ返さなかったが、状況はきちんと把握していた。
ミディリアを見下ろしながらまるで豚の百面相の如き醜い表情でが鳴る面々の
顔はまさに醜悪な悪鬼の如きで耐えがたいもので
これではどちらがいつも猫をかぶって取り澄ましていたかわからない。
だがそんなことを言うつもりもない。
人とは自分が強者だと思った時、さらす本性がある。
これらが彼らの地なのだろうと解釈するにとどめた。

「…釈明も命乞いもなしか…声を失ったか?」

人形のように全く話さないミディリアに舌打ち、興がそがれたらしい。
王子が黙ると自然、周囲も静かになる。サリフィスはしばしミディリアを見下ろした後、足を牢の方向から別に向けた。

「奴隷商にはせいぜい媚びへつらうがいい」

捨て台詞を残して、また複数の足音が去っていく。
それをミディリアは静かに見送った。




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