君との冬

杏鈴

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俺からのアクアリウム

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この人の笑顔を守りたいって想える人にいつか出逢えたらどんなに幸せだろうか、と昔考えた事があった

*俺からのアクアリウム***

◆本増えてきたな…

今日もいつも通り大学から帰ってきて読書をしながらくつろいでいた
俺の部屋にはお気に入りの本が並ぶ大きめの本棚がある。日々増えていく本はあと数冊並ぶかどうかまでぎっしり収まっていて整頓を余儀なくされている状態だった
◆うーん、少し段ボールに詰めて押し入れにしまうか…けど押し入れもスペースがなくなってきたしどうにかしないとなぁ…

押し入れには既に本入りの段ボールが2つも入っている
とりあえずもう1つだけ段ボールを増やそうと整頓を始めた所、1冊の本の間から紙の様なものがひらりと落ちた
◆ん?これって、チケット?

本から落ちてきたものは半年程前に知人から貰った水族館の入園チケットだった。最近行ったばかりだからとたまたま譲り受けたものだったがその時手にしていた本の間に一先ず挟んでいたのをそのまま忘れていたようだ
◆すっかり忘れてた。期限切れてそうだな

有効期限を見ると明日だった
◆ギリギリセーフだ。でも急に明日誘える人なんていないよなぁ…しかも有効人数が2人までか

とりあえず声を掛けてみようとスマホを手にするが朝花か琴乃どちらかを誘うのもなぁと思い、まず真咲に連絡をしてみる。がしかし"男と2人で水族館は悲しい"と断られてしまった
それもそうだよなと思いつつとりあえず凜太朗にも連絡をしてみる。すると"俺よりこの間のお姉さん誘ってみたら?"と言われこれから用事があるからと切られてしまった
◆未紅さんのことか…でも迷惑だよな…

一旦チケットとスマホを置き、本棚の整頓を再開する

1時間後
とっくに終わっていても良い整頓なのだがついつい懐かしい本を読み漁ってしまいまだ途中だった
◆は!!つい!!

何時だろうとスマホを確認するとスマホが鳴った。凜太朗からだ
そこには"誘えた?"の一文
◆あー…いや、でもなぁ

とりあえず置いといて残りの本を片し始める、するとまたスマホが鳴った
"結人の事だから躊躇ってそうだな"
◆なんでわかるの…

そのまま連続でスマホが鳴る
"明日なんて急すぎるし予定がある可能性の方が高いしそもそも彼氏さんがいたら迷惑でしかないし、とか思ってるでしょ"

全部当たっている
エスパーかな、と考えていると再びピコンと音が鳴り
"少しでも誘いたいなって思うなら結人が行動しないとなにも始まらないよ"とその一文を最後に凜太朗からの助言は終了した
◆…そう、だよな。このままだとなにも始まらないよな。ってこれじゃまるで未紅さんの事が好きみたい…

"みたい"じゃなくて"好き"なのか…?
でもたとえそうでも相手は歳上の社会人だ、俺みたいな大学生を選ぶことなんてないだろう…
あれこれ考えながら未紅の連絡先を探す、がしかし
◆そういえば連絡先知らなかった

神様がやめておけって言ってるんだな、と諦めベッドに寝転がった時電話が鳴る
◆だれ…真咲?もしも…
真咲:結人!諦めるなーーー!
◆え!?

食い気味で真咲がスマホ越しに叫ぶ
真咲:凜から聞いた!未紅さん?だっけ?誘うんだろ!けどお前の事だから躊躇して誘えない上に連絡先を知らなくて諦めるってパターンだろうから助けてやってくれって言われたんだよ!

凜太朗はやはりエスパーだ
◆なんでそんなにお見通しなんだ…もはや怖いんだけ…
真咲:行け!

またもや食い気味で命令が下る

◆行けってどこに
真咲:家だよ家!お前の実家のお向いさんなんだろ?今なら訪ねてもまだ大丈夫な時間だ!

時計を見たら20時前だった。今からなら21時には余裕で行ける
◆けどそこまでしなくても、元々タダで貰ったチケットだし
真咲:いいから行け!後から後悔しても遅いんだぞ?
◆う、うん

真咲の勢いのある後押しにおされて結人は未紅の家に向かうことになった

電車を乗り継ぎ駅から10分程歩いて無事到着
未紅の家の目の前まで来たが家に訪ねたことはもちろんない。インターホンが押しずらい…
◆せっかく来たし、サラッと聞いてみよう…よし

意を決してインターホンに指を近づけると"ちょっと回覧板届けてくるわね"と中から未紅のお母さんの声がした
◆え…

ガチャ
未紅母:あら、ごめんなさいね。あなたは…一ノ瀬さんの息子さんだったかしら?
◆あ、えっと…こんばんわ
未紅母:こんばんわ。未紅に用事?
◆そ、そうで…
未紅母:未ー紅ーー!お名前なんていいましたっけ?
◆結人です…
未紅母:結人くんが来てるわよー!

大きな声で未紅の事を呼び、ちょっと外に行ってくるわねと言い未紅母は行ってしまった
直後にバタバタと階段を降りる音がする
◇だから大声で呼ばないでって言ってるのにー!結人くん?どうしたの!?

急いで羽織ったのかパーカーが乱れた状態で髪をお団子にくくった部屋着スタイルの未紅が登場した
初めて見る雰囲気の未紅に少し顔が赤くなる結人
◆えっと…急にすみません、ちょっとお話がありまして…
◇話?中あがっていく?
◆いや!ここで大丈夫です!

ここはもう一気に言ってしまおう
◆あの、知人に頂いた水族館のチケットがあるんですけど気づいたら期限が明日まででして未紅さんのご予定が空いてたらもし良ければ一緒に行かないかなぁと思いまして

未紅は突然のお誘いに驚いたがしっかり返事を返した
◇そうなんだ。でも明日はちょっと予定があって
◆ですよね!急すぎますよね、すみません…

断られる想像はついていたが少しへこむ結人を見て未紅がでも…と続ける
◇あの、夕方からなら空いてるんだけどどうかな…?
◆!!お、俺は大丈夫です!
◇じゃぁ明日の夕方からでお願いします。むしろ同伴が私で大丈夫?
◆もちろんです!

こちらこそよろしくお願いします、と連絡先を交換して未紅の家を後にした
◆OKを貰えてしまった…本当に大丈夫だったかな、気を使わせてないといいけど

少し心配になりながら真咲と凜太朗に連絡をしつつ帰路に着いた
一方未紅は
◇2人で水族館かぁ…まるでデートみたいだなぁ………ってこ、これデートじゃない!?どどどどーしよう!!OKしちゃったけど良かったのかな!?
な、なっちゃーーーーん!!!

結人が帰った後にデートといってもおかしくはない約束をした事に気付き、慌てて奈胡に電話をかけた
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