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第19話 至れり尽くせりすぎな待遇
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「このお部屋ですか!?」
目の前に広がる部屋の大きさに目を丸くする。もちろん驚くべきことは広さだけではなく、内装は一見したところ派手さは無いが、普段は目にすることも、手にすることもない高級品質で整えられているのは明らかだ。
来客にもきちんと対応しており、居心地の良さそうなソファーやテーブルもちゃんと設置されている。浴室も常備されているそうで、入浴の時間を気にする必要がないのも嬉しい。
また奥にある寝室は朝日が優しく入ってくる設計になっているそうで、朝起きが苦手な私はますます寝過ごすことは間違いない。……いえ、お母様。王宮にて、のうのうと寝過ごしている場合ではもちろんありません。
脳裏に浮かんだ母に釈明をする。
「本当にこのお部屋でよろしいのですか!?」
「ああ。すぐ駆けつけてもらえるよう、私の隣の部屋に入ってもらうことにした。客間でなくて悪いが」
「い、いえ、それは」
この部屋は私が来るまでは何の部屋だったのだろう。自分の家も田舎町で土地だけはあるから大きな屋敷だと思っていたけれど、ここは一つの部屋が大きすぎる。
いや、王宮の大きさから考えて、当然ではあるのだけれども、たかが一介の下級貴族の娘相手にここまでの部屋を用意してくれるとは。
それだけ私の職務は重要な任務ととも取れる。
「部屋の雰囲気が気に入らなければ好きなように変えてくれてもいいし、何か足りない物があれば君の侍女に頼んでくれればいい。菓子も好きなだけ用意してもらってくれ」
「え!? それはすごい至れり尽くせりですね!」
思わず目が輝いたけれど、小さな子供を微笑ましく見るような殿下の瞳に、すぐ気を取り直すためにこほんと咳払いした。
「あ、いえ。そんなとんでもなく……ん? え? わたくしの侍女というのはどういう意味でしょうか」
私は殿下付きの侍女になるために召し上げられたわけで、私に侍女が付くのは道理に合わない気がするのですが。
「侍女にするとは言ったが、君に一般の侍女の仕事をしてもらうつもりはない。何かあれば頼むことがあるかもしれないが、基本は学業を本業としてくれればいい。だから部屋も使用人の部屋ではなく、私の隣にした」
「それで大丈夫なのですか?」
私としては殿下のお世話係の心構えで来たから、戸惑ってしまう。もちろん一般侍女になる方が足手まといの上に、もっと戸惑ってしまうでしょうが。
「ああ。でも私が呼んだらすぐに駆けつけられる場所にはいてもらうことにはなるが。特に人と会う時にはすぐ側で待機していてもらいたい」
自由のようで制限がありますね。まあ、当然と言えば当然か。殿下はいつ取り憑かれるか分からないわけだし。
「それと私付きの侍女という王命となるが、対外的にはただの行儀見習いということにしておいてほしい」
ただの行儀見習いでも宮廷に務めるならば、後ろ盾になるだろう。
「はい。かしこまりました」
「食事についてだが、この部屋で取ってくれ」
「はい。……あ。一人ででしょうか」
これまで家族と朝も夕も一緒に取っていたので、一人となると何とも味気の無い食事になりそうだ。
「基本はそうだな。何なら陛下以下、我々王家の者と一緒に食事できるよう手配するが」
「いえっ! それは謹んでご遠慮申し上げます」
私は慌てて固辞した。
天井を突き破らんぐらいの至れり尽くせりすぎな待遇だ!
止めて。それ絶対止めてほしい。味気の無いどころの話ではない。間違いなく緊張で喉は詰まるし、何を食べても味がないだろうし、食欲はなくなるだろう。せっかくの食材に対して失礼だ。何よりも、食事マナーには自信が無い!(きっぱり)
「まあ、それもそうか」
「例えば、侍女の方々と一緒の部屋でお食事を取るというのは構いませんか」
「いや。君は肩書き上、侍女とは言っているが、実務は違うのでできるだけ彼らと一緒にしたくはない」
新人侍女のくせに特別待遇されることを、良く思われないからかもしれない。
「ああ、そうだ。私も多忙で執務室で食事を取ることが多いので、何ならその時に同席してもいい」
「それは……そうですね。半年くらい考えるお時間を頂けると幸いにございます」
と柔らかくお断りすると、殿下は何が不満なんだと眉をひそめ、少し不足そうに呟いた。
目の前に広がる部屋の大きさに目を丸くする。もちろん驚くべきことは広さだけではなく、内装は一見したところ派手さは無いが、普段は目にすることも、手にすることもない高級品質で整えられているのは明らかだ。
来客にもきちんと対応しており、居心地の良さそうなソファーやテーブルもちゃんと設置されている。浴室も常備されているそうで、入浴の時間を気にする必要がないのも嬉しい。
また奥にある寝室は朝日が優しく入ってくる設計になっているそうで、朝起きが苦手な私はますます寝過ごすことは間違いない。……いえ、お母様。王宮にて、のうのうと寝過ごしている場合ではもちろんありません。
脳裏に浮かんだ母に釈明をする。
「本当にこのお部屋でよろしいのですか!?」
「ああ。すぐ駆けつけてもらえるよう、私の隣の部屋に入ってもらうことにした。客間でなくて悪いが」
「い、いえ、それは」
この部屋は私が来るまでは何の部屋だったのだろう。自分の家も田舎町で土地だけはあるから大きな屋敷だと思っていたけれど、ここは一つの部屋が大きすぎる。
いや、王宮の大きさから考えて、当然ではあるのだけれども、たかが一介の下級貴族の娘相手にここまでの部屋を用意してくれるとは。
それだけ私の職務は重要な任務ととも取れる。
「部屋の雰囲気が気に入らなければ好きなように変えてくれてもいいし、何か足りない物があれば君の侍女に頼んでくれればいい。菓子も好きなだけ用意してもらってくれ」
「え!? それはすごい至れり尽くせりですね!」
思わず目が輝いたけれど、小さな子供を微笑ましく見るような殿下の瞳に、すぐ気を取り直すためにこほんと咳払いした。
「あ、いえ。そんなとんでもなく……ん? え? わたくしの侍女というのはどういう意味でしょうか」
私は殿下付きの侍女になるために召し上げられたわけで、私に侍女が付くのは道理に合わない気がするのですが。
「侍女にするとは言ったが、君に一般の侍女の仕事をしてもらうつもりはない。何かあれば頼むことがあるかもしれないが、基本は学業を本業としてくれればいい。だから部屋も使用人の部屋ではなく、私の隣にした」
「それで大丈夫なのですか?」
私としては殿下のお世話係の心構えで来たから、戸惑ってしまう。もちろん一般侍女になる方が足手まといの上に、もっと戸惑ってしまうでしょうが。
「ああ。でも私が呼んだらすぐに駆けつけられる場所にはいてもらうことにはなるが。特に人と会う時にはすぐ側で待機していてもらいたい」
自由のようで制限がありますね。まあ、当然と言えば当然か。殿下はいつ取り憑かれるか分からないわけだし。
「それと私付きの侍女という王命となるが、対外的にはただの行儀見習いということにしておいてほしい」
ただの行儀見習いでも宮廷に務めるならば、後ろ盾になるだろう。
「はい。かしこまりました」
「食事についてだが、この部屋で取ってくれ」
「はい。……あ。一人ででしょうか」
これまで家族と朝も夕も一緒に取っていたので、一人となると何とも味気の無い食事になりそうだ。
「基本はそうだな。何なら陛下以下、我々王家の者と一緒に食事できるよう手配するが」
「いえっ! それは謹んでご遠慮申し上げます」
私は慌てて固辞した。
天井を突き破らんぐらいの至れり尽くせりすぎな待遇だ!
止めて。それ絶対止めてほしい。味気の無いどころの話ではない。間違いなく緊張で喉は詰まるし、何を食べても味がないだろうし、食欲はなくなるだろう。せっかくの食材に対して失礼だ。何よりも、食事マナーには自信が無い!(きっぱり)
「まあ、それもそうか」
「例えば、侍女の方々と一緒の部屋でお食事を取るというのは構いませんか」
「いや。君は肩書き上、侍女とは言っているが、実務は違うのでできるだけ彼らと一緒にしたくはない」
新人侍女のくせに特別待遇されることを、良く思われないからかもしれない。
「ああ、そうだ。私も多忙で執務室で食事を取ることが多いので、何ならその時に同席してもいい」
「それは……そうですね。半年くらい考えるお時間を頂けると幸いにございます」
と柔らかくお断りすると、殿下は何が不満なんだと眉をひそめ、少し不足そうに呟いた。
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