つかれやすい殿下のために掃除婦として就くことになりました

樹里

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第27話 いざ王宮へ出発

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 朝、学校へ行く準備が整った私はユリアに振り返った。

「それではユリア。今日、学校が終わる頃までに到着しておいてね」

 ユリアはこれから王宮入りのための準備をし、私の学校が終わる頃までに我が家の馬車にて駆けつけることにしてもらった。

「かしこまりました」

 昨夜、私が戦いに勝利したので、ユリアは頷いた。
 とは言え、顔にこそ出さなかったけれども、一人王宮入りした私のことを気にやって落ち着かない様子だったとのことだったので、最終的には付いて来てくれるつもりだったのだろう。

 もう、素直じゃないんだから。
 にっこにこの私を見て、彼女は訝しそうに眉をひそめた。
 表面上はつれない感じがユリアの愛すべき特徴だ。

「何でしょうか」
「何でもなーい。では、行って来ますね」
「はい。行ってらっしゃいませ」

 いつもは登校に付いて来てくれるユリアだけれど、今日は王宮へ持って行く私物などの準備に取りかかってもらうために部屋でお別れをする。

 私は自分の部屋を出て、玄関へと向かうとそこには両親と兄たちが見送りに出迎えてくれていた。

「ロザンヌ、行ってらっしゃい。くれぐれも体にだけは気をつけるんだよ」
「はい、お父様。ありがとうございます」
「いいこと? 暴れ馬しないで大人しくしているのよ。おしとやかにね」
「……はい。お母様」

 お母様、暴れ馬って何ですか。せめてお転婆とか。いや、お転婆もしていないけれども。

「お休みが出たら帰っておいで。ロザンヌの好きなお菓子をいっぱい用意しておくからね」
「はい! アシル兄様」

 優しいアシル兄様に自然と笑みがこぼれる。

「手紙で近況を知らせろよ」
「はい。シモン兄様」
「まあ、俺は筆無精だから返さないけど」
「……返してくださいよ」

 白けた目で見ると、冗談だって返すと笑顔のシモン兄様。私の緊張を解きほぐそうしてくれたのだろう。

「それでは――」

 私は家族の全員の顔を見渡して、満面の笑顔を見せる。

「行って参ります!」

 ぐずぐず挨拶をして後ろ髪を引かれ、皆を困らせる前に私は元気よく玄関を出た。

 玄関を出ると既に王宮からの迎えの馬車が来ていて、ジェラルドさんが私の姿を認めると柔らかな笑顔を見せた。

「ロザンヌ様、おはようございます」
「おはようございます、ジェラルド様。昨日に引き続き、ありがとうございます。お疲れではありませんか?」
「お気遣いありがとうございます。体だけは丈夫ですので問題ありません」

 いえいえ。他にも優秀な所がおありでしょうに。

「では、お世話になります。これからどうぞよろしくお願いいたします」
「はい。こちらこそよろしくお願いいたします。お手をどうぞ」

 挨拶と共に伸ばされた手を取ったその瞬間から、王宮での生活が始まるのだとあらためて実感せざるを得なかった。

 馬車に乗り込んだ私は、ユリアのことを伝えておかなければと口を開く。

「殿下のご配慮で我が家の侍女を一人付けさせていただくことになりました。学校が終わる頃、わたくしの生活必需品を乗せて馬車でやって来るかと思いますのでよろしくお願いいたします」
「はい。承っております。お見かけしたらお声がけさせていただきます」
「……あ」

 今朝ちゃんと紹介すればよかった。痛恨の失態だ。

「も、申し訳ございません。昨日、外で出迎えてくれていた時か今朝、ジェラルド様にご紹介するべきでした」
「大丈夫ですよ。馬車には紋章もついておりますし、昨日、出迎えていた方でしたら分かりますので」

 小さくなって恥じ入る私にジェラルドさんは優しい言葉をかけてくださる。

 大人な男の人だ。誰かさんとは段違いに大人の余裕というものがありますね!
 それにしてもさすが護衛官長様だ。職業病なのか、しっかり観察されている。私など、一度見たぐらいでは人の顔など覚えられないのに。

「ありがとうございます。ええ、若い女性です。顎までの長さの青みがかった黒髪に、切れ長の黒い瞳、身長は私よりも頭一つ分高く、先日二十歳になったところです。名前はユリア・ラドロ。少々愛想がなくて何を考えているのか分かりませんが、表情に出ないだけで思いやりがあって優秀な侍女なのでよろしくお願いいたします」
「承知いたしました。とても信頼されている方なのですね」
「はい! 大好きです」

 両手で拳を作って力説する。

「そうですか。それでは私もロザンヌ様が信頼されるその方を信頼いたしましょう」

 ジェラルドさんは微笑ましそうに穏やかに笑って頷いた。
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