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第88話 珍しく饒舌なユリアが言うことは
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学校の授業を終えて、私はうきうきで校門へと向かう。
朝の出来事のおかげで、今日は一日にっこにこで少々、クラスメートにも不気味がられてしまったけれど大丈夫。気にしません。
駆け出したい気分で、でもできるだけおしとやかに早足に向かう。
馬車は既に到着していて、ジェラルドさんとユリアが馬車から降りて待っていた。
「お待たせしました」
耐えきれず、最後の方はパタパタと二人に駆け寄る。
「お疲れ様でした。ロザンヌ様」
「ありがとうございます、ジェラルド様。ユリアも」
「はい」
にこにこしながらユリアを見ていると、彼女は怪訝そうに少し眉を上げた。
「ロザンヌ様、何か良い事でもあったのですか?」
「いいえぇ。いつも通りごきげんよ!?」
「そうですか」
ユリアはそれ以上追及することなく、では帰りましょうと手を差し伸べてくれる。同時にジェラルドさんも手をお貸しくださるので私はもう、それを普通として受け入れることにした。
座席に滑り込んで、事の成り行きをそわそわしながら見守っていると、ジェラルドさんがユリアに手を差し伸べる。
「ユリアさん、お手をどうぞ」
はああぁぁ。
ユリアがジェラルドさんの手を取る光景を、生きている内に間近で見ることができるだなんて。
ありがたや、ありがたやー。
天に感謝して手を組もうとしたところ。
「いえ。一人で大丈夫です」
ユリアはジェラルドさんの申し出を断り、馬車にさっさと乗り込んできた。
――なっ!? 何でなのよぉぉぉっ!?
悪戯な天使から後頭部に跳び蹴りされたような衝撃を受け、思わず頭を抱えて顔を伏せてしまう。
「ロザンヌ様、どうかされましたか。先ほどまでの奇妙奇天烈に明るい様子が、急に暗くなりましたね」
あなたのせいよっ! と言うか、奇妙奇天烈とは何よ!
ユリアに問われて顔上げると、私は恨めしげに彼女に視線をやった。
「ユリア、体の調子はいいの」
「はい。午前中、たくさん動き回ったら午後からは調子が戻って来ました」
「そう。回復が早くて良いわね……」
「ご心配ありがとうございます」
体の心配はしていないんだよー! いや、しているけれども。そうじゃなくて。
頭がガンガンと痛くなってきた。
しかし、ジェラルドさんはユリアの失礼にはすっかり慣れたもので(慣れないで!)、何ら動揺もなく中に入ってきて扉を閉めた。
「ジェラルド様、申し訳ございません……」
「え?」
何を謝られているのか分からないといった風に、ジェラルドさんは微笑む。
「今朝、ユリアをお任せしたことです」
謝罪の声がつい口から出てしまっただけなので、とりあえず間に合わせでそう言っておこう。
「いえ。全く気になさっていただくことではありません。ユリアさんはお怪我も無く、あの後も普通に歩いていらっしゃいましたから。初めて騎士の練習メニューを全てこなして、翌日ここまでお元気でいられるとは凄いことですよ」
「そうですか」
ユリアをひたすら賞賛してくれるジェラルドさんのお気持ちをそのまま素直に受け取っておこう。
「ですって。良かったわね、ユリア」
「はい」
でもまあ、少しくらいユリアの態度は軟化しているようだ。
私はユリアに流していた視線をジェラルドさんに戻す。
「騎士様は毎日その練習量をこなされているのですか? 大変ですね」
「基礎体力作りは重要となりますが、疲れすぎて任務に支障をきたしては本末転倒ですから、適度に行っております。ユリアさんが参加した日はたまたま当たりが悪く、と言ったところでしょうか」
「ですって。良かったわね、ユリア」
「はい」
良かったのかーいっ!
皮肉で言ってみたのにユリアはこくんと頷いた。
もしやユリアは運動狂なのでしょうか。
「ところでジェラルド様」
珍しくユリアがジェラルドさんに向かって自分から口を開く。
え! 何なに!? ユリアがジェラルドさんに話しかけるだなんて、どうしたっていうの。何を言うつもり!?
ハラハラする私の一方で、ジェラルドさんは心なしか嬉しそうだ。
「はい。何でしょうか」
「鍛錬場では長剣や槍以外の武器の練習も行うのでしょうか。短剣などは」
「え?」
「騎士の方々は剣や槍を持っていても不自然ではありませんが、一般人は短剣を隠し持つことがやっとです。しかし短剣は刃が短い分、相手との距離の取り方が重要となりますが、私には今ひとつその距離間が分からないのです。ですから短剣での剣術を学べればと思いまして」
「……はい?」
饒舌なユリアに対して、ジェラルドさんは辛うじて笑顔のまま返事した。
私と言えば、固まるばかりで言葉も出ない。
ユリアは一体何を目指しているの?
まさか。
目標は超一流の暗殺者。
……とでも言うのでしょうか?
朝の出来事のおかげで、今日は一日にっこにこで少々、クラスメートにも不気味がられてしまったけれど大丈夫。気にしません。
駆け出したい気分で、でもできるだけおしとやかに早足に向かう。
馬車は既に到着していて、ジェラルドさんとユリアが馬車から降りて待っていた。
「お待たせしました」
耐えきれず、最後の方はパタパタと二人に駆け寄る。
「お疲れ様でした。ロザンヌ様」
「ありがとうございます、ジェラルド様。ユリアも」
「はい」
にこにこしながらユリアを見ていると、彼女は怪訝そうに少し眉を上げた。
「ロザンヌ様、何か良い事でもあったのですか?」
「いいえぇ。いつも通りごきげんよ!?」
「そうですか」
ユリアはそれ以上追及することなく、では帰りましょうと手を差し伸べてくれる。同時にジェラルドさんも手をお貸しくださるので私はもう、それを普通として受け入れることにした。
座席に滑り込んで、事の成り行きをそわそわしながら見守っていると、ジェラルドさんがユリアに手を差し伸べる。
「ユリアさん、お手をどうぞ」
はああぁぁ。
ユリアがジェラルドさんの手を取る光景を、生きている内に間近で見ることができるだなんて。
ありがたや、ありがたやー。
天に感謝して手を組もうとしたところ。
「いえ。一人で大丈夫です」
ユリアはジェラルドさんの申し出を断り、馬車にさっさと乗り込んできた。
――なっ!? 何でなのよぉぉぉっ!?
悪戯な天使から後頭部に跳び蹴りされたような衝撃を受け、思わず頭を抱えて顔を伏せてしまう。
「ロザンヌ様、どうかされましたか。先ほどまでの奇妙奇天烈に明るい様子が、急に暗くなりましたね」
あなたのせいよっ! と言うか、奇妙奇天烈とは何よ!
ユリアに問われて顔上げると、私は恨めしげに彼女に視線をやった。
「ユリア、体の調子はいいの」
「はい。午前中、たくさん動き回ったら午後からは調子が戻って来ました」
「そう。回復が早くて良いわね……」
「ご心配ありがとうございます」
体の心配はしていないんだよー! いや、しているけれども。そうじゃなくて。
頭がガンガンと痛くなってきた。
しかし、ジェラルドさんはユリアの失礼にはすっかり慣れたもので(慣れないで!)、何ら動揺もなく中に入ってきて扉を閉めた。
「ジェラルド様、申し訳ございません……」
「え?」
何を謝られているのか分からないといった風に、ジェラルドさんは微笑む。
「今朝、ユリアをお任せしたことです」
謝罪の声がつい口から出てしまっただけなので、とりあえず間に合わせでそう言っておこう。
「いえ。全く気になさっていただくことではありません。ユリアさんはお怪我も無く、あの後も普通に歩いていらっしゃいましたから。初めて騎士の練習メニューを全てこなして、翌日ここまでお元気でいられるとは凄いことですよ」
「そうですか」
ユリアをひたすら賞賛してくれるジェラルドさんのお気持ちをそのまま素直に受け取っておこう。
「ですって。良かったわね、ユリア」
「はい」
でもまあ、少しくらいユリアの態度は軟化しているようだ。
私はユリアに流していた視線をジェラルドさんに戻す。
「騎士様は毎日その練習量をこなされているのですか? 大変ですね」
「基礎体力作りは重要となりますが、疲れすぎて任務に支障をきたしては本末転倒ですから、適度に行っております。ユリアさんが参加した日はたまたま当たりが悪く、と言ったところでしょうか」
「ですって。良かったわね、ユリア」
「はい」
良かったのかーいっ!
皮肉で言ってみたのにユリアはこくんと頷いた。
もしやユリアは運動狂なのでしょうか。
「ところでジェラルド様」
珍しくユリアがジェラルドさんに向かって自分から口を開く。
え! 何なに!? ユリアがジェラルドさんに話しかけるだなんて、どうしたっていうの。何を言うつもり!?
ハラハラする私の一方で、ジェラルドさんは心なしか嬉しそうだ。
「はい。何でしょうか」
「鍛錬場では長剣や槍以外の武器の練習も行うのでしょうか。短剣などは」
「え?」
「騎士の方々は剣や槍を持っていても不自然ではありませんが、一般人は短剣を隠し持つことがやっとです。しかし短剣は刃が短い分、相手との距離の取り方が重要となりますが、私には今ひとつその距離間が分からないのです。ですから短剣での剣術を学べればと思いまして」
「……はい?」
饒舌なユリアに対して、ジェラルドさんは辛うじて笑顔のまま返事した。
私と言えば、固まるばかりで言葉も出ない。
ユリアは一体何を目指しているの?
まさか。
目標は超一流の暗殺者。
……とでも言うのでしょうか?
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