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第152話 隠密行動
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「ロザンヌ様」
扉の奥に消えた殿下を追うように手を置いていると、ユリアから背中に声をかけられてびくりと肩を振るわせた。
「参りましょう」
「……ええ」
部屋から出ると、部屋の前に就く護衛官とジェラルド様が立っていた。
本日は護衛官として殿下のお側につくとおっしゃっていたジェラルドさんも、いつもより威圧感を与えない白を基調とした騎士服を身に付けていた。
「ジェラルド様?」
「こんばんは。ロザンヌ様、ユリアさん」
「ごきげんよう、ジェラルド様」
「こんばんは」
ジェラルドさんはにこりと笑うと、護衛官に指示を与えて私たちから少し離れさせる。
「ロザンヌ様、よくお似合いですね。とてもお綺麗です」
「あ、ありがとうございます。……ジェラルド様のお召し物もとてもよくお似合いで素敵です」
先ほどの殿下の言葉を思い出してしまう。身にまとった風格に押されて殿下には結局何も言えなかったな……。
「ありがとうございます」
ジェラルドさんの言葉にはっと我に返る。
「あ。ジェラルド様はこれから殿下の護衛ですか?」
「ええ。その前に極秘任務です」
「極秘任務ですか?」
そんな言葉がジェラルドさんの口から出るとは意外すぎる。
私は目を瞬かせた。
「ええ。実はロザンヌ様を会場までお連れすることです」
「え。……なぜ。一人で行けますよ?」
「ここは王族の住居区域です。ドレス姿で出入りされるところを見られるのは、避けた方が良いだろうとの殿下のお考えです」
「あ……」
普段の学校への行き来は、この王族の部屋から馬車停留場所までは人目に触れず、一本道で行くことができるので問題なかった。また、ここから執務室へと向かう際は侍女服姿だからそれも問題ない。けれど今日みたいに王族でもない人間が、王族居住区域からドレス姿で出て来たら確かに目立ってしまうだろう。
殿下はそこまで考えてジェラルドさんを付けてくださったようだ。
私が納得したのを察したジェラルドさんは笑んで小さく頷く。
「ですから人目を避けてお連れいたします」
「はい。お願いいたします。――あ。ユリア、ユリアは」
「私は侍女服ですので、問題ありません。私は後で行きます。隠密行動ならば、少人数で動いた方が良いでしょう」
ユリアが言うと説得力しかない。
「晩餐会の終了後は、ゲストルームにお泊まりになる旦那様方のお部屋でお着替えしてはいかがでしょうか」
「そうね」
「では。着替えの侍女服をお持ちいたします」
「ありがとう。よろしくね」
ユリアとの会話が一区切りしたところでジェラルドさんは私に声をかける。
「では、ロザンヌ様。参りましょうか」
「はい。よろしくお願いいたします」
「ジェラルド様、いつもご迷惑をおかけして申し訳ございません」
辺りをうかがうジェラルドさんの横顔はきりりと引き締まっていて隙がない。
私はそんなジェラルドさんに先導してもらいつつ、小声でお話しをすると、顔だけ振り向いて笑みを見せてくれた。
「いいえ。とんでもないことです」
「でも、わたくしがこちらに寄せていただいてから、任務外のお仕事が増えたのではないでしょうか」
「そうですね。それは否定いたしません。ですが、私はとても光栄に思っております」
殿下がジェラルドさんを信頼している証明のように思うからだろうか。
「殿下とジェラルド様は言葉は無くとも、強い信頼という絆で繋がっていらっしゃるのですね」
「え……」
ジェラルドさんの任務中の表情が消えて、一瞬目を見張った。
「殿下が無茶な事をおっしゃるのはジェラルド様だけですもの。ジェラルド様との間に信頼関係が無ければできないことでしょう」
「そう、でしょうか」
「ええ。お二人の関係がとても羨ましいです」
私はいつかジェラルドさんに言われた言葉を返すと、ジェラルドさんはありがとうございますと控えめに、けれど嬉しそうに笑った。
「ジェラルド様、ありがとうございました」
会場付近まで連れてきていただき、回りにドレスやタキシードを着込んだ貴族の姿も増えてきた。
もう私の姿が目立つことはないだろう。ジェラルドさんも殿下の護衛のために戻らなければならない。ここでお別れすることにする。
「いいえ」
「殿下にもお礼を。あ。い、いえ。またわたくしからお礼申し上げます」
お礼ぐらい自分の口で伝えないと……。
「ええ。そうですね。では私はこちらで失礼いたします」
「はい。ありがとうございます」
「ロザンヌ様、緊張ならさないで晩餐会をお楽しみください。――それでは」
ジェラルドさんは礼を取ると、心を落ち着かせてくれるような笑顔と言葉を残して去って行った。
扉の奥に消えた殿下を追うように手を置いていると、ユリアから背中に声をかけられてびくりと肩を振るわせた。
「参りましょう」
「……ええ」
部屋から出ると、部屋の前に就く護衛官とジェラルド様が立っていた。
本日は護衛官として殿下のお側につくとおっしゃっていたジェラルドさんも、いつもより威圧感を与えない白を基調とした騎士服を身に付けていた。
「ジェラルド様?」
「こんばんは。ロザンヌ様、ユリアさん」
「ごきげんよう、ジェラルド様」
「こんばんは」
ジェラルドさんはにこりと笑うと、護衛官に指示を与えて私たちから少し離れさせる。
「ロザンヌ様、よくお似合いですね。とてもお綺麗です」
「あ、ありがとうございます。……ジェラルド様のお召し物もとてもよくお似合いで素敵です」
先ほどの殿下の言葉を思い出してしまう。身にまとった風格に押されて殿下には結局何も言えなかったな……。
「ありがとうございます」
ジェラルドさんの言葉にはっと我に返る。
「あ。ジェラルド様はこれから殿下の護衛ですか?」
「ええ。その前に極秘任務です」
「極秘任務ですか?」
そんな言葉がジェラルドさんの口から出るとは意外すぎる。
私は目を瞬かせた。
「ええ。実はロザンヌ様を会場までお連れすることです」
「え。……なぜ。一人で行けますよ?」
「ここは王族の住居区域です。ドレス姿で出入りされるところを見られるのは、避けた方が良いだろうとの殿下のお考えです」
「あ……」
普段の学校への行き来は、この王族の部屋から馬車停留場所までは人目に触れず、一本道で行くことができるので問題なかった。また、ここから執務室へと向かう際は侍女服姿だからそれも問題ない。けれど今日みたいに王族でもない人間が、王族居住区域からドレス姿で出て来たら確かに目立ってしまうだろう。
殿下はそこまで考えてジェラルドさんを付けてくださったようだ。
私が納得したのを察したジェラルドさんは笑んで小さく頷く。
「ですから人目を避けてお連れいたします」
「はい。お願いいたします。――あ。ユリア、ユリアは」
「私は侍女服ですので、問題ありません。私は後で行きます。隠密行動ならば、少人数で動いた方が良いでしょう」
ユリアが言うと説得力しかない。
「晩餐会の終了後は、ゲストルームにお泊まりになる旦那様方のお部屋でお着替えしてはいかがでしょうか」
「そうね」
「では。着替えの侍女服をお持ちいたします」
「ありがとう。よろしくね」
ユリアとの会話が一区切りしたところでジェラルドさんは私に声をかける。
「では、ロザンヌ様。参りましょうか」
「はい。よろしくお願いいたします」
「ジェラルド様、いつもご迷惑をおかけして申し訳ございません」
辺りをうかがうジェラルドさんの横顔はきりりと引き締まっていて隙がない。
私はそんなジェラルドさんに先導してもらいつつ、小声でお話しをすると、顔だけ振り向いて笑みを見せてくれた。
「いいえ。とんでもないことです」
「でも、わたくしがこちらに寄せていただいてから、任務外のお仕事が増えたのではないでしょうか」
「そうですね。それは否定いたしません。ですが、私はとても光栄に思っております」
殿下がジェラルドさんを信頼している証明のように思うからだろうか。
「殿下とジェラルド様は言葉は無くとも、強い信頼という絆で繋がっていらっしゃるのですね」
「え……」
ジェラルドさんの任務中の表情が消えて、一瞬目を見張った。
「殿下が無茶な事をおっしゃるのはジェラルド様だけですもの。ジェラルド様との間に信頼関係が無ければできないことでしょう」
「そう、でしょうか」
「ええ。お二人の関係がとても羨ましいです」
私はいつかジェラルドさんに言われた言葉を返すと、ジェラルドさんはありがとうございますと控えめに、けれど嬉しそうに笑った。
「ジェラルド様、ありがとうございました」
会場付近まで連れてきていただき、回りにドレスやタキシードを着込んだ貴族の姿も増えてきた。
もう私の姿が目立つことはないだろう。ジェラルドさんも殿下の護衛のために戻らなければならない。ここでお別れすることにする。
「いいえ」
「殿下にもお礼を。あ。い、いえ。またわたくしからお礼申し上げます」
お礼ぐらい自分の口で伝えないと……。
「ええ。そうですね。では私はこちらで失礼いたします」
「はい。ありがとうございます」
「ロザンヌ様、緊張ならさないで晩餐会をお楽しみください。――それでは」
ジェラルドさんは礼を取ると、心を落ち着かせてくれるような笑顔と言葉を残して去って行った。
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