つかれやすい殿下のために掃除婦として就くことになりました

樹里

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第153話 晩餐会場の人々

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 晩餐会は間もなく開始するため、招待されたたくさんの人々のざわめきで活気に溢れている。
 既に座っている人や、壁際に立って会話している人、辺りを興味深そうにキラキラした目で見ている人など様々だ。

 女性陣は美しく着飾り、男性はびしりとタキシードで決めている非日常的な光景を見ていると、先ほどまでの憂鬱だった気分が消え、わくわくとした期待感へと変わる。

 高まった人々の気分が会場を盛り上げているのだろう。それがまた互いに影響しあっていて、より興奮を高めるのかもしれない。

 会場は天井からぶら下げられた王冠を模したようなシャンデリアが煌々と輝き、部屋の奥まで伸びた長テーブルに灯を落とす。
 テーブルの上には真っ白なテーブルクロスがかけられ、お料理はまだもちろん出されていないものの、見目にも美しい食器が並べられている。また、テーブルの中央には色とりどりの美しい花で飾られていた。

 これらの花々はジル様らが丹精込めて育て上げたお花なのかしらと思う。あとで全て回収してドライフラワーにしたいと思うのは貧乏性ゆえか。

 席次は決められていて、王座のある一番奥から爵位の高い順に配置されるため、うちは出入り口に近い場所だ。おかげですぐに場所を特定することができた。
 早速、席に向かおうとしたら。

「ロザンヌ様!」

 呼び止められて振り返るとマリエル嬢がいた。
 細かな刺繍が施されたピンクベージュのドレスで、可憐なマリエル嬢にはとてもよく似合っている。

「マリエル様、ごきげんよう」

 私はいつもとは違って気取った風に上品に礼を取ると、彼女も笑って礼を返した。

「とても素敵ですね、マリエル様」
「ありがとうございます。ロザンヌ様もとてもお綺麗です」
「ありがとうございます。そう言ってくださるのは」

 マリエル様だけですよと続けようとして止めた。
 殿下もジェラルド様も言ってくださったのに、そんな言葉を口から出すのはお二人に失礼だ。

「そう言ってくださるのはとても嬉しいです。あ。マリエル様、ご両親は?」
「もう席に着いております。ロザンヌ様は?」
「これから会いに参ります」

 久々の再会に少し気持ちが逸っているのに気付かれただろうか。マリエル嬢は、はっとした様子で唇に手を当てた。

「そうでしたね。ロザンヌ様は今、王宮にお住まいですものね。ご両親との久々の再会を邪魔してごめんなさい」
「いいえ。少し緊張していたものですから、お声がけしていただいて、肩の力が抜けました。ありがとうございます」
「それならば良かったのですが。ロザンヌ様をお見かけしたものですから、つい嬉しくなってお声をかけてしまいました。ではこれで失礼いたしますね。また後ほど」

 マリエル嬢は笑顔で礼を取ると、身を翻した。
 私は今度こそ両親が待つ席へと向かうと、すぐに気付いてくれたらしい。二人が立ち上がった。

「ロザンヌ!」
「お父様、お母様!」

 私は早足で近付くと、両親は人目もはばからず抱きしめてきた。
 本日は皆が皆、浮き足立っていてそれを気に留める人も見咎める人もいないけれども、マナーに厳しい母がしてきたことに驚きを隠せない。でも私は久々の両親の温もりと香りにぎゅっと抱きしめ返した。

「元気でやっていたかい?」
「体はどう? 体調を崩したりしていない?」
「はい。元気に過ごしております。食事も美味しいですし、睡眠もしっかり取っています」

 両親は離れて私の姿をあらためて眺めると笑顔になる。

「うん。本当だ。顔色もいいし、元気そうだね」
「ええ。良かったわ。心配していたのよ」

 頬に手を当てて眉を落とす母に、胸にじわりと熱いものがこみ上げてくる。

「お母様……」
「あなたが不敬を働いたり、何か大失態でもしているのではないかと、しばらく夜も眠れなかったわ」

 うん。まあ、そうですよね。はは。知ってたぁ……。

 あっという間に消え去った熱を懐かしんでいると、父からフォローが入る。

「これこれ。またそんな憎まれ口を叩いて。毎日のようにあの子は大丈夫かしら、泣いていないかしらと言っていたのに」
「え?」
「あ、あなた。それは。……そうだわ。ユリアも元気?」

 父に内情をばらされて、母は恥ずかしげに少し頬を染めて話をそらす。
 私は笑んで頷いた。

「はい。ユリアも元気です。いつも助けられています」
「そうなの。彼女には感謝で一杯ね。今日は会えるのかしら」
「この会場にも給仕として当たるそうです。広い会場ですから、ここで会えるかどうかは分かりませんが。でも今日はお泊まりになるのですよね。あとでゲストルームに訪問すると言っておりました。わたくしも参ります」
「そう。楽しみだわ」

 両親と会話をしていると定刻となり、続々着席し始めたので私たちも席に座る。すると間もなく王族の方々が、貴族の席よりも一段も二段も高い壇上へと姿を現した。
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