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第222話 やっぱり――パにっク
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再びユリアが去った後、この場の空気が何とも微妙なものになった。
ええっと。
この後、どうすればいいのだろうか。想いを伝えて通じ合った後は何をすれば。
――恋を成就した後に愛を育んでいく過程の方がはるかに壁が大きい。
ジェラルドさんの言葉を思い出して、まさにその通りだと悩む。
すると殿下がこほんと咳払いした。
「殿下?」
「何だか変な空気になってしまったと思ってな」
「あ、はい。そうですね」
頷いて返事したものの、殿下はまた黙り込む。
えっと。
今度は私から話しかけた方がいいのかな。いつものように他愛もない会話を。……ん? 他愛もない会話って何だっけ? 他愛……あ、いや、深く考えなくても普通の会話でいいのよ、普通の。
――ふ、普通の会話って何!?
思考がぬかるみにはまって抜け出せず、いつの間にか頭を抱えて低く唸っていたらしい私を見て、殿下はぷっと吹き出した。
私はジト目で睨み返す。
「何を笑っていらっしゃるのです」
こちらは真剣に悩んでいるというのに。
「いや。悪い。可愛いなと思って」
「――っ!?」
瞬間的に頬に熱が集まるのが分かった。
「顔が真っ赤だ」
「ぞ、存じております!」
慌てて両手で隠しながら言い返す。
こ、こんなことを言う方だったかしら。あ、そう言えば。初めて王宮に呼び出された時もおっしゃっていたかも。でもあれは、明らかな社交辞令だったような。今のは社交辞令ではないということでいいのかしら。でも惚れた欲目ってやつで。
ほ、惚れた欲目って、何と図々しいことを! ――え、違う。惚れられているので合っているんだっけ!?
ぷつん。
何かが切れた音がした。
あ。駄目だ。許容量超えた……。
頭の中でぐるぐると色んな思考が飛び回り、とうとう目の前の景色まで回りだした私は再びベッドに落ちる。
「ロザンヌ嬢、大丈夫か!?」
「大丈夫ではありません。もう、いっぱいいっぱいでございます」
愚痴ると殿下は苦笑いした。
「……いや。悪い。からかったつもりはないが、少し浮かれすぎたな」
「殿下?」
ベッドに収まった私が見上げた殿下の目元はほんのり朱く染まっており、照れて気まずそうだ。殿下もまた私との接し方に戸惑っていたのだろうか。
私はベッドから身を起こそうとすると殿下がそのままでいいと止めるが、ちゃんと殿下の顔を見たかったので起き上がった。
「いえ。大丈夫です。それより先ほどの浮かれていたというのは」
「単純に君に想いを告げられて嬉しかったということだ」
あぁぁぁっ。駄目だ駄目だ駄目だ!
自分で尋ねておいて、顔が熱くなる。想いを伝え合った後では前みたいな関係に戻れないのかな。だとしたら、これからどんな接し方をすればいいのだろう。――誰か教えて!
「で、殿下」
ひとまず目の前の人物に尋ねてみることにした。
「何だ?」
「これからわたくしは殿下にどんな態度を取れば良いのでしょう」
「どんな態度?」
殿下は思いがけない言葉だったようで眉根を寄せた。
「私への態度を変える必要があるのか?」
「え?」
「私としては急に、君に態度を変えられると戸惑ってしまうと思うが。君も困らないか?」
「そ、そうですが」
あれ? そういう問題なの? では、今までと同じような接し方でいいということなのかな。
「ほ、他の皆さまはどうなさっているのでしょう」
「他人は知らないが、私たちは私たちの自然な形で行けばいいことではないか? 無理に変えてそれが長く続くとは思わないし、互いに居心地が悪くなれば意味がない」
ごもっともでございます。
「もちろんこれまでと全く同じというわけにはいかないが」
「例えばどんなことでしょう?」
すると殿下はなぜかきまりが悪そうにこほんと咳払いする。
「そうだな。知人や友人の間柄ではできないことがあるだろう」
「知人や友人の間柄ではできないこ……」
何気なく殿下の言葉を繰り返していると不意に目の前が陰ったかと思うや、殿下の顔が迫っていることに気付いて硬直する。
吐息がかかり、唇が触れるまでほんの一呼吸といったところで、殿下は私からそっと離れた。
「――っ」
呆けていたが、ようやく正常に回転しだした頭で導き出した答えに、私は再び顔を赤くした。
「つまりそういうことだ。だからこれからは――覚悟だけはしておくように」
「は、はい。……え? 覚悟?」
って。どういう覚悟を?
ぱちぱちと瞬く私の前で、殿下は困ったように小さく笑うばかりだった。
ええっと。
この後、どうすればいいのだろうか。想いを伝えて通じ合った後は何をすれば。
――恋を成就した後に愛を育んでいく過程の方がはるかに壁が大きい。
ジェラルドさんの言葉を思い出して、まさにその通りだと悩む。
すると殿下がこほんと咳払いした。
「殿下?」
「何だか変な空気になってしまったと思ってな」
「あ、はい。そうですね」
頷いて返事したものの、殿下はまた黙り込む。
えっと。
今度は私から話しかけた方がいいのかな。いつものように他愛もない会話を。……ん? 他愛もない会話って何だっけ? 他愛……あ、いや、深く考えなくても普通の会話でいいのよ、普通の。
――ふ、普通の会話って何!?
思考がぬかるみにはまって抜け出せず、いつの間にか頭を抱えて低く唸っていたらしい私を見て、殿下はぷっと吹き出した。
私はジト目で睨み返す。
「何を笑っていらっしゃるのです」
こちらは真剣に悩んでいるというのに。
「いや。悪い。可愛いなと思って」
「――っ!?」
瞬間的に頬に熱が集まるのが分かった。
「顔が真っ赤だ」
「ぞ、存じております!」
慌てて両手で隠しながら言い返す。
こ、こんなことを言う方だったかしら。あ、そう言えば。初めて王宮に呼び出された時もおっしゃっていたかも。でもあれは、明らかな社交辞令だったような。今のは社交辞令ではないということでいいのかしら。でも惚れた欲目ってやつで。
ほ、惚れた欲目って、何と図々しいことを! ――え、違う。惚れられているので合っているんだっけ!?
ぷつん。
何かが切れた音がした。
あ。駄目だ。許容量超えた……。
頭の中でぐるぐると色んな思考が飛び回り、とうとう目の前の景色まで回りだした私は再びベッドに落ちる。
「ロザンヌ嬢、大丈夫か!?」
「大丈夫ではありません。もう、いっぱいいっぱいでございます」
愚痴ると殿下は苦笑いした。
「……いや。悪い。からかったつもりはないが、少し浮かれすぎたな」
「殿下?」
ベッドに収まった私が見上げた殿下の目元はほんのり朱く染まっており、照れて気まずそうだ。殿下もまた私との接し方に戸惑っていたのだろうか。
私はベッドから身を起こそうとすると殿下がそのままでいいと止めるが、ちゃんと殿下の顔を見たかったので起き上がった。
「いえ。大丈夫です。それより先ほどの浮かれていたというのは」
「単純に君に想いを告げられて嬉しかったということだ」
あぁぁぁっ。駄目だ駄目だ駄目だ!
自分で尋ねておいて、顔が熱くなる。想いを伝え合った後では前みたいな関係に戻れないのかな。だとしたら、これからどんな接し方をすればいいのだろう。――誰か教えて!
「で、殿下」
ひとまず目の前の人物に尋ねてみることにした。
「何だ?」
「これからわたくしは殿下にどんな態度を取れば良いのでしょう」
「どんな態度?」
殿下は思いがけない言葉だったようで眉根を寄せた。
「私への態度を変える必要があるのか?」
「え?」
「私としては急に、君に態度を変えられると戸惑ってしまうと思うが。君も困らないか?」
「そ、そうですが」
あれ? そういう問題なの? では、今までと同じような接し方でいいということなのかな。
「ほ、他の皆さまはどうなさっているのでしょう」
「他人は知らないが、私たちは私たちの自然な形で行けばいいことではないか? 無理に変えてそれが長く続くとは思わないし、互いに居心地が悪くなれば意味がない」
ごもっともでございます。
「もちろんこれまでと全く同じというわけにはいかないが」
「例えばどんなことでしょう?」
すると殿下はなぜかきまりが悪そうにこほんと咳払いする。
「そうだな。知人や友人の間柄ではできないことがあるだろう」
「知人や友人の間柄ではできないこ……」
何気なく殿下の言葉を繰り返していると不意に目の前が陰ったかと思うや、殿下の顔が迫っていることに気付いて硬直する。
吐息がかかり、唇が触れるまでほんの一呼吸といったところで、殿下は私からそっと離れた。
「――っ」
呆けていたが、ようやく正常に回転しだした頭で導き出した答えに、私は再び顔を赤くした。
「つまりそういうことだ。だからこれからは――覚悟だけはしておくように」
「は、はい。……え? 覚悟?」
って。どういう覚悟を?
ぱちぱちと瞬く私の前で、殿下は困ったように小さく笑うばかりだった。
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