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第一章
第18話
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明け方の空気はまだ冷たかった。夜明け前に灯った迎賓館の灯りが一つずつ落ちていき、代わりに白んだ光が街の輪郭をゆっくり浮かび上がらせる。
私たちは南門へ向かっていた。城壁に沿って歩く道はまだ人通りが少なく、露に濡れた石畳が足裏にしっとりとした冷気を返す。
南門前の広場には、すでに騎士団が整列していた。鉄具のかすかな軋み、馬の吐く白い息。町の人々もぽつぽつと集まっている。遠巻きに見守る視線が、こちらへ静かに集まるのがわかった。
「聖女様だ」
囁きが風に乗って耳に届く。私は顔を上げ、軽く会釈した。帽子を脱ぎ、胸に手を当てる人が幾人もいた。小さな女の子が母親のスカートをぎゅっと握ったまま、私を上目遣いで見ている。目が合うと、彼女は慌てて会釈を返した。
門楼の下、ヴァルトが一歩前に出る。鎧の音はほとんどしないのに、そこに立っただけで空気が締まった気がした。
「南門から出立する」
低く、曖昧さのない声。皇帝の名代としての案内役が彼に委ねられていることを、あらためて実感する。
セルジュが短く号令をかける。先頭に斥候二騎、続いて護衛。私の馬車、その両翼に騎士。殿はセルジュ自身。ヴァルトは先頭近くに位置を取った。
門番が鎖を引く。巨大な門扉がゆっくり外へ開き、軋む音が胸の奥に響く。街の内側に残る人々が、一斉に頭を下げて見送った。
「御光があらんことを」
重なる祈りの声を背に、私たちは南門をくぐった。門が遠ざかるにつれて、街のざわめきが薄れ、風の音と車輪の響きが耳を満たしていく。街路樹の葉はまだ湿り気を帯び、朝の光を細かく跳ね返していた。私は帆布の隙間から一度だけ振り返る。塔の上の旗が、朝の風に小さく揺れた。
*
*
*
午前の道中は静かだった。
カストルムを離れるほど、街道の両脇は広い畑に変わり、収穫の済んだ畝が整然と続く。遠くに小さな村が点々と浮かぶ。空は高く、薄くちぎれた雲がゆっくり流れていた。
「ノルデンに比べると、湿気が少なくて過ごしやすいですね」
向かいの席で景色を見ていたアンリが言う。
「確かに。朝晩は冷えるけど、昼はちょうどいいね」
「はい。トグに近づけば、昼の寒さはさらに和らぎます。……瘴気があるとあまり感じられないかもしれませんが」
「瘴気さえなければ、旅行日和って言うところだね」
私がそう言うと、アンリは困ったように、それでも優しく笑った。
すると、前に馬を走らせていたエディが、馬上からくるりと振り返る。
「ここまでは順調、順調! 聖女ちゃん、酔ってない?」
「平気。あなたこそ前を見て」
「へいへい。団長に怒られる前にね」
予言のように、セルジュの低い叱声が飛ぶ。
「エディ! 前を見ろ!」
「了解でーす」
軽口に、車内の空気がほんの少しほどけた。
少し経って、荷車の一団とすれ違った。麦の束を積んだ夫婦と、荷台に座る少年。母親が胸の前で小さく印を切り、こちらへ頭を下げる。ヴァルトは速度を落とし、短く声をかけた。
「北へ行くなら、街道から外れないように」
夫婦は「はい」と揃って返事をする。ヴァルトはそれ以上は言わない。彼の視線が一瞬だけ荷台の少年に落ちたが、すぐ前へ戻った。
「……逃れる人が増えているのですね」
アンリが小声で言う。私はうなずいた。遠くの村の煙が、いつもより低いように見えた。
*
*
*
昼前、最初の小競り合いがあった。
「気配!」
斥候の声。藪ががさりと揺れ、牙の伸びた兎の魔獣が二体、犬型が一体飛び出した。赤茶の靄をまとっている。
「前へ!」
セルジュの号令と同時に騎士たちが動いた。私は反射的に両手を突き出す。透明な膜が馬車の前にふくらみ、突進してきた魔獣を弾く。膜の表で靄がぱっと散り、霧のように薄まっていった。
「任せろ!」
エディの矢が犬型の首を射抜く。だが矢が落ちるより先に、ヴァルトが踏み出していた。
盾で兎型魔獣を思いっきり弾き飛ばす。身体強化の魔法だろうか。魔力が身体の周りをうねっている気がする。宙に舞った胴体を待たず、もう一体の首を剣で断ち切る。返す刃で、射抜かれたはずの犬型まで突き伏せた。
「おい、お前……!」
射程線上に飛び出したヴァルトに対し、エディが舌打ち混じりに言いかけるが、彼は振り返らない。靄が風に溶けきるより早く、剣を払って鞘に戻していた。
ほんの数分で戦闘は終わった。
騎士たちは呼吸を整え、列を戻す。ノルデンの神官たちは、これ以上の同行は危険と判断し、カストルムで帰路につくことになったので、私とアンリで浄化をした。
「街道を出てすぐというのに」
アンリの声はわずかに硬い。私はうなずく。
「油断しないように、だね」
横目でチラリと見るとヴァルトは前だけを見ていた。強さに文句のつけようはない。でも、彼の動きには誰かに合わせる余地がなかった。その背中に、言葉にしない緊張が薄く揺れている。
*
*
*
日が高くなるころ、街道脇の木陰で短い休憩をとった。荷の陰で作られた日陰は、思いのほか涼しい。パンの袋がほどかれ、干した果実がいくつか回ってくる。
「この町のパン、皮が香ばしいね」
私がちぎった切れ端を頬張ると、エディが鼻を鳴らした。
「カストルムのパン屋は外はパリッ、中はもっちりだね。なあ、団長?」
「よけいな口をきく前にさっさと食べろ」
セルジュは淡々としているが、手元のパンはしっかり減っている。
アンリは水袋を軽く掲げて私に渡しながら、低く囁いた。
「お疲れではありませんか?」
「少し。でも、大丈夫。アンリは?」
「元気いっぱいです」
「そんな淡々と言われても……ふふっ」
私が笑うと、アンリも目尻だけで笑った。
ヴァルトは少し離れたところで、街道の向こうを見ていた。ひたすら南を眺めている、というより、何かを考え込んでいるような顔だった。
午後、畑は途切れ、草地が増えた。道端の祈祷碑が等間隔で立っていて、誰かが新しい花を供えていった跡がある。私は帆布の隙間から手を伸ばし、通り過ぎざまにほんの一瞬だけ指先を合わせた。
「……マリ様」
向かいのアンリが小さな声で呼ぶ。私は首を傾げる。
「ヴァルト殿のこと、どう見ていますか」
「正確で律儀な人なんだろうな。たぶん、私たちのこともよく見てる。でも、近づけない感じ、近寄らせない感じがする」
「そう、ですか……」
アンリは何か考え込んでいるようだった。初めて見る表情。
「どうした?」
「いえ、少し気になったものですから」
もう一度ヴァルトを見る。彼の背中は、誰の手も借りないで立つ姿勢をしていて、なんだかそれが少しさみしく感じた。
*
*
*
夕刻、小さな村が見えた。壁は土色にくすみ、屋根は傾いている。村人たちは道に出てきて、私たちを黙って見送った。
野営地は村から少し離れた草地に設けられ、焚き火がいくつも灯る。香草を焚いた煙が夜風に混じった。
私は火のそばで手を合わせ、浄化の光を点のように落とした。白い光が草地をそっと撫で、空気が一段軽くなった気がする。
そのとき、素足の小さな影がこちらに向かって駆けてきた。
「……聖女様! 来てくれたの?」
振り向くと、泥だらけの足の男の子が立っていた。息が上がって、頬が赤い。
「聖女様、魔獣こわいの。だから助けに来てくれてありがとう!」
深く頭を下げると、彼はくるりと背を向け、村へ走りかける——が、足がもつれて転びそうになる。
「おい」
いつの間にか近くにいたヴァルトが片腕で抱え上げ、土の上へそっと下ろした。
「門の中まで送ってくる」
それだけ言って、子どもと並んで闇へ消える。焚き火のはぜる音だけが残った。
アンリが私の横に腰を下ろす。
「……大丈夫ですか」
「泣かない。泣いても、たぶん何も変わらないから」
「……はい」
ふたりで火を見つめてしばらくすると、ヴァルトが村の方から戻ってきた。しばらくして、ヴァルトが戻ってくる。焚き火の向こうでセルジュと視線が交わると「村門は閉じた。見張りは交代で立つそうだ」
とぶっきらぼうに言った。
そして、焚き火の輪には加わらず、少し離れた暗がりへ足を向けた。背中だけが炎に照らされて、やがて影に溶けていきそうになる。
私は急いで立ち上がる。視界の端で白い手袋が動くのが見えたが、ヴァルトの方へ向かう。
「あの!」
ヴァルトは無言で振り返る。面倒くさそうな表情を少しも隠さない。
「さっきの子、大丈夫だったかな? おうちの方とは会えた?」
「ああ」
「あの……送ってくれてありがとう」
先ほどから表情一つ変わらない。眉間にシワが寄ったまま、だ。
「聖女殿が気にするほどのものではない。失礼」
そう遮るように言うとそのまま暗がりに消えて言ってしまった。
「マリ様……?」
追ってきたアンリが心配そうにこちらを覗く。
「ううん、大丈夫。なんだか余計なことを言っちゃったかも」
私が無理やり笑顔を作ると、アンリは困った顔をしていた。
「ベルがカストルムで焼き菓子を買っていたようです。早く戻らないとエディに食べられてしまいそうなので、戻りましょう」
「うん」
アンリの気遣いに感謝しながら返事をする。しかし、私はみんなの輪に戻りながらも暗がりの先が気になってしょうがなかった。
私たちは南門へ向かっていた。城壁に沿って歩く道はまだ人通りが少なく、露に濡れた石畳が足裏にしっとりとした冷気を返す。
南門前の広場には、すでに騎士団が整列していた。鉄具のかすかな軋み、馬の吐く白い息。町の人々もぽつぽつと集まっている。遠巻きに見守る視線が、こちらへ静かに集まるのがわかった。
「聖女様だ」
囁きが風に乗って耳に届く。私は顔を上げ、軽く会釈した。帽子を脱ぎ、胸に手を当てる人が幾人もいた。小さな女の子が母親のスカートをぎゅっと握ったまま、私を上目遣いで見ている。目が合うと、彼女は慌てて会釈を返した。
門楼の下、ヴァルトが一歩前に出る。鎧の音はほとんどしないのに、そこに立っただけで空気が締まった気がした。
「南門から出立する」
低く、曖昧さのない声。皇帝の名代としての案内役が彼に委ねられていることを、あらためて実感する。
セルジュが短く号令をかける。先頭に斥候二騎、続いて護衛。私の馬車、その両翼に騎士。殿はセルジュ自身。ヴァルトは先頭近くに位置を取った。
門番が鎖を引く。巨大な門扉がゆっくり外へ開き、軋む音が胸の奥に響く。街の内側に残る人々が、一斉に頭を下げて見送った。
「御光があらんことを」
重なる祈りの声を背に、私たちは南門をくぐった。門が遠ざかるにつれて、街のざわめきが薄れ、風の音と車輪の響きが耳を満たしていく。街路樹の葉はまだ湿り気を帯び、朝の光を細かく跳ね返していた。私は帆布の隙間から一度だけ振り返る。塔の上の旗が、朝の風に小さく揺れた。
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午前の道中は静かだった。
カストルムを離れるほど、街道の両脇は広い畑に変わり、収穫の済んだ畝が整然と続く。遠くに小さな村が点々と浮かぶ。空は高く、薄くちぎれた雲がゆっくり流れていた。
「ノルデンに比べると、湿気が少なくて過ごしやすいですね」
向かいの席で景色を見ていたアンリが言う。
「確かに。朝晩は冷えるけど、昼はちょうどいいね」
「はい。トグに近づけば、昼の寒さはさらに和らぎます。……瘴気があるとあまり感じられないかもしれませんが」
「瘴気さえなければ、旅行日和って言うところだね」
私がそう言うと、アンリは困ったように、それでも優しく笑った。
すると、前に馬を走らせていたエディが、馬上からくるりと振り返る。
「ここまでは順調、順調! 聖女ちゃん、酔ってない?」
「平気。あなたこそ前を見て」
「へいへい。団長に怒られる前にね」
予言のように、セルジュの低い叱声が飛ぶ。
「エディ! 前を見ろ!」
「了解でーす」
軽口に、車内の空気がほんの少しほどけた。
少し経って、荷車の一団とすれ違った。麦の束を積んだ夫婦と、荷台に座る少年。母親が胸の前で小さく印を切り、こちらへ頭を下げる。ヴァルトは速度を落とし、短く声をかけた。
「北へ行くなら、街道から外れないように」
夫婦は「はい」と揃って返事をする。ヴァルトはそれ以上は言わない。彼の視線が一瞬だけ荷台の少年に落ちたが、すぐ前へ戻った。
「……逃れる人が増えているのですね」
アンリが小声で言う。私はうなずいた。遠くの村の煙が、いつもより低いように見えた。
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昼前、最初の小競り合いがあった。
「気配!」
斥候の声。藪ががさりと揺れ、牙の伸びた兎の魔獣が二体、犬型が一体飛び出した。赤茶の靄をまとっている。
「前へ!」
セルジュの号令と同時に騎士たちが動いた。私は反射的に両手を突き出す。透明な膜が馬車の前にふくらみ、突進してきた魔獣を弾く。膜の表で靄がぱっと散り、霧のように薄まっていった。
「任せろ!」
エディの矢が犬型の首を射抜く。だが矢が落ちるより先に、ヴァルトが踏み出していた。
盾で兎型魔獣を思いっきり弾き飛ばす。身体強化の魔法だろうか。魔力が身体の周りをうねっている気がする。宙に舞った胴体を待たず、もう一体の首を剣で断ち切る。返す刃で、射抜かれたはずの犬型まで突き伏せた。
「おい、お前……!」
射程線上に飛び出したヴァルトに対し、エディが舌打ち混じりに言いかけるが、彼は振り返らない。靄が風に溶けきるより早く、剣を払って鞘に戻していた。
ほんの数分で戦闘は終わった。
騎士たちは呼吸を整え、列を戻す。ノルデンの神官たちは、これ以上の同行は危険と判断し、カストルムで帰路につくことになったので、私とアンリで浄化をした。
「街道を出てすぐというのに」
アンリの声はわずかに硬い。私はうなずく。
「油断しないように、だね」
横目でチラリと見るとヴァルトは前だけを見ていた。強さに文句のつけようはない。でも、彼の動きには誰かに合わせる余地がなかった。その背中に、言葉にしない緊張が薄く揺れている。
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日が高くなるころ、街道脇の木陰で短い休憩をとった。荷の陰で作られた日陰は、思いのほか涼しい。パンの袋がほどかれ、干した果実がいくつか回ってくる。
「この町のパン、皮が香ばしいね」
私がちぎった切れ端を頬張ると、エディが鼻を鳴らした。
「カストルムのパン屋は外はパリッ、中はもっちりだね。なあ、団長?」
「よけいな口をきく前にさっさと食べろ」
セルジュは淡々としているが、手元のパンはしっかり減っている。
アンリは水袋を軽く掲げて私に渡しながら、低く囁いた。
「お疲れではありませんか?」
「少し。でも、大丈夫。アンリは?」
「元気いっぱいです」
「そんな淡々と言われても……ふふっ」
私が笑うと、アンリも目尻だけで笑った。
ヴァルトは少し離れたところで、街道の向こうを見ていた。ひたすら南を眺めている、というより、何かを考え込んでいるような顔だった。
午後、畑は途切れ、草地が増えた。道端の祈祷碑が等間隔で立っていて、誰かが新しい花を供えていった跡がある。私は帆布の隙間から手を伸ばし、通り過ぎざまにほんの一瞬だけ指先を合わせた。
「……マリ様」
向かいのアンリが小さな声で呼ぶ。私は首を傾げる。
「ヴァルト殿のこと、どう見ていますか」
「正確で律儀な人なんだろうな。たぶん、私たちのこともよく見てる。でも、近づけない感じ、近寄らせない感じがする」
「そう、ですか……」
アンリは何か考え込んでいるようだった。初めて見る表情。
「どうした?」
「いえ、少し気になったものですから」
もう一度ヴァルトを見る。彼の背中は、誰の手も借りないで立つ姿勢をしていて、なんだかそれが少しさみしく感じた。
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夕刻、小さな村が見えた。壁は土色にくすみ、屋根は傾いている。村人たちは道に出てきて、私たちを黙って見送った。
野営地は村から少し離れた草地に設けられ、焚き火がいくつも灯る。香草を焚いた煙が夜風に混じった。
私は火のそばで手を合わせ、浄化の光を点のように落とした。白い光が草地をそっと撫で、空気が一段軽くなった気がする。
そのとき、素足の小さな影がこちらに向かって駆けてきた。
「……聖女様! 来てくれたの?」
振り向くと、泥だらけの足の男の子が立っていた。息が上がって、頬が赤い。
「聖女様、魔獣こわいの。だから助けに来てくれてありがとう!」
深く頭を下げると、彼はくるりと背を向け、村へ走りかける——が、足がもつれて転びそうになる。
「おい」
いつの間にか近くにいたヴァルトが片腕で抱え上げ、土の上へそっと下ろした。
「門の中まで送ってくる」
それだけ言って、子どもと並んで闇へ消える。焚き火のはぜる音だけが残った。
アンリが私の横に腰を下ろす。
「……大丈夫ですか」
「泣かない。泣いても、たぶん何も変わらないから」
「……はい」
ふたりで火を見つめてしばらくすると、ヴァルトが村の方から戻ってきた。しばらくして、ヴァルトが戻ってくる。焚き火の向こうでセルジュと視線が交わると「村門は閉じた。見張りは交代で立つそうだ」
とぶっきらぼうに言った。
そして、焚き火の輪には加わらず、少し離れた暗がりへ足を向けた。背中だけが炎に照らされて、やがて影に溶けていきそうになる。
私は急いで立ち上がる。視界の端で白い手袋が動くのが見えたが、ヴァルトの方へ向かう。
「あの!」
ヴァルトは無言で振り返る。面倒くさそうな表情を少しも隠さない。
「さっきの子、大丈夫だったかな? おうちの方とは会えた?」
「ああ」
「あの……送ってくれてありがとう」
先ほどから表情一つ変わらない。眉間にシワが寄ったまま、だ。
「聖女殿が気にするほどのものではない。失礼」
そう遮るように言うとそのまま暗がりに消えて言ってしまった。
「マリ様……?」
追ってきたアンリが心配そうにこちらを覗く。
「ううん、大丈夫。なんだか余計なことを言っちゃったかも」
私が無理やり笑顔を作ると、アンリは困った顔をしていた。
「ベルがカストルムで焼き菓子を買っていたようです。早く戻らないとエディに食べられてしまいそうなので、戻りましょう」
「うん」
アンリの気遣いに感謝しながら返事をする。しかし、私はみんなの輪に戻りながらも暗がりの先が気になってしょうがなかった。
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