文字の大きさ
大
中
小
67 / 878
連載
手土産⑦
朝早めにパーティーハウスを出る。
「おはようございます」
本日はロッシュさんとシュタインさんだ。
晃太とビアンカとルージュと一緒に向かう。
赤い旗がはためくギルド。大行列だ。
凄い視線が来る。
そそくさとギルドに入る。
「ミズサワ様、お待ちしておりました」
リティアさんのスマイル炸裂。
言われるがまま、倉庫でドロップ品を出す。
解体主任さんや職員さん、ロッシュさんとシュタインさんの口が閉まらない。
「さあ、ミズサワ様、こちらへどうぞ」
はいはい。
いつもの応接間には、あらかじめタージェルさんが待機している。まあ、ニコニコだ。
ロッシュさんとシュタインさんは、ドアの外で待機してくれている。
『時間、かかるのです?』
「そうやろうね。前回より多いしね。ちょっと待ってね。美味しいもんば食べる為やからね」
『仕方ないのです』
『分かったわ。神様に差し上げた、果実のたくさん乗ったやつがいいわ』
「はいはい」
よく見てるわ。
はい、期待に満ちたキラキラお目目が可愛くて、注文すると決めたダメな飼い主です。
「まず、宝飾品、宝石、武器類、楽器類の査定でございます」
20階ダイヤモンド 指輪 ブレスレット ネックレス 198万
ダイヤモンド 粒1 小粒5 180万
ファイヤオパール 指輪 ピアス ブローチ 245万
ルビー・ダイヤモンド イヤリング×2 ネックレス 170万
ペリドット 指輪 髪飾り イヤリング 140万
サファイア 粒2 小粒2 170万
ローズクォーツ・ダイヤモンド・真珠 イヤリング ペンダント 138万
21階バイオリン2丁 160万
パープルサファイア タイピン ネクタイピン 340万
アクアマリン 中粒1 小粒5 175万
杖 300万
22階真珠・ダイヤモンド イヤリング ペンダント 250万
真珠 粒20 小粒10 230万
翡翠・ダイヤモンド 指輪 ピアス 200万
イエローダイヤモンド 指輪 ペンダント 380万
エメラルド 粒2 小粒5 290万
23階盾・斧・ロングソード・ショートソード・ナイフ×2 300万
アメジスト・真珠 ブローチ 髪飾り ネックレス 320万
24階パライバトルマリン・ダイヤモンド 指輪 ブローチ 髪飾り ネックレス 880万
グランドピアノ 1000万
「合計6066万でございます」
あははははん、すごかあ。
グランドピアノが1000万。最上階、すごかあ。
買い取り価格がこれなら、販売価格はおいくらになるの?
書類にサイン、魔力を流す。
「売れます?」
「ほほほ、ギルドの宝飾品のフロアご覧になります?」
いい笑顔のリティアさん。
「楽器はすべて完売ですよ。武器類も冒険者達からの問い合わせも殺到しております。ほほほほほほ」
「ヨカッタデスネー」
「素材もあちこちのギルドから問い合わせもすごいのですよ」
亀の甲羅は鼈甲もあるが、丈夫な鎧や盾になる。セイレーンの羽を使った織物は幻覚から身を守る効果がある。シーサーペントの鱗は何枚か重ねると、強度が跳ね上がるため、盾に使用される。魔力を操る戦闘職の人が使えば魔法も弾き返すこともあると。牙は矢じりになり、鉄の鎧も簡単に貫通する。
「それからですね」
「あ、もう、よか、です」
お腹一杯です。
「では、他の査定でございます。バーザタイラントですが」
蛇、シャットアウト。
長々続く。
「……………21階のグラスゴーンキャトル。牛乳瓶250、生クリーム280………………」
長いなあ。
あのガラスみたいな角は、ガラスの材料になる。混ぜると綺麗な色が入ると。
「……………ホワイトアルメナの粉、一つ10万……………24階、シーサーペント………………鱗一枚、小は1万、中は3万、大は7万、牙は一つ3500………………」
長いなあ。
「合計2億35800230でございます」
ニオク越えたよ。
『果実の乗ったのが、食べれるのです?』
『食べれる?』
「たくさん注文しちゃるけんね。明日以降ね」
え、合計いくらやねん?
「2億96460230でございます」
すごい額だよ。
「今回億を越えましたので、白金貨でよろしいでしか?」
「白金貨?」
「大型の取引で使われる硬貨です。一枚、大金貨100枚です」
「一枚一億ですか?」
「はい」
怖かあ。
晃太と家族会議。
「それでお願いします」
「はい、承知しました」
リティアさんが、準備。大金貨より一回り大きな白い金貨。プラチナみたいだ。
「ミスリルを含んでいますので」
「そうですか」
枚数数えて、大丈夫。100万は私と晃太の冒険者ギルドカードに。ケーキはたくさん買ってあげよう。
「あのミズサワ様、薬師ギルドの件ですが」
「はい」
「実は薬師ギルドの方もミズサワ様とお会いしたかったみたいで。今からお時間ありますか?」
「ええ、もちろんです」
薬師ギルドからとは。あの目玉効果かな? なんせ、400位あったし。手土産効果かな?
企画書、見てもらおう。いや、まず、抗生剤や解熱剤の委託ができるかどうかだ。
タージェルさんとリティアさんが一旦退室。他の職員さんが、お茶を出してくれた。
いい香り。
ふうふうしながら飲む。
ほどなくして、リティアさんが戻って来る。
「お待たせしました。薬師ギルドマスターです」
あの山賊、失礼、眼帯の薬師ギルドマスターさん。
「改めて薬師ギルドマスター、ダワーと申します」
「ミズサワです」
ダワーさんね。
ソファーに座る。
「単刀直入にお聞きする。テーラーのパーカーの娘を救った薬に関してではありませんか?」
「え? なんで?」
分かっているの?
「これだけの従魔を引き連れて毎日通っていたのが、噂にならないとでも」
「あ、そうですね」
「皆、噂しておったそうです。パーカーの下の娘も、始祖神様に召されると。だが、貴女が通い出してみるみるうちに娘は回復に向かった。何かしたと思うのが当然でしょう。孤児院の子供にも与えたそうですな。テイマーの魔法の薬で助かったと、孤児達が話しておりましたからね」
人の口に戸は立てられぬ、か。ましてや子供だもんね。
「あの、実は、その薬のことでですね。ご相談なんです」
「ぜひ、お聞かせください」
「あの薬は未成人、つまり子供用の薬で、熱を一時的に下げるものと、熱の原因をたたく効果のものがあり、この二種類をダイアナちゃん、パーカーさんの娘さんに投薬しました」
ダワーさんは山賊顔で真面目に聞いてくれている。
「ただ、あれを作るのは個人では大変で。今後の事を考えると薬師ギルドの皆様のお力が必要不可欠なんです。それに、まだパーカーさんの娘さんや孤児院の子供の様に、これを必要としている子がたくさんいると思うのですが、私達ではどうしようもなくて。そこで素人考えで、このような考えを」
企画書を出そうとアイテムボックスに手を入れる。
『ねえ、ユイ、さっきからそこに隠れている雄の気配が変わったわ』
「はい?」
なにそれ?
晃太も振り返る。応接間には廊下側とは別にもう1つのドアがある。ルージュを鼻先は、そのドアを示している。
『敵意もないから、ほっといたのです』
『ずっといるわよ』
「えー」
「ミズサワ様、どうされました?」
ダワーさんが首を傾げて聞いてくる。
「あの、そちらに、男性がいらっしゃいます?」
私の言葉に、びしり、とリティアさんが固まった。
「おはようございます」
本日はロッシュさんとシュタインさんだ。
晃太とビアンカとルージュと一緒に向かう。
赤い旗がはためくギルド。大行列だ。
凄い視線が来る。
そそくさとギルドに入る。
「ミズサワ様、お待ちしておりました」
リティアさんのスマイル炸裂。
言われるがまま、倉庫でドロップ品を出す。
解体主任さんや職員さん、ロッシュさんとシュタインさんの口が閉まらない。
「さあ、ミズサワ様、こちらへどうぞ」
はいはい。
いつもの応接間には、あらかじめタージェルさんが待機している。まあ、ニコニコだ。
ロッシュさんとシュタインさんは、ドアの外で待機してくれている。
『時間、かかるのです?』
「そうやろうね。前回より多いしね。ちょっと待ってね。美味しいもんば食べる為やからね」
『仕方ないのです』
『分かったわ。神様に差し上げた、果実のたくさん乗ったやつがいいわ』
「はいはい」
よく見てるわ。
はい、期待に満ちたキラキラお目目が可愛くて、注文すると決めたダメな飼い主です。
「まず、宝飾品、宝石、武器類、楽器類の査定でございます」
20階ダイヤモンド 指輪 ブレスレット ネックレス 198万
ダイヤモンド 粒1 小粒5 180万
ファイヤオパール 指輪 ピアス ブローチ 245万
ルビー・ダイヤモンド イヤリング×2 ネックレス 170万
ペリドット 指輪 髪飾り イヤリング 140万
サファイア 粒2 小粒2 170万
ローズクォーツ・ダイヤモンド・真珠 イヤリング ペンダント 138万
21階バイオリン2丁 160万
パープルサファイア タイピン ネクタイピン 340万
アクアマリン 中粒1 小粒5 175万
杖 300万
22階真珠・ダイヤモンド イヤリング ペンダント 250万
真珠 粒20 小粒10 230万
翡翠・ダイヤモンド 指輪 ピアス 200万
イエローダイヤモンド 指輪 ペンダント 380万
エメラルド 粒2 小粒5 290万
23階盾・斧・ロングソード・ショートソード・ナイフ×2 300万
アメジスト・真珠 ブローチ 髪飾り ネックレス 320万
24階パライバトルマリン・ダイヤモンド 指輪 ブローチ 髪飾り ネックレス 880万
グランドピアノ 1000万
「合計6066万でございます」
あははははん、すごかあ。
グランドピアノが1000万。最上階、すごかあ。
買い取り価格がこれなら、販売価格はおいくらになるの?
書類にサイン、魔力を流す。
「売れます?」
「ほほほ、ギルドの宝飾品のフロアご覧になります?」
いい笑顔のリティアさん。
「楽器はすべて完売ですよ。武器類も冒険者達からの問い合わせも殺到しております。ほほほほほほ」
「ヨカッタデスネー」
「素材もあちこちのギルドから問い合わせもすごいのですよ」
亀の甲羅は鼈甲もあるが、丈夫な鎧や盾になる。セイレーンの羽を使った織物は幻覚から身を守る効果がある。シーサーペントの鱗は何枚か重ねると、強度が跳ね上がるため、盾に使用される。魔力を操る戦闘職の人が使えば魔法も弾き返すこともあると。牙は矢じりになり、鉄の鎧も簡単に貫通する。
「それからですね」
「あ、もう、よか、です」
お腹一杯です。
「では、他の査定でございます。バーザタイラントですが」
蛇、シャットアウト。
長々続く。
「……………21階のグラスゴーンキャトル。牛乳瓶250、生クリーム280………………」
長いなあ。
あのガラスみたいな角は、ガラスの材料になる。混ぜると綺麗な色が入ると。
「……………ホワイトアルメナの粉、一つ10万……………24階、シーサーペント………………鱗一枚、小は1万、中は3万、大は7万、牙は一つ3500………………」
長いなあ。
「合計2億35800230でございます」
ニオク越えたよ。
『果実の乗ったのが、食べれるのです?』
『食べれる?』
「たくさん注文しちゃるけんね。明日以降ね」
え、合計いくらやねん?
「2億96460230でございます」
すごい額だよ。
「今回億を越えましたので、白金貨でよろしいでしか?」
「白金貨?」
「大型の取引で使われる硬貨です。一枚、大金貨100枚です」
「一枚一億ですか?」
「はい」
怖かあ。
晃太と家族会議。
「それでお願いします」
「はい、承知しました」
リティアさんが、準備。大金貨より一回り大きな白い金貨。プラチナみたいだ。
「ミスリルを含んでいますので」
「そうですか」
枚数数えて、大丈夫。100万は私と晃太の冒険者ギルドカードに。ケーキはたくさん買ってあげよう。
「あのミズサワ様、薬師ギルドの件ですが」
「はい」
「実は薬師ギルドの方もミズサワ様とお会いしたかったみたいで。今からお時間ありますか?」
「ええ、もちろんです」
薬師ギルドからとは。あの目玉効果かな? なんせ、400位あったし。手土産効果かな?
企画書、見てもらおう。いや、まず、抗生剤や解熱剤の委託ができるかどうかだ。
タージェルさんとリティアさんが一旦退室。他の職員さんが、お茶を出してくれた。
いい香り。
ふうふうしながら飲む。
ほどなくして、リティアさんが戻って来る。
「お待たせしました。薬師ギルドマスターです」
あの山賊、失礼、眼帯の薬師ギルドマスターさん。
「改めて薬師ギルドマスター、ダワーと申します」
「ミズサワです」
ダワーさんね。
ソファーに座る。
「単刀直入にお聞きする。テーラーのパーカーの娘を救った薬に関してではありませんか?」
「え? なんで?」
分かっているの?
「これだけの従魔を引き連れて毎日通っていたのが、噂にならないとでも」
「あ、そうですね」
「皆、噂しておったそうです。パーカーの下の娘も、始祖神様に召されると。だが、貴女が通い出してみるみるうちに娘は回復に向かった。何かしたと思うのが当然でしょう。孤児院の子供にも与えたそうですな。テイマーの魔法の薬で助かったと、孤児達が話しておりましたからね」
人の口に戸は立てられぬ、か。ましてや子供だもんね。
「あの、実は、その薬のことでですね。ご相談なんです」
「ぜひ、お聞かせください」
「あの薬は未成人、つまり子供用の薬で、熱を一時的に下げるものと、熱の原因をたたく効果のものがあり、この二種類をダイアナちゃん、パーカーさんの娘さんに投薬しました」
ダワーさんは山賊顔で真面目に聞いてくれている。
「ただ、あれを作るのは個人では大変で。今後の事を考えると薬師ギルドの皆様のお力が必要不可欠なんです。それに、まだパーカーさんの娘さんや孤児院の子供の様に、これを必要としている子がたくさんいると思うのですが、私達ではどうしようもなくて。そこで素人考えで、このような考えを」
企画書を出そうとアイテムボックスに手を入れる。
『ねえ、ユイ、さっきからそこに隠れている雄の気配が変わったわ』
「はい?」
なにそれ?
晃太も振り返る。応接間には廊下側とは別にもう1つのドアがある。ルージュを鼻先は、そのドアを示している。
『敵意もないから、ほっといたのです』
『ずっといるわよ』
「えー」
「ミズサワ様、どうされました?」
ダワーさんが首を傾げて聞いてくる。
「あの、そちらに、男性がいらっしゃいます?」
私の言葉に、びしり、とリティアさんが固まった。
感想 867
あなたにおすすめの小説
「今日限りで君を解雇する」――20年仕えた地味なメイドですが、料理も手紙も暗殺者対策も私がやっていました
「エナメル。今日限りで君を解雇する」
20年仕えた屋敷をクビになった、地味なエルフのメイド・エナメル。
だが、晩餐会の料理も、侯爵への手紙も、調度品の手配も、屋敷を狙う暗殺者の処理も――すべて彼女が陰で支えていたものだった。
エナメルが去ったあと、屋敷は少しずつ綻び始める。
一方の本人は、そんなことも知らず。
「さて。次はどこで雇っていただきましょう」
地味で目立たないベテランメイド・エナメルの、新しい奉公先探しが始まる。
※本作は『メイドのエナメルは今日も静かにお仕えします』シリーズの第1作です。本作単体でもお楽しみいただけます。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
捨てられた幼女ですが、公爵家に拾われたら家族みんなの愛が重すぎました
幼い頃に母親に捨てられ、孤児院で暮らしていた少女リリア。
「役に立たなければ、また捨てられる」
そう思い、いつも“いい子”でいようとしていた彼女は、ある日、公爵家の馬車を助けたことをきっかけに屋敷へ招かれる。
そこで待っていたのは、娘に甘すぎる公爵夫妻に、妹を構いたがるレオン、そしてリリアを甘やかしたい使用人たち。
戸惑いながらも、少しずつ公爵家に居場所を見つけていくリリア。やがて夫妻から「私たちの娘になってほしい」と告げられて――。
これは、捨てられないために“いい子”でいようとしていた少女が、重すぎるほどの愛情に包まれ、本当の家族を見つけていく物語。
初夜のあとに愛する人がいると言われたので祝福で身体の時間を一日戻しました
夫婦となって初めて迎えた夜、セレンティアは夫リオールから「俺には、愛する人がいる」と告げられる。
彼が初夜を済ませた理由は、三年後に白い結婚として婚姻無効を申し立てられないようにするためだった。
けれどリオールは知らなかった。セレンティアの祝福《一日回帰》が、自分自身の身体にも使えることを。
セレンティアは自分の身体の時間を一日前へ戻し、三年間、侯爵家の妻として務めを果たすことを決める。
夫に愛されるためではない。三年後、白い結婚としてこの家を出ていくために。
番の証が出ないと捨てられたので、神様に確かめてもらいます
「番の証が出ぬからだ」
和平のために獣人国へ嫁いで四年。獣王ガイウス様との儀式は三度、三度とも証は出ませんでした。「人間の娘では神は認めぬ」——そう言われて、離宮へ。
雨漏りの下で眠り、井戸をさらい、畑を耕して。泣かなかったのは強いからではありません。獣人には、匂いでわかってしまうから。
嫁ぐ前に三年かけて読み込んだ婚姻法典。その第四章に、こうありました。
『既に誓いを結びたる者が、重ねて他者と誓いを立てんとする時、神は後の誓いを認めず』
——証が出なかったのは、わたしが人間だからではない。
長老会に申し立てたのは、解釈の確認だけ。わたしは悪くない、とは一言も書きませんでした。
遡誓の儀で神殿に浮かんだのは、六年前の秋の「成立」と、わたしの三度の「不成立(重複)」でした。
飛べないと捨てられたので、竜ごと出て行きます
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。
ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。
夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。
竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。
離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。
三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。
怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。
そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。
土下座する王妃の座などいらないので、冒険者に転職します。
「私が愛しているのはエルナ。君だけだ」
エルナは自分の夫でありハーメルン王国の国王であるカメルを愛していた。
彼がどれほど自分より隣国の聖女を優先しようとも。
結婚して二年が経っても初夜を迎えたことがなかろうとも。
しかし。
「エルナ。君に失望した。聖女を陥れていじめるとはな。罪を認め、ひざまずいて謝罪するように」
一年に一度の建国記念宴会であり結婚記念日に、カメルはすべての貴族や外国の使節団が見ている前で、エルナに身に覚えのない罪を認めろと断罪した。
愛が壊れるのは一瞬。
だからこそ、エルナはその場でひざまずいた。頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「聖女を陰謀にかけた大罪人エルナは、この時間をもって王妃の座から退き、平民となりますことをお許しください。聖女様とどうかお幸せに」
*ゆるい設定です。不快に思われる方はブラウザバックをお願いします。
婚約破棄を受け入れた瞬間、王太子殿下が青ざめました
王都でもっとも華やかな春の夜会。その中央で、王太子エドワードは冷ややかな目を婚約者へ向けていた。
「リリアーナ・フォン・アルベルト公爵令嬢。君との婚約を、ここで破棄する」
会場が一瞬で静まり返る。
リリアーナは淡い金髪を揺らし、静かに王太子を見つめ返した。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「理由など明白だ。君は嫉妬深く、心が狭い。それに比べ、私は真実の愛を見つけた」
そう言ってエドワードが隣へ引き寄せたのは、男爵令嬢のセシリアだった。