文字の大きさ
大
中
小
231 / 877
連載
それぞれの思い③
え、実の兄もなの?
「今から10年前にユリアレーナ先代国王が死去。当時成人したばかりのフェリアレーナ様が初めて公の場所に出たのは、先代国王の葬儀でした」
ため息をつくエレオノーラ様。
「葬儀にはクレイ3世とディーン様も参列されたのですが。美しいフェリアレーナ様をディーン様が気に入ってしまったのです」
? ? ?
「え? ディーン皇帝はガーガリア妃のお兄さんならかなり歳が離れてません?」
違う?
「そうです。ディーン皇帝とは28も離れており、実の息子より若いフェリアレーナ様に熱を上げたのです。当然、クレイ3世に知られたら只ではすみません。アルティーナ帝国は側室の数に制限があり、既に制限人数の側室を持っていたので、フェリアレーナ様は妾の位置になります。しかし、友好国の第一王位継承権を持つ王女を、妾になんてしたら、クレイ3世はディーン様にも、容赦はないでしょう」
エレオノーラ様が息をつき、続ける。
「間を置かず、クレイ3世も死去されました。ディーン皇帝の誕生です。ディーン様はまずしたことは、ガーガリア妃を利用することです。すぐに死なせず、フェリアレーナ様を手に入れる為の布石にしたのです」
ガーガリア妃が気の毒レベルじゃなくなってきた。
「どうしてガーガリア妃を利用しようと?」
「それは移動手段です」
「移動?」
アルティーナとユリアレーナを結ぶのは、航路だけ。その輸送船は魔道具で、魔道船だ。それに積み荷をのせて往復しているが、これには厳重なチェックが行われた、密輸や密入国なんて不可能。この魔道船しか、アルティーナとユリアレーナを繋ぐ手段がないのは、海にも魔物がいるからだ。一番安全な航路を、魔道船でしか往復できない。よくニュースで見たけど、小さな木造船で来るなんて、自殺行為だ。
その輸送船で、唯一ノーチェックなのが、ガーガリア妃の荷物。勿論重要文書的なものもあるけど、それはごく僅かなスペースで、大部分はガーガリア妃の荷物が占めている。そこにフェリアレーナ様を誘拐して運ぶそうだ。
「誘拐?」
え? 出来るのそんなこと?
「ええ、その為にガーガリア様は生かされています」
本来、王族や高位貴族の誘拐なんて不可能だ。特にフェリアレーナ様はセレドニオ王の愛娘。最強の警備陣が常に張り付いている。
「ガーガリア様が生きていないと、そのスペースを使って、人を密入国なんてさせられませんからね」
なるほど。
始めは、フェリアレーナ様を、正式に側室にって打診があったそうだ。クレイ3世の喪があけた時に。身体のあまり強くなかった側室も亡くなって、言葉は悪いが空きができたから。
当然、セレドニオ王は突っぱねた。フェリアレーナ様は、薬物中毒でおかしくなったガーガリア妃の指示でハルスフォン伯爵の嫡男セザール様と婚約していたし、当時マーファでお勉強中だったからだ。
それも邪魔され、次も邪魔され、今回三度目の正直だ。
もちろんそのフェリアレーナ様をディーン皇帝の側室にって話は、アルティーナ内でも反発があった。皆、演技とは知らないが、我が儘に振る舞っているガーガリア妃を迎え入れてくれている、ユリアレーナに悪いだろう、という考えだ。そして最も反対したのは、ディーン皇帝とガーガリア妃の生母だ。あのクレイ3世の正室を努めた女性だ、ただの正室ではない。アルティーナ帝国の女傑マクデレーナ皇太后は、クレイ3世の死後、相続した遺産を使い起業して大成功していた。マクデレーナ皇太后は、クレイ3世の側室を全て引き連れていき、側室達も優秀だったため、その助けもあり事業は拡大。その利益で慈善事業を率先し、飢饉で苦しむ村や町には惜しげもなく支援。子供達の読み書きの為に無料教室を足がかりに、学園まで設立。奨励金の敷居を下げたり、誰でも通えるように門を開いた。現在、ディーン皇帝よりもアルティーナ帝国内で大人気だ。
ディーン皇帝もこのマクデレーナ皇太后だけには頭が上がらない。クレイ3世が存命中は、内助の功に徹し、ガーガリア妃に対する処遇に口を出せなかったマクデレーナ皇太后が行動に移した。
抑圧から解放されたディーン皇帝に、傲慢で女狂い気配が出てきたのを感じたマクデレーナ皇太后は、徹底的にフェリアレーナ様の側室入りを反対。それはそうだ、自身の夫や、その父、祖父がどれだけの苦労をしたのか、間近で見ていたのだから。全ての原因は4代前の皇帝の負債なのだから。クレイ3世なりに、守り抜いたものを、壊させるわけにはいかない。アルティーナ帝国に対するユリアレーナ国民感情は悪くなる一方だ。ガーガリア妃が薬物中毒で狂人ぶりに拍車がかかり、多額の税を使いだしてからは更に、だ。そしてアルティーナ帝国内でも皇室に対して、反感を持つものが現れていた。古くから国交があるユリアレーナに、なんで我が儘皇女を送り、黙ったままなのかと。これでもし、無理やりフェリアレーナ様を側室に入れたら、信頼失墜どころの話ではなくなる。それに今、ユリアレーナに滞在している駐在員は、全てディーン皇帝の息がかかり、ガーガリア妃を擁護し、やりたい放題だ。いい例は先日のギラギラスーツね。
「今、ユリアレーナとアルティーナの国民感情がよくありません。もし、これでフェリアレーナ様が誘拐、それがディーン皇帝の指示だと分かれば、爆発してしまいます」
フェリアレーナ様は、ユリアレーナでは絶大な人気がある。やっと三度目の正直で、セザール様と結婚できるのに。
「少なからず小競り合いはあるでしょう。ユリアレーナとアルティーナで。アルティーナ内では、反発だけではすまない」
ユリアレーナ王室とマクデレーナ皇太后が最も恐れていることだ。
「それで傷つくのは、力のない民です。私達はそれをどうしても防ぎたい。無事にフェリアレーナ様を、ハルスフォン伯爵様の元に送り出したいのです」
エレオノーラ様の顔にすがるような表情が浮かぶ。
「もう、この輿入れが最後のチャンスなのです。フェリアレーナ様にとっても、ディーン皇帝にとっても」
「最後?」
「はい。移動手段がガーガリア妃の荷物に紛れこませるというのは説明しました。その荷物を運べるのが、後僅かなのです」
エレオノーラ様が息をつく。
「先日。無事に天災時に受けた支援を返還することができ、正式にガーガリア様がアルティーナに戻れることになったのです」
おお、すごい。あら、まだ少し掛かりそうじゃなかったっけ?
「ふふ、貴女は顔に疑問が出る方ですね」
サエキ様がクスクス笑う。は、恥ずかしいなあ。
「確かにあと5年掛かりそうでしたが、ある優秀な冒険者が、国に転移門を献上してくれましてね」
あの折り畳み傘?
「アルティーナ帝国の転移門は2つ。以前は他にも対の物が2つありましたが、4代前の皇帝が過度に使いすぎて破損しているんです。なので、アルティーナはその献上された転移門が欲しかった。始めはタダで寄越せと言ってきましたが、こちらも負けてられませんからね」
サエキ様が意味深に笑う。
「ふっかけるだけ、ふっかけてアルティーナ帝国に売り、それを返済に宛て、綺麗になりました」
………………いくらで売ったの、あれ?
サエキ様から、エレオノーラ様に説明が変わる。
「それにより、ガーガリア様はアルティーナに帰還です。マクデレーナ上皇妃の元で、静養することが決まりました。しかし、ガーガリア妃がいなくなれば、フェリアレーナ様を運ぶ手段が断たれてしまいます」
ああ、ノーチェックなのは、ガーガリア妃の荷物だけだったね。そこにフェリアレーナ様を隠して運ぶんだ。
でも、そう簡単には行かないと思うけど。もし、フェリアレーナ様が誘拐されたら、そのマクデレーナ皇太后は真っ先にディーン皇帝を疑って、ありとあらゆる手を尽くして探し出すはず。もし、それでフェリアレーナ様が見つかったら。
血の雨が降る?
私の頭から血の落ちる音が。
サエキ様が続ける。
「ディーン皇帝は、クレイ3世からの抑圧から離れて、たがが外れています。抑圧されるだけ、抑圧された中で、どうしても欲したのがフェリアレーナ様です。しかし、これは許されない。最終的に傷つき苦しむのは力のない民です。本来私は王室関連には関わらないようにしているのですが、今回ばかりはそうはいっていれなくなりました」
サエキ様は息をつく。
「私はユリアレーナに籍を置いていますが、アルティーナにも大事な友がいます。アルティーナ内もおそらく混乱するでしょう。彼らはそれを対応しなくてはならない。下手をしたら命を落としかねない。フェリアレーナ様、ユリアレーナの民、そして私は彼らも守りたい。最も最良なのは、無事にフェリアレーナ様が、ハルスフォン様の元にたどり着くことです。ここで、貴女に護衛を依頼したい理由が出てきます」
そう、そこ。ここまで分かっていて、護衛なしでマーファに行くなんて、襲ってくださいって言っているようだ。
「元々、フェリアレーナ様の輿入れ道中の護衛は白騎士の精鋭、オスヴァルトを含めた赤騎士の精鋭、黒騎士のハンターウルフ隊、そしてマーファの騎士達でしたが」
サエキ様が苦笑い。
「ガーガリア妃がその護衛を反対したんですよ。側室風情の子が、血税使って輿入れなど、とね。1人で行け、裸足で行けと」
うわあ。
「当然国王が大激怒。向こうの大使やら出てきてそれは一触即発状態になり、フェリアレーナ様が自ら言いました」
首都を守る騎士様のお手を煩わせる訳にはまいりません。私は、ハルスフォン様が遣わしてくれる、マーファの皆様を信じています。
「で、フェリアレーナ様の護衛が減ることになりました。本来なら100人以上の騎士で護衛でしたが、マーファから来る25名の騎士だけです」
「それで、私に護衛を?」
「そうです。ガーガリア妃の帰還は、フェリアレーナ様がマーファへの移動中にされるのです。その輿入れ道中がフェリアレーナ様を誘拐する最後のチャンスですからね」
難しいけど、とにかくフェリアレーナ様を、セザール様の元に無事に送り届けたら、万歳、万歳なんだね。国の難しい事は、任せよう。
エレオノーラ様とカトリーナ様は、無事にフェリアレーナ様を嫁がせたい。そして、本来のガーガリア妃を知っている為に、生母であるマクデレーナ皇太后の元に無事に返したい。特にエレオノーラ様はカルム王子の件で、責任を感じているそうだ。当時、カトリーナ様はジークフリード様を妊娠していて、身動きが取れなかった。エレオノーラ様が何度かお見舞いに行ったが、帝国のベテランメイド達から、お体に触りますと、断られていた。エレオノーラ様は、ガーガリア妃が信頼していたベテランメイド達を信じていた。だが、結果はあれだ。何故もっと踏み込まなかったのかと、今でもエレオノーラ様は後悔している。そうすれば、ガーガリア妃も、ああはならなかったと。綺麗な顔に、浮かび上がる後悔の影は偽りではない。
よし、私はできることをするだけ。それにセザール様が言ってた。
これで彼女にふさわしい花嫁衣装を準備できます。
あれは嘘やない。
本当にフェリアレーナ様を想っていた顔や。
ハルスフォン伯爵様には色々お世話になっている。
私ができること。
「そのお話、お引き受けさせて頂きます」
「今から10年前にユリアレーナ先代国王が死去。当時成人したばかりのフェリアレーナ様が初めて公の場所に出たのは、先代国王の葬儀でした」
ため息をつくエレオノーラ様。
「葬儀にはクレイ3世とディーン様も参列されたのですが。美しいフェリアレーナ様をディーン様が気に入ってしまったのです」
? ? ?
「え? ディーン皇帝はガーガリア妃のお兄さんならかなり歳が離れてません?」
違う?
「そうです。ディーン皇帝とは28も離れており、実の息子より若いフェリアレーナ様に熱を上げたのです。当然、クレイ3世に知られたら只ではすみません。アルティーナ帝国は側室の数に制限があり、既に制限人数の側室を持っていたので、フェリアレーナ様は妾の位置になります。しかし、友好国の第一王位継承権を持つ王女を、妾になんてしたら、クレイ3世はディーン様にも、容赦はないでしょう」
エレオノーラ様が息をつき、続ける。
「間を置かず、クレイ3世も死去されました。ディーン皇帝の誕生です。ディーン様はまずしたことは、ガーガリア妃を利用することです。すぐに死なせず、フェリアレーナ様を手に入れる為の布石にしたのです」
ガーガリア妃が気の毒レベルじゃなくなってきた。
「どうしてガーガリア妃を利用しようと?」
「それは移動手段です」
「移動?」
アルティーナとユリアレーナを結ぶのは、航路だけ。その輸送船は魔道具で、魔道船だ。それに積み荷をのせて往復しているが、これには厳重なチェックが行われた、密輸や密入国なんて不可能。この魔道船しか、アルティーナとユリアレーナを繋ぐ手段がないのは、海にも魔物がいるからだ。一番安全な航路を、魔道船でしか往復できない。よくニュースで見たけど、小さな木造船で来るなんて、自殺行為だ。
その輸送船で、唯一ノーチェックなのが、ガーガリア妃の荷物。勿論重要文書的なものもあるけど、それはごく僅かなスペースで、大部分はガーガリア妃の荷物が占めている。そこにフェリアレーナ様を誘拐して運ぶそうだ。
「誘拐?」
え? 出来るのそんなこと?
「ええ、その為にガーガリア様は生かされています」
本来、王族や高位貴族の誘拐なんて不可能だ。特にフェリアレーナ様はセレドニオ王の愛娘。最強の警備陣が常に張り付いている。
「ガーガリア様が生きていないと、そのスペースを使って、人を密入国なんてさせられませんからね」
なるほど。
始めは、フェリアレーナ様を、正式に側室にって打診があったそうだ。クレイ3世の喪があけた時に。身体のあまり強くなかった側室も亡くなって、言葉は悪いが空きができたから。
当然、セレドニオ王は突っぱねた。フェリアレーナ様は、薬物中毒でおかしくなったガーガリア妃の指示でハルスフォン伯爵の嫡男セザール様と婚約していたし、当時マーファでお勉強中だったからだ。
それも邪魔され、次も邪魔され、今回三度目の正直だ。
もちろんそのフェリアレーナ様をディーン皇帝の側室にって話は、アルティーナ内でも反発があった。皆、演技とは知らないが、我が儘に振る舞っているガーガリア妃を迎え入れてくれている、ユリアレーナに悪いだろう、という考えだ。そして最も反対したのは、ディーン皇帝とガーガリア妃の生母だ。あのクレイ3世の正室を努めた女性だ、ただの正室ではない。アルティーナ帝国の女傑マクデレーナ皇太后は、クレイ3世の死後、相続した遺産を使い起業して大成功していた。マクデレーナ皇太后は、クレイ3世の側室を全て引き連れていき、側室達も優秀だったため、その助けもあり事業は拡大。その利益で慈善事業を率先し、飢饉で苦しむ村や町には惜しげもなく支援。子供達の読み書きの為に無料教室を足がかりに、学園まで設立。奨励金の敷居を下げたり、誰でも通えるように門を開いた。現在、ディーン皇帝よりもアルティーナ帝国内で大人気だ。
ディーン皇帝もこのマクデレーナ皇太后だけには頭が上がらない。クレイ3世が存命中は、内助の功に徹し、ガーガリア妃に対する処遇に口を出せなかったマクデレーナ皇太后が行動に移した。
抑圧から解放されたディーン皇帝に、傲慢で女狂い気配が出てきたのを感じたマクデレーナ皇太后は、徹底的にフェリアレーナ様の側室入りを反対。それはそうだ、自身の夫や、その父、祖父がどれだけの苦労をしたのか、間近で見ていたのだから。全ての原因は4代前の皇帝の負債なのだから。クレイ3世なりに、守り抜いたものを、壊させるわけにはいかない。アルティーナ帝国に対するユリアレーナ国民感情は悪くなる一方だ。ガーガリア妃が薬物中毒で狂人ぶりに拍車がかかり、多額の税を使いだしてからは更に、だ。そしてアルティーナ帝国内でも皇室に対して、反感を持つものが現れていた。古くから国交があるユリアレーナに、なんで我が儘皇女を送り、黙ったままなのかと。これでもし、無理やりフェリアレーナ様を側室に入れたら、信頼失墜どころの話ではなくなる。それに今、ユリアレーナに滞在している駐在員は、全てディーン皇帝の息がかかり、ガーガリア妃を擁護し、やりたい放題だ。いい例は先日のギラギラスーツね。
「今、ユリアレーナとアルティーナの国民感情がよくありません。もし、これでフェリアレーナ様が誘拐、それがディーン皇帝の指示だと分かれば、爆発してしまいます」
フェリアレーナ様は、ユリアレーナでは絶大な人気がある。やっと三度目の正直で、セザール様と結婚できるのに。
「少なからず小競り合いはあるでしょう。ユリアレーナとアルティーナで。アルティーナ内では、反発だけではすまない」
ユリアレーナ王室とマクデレーナ皇太后が最も恐れていることだ。
「それで傷つくのは、力のない民です。私達はそれをどうしても防ぎたい。無事にフェリアレーナ様を、ハルスフォン伯爵様の元に送り出したいのです」
エレオノーラ様の顔にすがるような表情が浮かぶ。
「もう、この輿入れが最後のチャンスなのです。フェリアレーナ様にとっても、ディーン皇帝にとっても」
「最後?」
「はい。移動手段がガーガリア妃の荷物に紛れこませるというのは説明しました。その荷物を運べるのが、後僅かなのです」
エレオノーラ様が息をつく。
「先日。無事に天災時に受けた支援を返還することができ、正式にガーガリア様がアルティーナに戻れることになったのです」
おお、すごい。あら、まだ少し掛かりそうじゃなかったっけ?
「ふふ、貴女は顔に疑問が出る方ですね」
サエキ様がクスクス笑う。は、恥ずかしいなあ。
「確かにあと5年掛かりそうでしたが、ある優秀な冒険者が、国に転移門を献上してくれましてね」
あの折り畳み傘?
「アルティーナ帝国の転移門は2つ。以前は他にも対の物が2つありましたが、4代前の皇帝が過度に使いすぎて破損しているんです。なので、アルティーナはその献上された転移門が欲しかった。始めはタダで寄越せと言ってきましたが、こちらも負けてられませんからね」
サエキ様が意味深に笑う。
「ふっかけるだけ、ふっかけてアルティーナ帝国に売り、それを返済に宛て、綺麗になりました」
………………いくらで売ったの、あれ?
サエキ様から、エレオノーラ様に説明が変わる。
「それにより、ガーガリア様はアルティーナに帰還です。マクデレーナ上皇妃の元で、静養することが決まりました。しかし、ガーガリア妃がいなくなれば、フェリアレーナ様を運ぶ手段が断たれてしまいます」
ああ、ノーチェックなのは、ガーガリア妃の荷物だけだったね。そこにフェリアレーナ様を隠して運ぶんだ。
でも、そう簡単には行かないと思うけど。もし、フェリアレーナ様が誘拐されたら、そのマクデレーナ皇太后は真っ先にディーン皇帝を疑って、ありとあらゆる手を尽くして探し出すはず。もし、それでフェリアレーナ様が見つかったら。
血の雨が降る?
私の頭から血の落ちる音が。
サエキ様が続ける。
「ディーン皇帝は、クレイ3世からの抑圧から離れて、たがが外れています。抑圧されるだけ、抑圧された中で、どうしても欲したのがフェリアレーナ様です。しかし、これは許されない。最終的に傷つき苦しむのは力のない民です。本来私は王室関連には関わらないようにしているのですが、今回ばかりはそうはいっていれなくなりました」
サエキ様は息をつく。
「私はユリアレーナに籍を置いていますが、アルティーナにも大事な友がいます。アルティーナ内もおそらく混乱するでしょう。彼らはそれを対応しなくてはならない。下手をしたら命を落としかねない。フェリアレーナ様、ユリアレーナの民、そして私は彼らも守りたい。最も最良なのは、無事にフェリアレーナ様が、ハルスフォン様の元にたどり着くことです。ここで、貴女に護衛を依頼したい理由が出てきます」
そう、そこ。ここまで分かっていて、護衛なしでマーファに行くなんて、襲ってくださいって言っているようだ。
「元々、フェリアレーナ様の輿入れ道中の護衛は白騎士の精鋭、オスヴァルトを含めた赤騎士の精鋭、黒騎士のハンターウルフ隊、そしてマーファの騎士達でしたが」
サエキ様が苦笑い。
「ガーガリア妃がその護衛を反対したんですよ。側室風情の子が、血税使って輿入れなど、とね。1人で行け、裸足で行けと」
うわあ。
「当然国王が大激怒。向こうの大使やら出てきてそれは一触即発状態になり、フェリアレーナ様が自ら言いました」
首都を守る騎士様のお手を煩わせる訳にはまいりません。私は、ハルスフォン様が遣わしてくれる、マーファの皆様を信じています。
「で、フェリアレーナ様の護衛が減ることになりました。本来なら100人以上の騎士で護衛でしたが、マーファから来る25名の騎士だけです」
「それで、私に護衛を?」
「そうです。ガーガリア妃の帰還は、フェリアレーナ様がマーファへの移動中にされるのです。その輿入れ道中がフェリアレーナ様を誘拐する最後のチャンスですからね」
難しいけど、とにかくフェリアレーナ様を、セザール様の元に無事に送り届けたら、万歳、万歳なんだね。国の難しい事は、任せよう。
エレオノーラ様とカトリーナ様は、無事にフェリアレーナ様を嫁がせたい。そして、本来のガーガリア妃を知っている為に、生母であるマクデレーナ皇太后の元に無事に返したい。特にエレオノーラ様はカルム王子の件で、責任を感じているそうだ。当時、カトリーナ様はジークフリード様を妊娠していて、身動きが取れなかった。エレオノーラ様が何度かお見舞いに行ったが、帝国のベテランメイド達から、お体に触りますと、断られていた。エレオノーラ様は、ガーガリア妃が信頼していたベテランメイド達を信じていた。だが、結果はあれだ。何故もっと踏み込まなかったのかと、今でもエレオノーラ様は後悔している。そうすれば、ガーガリア妃も、ああはならなかったと。綺麗な顔に、浮かび上がる後悔の影は偽りではない。
よし、私はできることをするだけ。それにセザール様が言ってた。
これで彼女にふさわしい花嫁衣装を準備できます。
あれは嘘やない。
本当にフェリアレーナ様を想っていた顔や。
ハルスフォン伯爵様には色々お世話になっている。
私ができること。
「そのお話、お引き受けさせて頂きます」
感想 854
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので、王都の端で小さな香水店を開きます 〜「匂いしか分からない無能令嬢」と捨てられましたが、実は人の嘘と運命を嗅ぎ分ける王国唯
鳳凰院暁月刃夜婚約破棄されたので、王都の端で小さな香水店を開きます
〜「匂いしか分からない無能令嬢」と捨てられましたが、実は人の嘘と運命を嗅ぎ分ける王国唯一の調香師でした〜
☆あらすじ☆
王太子から婚約破棄され、家族にも見捨てられた公爵令嬢リリアーナ。
妹をいじめた悪女。
匂いしか分からない無能令嬢。
王妃にふさわしくない女。
夜会場でそう笑われた彼女は、すべてを失った――はずだった。
けれどリリアーナの嗅覚は、ただ香りを嗅ぎ分けるだけのものではない。
人の嘘。
隠された悪意。
病の兆し。
呪いの残り香。
そして、運命の匂いまで嗅ぎ分ける、王国唯一の異能だった。
公爵家を出たリリアーナは、亡き祖母が残した王都の端の小さな香水店「夜明けの瓶」を開く。
最初は誰にも見向きされない店だった。
けれど、眠れない少女を救い、毒を盛られた貴婦人を助け、夫婦の嘘をほどいていくうちに、店は王都中の秘密が集まる場所になっていく。
そんな彼女の前に現れたのは、冷血公爵と恐れられる辺境公爵ヴァルト。
彼は王宮由来の呪いに蝕まれていた。
リリアーナは彼の呪いを解くため、契約婚約を結ぶことになる。
不器用すぎる公爵に守られ、時に振り回されながら、彼女は王宮に隠された大きな嘘へと近づいていく。
なぜ王太子は婚約破棄を急いだのか。
なぜ妹は姉を憎み続けるのか。
なぜ王宮には、焦げた薔薇の匂いが漂っているのか。
無能と捨てられた令嬢は、もう誰かの言いなりにはならない。
「私は、私の鼻で生きていきます」
香水店から始まる、婚約破棄令嬢の逆転恋愛ファンタジー。
ざまぁあり、契約婚約あり、冷血公爵の不器用な溺愛あり。
最後には、彼女を捨てた者たちが気づくことになる。
本当に失ってはいけなかったのは、彼女だったのだと。
王妃教育を辞退したら「困る」と国王陛下が直接迎えに来ました ~婚約破棄された私に、王太子ではなく国王陛下が求婚してきます〜
由香【全一話完結】
王太子の心変わりによって婚約を破棄された侯爵令嬢リリアーナ。
十年以上受け続けた王妃教育も辞退し、ようやく自由になれると思っていた。
ところが数日後、侯爵家を訪れたのは国王陛下本人。
「王妃教育を辞退されると困る。私の妃になってほしい」
努力を踏みにじった王太子はすべてを失い、選ばれたのは誠実に生きてきた彼女だった。
これは、年上国王に溺愛されながら、世界一幸せな王妃になるまでの逆転ラブストーリー。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
聖女って無給で無休なんですか?じゃあやらないです
こじまき異世界に聖女として召喚されたイラストレーターのチヒロ。しかし聖女には給料も休みもないことを知って「じゃあやらないです」と聖女就任を断る。
「国と人を救う崇高な仕事には、私どもからの感謝を捧げよう」
「心底いらないです」
異世界でまで、やりがい搾取されてたまるかよ。
※小説家になろうにも投稿しています
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
五年も笑わなかった辺境伯の娘が、追放された保育係の令嬢の前で初めて笑った
歩人(あゆと)侯爵令嬢クラリスは、五年間、兄夫婦の公爵家で三人の御子の保育を任されてきた。表向きは「下女扱い」だったが、彼女の保育記録には毎日の歌・手作りの絵札・夜泣きの記録が綿密に綴られていた。「育児など侍女の手伝い。本物の貴族のすることではないわ」兄嫁の侮辱に、クラリスは保育記録帳を置いて去る。訪ねた先は、妻を亡くした辺境伯ロタールの屋敷だった。彼の娘リーリャは六歳、母を亡くして以来、誰の前でも笑わなかった。「五年、御子さま方を見続けたあなたなら、リーリャの心も読めるだろうか」ロタールの不器用な依頼に、クラリスは静かに頷く。春が来る頃、リーリャは初めて声を上げて笑った。クラリスの隣で、ロタールも気づくと微笑んでいた——五年ぶりに。
【完結済】ワザと醜い令嬢をしていた令嬢一家華麗に亡命する
satomi醜く自らに魔法をかけてケルリール王国王太子と婚約をしていた侯爵家令嬢のアメリア=キートウェル。フェルナン=ケルリール王太子から醜いという理由で婚約破棄を言い渡されました。
もう王太子は能無しですし、ケルリール王国から一家で亡命してしまう事にしちゃいます!
【完結】妹は庶子、文句があるか? 常識なんてぶっ飛ばせ!
青空一夏(ざまぁ×癒し×溺愛)
庶子として公爵家に引き取られたアメリアは、
王立学園で冷たい視線に晒されながらも、ほんの少しの希望を胸に通っていた。
――だが、彼女はまだ知らなかった。
「庶子」の立場が、どれほど理不尽な扱いを受けるものかを。
心が折れかけたそのとき。
彼女を迎えに現れたのは、兄――オルディアーク公爵、レオニルだった。
「大丈夫。……次は、俺が一緒に通うから」
妹を守るためなら、学園にだって入る!
冷酷なはずの公爵閣下は、妹にだけとことん甘くて最強です。
※兄が妹を溺愛するお話しです。
※ざまぁはありますが、それがメインではありません。
※某サイトコンテスト用なので、いつもと少し雰囲気が違いますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。