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閑話 続 話
言ってしまって、ハジェルは後悔した。
相手は格上の人で、本来なら、自分がこんな風に話をできる立場ではないのに。
ハジェルは動揺する。もし、この事で、リーダーであるロッシュが咎められたら、どうしよう。どうしよう。
「ご、ごめっ、す、すみませんっ、すみませんっ」
ハジェルは必死に謝罪の言葉を振り絞る。
「はあ」
ため息をつくエドワルド。びくり、と震えるハジェル。
「いいさ、確かに俺にお前の抱えている悩みは分からん」
その言葉に、ハジェルは強ばってしまった肩の力が抜ける。そしてふいに疑問に思う。なぜ、エドワルドが自分の悩みを言い当てたのか。それを聞いてもいいか分からないが。ちら、とエドワルドを見ると、顔色ひとつ変えてない。柵に寄りかかり、長い足を軽く組んでいる。
「ん? なんだ?」
「あ、あの……………」
ハジェルは口ごもる。
「ん?」
首を傾げているが、催促している様子はない。
「あの、何で、分かったんですか? 俺の悩み」
おずおずと聞いてみる。
「………………俺も後発成長だったからな」
たったそれだけだった。それだけ、言葉が出た。その言葉と共に、僅かにエドワルドの表情に翳りが差した。さっきまで、顔色ひとつ、違う、短い間だけしか接していなかったが、初めての顔だ。魔の森でトロールやオルク達に囲まれた時だって、眉一つ動かさなかったのに。
触れてはいけない。そう直感した。
「ハジェル」
次に出す言葉が思い付かず、沈黙していたハジェルに、エドワルドは名前を呼ぶ。
「は、はい」
「今、いくつだ? 新人期間は後どのくらいだ?」
「あ、はい。歳は17です。後2年と半年っ、です」
「2年か。朝に、関節の痛みを感じることないか?」
「関節? いえ、ないです」
「全く?」
「うーん、関節、関節。筋肉痛にはたまになるっすけど、あ、なります。関節は、ないです」
答えを聞いて、考えるエドワルド。
「背が伸びるパターンの後発成長は、文字通り、骨が成長する。人それぞれだが、特に骨と骨との接触している関節に負荷がかかり、痛みが発生する」
痛み、と聞いて、ハジェルは構える。
「人、それぞれだ。微かな痛みの場合がほとんどだが、それを感じたら、その日から数日間は絶対に無理をするな」
「えっと、動いたらダメって事ですか?」
「そうだ。ベッドから出るな。関節の痛みが、成長の証だ。それから後発成長に関してはだが、いつ出るか分からない。新人期間内に、出るとは限らないぞ」
「そ、そんな………………」
ハジェルの顔に、絶望の色が浮かぶ。
未熟な身体のまま、パーティーを、追い出される。自分から出ていくのではなく、必要がない、と言われたらどうしようと思い詰める。
「お前のリーダーは、ハジェルが後発成長だと分かった上で、新人期間を過ぎたらパーティーから出すような男か?」
「リーダー? リーダーは、えっと…………」
見習いとして受けてくれたあの日、マアデンとハジェルに、ロッシュはこう言った。
心配するな、俺が一人前の冒険者にする。だから、今のやる気を失うな。
「リーダーは、そんな事はしない、です。一人前にするって、やる気を失くすなって、言ってくれました」
時々、っす、が出そうになる。
「なら、お前はどうするべきだ?」
「えっ? どうするべき?」
投げ掛けられて、ハジェルはうんうんと悩む。
どうするべき? どうするべき?
いつ伸びるか分からないのに、呑気に待ってくれるのか? 何が自分に出来る?
ふう、と息をつくエドワルド。
「おそらく、お前のリーダーも、今頃後発成長に関しての説明を受けているはずだ。後はハジェル次第だ。冒険者を諦めるか?」
諦める。
「嫌っす」
するり、と反射的に口から出た言葉。
「なら、どうするべきだ?」
「リーダーに、背が伸びて、役に立つから待ってもらうようにお願いするっす、あ、です」
自分に出来る事は、それくらいしかない。
「あ、それと、弓の訓練続けて、魔力訓練して、今出来る事、全部やれるだけ、やります。背が伸びてでも、弓士として才能がなければ、その時は別の道を探します。でも、今は、今は、その時じゃないから」
ハジェルは息を整える。別の道は、考えた事はなかったが、もし、自分に弓士として役に立てなければ、パーティーとしては迷惑なメンバーだ。今はまだ見習いであるが、しっかりとした戦力にならなければ単なるお荷物だ。せめて、アイテムボックスでもあれば、話は違ってくるが、ハジェルにはない。
「まあ、そうだな。お前の所は、遠距離攻撃は弱そうだからな」
う、と詰まるハジェル。
山風はどちらかと言うと接近戦が主だ。ロッシュは盾を持ち、剣で戦う。ラーヴは純粋に剣士、火魔法が使えるシュタインもどちらかと言うと、剣で戦う事が多い。マアデンがリーチのある槍を使うが、いかんせんまだ見習い。唯一遠距離攻撃できるハジェルは立て続けて矢を放てない。バランスがいまいちなパーティーだ。ランクはC。
いずれ、ロッシュのランクはBになるが、バランスがいまいちの山風のパーティーランクは上がることはない。
これで、もし、マデリーンの様な魔法職や、チュアンやフリンダ、ドーラの様なヒーラーのどちらかがいれば
ランクアップの可能性は出てくる。だけど、山風にはいない。
「ハジェルが弓士として覚醒できたら、戦略が変わるだろうな」
「う」
詰まるハジェル。
「前線で戦うものからすれば、戦況を見てからの援護ってのは、頼もしい」
それはきっと、ケルンの事を示しているが、あんな風に矢を軌道をずらして放つなんて芸当は、ハジェルには不可能だ。矢と相性のいい風魔法だからこそできる技でもあるが、Sランクのケルンとの経験の差がとんでもなくある。正解な年齢は知らないが、自分どころではない、祖父母が産まれてもいない頃から、弓に触れていただろうケルン。
比べるまでもない。
「うちのリーダーは歳は食ってるから、その年の功で戦闘経験は半端ないからな。だからと言って、そうなる必要性はない。ハジェル、お前に合った弓士としての戦闘スタイルを確立しろ。例えば、誰を参考する?」
「誰を? あー、ユイさんところのホークさん、金の虎のリィマさんっす」
現実的にそうだろう。エリアンも魔法を駆使して、矢の軌道をずらしているから。
「お前の成長具合で、山風の戦闘の幅が広がる。よく、自覚しろ。きっと、お前のリーダーも分かっているはずだ」
「はい」
それからどれくらい伸びるかは、他の家族の背丈が参考になるそうだ。残念ながら両親の記憶はないが、兄と姉の背丈を参考にすると、10~20センチ位だろうと言われたが。
「だが、あくまで予想だ。当てにするな」
「はいっ」
それでも、ハジェルは嬉しかった。
「よし、じゃあ、行け」
「はいっ、ありがとうございますっ」
エドワルドとの話で、自分にまだ、役に立てる道があると自覚が沸いた。ハジェルはロッシュの元に走って向かった。
「俺、そのうちに背が伸びて、役にたつっす」
そう宣言したら、ロッシュ達に頭をぐしゃぐしゃにされた。それがハジェルにはとても嬉しかった。
相手は格上の人で、本来なら、自分がこんな風に話をできる立場ではないのに。
ハジェルは動揺する。もし、この事で、リーダーであるロッシュが咎められたら、どうしよう。どうしよう。
「ご、ごめっ、す、すみませんっ、すみませんっ」
ハジェルは必死に謝罪の言葉を振り絞る。
「はあ」
ため息をつくエドワルド。びくり、と震えるハジェル。
「いいさ、確かに俺にお前の抱えている悩みは分からん」
その言葉に、ハジェルは強ばってしまった肩の力が抜ける。そしてふいに疑問に思う。なぜ、エドワルドが自分の悩みを言い当てたのか。それを聞いてもいいか分からないが。ちら、とエドワルドを見ると、顔色ひとつ変えてない。柵に寄りかかり、長い足を軽く組んでいる。
「ん? なんだ?」
「あ、あの……………」
ハジェルは口ごもる。
「ん?」
首を傾げているが、催促している様子はない。
「あの、何で、分かったんですか? 俺の悩み」
おずおずと聞いてみる。
「………………俺も後発成長だったからな」
たったそれだけだった。それだけ、言葉が出た。その言葉と共に、僅かにエドワルドの表情に翳りが差した。さっきまで、顔色ひとつ、違う、短い間だけしか接していなかったが、初めての顔だ。魔の森でトロールやオルク達に囲まれた時だって、眉一つ動かさなかったのに。
触れてはいけない。そう直感した。
「ハジェル」
次に出す言葉が思い付かず、沈黙していたハジェルに、エドワルドは名前を呼ぶ。
「は、はい」
「今、いくつだ? 新人期間は後どのくらいだ?」
「あ、はい。歳は17です。後2年と半年っ、です」
「2年か。朝に、関節の痛みを感じることないか?」
「関節? いえ、ないです」
「全く?」
「うーん、関節、関節。筋肉痛にはたまになるっすけど、あ、なります。関節は、ないです」
答えを聞いて、考えるエドワルド。
「背が伸びるパターンの後発成長は、文字通り、骨が成長する。人それぞれだが、特に骨と骨との接触している関節に負荷がかかり、痛みが発生する」
痛み、と聞いて、ハジェルは構える。
「人、それぞれだ。微かな痛みの場合がほとんどだが、それを感じたら、その日から数日間は絶対に無理をするな」
「えっと、動いたらダメって事ですか?」
「そうだ。ベッドから出るな。関節の痛みが、成長の証だ。それから後発成長に関してはだが、いつ出るか分からない。新人期間内に、出るとは限らないぞ」
「そ、そんな………………」
ハジェルの顔に、絶望の色が浮かぶ。
未熟な身体のまま、パーティーを、追い出される。自分から出ていくのではなく、必要がない、と言われたらどうしようと思い詰める。
「お前のリーダーは、ハジェルが後発成長だと分かった上で、新人期間を過ぎたらパーティーから出すような男か?」
「リーダー? リーダーは、えっと…………」
見習いとして受けてくれたあの日、マアデンとハジェルに、ロッシュはこう言った。
心配するな、俺が一人前の冒険者にする。だから、今のやる気を失うな。
「リーダーは、そんな事はしない、です。一人前にするって、やる気を失くすなって、言ってくれました」
時々、っす、が出そうになる。
「なら、お前はどうするべきだ?」
「えっ? どうするべき?」
投げ掛けられて、ハジェルはうんうんと悩む。
どうするべき? どうするべき?
いつ伸びるか分からないのに、呑気に待ってくれるのか? 何が自分に出来る?
ふう、と息をつくエドワルド。
「おそらく、お前のリーダーも、今頃後発成長に関しての説明を受けているはずだ。後はハジェル次第だ。冒険者を諦めるか?」
諦める。
「嫌っす」
するり、と反射的に口から出た言葉。
「なら、どうするべきだ?」
「リーダーに、背が伸びて、役に立つから待ってもらうようにお願いするっす、あ、です」
自分に出来る事は、それくらいしかない。
「あ、それと、弓の訓練続けて、魔力訓練して、今出来る事、全部やれるだけ、やります。背が伸びてでも、弓士として才能がなければ、その時は別の道を探します。でも、今は、今は、その時じゃないから」
ハジェルは息を整える。別の道は、考えた事はなかったが、もし、自分に弓士として役に立てなければ、パーティーとしては迷惑なメンバーだ。今はまだ見習いであるが、しっかりとした戦力にならなければ単なるお荷物だ。せめて、アイテムボックスでもあれば、話は違ってくるが、ハジェルにはない。
「まあ、そうだな。お前の所は、遠距離攻撃は弱そうだからな」
う、と詰まるハジェル。
山風はどちらかと言うと接近戦が主だ。ロッシュは盾を持ち、剣で戦う。ラーヴは純粋に剣士、火魔法が使えるシュタインもどちらかと言うと、剣で戦う事が多い。マアデンがリーチのある槍を使うが、いかんせんまだ見習い。唯一遠距離攻撃できるハジェルは立て続けて矢を放てない。バランスがいまいちなパーティーだ。ランクはC。
いずれ、ロッシュのランクはBになるが、バランスがいまいちの山風のパーティーランクは上がることはない。
これで、もし、マデリーンの様な魔法職や、チュアンやフリンダ、ドーラの様なヒーラーのどちらかがいれば
ランクアップの可能性は出てくる。だけど、山風にはいない。
「ハジェルが弓士として覚醒できたら、戦略が変わるだろうな」
「う」
詰まるハジェル。
「前線で戦うものからすれば、戦況を見てからの援護ってのは、頼もしい」
それはきっと、ケルンの事を示しているが、あんな風に矢を軌道をずらして放つなんて芸当は、ハジェルには不可能だ。矢と相性のいい風魔法だからこそできる技でもあるが、Sランクのケルンとの経験の差がとんでもなくある。正解な年齢は知らないが、自分どころではない、祖父母が産まれてもいない頃から、弓に触れていただろうケルン。
比べるまでもない。
「うちのリーダーは歳は食ってるから、その年の功で戦闘経験は半端ないからな。だからと言って、そうなる必要性はない。ハジェル、お前に合った弓士としての戦闘スタイルを確立しろ。例えば、誰を参考する?」
「誰を? あー、ユイさんところのホークさん、金の虎のリィマさんっす」
現実的にそうだろう。エリアンも魔法を駆使して、矢の軌道をずらしているから。
「お前の成長具合で、山風の戦闘の幅が広がる。よく、自覚しろ。きっと、お前のリーダーも分かっているはずだ」
「はい」
それからどれくらい伸びるかは、他の家族の背丈が参考になるそうだ。残念ながら両親の記憶はないが、兄と姉の背丈を参考にすると、10~20センチ位だろうと言われたが。
「だが、あくまで予想だ。当てにするな」
「はいっ」
それでも、ハジェルは嬉しかった。
「よし、じゃあ、行け」
「はいっ、ありがとうございますっ」
エドワルドとの話で、自分にまだ、役に立てる道があると自覚が沸いた。ハジェルはロッシュの元に走って向かった。
「俺、そのうちに背が伸びて、役にたつっす」
そう宣言したら、ロッシュ達に頭をぐしゃぐしゃにされた。それがハジェルにはとても嬉しかった。
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