ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
189 / 338

新学期に向けて⑪

しおりを挟む
 くるくる巻き髪のディミア嬢のお姉さんね。
 聞いたときは確かにお気の毒だと思った。

「ペルク侯爵がカタリナ様を事故死として受け入れたのは、先代シルヴァスタ国王が無償で台風被害にあったペルク侯爵に、食糧と復興に必要な人員や資材わ、提供していたの。あれがなければ、ペルク侯爵も領地もあんなに早く復興しなかったわ。それに、病床に伏していた当時の王妃ビビアン殿下が、わざわざペルク領まで謝罪に向かったの。その誠意をペルク侯爵は涙と共に飲み込んだわけ」

 そうだったんだ。

「カタリナ様の件は世間には事故死として伝えられたけど、当然箝口令が敷かれたわ。まあ、分かる者は察したはずよ。その後一斉にロナウド殿下の婚約者候補達が辞退、すぐさまレオンハルト殿下とリリーナ嬢との正式な婚約発表」

 簡単な側室入りを発表されたモニカ妃殿下の生んだ第一王子が婚約者候補が事故死、その候補者が一斉に辞退。皆が王太子妃殿下と親しみ、公務をきちんとこなすエリザベス妃殿下がうんだ第二王子が正式な婚約発表。
 生まれた順番がどうとかの問題ではないと、勘ずくかな。

「ただね、モニカ妃殿下には、先代シルヴァスタ国王がバックに着いているから、半信半疑で判断がつかない者が多かったわ」

 はあ、とアンジェリカ様はため息。

「モニカ妃殿下は見目麗しい方よ。それに政治手腕の優れた父親、そして王族ですら崩落させた魔性の母親の血を引いて、あちこちで己の見方を作ったわけ。その回る口先と見た目で、判断が出来なかったもの達を派閥に入れたわけ」

「まるでキャサリンみたいですね」

「あんなのと比較してはダメよ。貴女のお姉さんが子猫に思えるほどよ。ま、今回のレオンハルト殿下の留学で、全ての決着はつくわ。先日レオンハルト殿下の暗殺の可能性については、現在のシルヴァスタ国王も把握してくれて、助力してくれる事になったの」

 それはシルヴァスタ王国とルルディ王国の国民感情を配慮して、だ。
 先代シルヴァスタ国王は、投資や株、不動産で得た利益をあちこちに提供している。実際にペルク侯爵もそれで復興が早かったしね。両国の国民は、とても優しい王様と言う認識が強い。だから、先代シルヴァスタ国王を切り離し、モニカ妃殿下だけをたたく為の下準備をしてくれているし、警備も万全にしてくれている。詳しい内容は秘密、だって。

「ロナウド殿下にも表舞台から退場してもらうわ」

 と、アンジェリカ様の説明は続く。
 もともとロナウド殿下にはカタリナ様の事がある前から、いずれは王家から出して一代限りの爵位をとオーガスト殿下は考えていたそうだ。
 幼少期にそうもうくらい、ロナウド殿下の出来が悪かったみたい。
 ある程度の年齢になれば、しっかりするかと思ったが、とにかく勉強嫌い。だからといって何か特出するものがあるか? なんてもない。ユミル学園の組分け試験も準特進にすら入れず。それを隠すためにロナウド殿下は一足先にシルヴァスタ国王の学園に留学したが、不登校らしい。
 カタリナ様の件でも全然反省の色もないから、オーガスト殿下が即位したら、モニカ妃殿下と共に叩き出すみたい。モニカ妃殿下はいまでもロナウド殿下が王太子になると思い込んでいる。国内の公務出来るほど、そして外交をこなすだけの頭が必要なのに、それが備わってないロナウド殿下が王太子なんて無理なのを、分かってない。何度もモニカ妃殿下には説明しているが、まったく理解してなくて、最近、レオンハルト殿下に対しても「あれさえいなくなれば」と呟やいて、父親にも匂わせる連絡しているみたい。当然『影』が張り付いて把握している。ただし、匂わせるだけで、決定的ではない。モニカ妃殿下はくどいが、父親が素晴らしい手腕をもつ先代シルヴァスタ国王の溺愛する娘であるし、今でもルルディ王国以外にも、困った地域には必要な援助をしている人徳者と思われているからだ。
 それをどうやって切り離し、叩くんだろう?

「それは秘密よ」

 ですって。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...