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第三章
氷竜族の戦後処理
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王宮に戻るとヘスティが迎えてくれた。
「アイズ!よくやったわね・・。お疲れ様でした。」
「母上・・僕・・ヒューリック倒しちゃったよ・・」
「ええ、ええ。いいのよ。仕方ないことだったんだもの・・。」
ヒューリックはどうも人望があったように思える。
「子供の頃からあなたを可愛がってましたからね・・辛い戦いだったでしょう・・」
「うん・・僕今回は戦い嫌いになりそうになった・・。」
俺は
「アイズは良くやってくれました。敵の攻撃を跳ね返して、空中でヒューリックを仕留めることができました。」
「そうですのね。アイズ、まずはお父様にご報告してきなさい。」
「わかりました。母上。」
「あ、私もいきます。」
アイリスが付いていく。
「ふぅ・・なんか反乱軍には反乱軍の正義があるのよね・・心理的に辛いものがあるわね。」
アカネがそんな感想をもらす。
「ヘスティ様。今回反乱に加担したものたちは・・」
「ええ・・。ヒューリックについていったもの達ですわね・・。できるだけ寛大な処置をと考えておりますわ。数少ない氷竜族の仲間ですもの・・。」
良かった。これならひどい目にあうこともなさそうだ。
俺たちはアイズとアイリスを追ってお父さんの部屋に向かった。
――――――――
「・・今回はご苦労だったね・・。あのヒューリックがまさか反乱を起こすとは考えもしなかったが・・。」
「ええ。強敵できた。敵のことをこういうのは変ですが・・人格者という印象も受けました。」
「そうだろうね。あれは若いころから忠義一途で国のために尽くしてきたものなんだ・・」
お父さんは物思いにふけるように言う。
「父上。僕今回かなり頑張った。」
「おうおう。よくやったな。辛い戦いだっただろうに。アイズも成長したもんだ。」
お父さんはベッドに横たわりながらアイズの頭をなでていた。
なんかいいな・・。
「ヘスティ様もおっしゃっていましたが、どうぞ寛大なご処置をお願いいたします。」
俺が言うと
「ああ、わかっている。かつては仲間だったもの達だ。また軍に復帰することもあるだろう。」
器の大きな王だな。
「この度はご苦労だった。何かお礼をしたいが・・。」
「ああ、ご心配なさらず。氷竜の防寒具もいただきましたから。」
「ふむ・・そういうわけにもいかんな。何か考えておくよ。」
お父さんはちょっと話をするのが辛そうだったので俺たちはアイリスとアイズを残して早々に辞した。
アイリスは試してみたいことがあるそうだ。
――――――――
その後。
王宮の客間に下がった俺はアカネと話していた。
「それにしても、アカネ、今回は特にすごかったな。いつもの複角度熱線に極光だったか?ドラゴンを退けられるなんて相当だろ?」
「アイズやクラーケンとの戦いで思うところがあって、自分の炎の威力と精度を上げることに注力してたのよ。ヒントはルース様の空間魔法ね。私の最大火力を複数の熱線に凝縮して空間に作り出した筒に放出するイメージね。」
「すごいな・・それに敵の氷槍を迎撃したのも見事だったし。」
「一度見たからね。もう一度あの魔法をくらったらまずいと思って必死だったわ。修業のおかげで精度がましたわね。」
「今回の殊勲者はアカネだな。」
「まぁまたおいしいところはユージに持ってかれたけどね。それにしても風魔法もだいぶモノにしたんじゃない?重力魔法みたいなのも使ってたし?」
「ああ、ずっと風魔法研究部とライム道場でやってたことが役に立った。」
「ユージ、あなたもう大型魔獣ハンターね・・。」
「うーん、どうだろう・・逆にこの前みたいな数が多い敵にはいまだに苦戦しそうだしなぁ・・。」
「まぁ私は今回は自分のオリジナル魔法を使えたことが大きかったわね。もっと威力も精度もあげていくわよ。」
「俺もだいぶコールの時間も増やすことができた。俺も修業の成果があったみたいだ。」
「まぁ・・色々複雑な戦いだったけど、得るものはあったわね。」
「そうだな・・。」
――――――――
その頃。
アイリスは王の病状を心臓にあると見極めると修練してきた魔法を試していた。
「ここだわ・・集中ヒール!」
王の心臓部分に光が当てられていく。
傍でアイズとヘスティが見つめている。
アイリスの顔が紅潮し、汗が浮かぶ。
「・・・・・・・・」
「グハッ!」
王が血の塊を吐き出した。
「・・ふぅ・・。」
アイリスが息を吐き出す。
アイズとヘスティがつばを飲み込む。
「ど・・どうでしたか?」
ヘスティがアイリスに聞く。
「・・はい。恐らくこの血塊が王の心臓をふさいでいたと思われます。これで・・王の病状は快方に向かうと思います。」
「おお・・あなた・・!」
ヘスティが王に抱きつく。
「王妃よ・・。グフッ。不思議な気分だ・・。今まで胸につかえていたものが取れたような・・。」
王はやがて寝息を立て始めた。
「これでしばらく様子を見てみましょう。また明日治療を行います。」
アイリスはそういうと。自分も疲れ切ったように座り込んだ。
「アイリス!」
アイズが慌てて駆け寄る。
「・・ん、大丈夫。ちょっと疲れただけ・・。」
無理もない。アイリスは昨日から一睡もせずに治療と戦闘を行ってきたのだ。
「僕が部屋まで運ぶ!」
アイズがアイリスを抱えて部屋を出ていく。
――――――――
「アイリス!」
運ばれてきたアイリスをみてアカネが駆け寄る。
俺も様子を見に行った。
「ん・・大丈夫・・だと思う。すごいアイリス頑張ってくれた。」
アイズが優しくアイリスをベッドに横たえる。
アイリスはすぐに深い眠りに落ちていった。
「もう・・無理しちゃって・・」
アカネが心配そうにアイズの顔を覗き込む。
「父上は快方に向かうとアイリスが言ってた。アイリスのおかげ。」
アイズが感謝しきりといった様子で言う。
「そうか・・これで王国も平穏に戻るな・・。」
俺が言うと、
「まぁ、また不逞な輩が出たら私たちがやっつけたらいいわ!」
アカネがいかにもアカネらしいことを言う。
「まぁ、そんなことにならないのが一番だけどな・・そういえば、ちょっと考えてることがあるんだ。」
「考え?」
「ああ、明日にでもヘスティ様に申し上げてみようと思う。」
――――――――
翌日。
王は苦しみから脱し、なんとか話をできるようになっていた。
アイリスは一晩ぐっすり寝て復活し、再び王の治療にあたっていた。
王も王妃もそろっているなら丁度いいか。
「実はお話があります。」
俺は切り出した。
・・・
「スキー?」
王と王妃が一緒に聞き返す。
「ええ。僕のいた国ではそういうものがあって、一大娯楽産業になっています。ここは雪質もパウダースノー・・さらさらの雪ですし、スキーにはもってこいかと。」
「そんなものは聞いたことがないが・・・もし産業になるなら大助かりだが。」
「でも、こんな寒いところまで来てくれるのかしら?」
ヘスティ王妃が心配そうに言う。
「それについては別案が。スキーにはスキー用の衣服があります。こちらも抱き合わせで販売するか、貸し出せるようにすれば、更に収益が期待できるでしょう。」
「ふむ・・初期投資が大きそうだが・・」
「それについてはローム王国との共同出資という形ではいかがでしょう。幸い、僕はご老公に面識がありますから相談してみます。」
「そうすると、交通網の整備が必要になるな。」
「初めは馬車を大きくしたものでいいかと思いますが、そのうち氷竜族の方の力を借りて運ぶことも考えられると思います。」
竜人族のパワーなら一人で100人ほどは運ぶことができるだろう。
さすがにまだ汽車や電車は厳しいと思ったため、そう提案してみた。
「ふむ・・そうすると・・そのスキー場運営に、運送の人員・・仕事にあぶれているものにも助けになるな。」
王が興味深そうに言う。
「そのうち、スキーだけではなく、スノーボードなどというものも考えてもいいかもしれませんが。まずは初めてみてはいかがでしょうか?」
「ふむ・・面白いかもしれん。ではロームのご老公に繋ぎを頼めるかな?」
「はい。お任せください。」
「ふふっ。ユージ様は戦いだけでなく、事業にも通じてらっしゃるのね?」
ヘスティ王妃が笑う。
「いえ・・これは僕の発想ではなく、僕の故郷の風習というか・・とにかく僕の発案ではないんですが、故郷では一大産業となっています。すでに成功している事例なのでお勧めできます。」
「わかった。ではこちらもそのつもりで準備しよう。話を進めてくれたまえ。」
王が言う。
「かしこまりました。」
「おお!そうじゃ!忘れるところであった!この度の御恩に報いるため、王妃と相談してこのようなものを用意した。」
王に差し出されたものを見てみると、銀色に輝く指輪だった。
「これには氷竜の魔力が込められておる。小規模だが氷の息吹を発生させることができる。」
これはありがたいな。戦闘の幅が広がりそうだ。
「今回お世話になったユージ殿、アカネ殿、アイリス殿に準備した。どうかもらってほしい。」
「ありがたくいただきます。」
俺たちはそこでいったん王の部屋を辞した。
――――――――
「ちょっとユージ!すごいじゃない!なんなの?あのスキー?って。面白そうね!」
アカネが食いついてきた。
地球に生まれていたら、スノボで格好よく滑っていそうだな、アカネは。
「いや、実はヒューリックから経済的に苦しいという話を聞いてから考えていたんだ。ここならスキーの一大施設ができるんじゃないかってさ。」
「ふぅん・・?ユージの国って色んな遊びがあるのね?私も行ってみたいわ!」
俺もアカネを案内してやりたい。
日本では陰キャだったけど、アカネとなら楽しめそうだ。
アカネはモテるだろうなぁ・・
――――――――
「父上、母上、それでは行ってきます。」
アイズが挨拶をする。
「うむ。人間界の勉強、頑張りなさい。」
すっかり良くなった王が言う。
「ユージ殿、アカネ殿、アイリス殿。この度は本当にお世話になった。敵対勢力のみならず、私への治療、そして未来を示してくれるとは・・。」
「いえ、俺はできることをしただけです。」
「私もヒールしか能がないですから。」
と言ってアイリスが笑う。
「この御恩は忘れん。ローム国のご老公にもよろしくお伝えくだされ。」
「はい。かしこまりました。それでは。」
俺たちは帰りはアイズに乗って帰ることになった。
アイズならすぐに連れ帰ってくれそうだな。
「さぁ、いい加減寒さにも懲りたし、暖かい俺たちの国へ帰ろうか!」
「そうね!なんだか暖かいロームが恋しいわ!」
アカネがそう言って笑った。
「アイズ!よくやったわね・・。お疲れ様でした。」
「母上・・僕・・ヒューリック倒しちゃったよ・・」
「ええ、ええ。いいのよ。仕方ないことだったんだもの・・。」
ヒューリックはどうも人望があったように思える。
「子供の頃からあなたを可愛がってましたからね・・辛い戦いだったでしょう・・」
「うん・・僕今回は戦い嫌いになりそうになった・・。」
俺は
「アイズは良くやってくれました。敵の攻撃を跳ね返して、空中でヒューリックを仕留めることができました。」
「そうですのね。アイズ、まずはお父様にご報告してきなさい。」
「わかりました。母上。」
「あ、私もいきます。」
アイリスが付いていく。
「ふぅ・・なんか反乱軍には反乱軍の正義があるのよね・・心理的に辛いものがあるわね。」
アカネがそんな感想をもらす。
「ヘスティ様。今回反乱に加担したものたちは・・」
「ええ・・。ヒューリックについていったもの達ですわね・・。できるだけ寛大な処置をと考えておりますわ。数少ない氷竜族の仲間ですもの・・。」
良かった。これならひどい目にあうこともなさそうだ。
俺たちはアイズとアイリスを追ってお父さんの部屋に向かった。
――――――――
「・・今回はご苦労だったね・・。あのヒューリックがまさか反乱を起こすとは考えもしなかったが・・。」
「ええ。強敵できた。敵のことをこういうのは変ですが・・人格者という印象も受けました。」
「そうだろうね。あれは若いころから忠義一途で国のために尽くしてきたものなんだ・・」
お父さんは物思いにふけるように言う。
「父上。僕今回かなり頑張った。」
「おうおう。よくやったな。辛い戦いだっただろうに。アイズも成長したもんだ。」
お父さんはベッドに横たわりながらアイズの頭をなでていた。
なんかいいな・・。
「ヘスティ様もおっしゃっていましたが、どうぞ寛大なご処置をお願いいたします。」
俺が言うと
「ああ、わかっている。かつては仲間だったもの達だ。また軍に復帰することもあるだろう。」
器の大きな王だな。
「この度はご苦労だった。何かお礼をしたいが・・。」
「ああ、ご心配なさらず。氷竜の防寒具もいただきましたから。」
「ふむ・・そういうわけにもいかんな。何か考えておくよ。」
お父さんはちょっと話をするのが辛そうだったので俺たちはアイリスとアイズを残して早々に辞した。
アイリスは試してみたいことがあるそうだ。
――――――――
その後。
王宮の客間に下がった俺はアカネと話していた。
「それにしても、アカネ、今回は特にすごかったな。いつもの複角度熱線に極光だったか?ドラゴンを退けられるなんて相当だろ?」
「アイズやクラーケンとの戦いで思うところがあって、自分の炎の威力と精度を上げることに注力してたのよ。ヒントはルース様の空間魔法ね。私の最大火力を複数の熱線に凝縮して空間に作り出した筒に放出するイメージね。」
「すごいな・・それに敵の氷槍を迎撃したのも見事だったし。」
「一度見たからね。もう一度あの魔法をくらったらまずいと思って必死だったわ。修業のおかげで精度がましたわね。」
「今回の殊勲者はアカネだな。」
「まぁまたおいしいところはユージに持ってかれたけどね。それにしても風魔法もだいぶモノにしたんじゃない?重力魔法みたいなのも使ってたし?」
「ああ、ずっと風魔法研究部とライム道場でやってたことが役に立った。」
「ユージ、あなたもう大型魔獣ハンターね・・。」
「うーん、どうだろう・・逆にこの前みたいな数が多い敵にはいまだに苦戦しそうだしなぁ・・。」
「まぁ私は今回は自分のオリジナル魔法を使えたことが大きかったわね。もっと威力も精度もあげていくわよ。」
「俺もだいぶコールの時間も増やすことができた。俺も修業の成果があったみたいだ。」
「まぁ・・色々複雑な戦いだったけど、得るものはあったわね。」
「そうだな・・。」
――――――――
その頃。
アイリスは王の病状を心臓にあると見極めると修練してきた魔法を試していた。
「ここだわ・・集中ヒール!」
王の心臓部分に光が当てられていく。
傍でアイズとヘスティが見つめている。
アイリスの顔が紅潮し、汗が浮かぶ。
「・・・・・・・・」
「グハッ!」
王が血の塊を吐き出した。
「・・ふぅ・・。」
アイリスが息を吐き出す。
アイズとヘスティがつばを飲み込む。
「ど・・どうでしたか?」
ヘスティがアイリスに聞く。
「・・はい。恐らくこの血塊が王の心臓をふさいでいたと思われます。これで・・王の病状は快方に向かうと思います。」
「おお・・あなた・・!」
ヘスティが王に抱きつく。
「王妃よ・・。グフッ。不思議な気分だ・・。今まで胸につかえていたものが取れたような・・。」
王はやがて寝息を立て始めた。
「これでしばらく様子を見てみましょう。また明日治療を行います。」
アイリスはそういうと。自分も疲れ切ったように座り込んだ。
「アイリス!」
アイズが慌てて駆け寄る。
「・・ん、大丈夫。ちょっと疲れただけ・・。」
無理もない。アイリスは昨日から一睡もせずに治療と戦闘を行ってきたのだ。
「僕が部屋まで運ぶ!」
アイズがアイリスを抱えて部屋を出ていく。
――――――――
「アイリス!」
運ばれてきたアイリスをみてアカネが駆け寄る。
俺も様子を見に行った。
「ん・・大丈夫・・だと思う。すごいアイリス頑張ってくれた。」
アイズが優しくアイリスをベッドに横たえる。
アイリスはすぐに深い眠りに落ちていった。
「もう・・無理しちゃって・・」
アカネが心配そうにアイズの顔を覗き込む。
「父上は快方に向かうとアイリスが言ってた。アイリスのおかげ。」
アイズが感謝しきりといった様子で言う。
「そうか・・これで王国も平穏に戻るな・・。」
俺が言うと、
「まぁ、また不逞な輩が出たら私たちがやっつけたらいいわ!」
アカネがいかにもアカネらしいことを言う。
「まぁ、そんなことにならないのが一番だけどな・・そういえば、ちょっと考えてることがあるんだ。」
「考え?」
「ああ、明日にでもヘスティ様に申し上げてみようと思う。」
――――――――
翌日。
王は苦しみから脱し、なんとか話をできるようになっていた。
アイリスは一晩ぐっすり寝て復活し、再び王の治療にあたっていた。
王も王妃もそろっているなら丁度いいか。
「実はお話があります。」
俺は切り出した。
・・・
「スキー?」
王と王妃が一緒に聞き返す。
「ええ。僕のいた国ではそういうものがあって、一大娯楽産業になっています。ここは雪質もパウダースノー・・さらさらの雪ですし、スキーにはもってこいかと。」
「そんなものは聞いたことがないが・・・もし産業になるなら大助かりだが。」
「でも、こんな寒いところまで来てくれるのかしら?」
ヘスティ王妃が心配そうに言う。
「それについては別案が。スキーにはスキー用の衣服があります。こちらも抱き合わせで販売するか、貸し出せるようにすれば、更に収益が期待できるでしょう。」
「ふむ・・初期投資が大きそうだが・・」
「それについてはローム王国との共同出資という形ではいかがでしょう。幸い、僕はご老公に面識がありますから相談してみます。」
「そうすると、交通網の整備が必要になるな。」
「初めは馬車を大きくしたものでいいかと思いますが、そのうち氷竜族の方の力を借りて運ぶことも考えられると思います。」
竜人族のパワーなら一人で100人ほどは運ぶことができるだろう。
さすがにまだ汽車や電車は厳しいと思ったため、そう提案してみた。
「ふむ・・そうすると・・そのスキー場運営に、運送の人員・・仕事にあぶれているものにも助けになるな。」
王が興味深そうに言う。
「そのうち、スキーだけではなく、スノーボードなどというものも考えてもいいかもしれませんが。まずは初めてみてはいかがでしょうか?」
「ふむ・・面白いかもしれん。ではロームのご老公に繋ぎを頼めるかな?」
「はい。お任せください。」
「ふふっ。ユージ様は戦いだけでなく、事業にも通じてらっしゃるのね?」
ヘスティ王妃が笑う。
「いえ・・これは僕の発想ではなく、僕の故郷の風習というか・・とにかく僕の発案ではないんですが、故郷では一大産業となっています。すでに成功している事例なのでお勧めできます。」
「わかった。ではこちらもそのつもりで準備しよう。話を進めてくれたまえ。」
王が言う。
「かしこまりました。」
「おお!そうじゃ!忘れるところであった!この度の御恩に報いるため、王妃と相談してこのようなものを用意した。」
王に差し出されたものを見てみると、銀色に輝く指輪だった。
「これには氷竜の魔力が込められておる。小規模だが氷の息吹を発生させることができる。」
これはありがたいな。戦闘の幅が広がりそうだ。
「今回お世話になったユージ殿、アカネ殿、アイリス殿に準備した。どうかもらってほしい。」
「ありがたくいただきます。」
俺たちはそこでいったん王の部屋を辞した。
――――――――
「ちょっとユージ!すごいじゃない!なんなの?あのスキー?って。面白そうね!」
アカネが食いついてきた。
地球に生まれていたら、スノボで格好よく滑っていそうだな、アカネは。
「いや、実はヒューリックから経済的に苦しいという話を聞いてから考えていたんだ。ここならスキーの一大施設ができるんじゃないかってさ。」
「ふぅん・・?ユージの国って色んな遊びがあるのね?私も行ってみたいわ!」
俺もアカネを案内してやりたい。
日本では陰キャだったけど、アカネとなら楽しめそうだ。
アカネはモテるだろうなぁ・・
――――――――
「父上、母上、それでは行ってきます。」
アイズが挨拶をする。
「うむ。人間界の勉強、頑張りなさい。」
すっかり良くなった王が言う。
「ユージ殿、アカネ殿、アイリス殿。この度は本当にお世話になった。敵対勢力のみならず、私への治療、そして未来を示してくれるとは・・。」
「いえ、俺はできることをしただけです。」
「私もヒールしか能がないですから。」
と言ってアイリスが笑う。
「この御恩は忘れん。ローム国のご老公にもよろしくお伝えくだされ。」
「はい。かしこまりました。それでは。」
俺たちは帰りはアイズに乗って帰ることになった。
アイズならすぐに連れ帰ってくれそうだな。
「さぁ、いい加減寒さにも懲りたし、暖かい俺たちの国へ帰ろうか!」
「そうね!なんだか暖かいロームが恋しいわ!」
アカネがそう言って笑った。
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