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第三章
魔獣襲来再び
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「サンダユウいるか?」
「は、ここに。」
「敵の首魁はわかるか?」
「魔獣に囲まれていて困難です。」
仕方ない。
しかし、一体何が目的なんだ・・
そうか!ここは氷竜国、ローム帝国、そしてコルトン家の一大プロジェクトだ。
このおかげで氷竜国とローム帝国は同盟のような形になっている。
その事業をつぶそうというのか!
「アイズ、俺たちを乗せて敵の中心部に飛んでくれ!」
「わかった!」
アイズは俺、アカネ、アイズを乗せると一気に竜化し、飛翔した。
『ユージあの辺だと思う』
「ああ・・思った通りだ。」
そこにはフードを目深に被ったテイマーが佇んで魔獣に指示を出していた。
氷竜国、ローム王国、そしてコルトン家の力をつぎ込んだスキー場だ。
テロの目的としては最適だろう。
「ユージ、あれって・・?」
「ああ、やっぱりテイマーだ。今度はブルータル・ウルフから熊型の魔獣に変えたみたいだな。」
すると・・やはりいた。
テイマーの傍には赤竜が数十匹ほど主を守っている。
今回は大勢力だな・・。
「よし、いったん引き返そう。」
「わかった。全速力で戻る!」
スキー場は大混乱だった。
氷竜族の係員達が大急ぎでお客の誘導に働いている。
「氷竜族のみなさん。敵には赤竜が数十匹ほどいます。皆さんはお客様を赤竜から守って下さい!」
「あ、ああ、わかった!」
氷竜族が次々と竜化していく。
こうしてみると、氷竜と言っても大きさに違いがあったり、色味が薄くかかっていたり様々なんだな。
おっとそんなことを考えている場合じゃなかった。
「俺たちは敵の主力部分に攻撃をしかけます!どうかお客さまをよろしくお願いします。」
「任せてくれ!避難が完了したら我々も戦闘に参加するからな!」
「お願いします!」
そして、俺たちは敵の軍団の正面に降り立った。
大型のクマの魔獣、フットベアーは群れをなしてこちらを睥睨している。
その体は十メートルほどもあり、白い体毛で覆われている。
今のところテイマーの指示待ちのようだ。
「よし、まずはひと当てしてみよう。アカネ、アイズ頼む!」
「わかったわ!複角度熱線!」
クマの密集地にアカネの炎閃が複数突き刺さる。
複数のフットベアーが吹き飛んだ。
さすが威力を増しただけある。熱線はフットベアーを貫通していた。
「次は僕の番。息吹!」
アイズの極大の息吹がフットベアーに降りかかる。
・・しかし、見た目の通り寒冷系の魔法には耐性があるようで少し動きが鈍った程度だ。
「まだまだ!これはどう!氷槍!」
!これはヒューリックが使った技!・・氷の槍!
・・もう自分のものにしたのか。やるなアイズ。
氷の槍が雨あられと降り注ぐ。
今度は物理攻撃のため、あちこちで氷槍に貫かれて倒れ伏していくフットベアー達。
よし、これならいけそうだ。
「アイリス、近くまで来た奴はアンヒールを頼む。俺が仕留める」
「わかったよ!」
フットベアー達は俺たちの初撃にいささかたじろいだのか、こちらを見つつも突っ込んでくる様子はない。
「ええい!またお前たちか!ことごとく我々の邪魔をしおって!」
テイマーが怒り、ドラゴン、フットベアーに指示を出す。
「何をしている!相手はたった四人だ!攻めかかれ!」
指示を聞くとフットベアー、そして赤竜が大きな体を動き始めた。
「おっとそうはさせぬぞ!」
ひと際大きな氷竜が俺たちの前に降り立つ。
「ユージ殿。遅れて申し訳ない。お客様の避難は終了した。ドラゴンの相手はお任せください!」
なんと王自ら来てくれた!
そのあとにも続々と氷竜族が加わってくる。
未だ数はあちらが多いがいつものことだ。
万全な環境で戦えたことなどない。
俺たちはいつも不利な状況をひっくり返してきたのだ。
「よし、俺たちはまずフットベアーの掃討に集中する。テイマーはできれば捕らえたいが・・。状況次第だ。」
「わかったわ!ぶっぱなすわよ!極光!」
アカネの極太の極光がフットベアーの集中していた場所を貫く。
あとには何も残っていない。
すさまじい威力だな。
「次は僕の番!氷槍フルパワー!」
数十個の氷槍が敵に降り注ぐ。
もう完全にものにしているみたいだな。
「赤竜よ!火炎で薙ぎ払え!」
テイマーからの指示が飛ぶ。
これはやばい。
「息吹!」
アイズが応じて炎の息吹を打ち消すがさすがに数十匹からの息吹を防ぐのは辛そうだ。
「アイズ!どうした!そんなことユージ殿たちを守れるのか!」
王の声がする。
アイズを励まし、自ら息吹を放つ。
王はひと際大きく息をため込むと、
「王の息吹!!」
とすさまじい威力の息吹を放った。
赤竜の息吹を押し返す。
そして次々と氷竜族が到着し、赤竜に対応し始めた。
一部は息吹の打ち合いから空中戦で鋭い爪牙をぶつけあっている。
戦況は・・互角だな・・。
氷竜の応援が来てくれたとはいえ、数はまだまだあちらの方が多い。
「フッ。これだけで終いとおもったか。いでよダークエルフ!」
テイマーの後方から褐色の体の、耳がややとんがっている人型の集団が出てきた。
魔獣以外も味方につけているのか!
「この前はブルータルウルフを魔法で一掃されたが・・、今回はそうはいかぬ!」
「いくら出てきたって同じことよ!複角度熱線!」
アカネの複数の熱線がダークエルフに襲い掛かる。
しかし・・なんと。
「魔力障壁!」
アカネの魔法がはじかれる。
これは・・魔族のハートレイが使った・・魔法を遮断する魔法!
確かエルフ族も魔法に優れているということだったな。
「くっ!でもこれならどう?極光!」
「これは・・!いかん!皆共同で複数の障壁を張れ!」
テイマーが指示を飛ばす。
ダークエルフたちが次々と魔法障壁を張りなおす。
アカネの極光は何重にも重ねられた魔法障壁を突き破ったがついに最後の数枚でその効果を失ってしまった。
「やるわね・・。でもまだまだこんなものじゃないわよ!」
「アカネ!魔力寮壁には物理攻撃だってキースが言ってた。僕にやらせて!」
アイズはそういうと
「氷槍!」
と唱えた。
今度は魔力障壁にさえぎられることもなく、一直線にダークエルフに向かう。
さすがにすべては避け切れずダークエルフの数人が倒れている。
「チッまったくやっかいな連中だな・・。」
テイマーがうめく。
魔法戦もやや膠着に入った。アイズが頑張っているが制圧には時間がかかるだろう。
「よし、今のうちにそこの男とヒーラーを仕留めてしまえ!」
テイマーが指示を出す。
おっと今度はこっちの番か。
もちろん剣などは持ってきていない。
「ホーンテッド!」
俺の手にはすぐさまホーンテッドが飛翔してきた。
さて、ライム道場で修業してきた成果を見せてやる!
「かかれ!」
テイマーの指示が飛ぶ。
俺は一歩踏み出すとまずは真空固定で剣に真空の属性をまとわせる。
これで切れ味は増したはずだ。
そして重力魔法付与。威力を上げた。
「さぁ、かかってこい!」
俺の声を聞き、数匹のフットベアーがかかってきた。
俺は体を舞のように動きながら、敵の攻撃を見切る!
ゴートン先生が教えてくれたサバキの動きだ。
そして心臓と思われる部分に剣を突き刺した!
「グァァ!」
試しに急所の位置をさぐりつつだったが・・うまく行ったようだ。
刺された一匹はゆっくりと崩れ落ちていく。
「この前は死にかけたが・・今度はそうはいかないぜ?」
俺は次々とフットベアーの攻撃をかわしながら突きで心臓を貫いていった。
「なんだあの男は・・前回と別人のようではないか!?」
テイマーが驚いたように目を見開く。
色々あったんだよ・・人も殺したしな・・。
俺の中で殺さなければ殺されるという考えができたのがあるかもしれない。
おかげで、今までどこかためらっていた攻撃に鋭さが増したのだろう。
俺は更に群れに突っ込んでは敵に一撃当て、敵が出てくると引き、一匹ずつ倒していった。前回ののテイマー戦でも使った武蔵の袋小路で戦う戦法だ。さすがに四方を囲まれたら対応しきれないからな。
「アカネ!こっちに来て援護してくれ!どの道、ダークエルフには魔法は通用しにくい!」
「!わかったわ!」
アカネがこっちに駆け寄ってくる。
ダークエルフはアイズに任せておけばしばらく大丈夫だろう。
「こっちなら遠慮なく殲滅できるわ!複角度熱線!」
アカネの魔法がフットベアーを焼き尽くす。
そして残った奴らを俺が倒していった。
「フッ。ダークエルフが魔法障壁だけだと思ったか?」
テイマーがニヤリと笑う。
「ダークエルフよ!そちらの3人に攻撃をせよ!」
やばい!
こちらに大量の雷閃が飛んできた。
「クッ!炎壁!」
アカネが炎壁を展開する。
だが、雷閃は貫通力があるためアカネの炎魔法では相性が悪い。
数本の雷線が俺たちを直撃した。
「グッ!」
俺はとっさにアイリスをかばうと攻撃を受けてしまった。
「ユージ君!」
「大丈夫だ・・ちょと腕と足をやられただけだ。」
雷線を防ぐため腕でカバーしたのだ。
アカネは風魔法でギリギリ避けていた。
「今治すね!ヒール!」
痛みが消えていく・・が足のダメージが抜けない。
「セレクテッド・・」
「おっとそうはさせない!」
再び雷閃が俺たちを襲う。
「グハッ!」
足のダメージで避け切れず今度は体に浴びてしまった。
「クッ・・」
「ふふふ・・前回はお前の妙な技で顔をさらしてしまったが・・今度はそうはいかぬ!」
「もう、集中できないじゃない。ええい!ヒール!」
なんとか体中から出ていた血が収まり痛みも引いていく。
見ると、アカネもかすった程度だがダメージを受けていた。
「ユージ殿!」
巨大な氷竜、王だ。俺たちの前に降り立つ。
「これからは一撃も加えさせん!この王の体、貫けるものなら貫いてみよ!」
助かった。少し息がつける。
ふと見るとアイズは優勢に戦闘を続けていた。
「氷槍!」
次々と俺たちを攻撃に回ったダークエルフ以外を仕留めていく。
今ならいけるか?
「アイリス、俺の足に最大パワーでヒールを頼む!」
「わかったよ!セレクテッド・ヒール!」
足の痛みが消えていく。
「アカネ、今ならダークエルフの数も減っている。もう一度あの太い熱線をたのむ。テイマーまでの道を開いてくれ!」
「!わかったわ!いくわよ!極光!!」
アカネの魔法によりテイマーまでの道が開けた。
何人かのダークエルフが防ぎに回ったようだが今度は防ぎきれなかったようだ。
「よし、いくぞ!」
俺はテイマーめがけて走り出す。もちろん風魔法の高速移動フル稼働だ。
「なんと・・なんというしぶとい奴らなのだ!」
テイマーがうめいている。
「お前も十分しぶといぜ!だが今回で終わりにさせてもらう!」
俺はテイマーに詰め寄っていく。
「ええい、ダークエルフよ!奴を撃て!」
またも雷閃が襲ってくる。だが俺は風魔法と体サバキを使いながらなんとかかわしていった。
それでも体に雷閃がかすめていく。熱い、痛い!
だが以前はここまでテイマーに迫れなかったのだ。今度こそ仕留めて見せる!
「クッ赤竜よ!我を乗せて・・」
テイマーが逃げ出そうとする。
「そうはさせない!」
「コール!宮本武蔵!」
俺の手に木刀が握られる。
捕らえるなら木刀の方がいいと思い、そうイメージしたのだ。
実際に武蔵も戦いに木刀を使用したことは多く、吉岡一門への初回訪問時や佐々木小次郎との戦いでは櫂を削った木刀で倒している。
俺は風魔法で飛び上がると
一気にテイマーの頭上を取った。
「喰らえっ!」
木刀が振り下ろされる。
そして・・テイマーの頭を打った。
殺さない程度に手加減はしている。捕らえるためだ。
「グッ・・ハァッ!」
テイマーは血を吐き出すとその場に崩れ落ちた。
そこで予想外のことが起きた。
赤竜が俺に突進してきて、テイマーの体を引きはがすと、あっという間に背中に乗せ、飛び去ってしまったのだ。
指示がなければ動かないんじゃなかったのか?
それとも前の指示が生きていたんだろうか?
俺は茫然としながら赤竜とテイマーのあとを見送っていた。
「ちょっとユージ!まだ敵は残ってるのよ!」
アカネの声に我に返った俺は敵の掃討に向かった。
テイマーの指示がなくなった敵はバラバラに戦い始めた。
「まとめていく!氷槍!」
アイズがダークエルフの群れを攻撃する。
俺とアカネはフットベアーに向かう。
フットベアーはだいぶ数を減らされていたがそれでもこちらに向かってくる。
「喰らえ!」
俺は片っ端からフットベアーを突き殺していった。
赤竜は、王を始めとした氷竜から押され始め徐々に押されていく。
テイマーがやられて引いたことで赤竜も引き始めたようだ。
どうやら終結が見えてきたな。
「アカネ!残りのフットベアーをやってくれ!」
「わかったわ!複角度熱線!」
アカネの攻撃でとどめを刺されたようにフットベアーはバラバラと逃げ始めた。
アイズの攻撃でダークエルフも引き始めた。
よし、こんなもんだろう。
「「「「敵が引いたぞ!」」」」
「「「「俺たちの勝ちだ!」」」」
敵が引いた後に皆は凱歌をあげていた。
ふぅ、今回も大変な戦いだったな・・
とコールが切れた俺はその場に倒れ伏していた。
雷閃のダメージがでかい。ちょっと立ち上がれそうもない。
しかし・・良かった。皆で作り上げたスキー場を守り抜くことができた・・。
「は、ここに。」
「敵の首魁はわかるか?」
「魔獣に囲まれていて困難です。」
仕方ない。
しかし、一体何が目的なんだ・・
そうか!ここは氷竜国、ローム帝国、そしてコルトン家の一大プロジェクトだ。
このおかげで氷竜国とローム帝国は同盟のような形になっている。
その事業をつぶそうというのか!
「アイズ、俺たちを乗せて敵の中心部に飛んでくれ!」
「わかった!」
アイズは俺、アカネ、アイズを乗せると一気に竜化し、飛翔した。
『ユージあの辺だと思う』
「ああ・・思った通りだ。」
そこにはフードを目深に被ったテイマーが佇んで魔獣に指示を出していた。
氷竜国、ローム王国、そしてコルトン家の力をつぎ込んだスキー場だ。
テロの目的としては最適だろう。
「ユージ、あれって・・?」
「ああ、やっぱりテイマーだ。今度はブルータル・ウルフから熊型の魔獣に変えたみたいだな。」
すると・・やはりいた。
テイマーの傍には赤竜が数十匹ほど主を守っている。
今回は大勢力だな・・。
「よし、いったん引き返そう。」
「わかった。全速力で戻る!」
スキー場は大混乱だった。
氷竜族の係員達が大急ぎでお客の誘導に働いている。
「氷竜族のみなさん。敵には赤竜が数十匹ほどいます。皆さんはお客様を赤竜から守って下さい!」
「あ、ああ、わかった!」
氷竜族が次々と竜化していく。
こうしてみると、氷竜と言っても大きさに違いがあったり、色味が薄くかかっていたり様々なんだな。
おっとそんなことを考えている場合じゃなかった。
「俺たちは敵の主力部分に攻撃をしかけます!どうかお客さまをよろしくお願いします。」
「任せてくれ!避難が完了したら我々も戦闘に参加するからな!」
「お願いします!」
そして、俺たちは敵の軍団の正面に降り立った。
大型のクマの魔獣、フットベアーは群れをなしてこちらを睥睨している。
その体は十メートルほどもあり、白い体毛で覆われている。
今のところテイマーの指示待ちのようだ。
「よし、まずはひと当てしてみよう。アカネ、アイズ頼む!」
「わかったわ!複角度熱線!」
クマの密集地にアカネの炎閃が複数突き刺さる。
複数のフットベアーが吹き飛んだ。
さすが威力を増しただけある。熱線はフットベアーを貫通していた。
「次は僕の番。息吹!」
アイズの極大の息吹がフットベアーに降りかかる。
・・しかし、見た目の通り寒冷系の魔法には耐性があるようで少し動きが鈍った程度だ。
「まだまだ!これはどう!氷槍!」
!これはヒューリックが使った技!・・氷の槍!
・・もう自分のものにしたのか。やるなアイズ。
氷の槍が雨あられと降り注ぐ。
今度は物理攻撃のため、あちこちで氷槍に貫かれて倒れ伏していくフットベアー達。
よし、これならいけそうだ。
「アイリス、近くまで来た奴はアンヒールを頼む。俺が仕留める」
「わかったよ!」
フットベアー達は俺たちの初撃にいささかたじろいだのか、こちらを見つつも突っ込んでくる様子はない。
「ええい!またお前たちか!ことごとく我々の邪魔をしおって!」
テイマーが怒り、ドラゴン、フットベアーに指示を出す。
「何をしている!相手はたった四人だ!攻めかかれ!」
指示を聞くとフットベアー、そして赤竜が大きな体を動き始めた。
「おっとそうはさせぬぞ!」
ひと際大きな氷竜が俺たちの前に降り立つ。
「ユージ殿。遅れて申し訳ない。お客様の避難は終了した。ドラゴンの相手はお任せください!」
なんと王自ら来てくれた!
そのあとにも続々と氷竜族が加わってくる。
未だ数はあちらが多いがいつものことだ。
万全な環境で戦えたことなどない。
俺たちはいつも不利な状況をひっくり返してきたのだ。
「よし、俺たちはまずフットベアーの掃討に集中する。テイマーはできれば捕らえたいが・・。状況次第だ。」
「わかったわ!ぶっぱなすわよ!極光!」
アカネの極太の極光がフットベアーの集中していた場所を貫く。
あとには何も残っていない。
すさまじい威力だな。
「次は僕の番!氷槍フルパワー!」
数十個の氷槍が敵に降り注ぐ。
もう完全にものにしているみたいだな。
「赤竜よ!火炎で薙ぎ払え!」
テイマーからの指示が飛ぶ。
これはやばい。
「息吹!」
アイズが応じて炎の息吹を打ち消すがさすがに数十匹からの息吹を防ぐのは辛そうだ。
「アイズ!どうした!そんなことユージ殿たちを守れるのか!」
王の声がする。
アイズを励まし、自ら息吹を放つ。
王はひと際大きく息をため込むと、
「王の息吹!!」
とすさまじい威力の息吹を放った。
赤竜の息吹を押し返す。
そして次々と氷竜族が到着し、赤竜に対応し始めた。
一部は息吹の打ち合いから空中戦で鋭い爪牙をぶつけあっている。
戦況は・・互角だな・・。
氷竜の応援が来てくれたとはいえ、数はまだまだあちらの方が多い。
「フッ。これだけで終いとおもったか。いでよダークエルフ!」
テイマーの後方から褐色の体の、耳がややとんがっている人型の集団が出てきた。
魔獣以外も味方につけているのか!
「この前はブルータルウルフを魔法で一掃されたが・・、今回はそうはいかぬ!」
「いくら出てきたって同じことよ!複角度熱線!」
アカネの複数の熱線がダークエルフに襲い掛かる。
しかし・・なんと。
「魔力障壁!」
アカネの魔法がはじかれる。
これは・・魔族のハートレイが使った・・魔法を遮断する魔法!
確かエルフ族も魔法に優れているということだったな。
「くっ!でもこれならどう?極光!」
「これは・・!いかん!皆共同で複数の障壁を張れ!」
テイマーが指示を飛ばす。
ダークエルフたちが次々と魔法障壁を張りなおす。
アカネの極光は何重にも重ねられた魔法障壁を突き破ったがついに最後の数枚でその効果を失ってしまった。
「やるわね・・。でもまだまだこんなものじゃないわよ!」
「アカネ!魔力寮壁には物理攻撃だってキースが言ってた。僕にやらせて!」
アイズはそういうと
「氷槍!」
と唱えた。
今度は魔力障壁にさえぎられることもなく、一直線にダークエルフに向かう。
さすがにすべては避け切れずダークエルフの数人が倒れている。
「チッまったくやっかいな連中だな・・。」
テイマーがうめく。
魔法戦もやや膠着に入った。アイズが頑張っているが制圧には時間がかかるだろう。
「よし、今のうちにそこの男とヒーラーを仕留めてしまえ!」
テイマーが指示を出す。
おっと今度はこっちの番か。
もちろん剣などは持ってきていない。
「ホーンテッド!」
俺の手にはすぐさまホーンテッドが飛翔してきた。
さて、ライム道場で修業してきた成果を見せてやる!
「かかれ!」
テイマーの指示が飛ぶ。
俺は一歩踏み出すとまずは真空固定で剣に真空の属性をまとわせる。
これで切れ味は増したはずだ。
そして重力魔法付与。威力を上げた。
「さぁ、かかってこい!」
俺の声を聞き、数匹のフットベアーがかかってきた。
俺は体を舞のように動きながら、敵の攻撃を見切る!
ゴートン先生が教えてくれたサバキの動きだ。
そして心臓と思われる部分に剣を突き刺した!
「グァァ!」
試しに急所の位置をさぐりつつだったが・・うまく行ったようだ。
刺された一匹はゆっくりと崩れ落ちていく。
「この前は死にかけたが・・今度はそうはいかないぜ?」
俺は次々とフットベアーの攻撃をかわしながら突きで心臓を貫いていった。
「なんだあの男は・・前回と別人のようではないか!?」
テイマーが驚いたように目を見開く。
色々あったんだよ・・人も殺したしな・・。
俺の中で殺さなければ殺されるという考えができたのがあるかもしれない。
おかげで、今までどこかためらっていた攻撃に鋭さが増したのだろう。
俺は更に群れに突っ込んでは敵に一撃当て、敵が出てくると引き、一匹ずつ倒していった。前回ののテイマー戦でも使った武蔵の袋小路で戦う戦法だ。さすがに四方を囲まれたら対応しきれないからな。
「アカネ!こっちに来て援護してくれ!どの道、ダークエルフには魔法は通用しにくい!」
「!わかったわ!」
アカネがこっちに駆け寄ってくる。
ダークエルフはアイズに任せておけばしばらく大丈夫だろう。
「こっちなら遠慮なく殲滅できるわ!複角度熱線!」
アカネの魔法がフットベアーを焼き尽くす。
そして残った奴らを俺が倒していった。
「フッ。ダークエルフが魔法障壁だけだと思ったか?」
テイマーがニヤリと笑う。
「ダークエルフよ!そちらの3人に攻撃をせよ!」
やばい!
こちらに大量の雷閃が飛んできた。
「クッ!炎壁!」
アカネが炎壁を展開する。
だが、雷閃は貫通力があるためアカネの炎魔法では相性が悪い。
数本の雷線が俺たちを直撃した。
「グッ!」
俺はとっさにアイリスをかばうと攻撃を受けてしまった。
「ユージ君!」
「大丈夫だ・・ちょと腕と足をやられただけだ。」
雷線を防ぐため腕でカバーしたのだ。
アカネは風魔法でギリギリ避けていた。
「今治すね!ヒール!」
痛みが消えていく・・が足のダメージが抜けない。
「セレクテッド・・」
「おっとそうはさせない!」
再び雷閃が俺たちを襲う。
「グハッ!」
足のダメージで避け切れず今度は体に浴びてしまった。
「クッ・・」
「ふふふ・・前回はお前の妙な技で顔をさらしてしまったが・・今度はそうはいかぬ!」
「もう、集中できないじゃない。ええい!ヒール!」
なんとか体中から出ていた血が収まり痛みも引いていく。
見ると、アカネもかすった程度だがダメージを受けていた。
「ユージ殿!」
巨大な氷竜、王だ。俺たちの前に降り立つ。
「これからは一撃も加えさせん!この王の体、貫けるものなら貫いてみよ!」
助かった。少し息がつける。
ふと見るとアイズは優勢に戦闘を続けていた。
「氷槍!」
次々と俺たちを攻撃に回ったダークエルフ以外を仕留めていく。
今ならいけるか?
「アイリス、俺の足に最大パワーでヒールを頼む!」
「わかったよ!セレクテッド・ヒール!」
足の痛みが消えていく。
「アカネ、今ならダークエルフの数も減っている。もう一度あの太い熱線をたのむ。テイマーまでの道を開いてくれ!」
「!わかったわ!いくわよ!極光!!」
アカネの魔法によりテイマーまでの道が開けた。
何人かのダークエルフが防ぎに回ったようだが今度は防ぎきれなかったようだ。
「よし、いくぞ!」
俺はテイマーめがけて走り出す。もちろん風魔法の高速移動フル稼働だ。
「なんと・・なんというしぶとい奴らなのだ!」
テイマーがうめいている。
「お前も十分しぶといぜ!だが今回で終わりにさせてもらう!」
俺はテイマーに詰め寄っていく。
「ええい、ダークエルフよ!奴を撃て!」
またも雷閃が襲ってくる。だが俺は風魔法と体サバキを使いながらなんとかかわしていった。
それでも体に雷閃がかすめていく。熱い、痛い!
だが以前はここまでテイマーに迫れなかったのだ。今度こそ仕留めて見せる!
「クッ赤竜よ!我を乗せて・・」
テイマーが逃げ出そうとする。
「そうはさせない!」
「コール!宮本武蔵!」
俺の手に木刀が握られる。
捕らえるなら木刀の方がいいと思い、そうイメージしたのだ。
実際に武蔵も戦いに木刀を使用したことは多く、吉岡一門への初回訪問時や佐々木小次郎との戦いでは櫂を削った木刀で倒している。
俺は風魔法で飛び上がると
一気にテイマーの頭上を取った。
「喰らえっ!」
木刀が振り下ろされる。
そして・・テイマーの頭を打った。
殺さない程度に手加減はしている。捕らえるためだ。
「グッ・・ハァッ!」
テイマーは血を吐き出すとその場に崩れ落ちた。
そこで予想外のことが起きた。
赤竜が俺に突進してきて、テイマーの体を引きはがすと、あっという間に背中に乗せ、飛び去ってしまったのだ。
指示がなければ動かないんじゃなかったのか?
それとも前の指示が生きていたんだろうか?
俺は茫然としながら赤竜とテイマーのあとを見送っていた。
「ちょっとユージ!まだ敵は残ってるのよ!」
アカネの声に我に返った俺は敵の掃討に向かった。
テイマーの指示がなくなった敵はバラバラに戦い始めた。
「まとめていく!氷槍!」
アイズがダークエルフの群れを攻撃する。
俺とアカネはフットベアーに向かう。
フットベアーはだいぶ数を減らされていたがそれでもこちらに向かってくる。
「喰らえ!」
俺は片っ端からフットベアーを突き殺していった。
赤竜は、王を始めとした氷竜から押され始め徐々に押されていく。
テイマーがやられて引いたことで赤竜も引き始めたようだ。
どうやら終結が見えてきたな。
「アカネ!残りのフットベアーをやってくれ!」
「わかったわ!複角度熱線!」
アカネの攻撃でとどめを刺されたようにフットベアーはバラバラと逃げ始めた。
アイズの攻撃でダークエルフも引き始めた。
よし、こんなもんだろう。
「「「「敵が引いたぞ!」」」」
「「「「俺たちの勝ちだ!」」」」
敵が引いた後に皆は凱歌をあげていた。
ふぅ、今回も大変な戦いだったな・・
とコールが切れた俺はその場に倒れ伏していた。
雷閃のダメージがでかい。ちょっと立ち上がれそうもない。
しかし・・良かった。皆で作り上げたスキー場を守り抜くことができた・・。
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世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
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