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第四章
龍翔
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とある日。
俺達Bクラスは午後の授業へと校庭に向かっていた。
ダース達と話しながら廊下を歩く。
すると・・
ガツンッ
「イテッ!」
ダースが正面から来た大柄な男にぶつかってしまう。
「おいおい、どこ見てやがんだ?」
ダースが憤慨して男を睨みつける。
ダースも大柄だが、男はそれ以上だ。
とても中等部の生徒とは思えない。
身長は190cmはあるだろうか?
その体に筋肉の鎧をまとっているといった風情だ。
「おいおい、人にぶつかっておいて詫びの一言もねぇのかよ!」
ダースが食って掛かる。
大柄のポール、小柄のハウストもその男を囲む。
「ぶつかってきたのはそちらであろう。我は歩いていただけだ。」
男が答える。
「てめぇ・・この学園で俺にそんな口きけるのはいないんだぜ?」
ダースが素早く腰の木刀を抜く。
午後の授業は武術だったため、みなそれぞれ自分の武器を準備していたのだ。
「ふん・・くだらぬ。ならばかかってくるがいい。」
!
「ダース!やめとけ!」
俺は男のただならぬ雰囲気を感じてダースを止めに入る。
「もう止まらねぇなぁ?てめぇ、ちっと体がでかいからって調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
完全に頭に血が上っている。
ダースが木刀で男を殴りかかる。
「くだらぬ、と申した。」
バキッ!
男はなんと素手でダースの木刀を受け止め、叩き折っていた。
・・なんだこの男は?
「て・・てめぇ・・俺の木刀を・・おい、ポール、ハウスト、やるぞ!」
ポールが木の槍を、ハウストが素手で木製のナイフをそれぞれ構える。
「ちっとばかし怪我してもらうぜ・・」
ダースが獰猛な目になる。
「「くらぇっ!」」
ポール、ハウストが襲い掛かる。
「くだらぬ、と申した。」
男は槍を叩き割り、ナイフを指でつまんでいた。
指でつまむなんて・・あのハウストの早いナイフを・・。可能なのか?
「て・・てめぇ!」
ダースがしびれを切らし、男になぐりかかる。
バキッ!
男は軽くダースの拳をさばくと、逆に男の拳がダースの脇腹にめり込んでいた。
「グ・・ハァッ・・!」
ダースが血を吐いて倒れる。
「ダース君!」
アイリスが慌てて駆け寄ってヒールをかける。
一撃・・あのダースが・・何も魔術など使っているように見えなかった。もちろんコールなども使っていない。
「それ、そこの二人はどうする?まだかかってくるか?」
ポールとハウストは完全に男に呑まれ立ちすくんでいた。
「ひどい・・肋骨がバラバラだよ・・」
アイリスが必死にヒールをかける。
「おい・・ここまでする必要はなかったんじゃないか?」
俺が言うと、
「なんだ貴様は?ほう、その腰の剣、黒髪黒憧・・貴様がユージ・ミカヅチとやらか。」
「ああ、そうだが・・あんたは何者だ?」
「我はSクラスの龍翔。転移者だ。最近この学園に転入してきたものだ。」
!アカネが言っていた奴か!
「ふむ・・そのうち挨拶に出向こうと思っていたところだ。ちょうどいい。今度我につきあえ。」
「・・仕方ないな。」
ダースのこともある。少し痛い目にあってもらうか。
「ではな。楽しみにしているぞ。」
龍翔はそう言うと立ち去っていった。
「これは・・私だけじゃ厳しいかも・・医務室へ!先生の助けをかりるよ!」
アイリスが叫ぶ。
ポールとハウストが慌ててダースをかつぎあげる。
ダースが苦しそうにうめいている。
「肋骨がひどいことになってるから患部にさわらないで・・できるだけ体も動かさないで。」
アイリスはそういいつつもヒールをかけ続ける。
「な・・なんてことですの・・?あのダースさんが・・」
レインが驚く。
「あの男の動き・・かなり熟練した武術の使い手と見た。ユージ気を付けるのだぞ。」
フレンダが驚いたように言う。
「ああ、何が起きたのかさっぱりだったが・・とりあえず放課後会ってみる。」
俺達は急いでダースを医務室に連れて行くと、アイリスを残し、先生に報告に言った。
・・・
「うーん・・龍翔君か・・彼は少し特別なんだよね・・学園長からも彼には手を出さないように注意があった。君たちにもっと早く伝えておくべきだったよ。」
「特別ってどういうことですか?」
「彼は王都から特別に編入してきた学生なんだ。ユージ君と同じく転移者で・・王都では早くも士官候補生の声があがってるそうだ。」
「中等部で士官候補生ですか?」
「それだけ彼の実力が飛びぬけているということだよ。将来を嘱望されている学生だ。」
・・そんな奴だったのか。
警戒心が跳ね上がった。
・・・
放課後。
俺がアカネ、アイリスとクラブに行こうとしていると龍翔が早速あらわれた。
「昼間はご苦労だったな。あの男は無事だったか?」
「ああ・・肋骨が折れていたが・・なんとかなったよ。」
「ふん。殺さなかっただけ、ありがたいと思え。」
「ちょっと・・あなたやりすぎじゃない?ここは学園なのよ?」
アカネが食って掛かる。
「龍翔くん・・あれは・・やり過ぎだよ・・ダース君しばらく起き上がれないんじゃないかな。」
治療で疲れた顔を見せるアイリス。
「龍翔・・あんたは転移者だと聞いた。その、名前からして日本じゃないようだが、中国かどこかか?」
「ああ、我は中国の出身だ。元々軍部の特殊部隊に籍を置いていた。お前のような平和な国で何不自由なく育ったものとは違う。」
「その・・俺と同じように力を与えてもらったのか?」
龍翔はフッと笑うと
「ああ、我もお前と同じように力を与えられた。ただお前と異なるのは剣ではなく、英雄の能力自体をこの体に宿したことだ。」
「それで・・俺になんの用なんだ?」
「決まっておろう?試合だ。ああ、そこのヒール使いは残しておいた方がいいぞ?下手すると死んでしまうからな。」
と龍翔はアイリスを指さす。
「言われなくてもいるよ?でも・・怪我しないでね、ユージ君・・。」
アイリスが心配そうに言う。
「ユージに何かあったら許さないわよ!」
アカネが噛みつく。
「ふむ・・お主は魔術使いか?誰が相手でも同じだが。何なら一緒にかかってくるか?」
「そんな必要はない。俺一人で十分だ!」
「フッ。はじめから全力で来い。その剣も使え。我はそうだな・・この体だけで十分だろう。」
龍翔はそういうと俺に向けて自然体に構えた。
「武器も使わないのか?怪我してもしらないぞ?」
「必要ない。さぁ。かかってくるがいい。全力でな。」
俺はホーンテッドを抜くと、
「ならば・・全力で行かせてもらうぞ!真空!固定!そして・・重力付与!」
「ほう、剣の長さを伸ばし、威力を増す魔法か。なかなか考えているようだな。」
「まだだ!コール宮本武蔵!」
剣が木刀に変わる。素手の相手に真剣で切りつけるわけにはいかないからな。
「フッならばこちらは・・コール!李書文!」
!李書文だと?八極拳の使い手で常に対戦相手に怪我をさせ、殺傷してしまうこともあったため、李狠子とあだ名された達人じゃないか・・。
龍翔はコールも使えるのか・・。
「では、かかってこい。」
「いくぞ!」
俺は木刀を振り上げると上段から龍翔に切りかかった。
龍翔は軽くバックステップしてかわす。
「!ならばこれはどうだ!コール!沖田総司!」
俺は高速の突きを龍翔に繰り出す。
「ほう、これは・・速度は中々のものだな。」
こんどは軽く体を捻って俺の突きをかわす。
更に剣を上に腕で跳ね上げられた。
くっ!強い・・
「これはどうだ!柳生宗矩!」
今度は連続の切り上げ、切り下げ、突きなど様々な技を繰り出す。
そのことごとくがかわさて、いなされ、はじかれる。
「木刀では話にならん。真剣でこい。」
「!なんだと・・危険じゃないか・・」
「我にとっては危険ではない。銃弾の雨をもくぐってきたのだ。」
「ならば・・もう一度、コール!宮本武蔵!」
今度は真剣だ。
ただ、殺すわけにはいかないから、アイリスの治療が及ぶ範囲でやってやろう。
俺は相手の正面から切り下げた。
「甘いな・・お主のコールした英雄の技は見事なものだが、それを使うお主自身がなっていない。」
今度はなんと素手で真剣を横にさばくと俺の懐にはいってきた。
「ぬぅん!!」
強烈な突きが俺の腹にめり込む。
「ぐっはぁぁあ!」
俺は倒れこんだ。
一瞬で体が全身しびれたように動かなくなった。
こんなダメージを素手で喰らうとは・・
龍翔は痙攣している俺を見下ろすと、
「今回は我も武器を使わなかったが・・武器を使えばその差はさらに開くだろう。お主との我との間にはそれほどの実力差がある。」
と言って立ち去ろうとした。
「まちなさいよ!」
アカネが立ちふさがった。
「ならば魔法はどうかしら?複角度熱線!」
複数の熱線が上空から多角度で龍翔に襲い掛かる。
「ふむ。炎魔法か。なかなかやるようだな。しかし・・魔力障壁!」
!魔力障壁まで使えるのか!
しかもアカネの多角からの複数熱線に対応したように円形のドーム状に龍翔を包んでいる。
アカネの熱線はことごとく障壁に阻まれていた。
「なんてやつなの・・?」
「どうした?これで終わりか?」
「!まだよ!これは防げる?極光!」
アカネの最大威力の極閃が放たれる。
「ほうこれは・・魔力障壁では厳しいようだな。」
龍翔はそう言うと体に風をまとわせ、高速で移動し、魔法をかわしていた。
・・これは・・風魔法か?それもかなりのレベルだ・・
「女を傷つけるのは気が進まんが・・まぁ軽く攻撃しておこうか。」
龍翔はそういうと、高速でアカネに接近し、首に手刀を落とした。
「くうっ・・」
アカネは意識を刈り取られ、倒れ落ちる。
・・なんて強さだ。
俺の様々な剣豪たちの攻撃をさばき切り、アカネの魔法まで・・。
「何も驚くことはない。もともとの身体能力が違うのだ。その上に我は剣豪・英雄・達人たちの力を乗せることができる。なお、我のコール時間は一時間だ。その間耐えきれれば倒せるかもしれぬぞ?」
と言って笑った。
俺は倒れつつ、その話を聞いていた。
一時間だと?
俺は修業してようやく3分強になったというのに・・。
これがもともとの体力差、実力差か・・。
「さぁ。そこの娘よ。ヒールをかけてやるがいい。」
「言われなくてもやります!ユージ君!アカネ!しっかり!ヒール!」
アイリスが全開のヒールを俺たちにかける。
「う・・うぅん・・」
良かった・・アカネが目を覚ましたようだ。
俺も腹の痛みを抱えながらなんとか立ち上がる。
「ふっ。同じ転移者と聞いて少しは期待していたのだが、こんなものか。言っておくが手加減しなければおぬしらは死んでいたぞ。」
龍翔はそう言うときびすを返して立ち去っていった。
・・こんな・・こんなことは初めてだ。
今まではどんなに苦戦しても剣豪たちの力を借りればなんとかなった。
それがダメでもアカネやアイズの協力のもと、敵を倒してきた。
しかし、今回は・・
圧倒的な敗北感。
何をやっても通じないという無力感。
俺は打ちのめされていた・・。
俺達Bクラスは午後の授業へと校庭に向かっていた。
ダース達と話しながら廊下を歩く。
すると・・
ガツンッ
「イテッ!」
ダースが正面から来た大柄な男にぶつかってしまう。
「おいおい、どこ見てやがんだ?」
ダースが憤慨して男を睨みつける。
ダースも大柄だが、男はそれ以上だ。
とても中等部の生徒とは思えない。
身長は190cmはあるだろうか?
その体に筋肉の鎧をまとっているといった風情だ。
「おいおい、人にぶつかっておいて詫びの一言もねぇのかよ!」
ダースが食って掛かる。
大柄のポール、小柄のハウストもその男を囲む。
「ぶつかってきたのはそちらであろう。我は歩いていただけだ。」
男が答える。
「てめぇ・・この学園で俺にそんな口きけるのはいないんだぜ?」
ダースが素早く腰の木刀を抜く。
午後の授業は武術だったため、みなそれぞれ自分の武器を準備していたのだ。
「ふん・・くだらぬ。ならばかかってくるがいい。」
!
「ダース!やめとけ!」
俺は男のただならぬ雰囲気を感じてダースを止めに入る。
「もう止まらねぇなぁ?てめぇ、ちっと体がでかいからって調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
完全に頭に血が上っている。
ダースが木刀で男を殴りかかる。
「くだらぬ、と申した。」
バキッ!
男はなんと素手でダースの木刀を受け止め、叩き折っていた。
・・なんだこの男は?
「て・・てめぇ・・俺の木刀を・・おい、ポール、ハウスト、やるぞ!」
ポールが木の槍を、ハウストが素手で木製のナイフをそれぞれ構える。
「ちっとばかし怪我してもらうぜ・・」
ダースが獰猛な目になる。
「「くらぇっ!」」
ポール、ハウストが襲い掛かる。
「くだらぬ、と申した。」
男は槍を叩き割り、ナイフを指でつまんでいた。
指でつまむなんて・・あのハウストの早いナイフを・・。可能なのか?
「て・・てめぇ!」
ダースがしびれを切らし、男になぐりかかる。
バキッ!
男は軽くダースの拳をさばくと、逆に男の拳がダースの脇腹にめり込んでいた。
「グ・・ハァッ・・!」
ダースが血を吐いて倒れる。
「ダース君!」
アイリスが慌てて駆け寄ってヒールをかける。
一撃・・あのダースが・・何も魔術など使っているように見えなかった。もちろんコールなども使っていない。
「それ、そこの二人はどうする?まだかかってくるか?」
ポールとハウストは完全に男に呑まれ立ちすくんでいた。
「ひどい・・肋骨がバラバラだよ・・」
アイリスが必死にヒールをかける。
「おい・・ここまでする必要はなかったんじゃないか?」
俺が言うと、
「なんだ貴様は?ほう、その腰の剣、黒髪黒憧・・貴様がユージ・ミカヅチとやらか。」
「ああ、そうだが・・あんたは何者だ?」
「我はSクラスの龍翔。転移者だ。最近この学園に転入してきたものだ。」
!アカネが言っていた奴か!
「ふむ・・そのうち挨拶に出向こうと思っていたところだ。ちょうどいい。今度我につきあえ。」
「・・仕方ないな。」
ダースのこともある。少し痛い目にあってもらうか。
「ではな。楽しみにしているぞ。」
龍翔はそう言うと立ち去っていった。
「これは・・私だけじゃ厳しいかも・・医務室へ!先生の助けをかりるよ!」
アイリスが叫ぶ。
ポールとハウストが慌ててダースをかつぎあげる。
ダースが苦しそうにうめいている。
「肋骨がひどいことになってるから患部にさわらないで・・できるだけ体も動かさないで。」
アイリスはそういいつつもヒールをかけ続ける。
「な・・なんてことですの・・?あのダースさんが・・」
レインが驚く。
「あの男の動き・・かなり熟練した武術の使い手と見た。ユージ気を付けるのだぞ。」
フレンダが驚いたように言う。
「ああ、何が起きたのかさっぱりだったが・・とりあえず放課後会ってみる。」
俺達は急いでダースを医務室に連れて行くと、アイリスを残し、先生に報告に言った。
・・・
「うーん・・龍翔君か・・彼は少し特別なんだよね・・学園長からも彼には手を出さないように注意があった。君たちにもっと早く伝えておくべきだったよ。」
「特別ってどういうことですか?」
「彼は王都から特別に編入してきた学生なんだ。ユージ君と同じく転移者で・・王都では早くも士官候補生の声があがってるそうだ。」
「中等部で士官候補生ですか?」
「それだけ彼の実力が飛びぬけているということだよ。将来を嘱望されている学生だ。」
・・そんな奴だったのか。
警戒心が跳ね上がった。
・・・
放課後。
俺がアカネ、アイリスとクラブに行こうとしていると龍翔が早速あらわれた。
「昼間はご苦労だったな。あの男は無事だったか?」
「ああ・・肋骨が折れていたが・・なんとかなったよ。」
「ふん。殺さなかっただけ、ありがたいと思え。」
「ちょっと・・あなたやりすぎじゃない?ここは学園なのよ?」
アカネが食って掛かる。
「龍翔くん・・あれは・・やり過ぎだよ・・ダース君しばらく起き上がれないんじゃないかな。」
治療で疲れた顔を見せるアイリス。
「龍翔・・あんたは転移者だと聞いた。その、名前からして日本じゃないようだが、中国かどこかか?」
「ああ、我は中国の出身だ。元々軍部の特殊部隊に籍を置いていた。お前のような平和な国で何不自由なく育ったものとは違う。」
「その・・俺と同じように力を与えてもらったのか?」
龍翔はフッと笑うと
「ああ、我もお前と同じように力を与えられた。ただお前と異なるのは剣ではなく、英雄の能力自体をこの体に宿したことだ。」
「それで・・俺になんの用なんだ?」
「決まっておろう?試合だ。ああ、そこのヒール使いは残しておいた方がいいぞ?下手すると死んでしまうからな。」
と龍翔はアイリスを指さす。
「言われなくてもいるよ?でも・・怪我しないでね、ユージ君・・。」
アイリスが心配そうに言う。
「ユージに何かあったら許さないわよ!」
アカネが噛みつく。
「ふむ・・お主は魔術使いか?誰が相手でも同じだが。何なら一緒にかかってくるか?」
「そんな必要はない。俺一人で十分だ!」
「フッ。はじめから全力で来い。その剣も使え。我はそうだな・・この体だけで十分だろう。」
龍翔はそういうと俺に向けて自然体に構えた。
「武器も使わないのか?怪我してもしらないぞ?」
「必要ない。さぁ。かかってくるがいい。全力でな。」
俺はホーンテッドを抜くと、
「ならば・・全力で行かせてもらうぞ!真空!固定!そして・・重力付与!」
「ほう、剣の長さを伸ばし、威力を増す魔法か。なかなか考えているようだな。」
「まだだ!コール宮本武蔵!」
剣が木刀に変わる。素手の相手に真剣で切りつけるわけにはいかないからな。
「フッならばこちらは・・コール!李書文!」
!李書文だと?八極拳の使い手で常に対戦相手に怪我をさせ、殺傷してしまうこともあったため、李狠子とあだ名された達人じゃないか・・。
龍翔はコールも使えるのか・・。
「では、かかってこい。」
「いくぞ!」
俺は木刀を振り上げると上段から龍翔に切りかかった。
龍翔は軽くバックステップしてかわす。
「!ならばこれはどうだ!コール!沖田総司!」
俺は高速の突きを龍翔に繰り出す。
「ほう、これは・・速度は中々のものだな。」
こんどは軽く体を捻って俺の突きをかわす。
更に剣を上に腕で跳ね上げられた。
くっ!強い・・
「これはどうだ!柳生宗矩!」
今度は連続の切り上げ、切り下げ、突きなど様々な技を繰り出す。
そのことごとくがかわさて、いなされ、はじかれる。
「木刀では話にならん。真剣でこい。」
「!なんだと・・危険じゃないか・・」
「我にとっては危険ではない。銃弾の雨をもくぐってきたのだ。」
「ならば・・もう一度、コール!宮本武蔵!」
今度は真剣だ。
ただ、殺すわけにはいかないから、アイリスの治療が及ぶ範囲でやってやろう。
俺は相手の正面から切り下げた。
「甘いな・・お主のコールした英雄の技は見事なものだが、それを使うお主自身がなっていない。」
今度はなんと素手で真剣を横にさばくと俺の懐にはいってきた。
「ぬぅん!!」
強烈な突きが俺の腹にめり込む。
「ぐっはぁぁあ!」
俺は倒れこんだ。
一瞬で体が全身しびれたように動かなくなった。
こんなダメージを素手で喰らうとは・・
龍翔は痙攣している俺を見下ろすと、
「今回は我も武器を使わなかったが・・武器を使えばその差はさらに開くだろう。お主との我との間にはそれほどの実力差がある。」
と言って立ち去ろうとした。
「まちなさいよ!」
アカネが立ちふさがった。
「ならば魔法はどうかしら?複角度熱線!」
複数の熱線が上空から多角度で龍翔に襲い掛かる。
「ふむ。炎魔法か。なかなかやるようだな。しかし・・魔力障壁!」
!魔力障壁まで使えるのか!
しかもアカネの多角からの複数熱線に対応したように円形のドーム状に龍翔を包んでいる。
アカネの熱線はことごとく障壁に阻まれていた。
「なんてやつなの・・?」
「どうした?これで終わりか?」
「!まだよ!これは防げる?極光!」
アカネの最大威力の極閃が放たれる。
「ほうこれは・・魔力障壁では厳しいようだな。」
龍翔はそう言うと体に風をまとわせ、高速で移動し、魔法をかわしていた。
・・これは・・風魔法か?それもかなりのレベルだ・・
「女を傷つけるのは気が進まんが・・まぁ軽く攻撃しておこうか。」
龍翔はそういうと、高速でアカネに接近し、首に手刀を落とした。
「くうっ・・」
アカネは意識を刈り取られ、倒れ落ちる。
・・なんて強さだ。
俺の様々な剣豪たちの攻撃をさばき切り、アカネの魔法まで・・。
「何も驚くことはない。もともとの身体能力が違うのだ。その上に我は剣豪・英雄・達人たちの力を乗せることができる。なお、我のコール時間は一時間だ。その間耐えきれれば倒せるかもしれぬぞ?」
と言って笑った。
俺は倒れつつ、その話を聞いていた。
一時間だと?
俺は修業してようやく3分強になったというのに・・。
これがもともとの体力差、実力差か・・。
「さぁ。そこの娘よ。ヒールをかけてやるがいい。」
「言われなくてもやります!ユージ君!アカネ!しっかり!ヒール!」
アイリスが全開のヒールを俺たちにかける。
「う・・うぅん・・」
良かった・・アカネが目を覚ましたようだ。
俺も腹の痛みを抱えながらなんとか立ち上がる。
「ふっ。同じ転移者と聞いて少しは期待していたのだが、こんなものか。言っておくが手加減しなければおぬしらは死んでいたぞ。」
龍翔はそう言うときびすを返して立ち去っていった。
・・こんな・・こんなことは初めてだ。
今まではどんなに苦戦しても剣豪たちの力を借りればなんとかなった。
それがダメでもアカネやアイズの協力のもと、敵を倒してきた。
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