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第四章
打倒龍翔へ
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傷も癒えた俺はライム道場へ顔を出していた・
ゴートン先生が待ち構えていた。
「ほう、ようやく復帰か。本当に君は怪我が絶えん男だな。」
「はは・・お恥ずかしい限りです。」
「そうだな。フレンダからおおよそのことは聞いているが、ホーリー聖教皇国での話から聞こうか。」
俺はそこで皇国であったこと、戦闘を含め、詳細に先生に話した。
「ふむ・・そのエルフ達が使ったのは瞬動ではないな。」
「え?あの速度で瞬動ではないんですか?」
「瞬動とは意識の外から攻撃するものではない。相手が意識してなお、防げないものだ。今回のエルフの攻撃は不意打ちに近い形だな。」
「そうだったんですか・・。」
「しかし、その龍翔という男は近いものを使えるかもしれんな。フレンダから聞いた限りでは並みの体術ではないようだ。」
「はい・・僕のコール・・英雄を身にまとう技を使っても、なすすべなくやられました。」
「そのコールに差があったのは思えぬ。差があったのは基礎的な体術であろう?違うか?」
「はい・・その通りだと思います。体格、体力、技、経験、全てにおいて僕以上でした。」
「ふむ・・その男は並々ならぬ者のようだな。」
「はい。僕のいたところでのシノビのようなことをやっていたようです。銃・・鉛玉をはじき出す武器ですが、その中で生き抜いてきたようです。」
「銃のことは知っておる。カーティス皇国などで使われている武器であろう?ロームでも軍が装備している。」
「は・・はい。私の世界では個人戦では最強の武器かと思いますが・・その中で戦っていたようです。」
「ふむ・・戦場経験は大幅な実力の向上になる。手ごわそうだの。」
「はい、私のすべてをぶつけましたが、軽くあしわられてしまいまいsた。」
「とりあえず、今後は瞬動の稽古を集中して行う。少しでもその男に対抗したのならば死ぬ気でついてこい。」
「はい!よろしくお願いいたします。」
その日から瞬動の本格的な修練が始まった。
「まだ遅い!足の運びはこうだ。それでは敵の反撃を許すぞ!」
「はい!」
「ダメだ!足腰が付いて行ってない!全力の脱力だ!そのうえで速度を意識せよ!」
難しい。
脱力を意識すると次の動きに遅れが出るし、動き初めに意識を持っていくと脱力がおろそかになる。
「自分を水のように意識せよ!何にでも対応可能なイメージを持て!」
「はい!」
・・そうして瞬動の訓練は続いていった。
・・・
そしてライム道場での稽古が終わると寮に戻り、自己鍛錬を始める。
俺はコールについても一つ考えが浮かんでいた。
これが可能になれば・・
俺は隣の部屋のアイズにお願いして。倒れた俺をまた部屋まで運んでくれるようにお願いしておいた。
「ユージ、また新しいこと始めるの?」
「ああ、今まではコールの時間を延ばすことに集中していたが、少し方向性を変える。」
「そう。また倒れたら運んであげる。」
「ああ、頼む。」
そうして俺は新しいコールの修練に没頭していった。
――――――――
そんなある日。
Sクラスの教室にて。
「よう、久々に学園に来たらやたらえらい強い奴が来たって話じゃねぇか?少し俺と遊ぼうぜ?」
ウルヴァンが龍翔にそう持ち掛けていた。
「我はいつでも構わん。何ならここでやっても構わん。」
「ここは人目があるからなぁ・・そうだな。迎えに行くから放課後でどうだ?」
「いつでも、どこでも構わん。挑戦はいつでも受ける。」
「ハッ!こりゃあ大した転校生だぜ?まぁその体が見掛け倒しだけじゃないことを祈ってるぜ!」
ウルヴァンはそういうと自分の席へ戻っていった。
俺はその話をアカネから聞いていた。
「今回はウルヴァンも相手にならないかもしれない・・」
「え?あのウルヴァンよ?いい勝負くらいにはなるんじゃないの?」
「そうだといいがな・・とりあえず、俺達もついていこう。念のため、アイリスもだ。」
「もう最近怪我人が多くて大変だよ。」
珍しくアイリスがぼやく。
「まぁ、あの龍翔の攻撃力には下手すると死人が出るからな。アイリスのヒールがないと心配だ。」
「人を救えるのは嫌じゃないけど・・ケガする人を見るのは嫌だなぁ・・」
「まぁ、そういわずに付いていこう。ウルヴァンが心配だ。」
かつて俺を完膚なきまでにメンタルブレイクで倒したウルヴァンだったが、龍翔相手に通じるものだろうか。
俺は心配しつつも興味が出てくるのを抑えきれなかった。
放課後、アカネからウルヴァンに話をしてもらい、俺達はウルヴァンに付いていった。
「全くぞろぞろとついてきやがってよぅ・・?そんなに龍翔が心配か?」
「いや・・心配なのはお前の方だ、ウルヴァン。」
「ハッ俺もなめられたもんだなぁ?いっとくが手加減はしねーぜ?」
「ああ、しないほうがいい。最初から全力でいくことを勧める。」
「・・お前たちはは完璧に龍翔にやられたんだってなぁ?まぁお前らと俺は違うことを見せてやるぜ!」
ウルヴァンは自信満々だ。
やがて指定された場所に龍翔がやってきた。
「ウルヴァン、大丈夫かしら・・」
アカネが心配そうに言う。
「正直、厳しいだろうな・・あの魔力障壁がある限り、どうしても体術の戦いになる。奴はその道の達人だ。」
「多少の怪我なら治してあげられるけど・・大丈夫かな?」
アイリスは心配そうだ。
皆、ウルヴァンのことは良く思っていないはずだが、それでも龍翔の圧倒的な力を目にした俺たちはどうしてもウルヴァンを応援する雰囲気になっていた。
「ほう・・これは・・仲間を連れてきたか?一斉にかかってきても構わんぞ?」
「あぁ?そんな恥さらしな真似するかよ!てめぇの相手は俺だけだ!」
ウルヴァンが吠える。
「お主は・・Sクラス1位の男だったか?まぁ我に通じるかどうか試してみるがいい。」
「ああ、いくぜ!メンタルブレイク!」
これだ!ウルヴァンの必殺精神汚染魔法!
・・しかし・・
「精神汚染だろうとなんだろうと魔法には変わらぬ。」
龍翔は体の周囲に巡らした魔力障壁でメンタルブレイクを防いでいた。
「チッ!厄介な技を使いやがる。。ならばこれはどうだ!精神破壊全開!」
「ほう・・多少は強力になったようだな・・。しかし結果はかわらん。」
龍翔の魔力障壁はびくともしない。
「てめぇ・・俺が魔術だけだと思うなよ?」
ウルヴァンは素早く間合いを詰めると拳を繰り出した。
かつて俺を圧倒したウルヴァンの武術だ。
ウルヴァンは遠慮なくナイフ抜くと、突きをフェイントにして、もう一方の手でナイフを繰り出す。
しかし、龍翔は軽くナイフを上にさばく。
「特殊部隊にいた我にナイフの攻撃とは・・ああ、この国ではシノビというのだったか?いずれにせよ、そんなものは通用せん。」
「じゃあ。これはどうだよ!」
ウルヴァンはナイフを突き出すと同時に至近距離でもう一方の手で炎魔法を爆発させた。
かつて俺がくらったコンボだ。接近戦で体術での攻撃と同時に魔法を繰り出し、ダメージを与える。
「ふ・・中々やるな・・だが!硬気功!」
龍翔は爆発を体を硬化して耐えて見せた。
硬気功って確か中国の武術の技だったか?
中・遠慮利では魔法障壁。近距離では硬気功・・この完璧な防御をどうやって崩すんだ?
「そろそろネタ切れか?ならばこちらから行かせてもらう!」
ウルヴァンは少し距離を取って
「なめるな!『サウンド・スリープ』!」
と魔法を放つ。これはアイズを一瞬で眠らせた魔法だ!
「効かん!魔法障壁!」
再度、龍翔ははねのける。
そして踏み込むと、
「ゆくぞ!はぁぁぁ!」
鋭い動きから龍翔の拳がウルヴァンの顔面にめり込む。
「ぐぁぁぁぁ!」
ウルヴァンは顔を押さえ転げまわる。
「・・さて。ここまでだな。そこのヒーラーよ、早く治療してやるがいい。」
「言われずともやります・・!ひどい顔がめちゃくちゃだよ・・」
アイリスは急いでヒールをかける。
ウルヴァンはアイリスのヒールで多少痛みが引いたようだが・・ダメージはでかそうだ。
「て・・てめぇ・・覚えていやがれよ・・」
ウルヴァンが血のしたたる顔を押さえつつ言葉を吐く。
押さえた手からも血があふれ出している。これは・・鼻骨を砕かれたか?
「残念だが戦いは飽きるほどやってきている。いちいち敵の顔を覚えているほど暇ではない。」
龍翔はそう言い残すと立ち去っていった。
「これは・・いますぐ他のヒーラーを呼ばないと・・顔がもとに戻らなくなるよ!」
俺達は慌てて学園に助けを求めに行った。
――――――――
ウルヴァンはなんとか先生を含めた皆のヒールのおかげで顔がぐしゃぐしゃになることは避けられた。もしかしたら傷が残ってしまうかもしれないが・・。
皆、心配そうにウルヴァンを囲んでいる。
普段距離を置いている皆も、ウルヴァンがこうなるとさすがに放っておけないようだ。
俺は決心していた。
あいつは・・龍翔は放っておけない。
このままでは次々の周りのものを傷つけることになってしまうだろう。
・・・
しばらくして。
ある日、Sクラスに向かうと、龍翔がいた。
俺はアカネに声をかけると龍翔に向かって歩いていった。
「なんだ貴様は・?ユージ・ミカヅチか。我に何か用か?」
「ああ、今日はお願いがあってきた。」
「なんだ。その願いとは?」
「もう皆を傷つけるのはやめてくれ。代わりに俺が・・戦う。それまで力をふるうのはやめてくれ。」
「ユージ!」
アカネが慌てて止めに入る。
「もう決めたことなんだ、アカネ。このままじゃ怪我人が・・下手したら死人が出てしまう。」
「ほう、覚悟はできているようだな。それで、戦いとやらはいつやる?」
「一週間後、学校近くの空き地だ。そこで俺になにがあってもお前を恨まないと約束する。」
「ユージ!」
アカネが心配そうに言う。
「アカネ、心配してくれてありがとう。アカネにはこの約束の証人になってほしい。」
「それは構わないけど・・もしあなたに何かあったら・・」
アカネは珍しく泣きそうな顔をしている。
「俺は今度こそ龍翔に勝つ。だから・・アカネには見ていてほしい・」
「・・わかったわ。あなたの戦いを見ている・・」
「話は終わりか?それで我はそれまでの間力を振るわずにいれば良いのだな?」
「ああ、頼む。」
「ふむ。良いだろう。楽しみにしている。」
「ユージ・・」
アカネが俺を見て心配そうにしている。
「アカネ、これは誰かがやらなきゃならないことなんだ。」
「だからって・・それがユージじゃなくてもいいじゃない!」
「いや・・多分、俺の仕事だ。同じ転生者だしな。」
「ユージ・・」
「見守っていてくれ。アカネ。アカネに見ていてもらえれば俺は実力以上の力が出せる。」
「・・わかったわ。」
俺は約束を取り付けると戻っていった。
――――――――
しばらく俺はより一層、ライム道場と自己修練に明け暮れる日々を過ごしていた。
ライム道場では脱力からの瞬動を。
自己修練ではコールの新たな使用方法にあけくれていた。
当然、毎日のようにアイズに部屋にかつぎこまれる。
体中がバラバラになりそうな日々が続いた。
学園も午前中は休みを取り、クラブも休み体を休め、鍛えることに集中した。
授業についてはアイリスが授業のまとめをノートにしたり、放課後教えてくれたりしてサポートしてくれた。
そして・・
いよいよ龍翔との対決の日がやってきた。
ゴートン先生が待ち構えていた。
「ほう、ようやく復帰か。本当に君は怪我が絶えん男だな。」
「はは・・お恥ずかしい限りです。」
「そうだな。フレンダからおおよそのことは聞いているが、ホーリー聖教皇国での話から聞こうか。」
俺はそこで皇国であったこと、戦闘を含め、詳細に先生に話した。
「ふむ・・そのエルフ達が使ったのは瞬動ではないな。」
「え?あの速度で瞬動ではないんですか?」
「瞬動とは意識の外から攻撃するものではない。相手が意識してなお、防げないものだ。今回のエルフの攻撃は不意打ちに近い形だな。」
「そうだったんですか・・。」
「しかし、その龍翔という男は近いものを使えるかもしれんな。フレンダから聞いた限りでは並みの体術ではないようだ。」
「はい・・僕のコール・・英雄を身にまとう技を使っても、なすすべなくやられました。」
「そのコールに差があったのは思えぬ。差があったのは基礎的な体術であろう?違うか?」
「はい・・その通りだと思います。体格、体力、技、経験、全てにおいて僕以上でした。」
「ふむ・・その男は並々ならぬ者のようだな。」
「はい。僕のいたところでのシノビのようなことをやっていたようです。銃・・鉛玉をはじき出す武器ですが、その中で生き抜いてきたようです。」
「銃のことは知っておる。カーティス皇国などで使われている武器であろう?ロームでも軍が装備している。」
「は・・はい。私の世界では個人戦では最強の武器かと思いますが・・その中で戦っていたようです。」
「ふむ・・戦場経験は大幅な実力の向上になる。手ごわそうだの。」
「はい、私のすべてをぶつけましたが、軽くあしわられてしまいまいsた。」
「とりあえず、今後は瞬動の稽古を集中して行う。少しでもその男に対抗したのならば死ぬ気でついてこい。」
「はい!よろしくお願いいたします。」
その日から瞬動の本格的な修練が始まった。
「まだ遅い!足の運びはこうだ。それでは敵の反撃を許すぞ!」
「はい!」
「ダメだ!足腰が付いて行ってない!全力の脱力だ!そのうえで速度を意識せよ!」
難しい。
脱力を意識すると次の動きに遅れが出るし、動き初めに意識を持っていくと脱力がおろそかになる。
「自分を水のように意識せよ!何にでも対応可能なイメージを持て!」
「はい!」
・・そうして瞬動の訓練は続いていった。
・・・
そしてライム道場での稽古が終わると寮に戻り、自己鍛錬を始める。
俺はコールについても一つ考えが浮かんでいた。
これが可能になれば・・
俺は隣の部屋のアイズにお願いして。倒れた俺をまた部屋まで運んでくれるようにお願いしておいた。
「ユージ、また新しいこと始めるの?」
「ああ、今まではコールの時間を延ばすことに集中していたが、少し方向性を変える。」
「そう。また倒れたら運んであげる。」
「ああ、頼む。」
そうして俺は新しいコールの修練に没頭していった。
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Sクラスの教室にて。
「よう、久々に学園に来たらやたらえらい強い奴が来たって話じゃねぇか?少し俺と遊ぼうぜ?」
ウルヴァンが龍翔にそう持ち掛けていた。
「我はいつでも構わん。何ならここでやっても構わん。」
「ここは人目があるからなぁ・・そうだな。迎えに行くから放課後でどうだ?」
「いつでも、どこでも構わん。挑戦はいつでも受ける。」
「ハッ!こりゃあ大した転校生だぜ?まぁその体が見掛け倒しだけじゃないことを祈ってるぜ!」
ウルヴァンはそういうと自分の席へ戻っていった。
俺はその話をアカネから聞いていた。
「今回はウルヴァンも相手にならないかもしれない・・」
「え?あのウルヴァンよ?いい勝負くらいにはなるんじゃないの?」
「そうだといいがな・・とりあえず、俺達もついていこう。念のため、アイリスもだ。」
「もう最近怪我人が多くて大変だよ。」
珍しくアイリスがぼやく。
「まぁ、あの龍翔の攻撃力には下手すると死人が出るからな。アイリスのヒールがないと心配だ。」
「人を救えるのは嫌じゃないけど・・ケガする人を見るのは嫌だなぁ・・」
「まぁ、そういわずに付いていこう。ウルヴァンが心配だ。」
かつて俺を完膚なきまでにメンタルブレイクで倒したウルヴァンだったが、龍翔相手に通じるものだろうか。
俺は心配しつつも興味が出てくるのを抑えきれなかった。
放課後、アカネからウルヴァンに話をしてもらい、俺達はウルヴァンに付いていった。
「全くぞろぞろとついてきやがってよぅ・・?そんなに龍翔が心配か?」
「いや・・心配なのはお前の方だ、ウルヴァン。」
「ハッ俺もなめられたもんだなぁ?いっとくが手加減はしねーぜ?」
「ああ、しないほうがいい。最初から全力でいくことを勧める。」
「・・お前たちはは完璧に龍翔にやられたんだってなぁ?まぁお前らと俺は違うことを見せてやるぜ!」
ウルヴァンは自信満々だ。
やがて指定された場所に龍翔がやってきた。
「ウルヴァン、大丈夫かしら・・」
アカネが心配そうに言う。
「正直、厳しいだろうな・・あの魔力障壁がある限り、どうしても体術の戦いになる。奴はその道の達人だ。」
「多少の怪我なら治してあげられるけど・・大丈夫かな?」
アイリスは心配そうだ。
皆、ウルヴァンのことは良く思っていないはずだが、それでも龍翔の圧倒的な力を目にした俺たちはどうしてもウルヴァンを応援する雰囲気になっていた。
「ほう・・これは・・仲間を連れてきたか?一斉にかかってきても構わんぞ?」
「あぁ?そんな恥さらしな真似するかよ!てめぇの相手は俺だけだ!」
ウルヴァンが吠える。
「お主は・・Sクラス1位の男だったか?まぁ我に通じるかどうか試してみるがいい。」
「ああ、いくぜ!メンタルブレイク!」
これだ!ウルヴァンの必殺精神汚染魔法!
・・しかし・・
「精神汚染だろうとなんだろうと魔法には変わらぬ。」
龍翔は体の周囲に巡らした魔力障壁でメンタルブレイクを防いでいた。
「チッ!厄介な技を使いやがる。。ならばこれはどうだ!精神破壊全開!」
「ほう・・多少は強力になったようだな・・。しかし結果はかわらん。」
龍翔の魔力障壁はびくともしない。
「てめぇ・・俺が魔術だけだと思うなよ?」
ウルヴァンは素早く間合いを詰めると拳を繰り出した。
かつて俺を圧倒したウルヴァンの武術だ。
ウルヴァンは遠慮なくナイフ抜くと、突きをフェイントにして、もう一方の手でナイフを繰り出す。
しかし、龍翔は軽くナイフを上にさばく。
「特殊部隊にいた我にナイフの攻撃とは・・ああ、この国ではシノビというのだったか?いずれにせよ、そんなものは通用せん。」
「じゃあ。これはどうだよ!」
ウルヴァンはナイフを突き出すと同時に至近距離でもう一方の手で炎魔法を爆発させた。
かつて俺がくらったコンボだ。接近戦で体術での攻撃と同時に魔法を繰り出し、ダメージを与える。
「ふ・・中々やるな・・だが!硬気功!」
龍翔は爆発を体を硬化して耐えて見せた。
硬気功って確か中国の武術の技だったか?
中・遠慮利では魔法障壁。近距離では硬気功・・この完璧な防御をどうやって崩すんだ?
「そろそろネタ切れか?ならばこちらから行かせてもらう!」
ウルヴァンは少し距離を取って
「なめるな!『サウンド・スリープ』!」
と魔法を放つ。これはアイズを一瞬で眠らせた魔法だ!
「効かん!魔法障壁!」
再度、龍翔ははねのける。
そして踏み込むと、
「ゆくぞ!はぁぁぁ!」
鋭い動きから龍翔の拳がウルヴァンの顔面にめり込む。
「ぐぁぁぁぁ!」
ウルヴァンは顔を押さえ転げまわる。
「・・さて。ここまでだな。そこのヒーラーよ、早く治療してやるがいい。」
「言われずともやります・・!ひどい顔がめちゃくちゃだよ・・」
アイリスは急いでヒールをかける。
ウルヴァンはアイリスのヒールで多少痛みが引いたようだが・・ダメージはでかそうだ。
「て・・てめぇ・・覚えていやがれよ・・」
ウルヴァンが血のしたたる顔を押さえつつ言葉を吐く。
押さえた手からも血があふれ出している。これは・・鼻骨を砕かれたか?
「残念だが戦いは飽きるほどやってきている。いちいち敵の顔を覚えているほど暇ではない。」
龍翔はそう言い残すと立ち去っていった。
「これは・・いますぐ他のヒーラーを呼ばないと・・顔がもとに戻らなくなるよ!」
俺達は慌てて学園に助けを求めに行った。
――――――――
ウルヴァンはなんとか先生を含めた皆のヒールのおかげで顔がぐしゃぐしゃになることは避けられた。もしかしたら傷が残ってしまうかもしれないが・・。
皆、心配そうにウルヴァンを囲んでいる。
普段距離を置いている皆も、ウルヴァンがこうなるとさすがに放っておけないようだ。
俺は決心していた。
あいつは・・龍翔は放っておけない。
このままでは次々の周りのものを傷つけることになってしまうだろう。
・・・
しばらくして。
ある日、Sクラスに向かうと、龍翔がいた。
俺はアカネに声をかけると龍翔に向かって歩いていった。
「なんだ貴様は・?ユージ・ミカヅチか。我に何か用か?」
「ああ、今日はお願いがあってきた。」
「なんだ。その願いとは?」
「もう皆を傷つけるのはやめてくれ。代わりに俺が・・戦う。それまで力をふるうのはやめてくれ。」
「ユージ!」
アカネが慌てて止めに入る。
「もう決めたことなんだ、アカネ。このままじゃ怪我人が・・下手したら死人が出てしまう。」
「ほう、覚悟はできているようだな。それで、戦いとやらはいつやる?」
「一週間後、学校近くの空き地だ。そこで俺になにがあってもお前を恨まないと約束する。」
「ユージ!」
アカネが心配そうに言う。
「アカネ、心配してくれてありがとう。アカネにはこの約束の証人になってほしい。」
「それは構わないけど・・もしあなたに何かあったら・・」
アカネは珍しく泣きそうな顔をしている。
「俺は今度こそ龍翔に勝つ。だから・・アカネには見ていてほしい・」
「・・わかったわ。あなたの戦いを見ている・・」
「話は終わりか?それで我はそれまでの間力を振るわずにいれば良いのだな?」
「ああ、頼む。」
「ふむ。良いだろう。楽しみにしている。」
「ユージ・・」
アカネが俺を見て心配そうにしている。
「アカネ、これは誰かがやらなきゃならないことなんだ。」
「だからって・・それがユージじゃなくてもいいじゃない!」
「いや・・多分、俺の仕事だ。同じ転生者だしな。」
「ユージ・・」
「見守っていてくれ。アカネ。アカネに見ていてもらえれば俺は実力以上の力が出せる。」
「・・わかったわ。」
俺は約束を取り付けると戻っていった。
――――――――
しばらく俺はより一層、ライム道場と自己修練に明け暮れる日々を過ごしていた。
ライム道場では脱力からの瞬動を。
自己修練ではコールの新たな使用方法にあけくれていた。
当然、毎日のようにアイズに部屋にかつぎこまれる。
体中がバラバラになりそうな日々が続いた。
学園も午前中は休みを取り、クラブも休み体を休め、鍛えることに集中した。
授業についてはアイリスが授業のまとめをノートにしたり、放課後教えてくれたりしてサポートしてくれた。
そして・・
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