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第五章
ライン・ビーチ視察
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次の休みの日。
俺達は学園に集合していた。
「よし、じゃあアイズ、エリス、頼む。」
俺、アカネ、アイリスはそれぞれアイズ、エリスに乗り込むとライン・ビーチに向かった。
「楽しみね。ライン・ビーチがどう変わっているか。」
アカネが言う。
「ああ、俺も楽しみにしているんだ。クリスがうまくやってくれていると思うんだけど。」
ものの十数分でライン・ビーチについた。
「おお、ユージ様、アカネ様!お待ちしておりましたぞ!」
官邸の前に降り立つと早速クリスが駆け出してきた。
「どうだ?ライン・ビーチの状況は?」
「はい、コルトン家、国からの支援金、他投資などが集まって一変しましたぞ。まずは荷物を置いてから街を案内いたしましょう。」
俺達は荷物をおくと早速街に繰り出してみた。
さびれた漁村風だったライン・ビーチの街が一変していた。
メインストリートには店が立ち並び、観光客らしき人でにぎわっている。
どうやら、俺の考え通りの街に近づいているようだな。
海に足を向けてみると砂浜が整備され、美しい白浜の海岸線が続いていた。
遠くに目を向けると海に潜ったりしていて遊んでいる人々の姿が見える。
「この通り、すっかりライン・ビーチも変わりました。観光客が落としていくお金で街の収益もうなぎ上りです。」
クリスがほくほく顔で言う。
「そうか、そりゃ何よりだ。」
「あとはより店を誘致することと、ビーチを整備して海岸線を美しくしていきます。」
「うん。まだまだ改良点はありそうだ。夜になったらまた話し合おう。」
俺達はいったん街に戻った。
ハンナ先輩の親父さんがやっているインディーズ・カフェ出張店が見えたのでそこで昼食を取ることにした。
「おお!ユージ君!」
ダムド父さんが忙し気に立ちまわっていた。
「調子はどうですか?」
「いやぁおかげで商売繁盛だよ!もう本店よりこっちの方が儲かるくらいだ!」
嬉しそうに答える。
「ロームの街の店の方は大丈夫ですか?」
「ああ、そっちもコルトン家に居候になっていたときの料理人が来てくれてねぇ。僕が出していた料理よりうまいんじゃないかな!」
アハハと笑う。
「この分だとここに三号店を出すことになりそうだよ。嬉しい悲鳴だね!」
お店には五人ほどの従業員が忙しそうに立ち働いていた。
「なんか・・規模が本店より大きいですね。」
「ああ、コルトン家が出資してくれたからね。でもこの分だとすぐに回収できそうだよ。あ、それじゃ僕は仕事に戻るから!」
ダムド父さんは忙しそうに厨房に戻っていった。
「じゃあ、我々も何か食べますか。」
クリスが促す。
「そうね・・あ、シーフードがやっぱり充実してるわね!じゃあ、私このエビの料理を食べてみようかしら。」
アカネがいう。
「私は・・このヒラメのムニエルにしようかな。」
アイリスはそっちか。
「僕はお腹がふくらむならなんでもいい。量が多いのがいい。」
「アイズは色々食べてみたらいいんじゃないか?お金はあるんだし・・。」
「いや、もちろんここは私が持ちますよ。経費で落とせますので。」
クリスが慌てたように言う。
「そうか・・じゃあお言葉に甘えるか。」
「あら。このお刺身って美味しそうですわ。生でお魚を食べるんですのね。」
エリスが興味を持ったようだ。
「ああ、ロームはご老公の影響で色んなものがこの世界に入って来てますから。生ですが美味しいですよ?ショーユというものにつけて食べるんです。」
クリスが説明する。
「雷竜国では魚料理はありませんもの。ではこちらにしようかしら。」
俺達はそれぞれ魚介類に舌鼓を打って食事をたのしんだ。
・・・
食事が終わると俺たちはいったんクリスと別れ、今度はダースのお父さんのの店に顔を出してみた。
「やぁ!ユージ君だね!僕はドワル・ガンビル。ダースの父だよ。今回はありがとう!」
「ユージです。お店の調子はどうですか?」
「それがねぇ・・最近徐々に海に潜る楽しみを覚えてくれる人が増えていてね。経営状況も良くなっているんだ。今は魔獣討伐くらいで戦争なんて少ないからね。武器屋からこっちに鞍替えしようかと思ってるくらいさ。」
「そうですか。実はもう一つ考えがあるんですが。」
「ほう、なんだい?」
「僕のいた国ではサーフィンというんですが、波に乗る遊びです。これも故郷では大流行りで国際大会が開かれているくらいなんです。」
「さーふぃん?領主様がいうことだ。やってみようかなぁ?」
「是非。それもまた人気事業になると思いますよ。」
「それはどういったものなんだい?」
そうか・・確かサーフィンの板ってポリウレタンとか使ってるんだっけ?この世界にはそんなものないよな?
「まずは木材を加工していくのがいいと思います。水面に浮くのでそれから徐々に材質を工夫していったらいいかと。」
「ほう。木材か。」
「初めは調整に大変だと思いますが、これも流行ると思いますよ。」
「波に乗るのって楽しいのかい?」
「僕の知り合いは楽しいと言ってました。毎週末に海にいくくらいで、釣りと双璧をなすくらい若い人には人気のスポーツです。色んな技があるみたいでハマるみたいですよ。」
「そうか・・じゃあちょっと工夫してみるとするか。」
「ええ、是非。」
俺達はダースの親父さんの店を出ると街を散策した。
「それにしても本当にユージの国って色々楽しそうね。もう何回も言った気がするけど。」
アカネが言う。
「ああ、資源もあるし、そのおかげもあるんだろうな。この国も石油があればもっと変わるんだと思うけど。」
「せきゆ?」
「ああ、よく燃える黒い液体の資源があるんだ。それによって俺の世界の経済状況は一変したくらいさ。戦争まで起きてる。」
「それって火をつけると燃える黒い水でしょ?黒水のことじゃないかしら?確か北の方に出るって聞いたことがあるわ。」
「確か雷竜国にも出る場所がありましたわ。」
エリスが言う。
そうなのか!それじゃだいぶ文化が進みそうだな。
「石油があれば電気を作ることも可能になる。そうか、信長様は八割方準備ができていると言っていた。もしかしたら既にそこに目をつけているのかもしれないな。」
「石油ってそんなにすごいの?」
「ああ、俺も良く知らないんだけど、確か新しい材質のものを作ったり、燃料にもなるから自動で動く馬車なんかも作れるんだ。」
「そうなの?馬がいらないってこと?」
「俺のいた世界では既に馬は車っているのに変わっている。そして戦争にも使われるし、飛行機っていう空を飛ぶ乗り物にも使われてるんだ。」
「ユージのいた世界ってすごい進んでるのね。」
「私も行ってみたい!」
アイリスが言う。
「ああ、アカネやアイリスが行ったら驚くだろうな。その代わりドラゴンとかいないし、人間族と動物しかいないから、種族は少ないけどな。」
アカネやアイリスが行ったらアイドルと勘違いされそうだな・・
「僕は自分で飛ぶからヒコーキはいらない。」
アイズが対抗心を燃やして言う。
「はは、ドラゴンが空なんか飛んでたら大騒ぎだよ。もっともスピードはアイズやエリスとそんなに変わらないんじゃないかな。」
「私、本気出せばもっと早く飛べますわ!」
おっとエリスにも対抗心が芽生えたようだ。
「まぁいずれにせよ、この世界じゃまだまだ先の話だよ。資源があってもそれを精製する技術も必要になってくるしな。俺の世界では文化が進み過ぎて環境破壊とかが起きて人が住む場所がなくなってきたりもしてるんだ。動物も絶滅しそうになってる種類もいるしな。」
「なんか・・あんまり発展して欲しくなくなってきたわ。」
アカネが言う。
「うーん、そこは難しいところだな・・文明は発展しはじめるとあっと言う間だけど、それによる弊害もあるし・・ここみたいな美しいビーチは守っていきたいしな。」
「でもやっぱり、ユージの国には一度行ってみたいわ!」
「私も!」
「僕も!」
「私も興味ありますわ!雷竜国の発展に役立つかもしれませんもの!」
皆興味津々のようだ。
「まぁゲートがどのくらい人を通せるのかわからないけどな。できるなら一緒に行こう。」
「ゲートって不思議よね・・ユージの話だと事故を除いたら開かれることはないんでしょう?」
アカネが疑問を呈す。
「うーん、そうだな。始めは奇襲とかを恐れて開かないのかもしれないと思っていたけど、もしかしたらここの文化を守るためっていう何かの意思もあるのかもな。」
「そうね・・ここみたいな美しい景色がなくなるのは嫌だわ。」
「それは本当に俺の世界でも問題なんだ。文化は発展すればするほど自然破壊に影響をあたえるし、一度便利さを知っちゃったら中々人間あとには戻れないしな。」
「難しい問題ね・・」
「まぁとりあえずこの世界ではまだそんな心配は必要ないだろう。さてそろそろ官邸に戻るとするか。クリスが待っているだろう。」
官邸に戻ると、クリスが新しい使用人を紹介してくれた。
「ユージ様、こちらが新しい使用人のハリー、ジョニー、レイです。」
「ハリー・ミッチェルと申します!よろしくお願いします!」
小柄な青年だ。敏捷そうだな。12歳くらいだろうか。
「ジョニー・ベイツです。以前は地方政府で文官をやっていました。」
中肉中背の男だな。年のころは30歳前後だろうか?有能そうだ。
「レイ・モアです。以前は衛兵をやっておりました。こちらでは官邸の警備にあたっております!」
こちらは大柄な20代後半のいかにもがっちりとした体つき、なるほど、警備の人員も必要だよな。
「さあ、それじゃ皆、皆さんに飲み物でもお出ししてくれ。」
クリスが言うと早速ハリーが厨房に飛んでいった。
見た目通り俊敏な感じだな。
出された飲み物は冷たい飲み物だった。
あちこち出歩いていたのでこれはありがたい。
俺はふと思いついて、
「もう一杯たのむ」
と言ってみた。
すると今度は温めのお茶を持ってきた。
俺は更に「もう一杯」と頼んでみた。
今度は熱いコーヒーが出てきた。
これは・・
秀吉が石田三成と出会ったというエピソードが思い出されるな。
確か相手の喉の渇き具合をみとって温いお茶から徐々に熱いお茶に変えて言ったんだったか。
やるな・・
俺はクリスに
「あのハリーと言う子、見どころがあるかもしれない。目をかけてやってくれ。」
と伝えておいた。
俺達はその後、今後の様々な事を話しあってから食事をした。
夜のとばりが落ちたころ。
俺が部屋で休んでいると、
「ねぇユージ君。ちょっと散歩に行ってみない?」
とアイリスがやってきた。
俺に断る理由はない。
「ああ、ちょっと夜の街を見たいと思っていたんだ。行こうか。」
俺達は街の方へ歩いて行ってみた。
木でも燃やしているのか幻灯がともっている。
これはこれで情緒があって美しいな。
店はまだ開いているところが多く、あちこちで客引きが行われている。
賑やかだな。
これが俺の街か・・なんか感慨深いな・・
「ユージ君、何考えてるの?」
アイリスが聞いてくる。
「ああ、ちょっと街が美しいなって思ってたんだ。これが俺の街かってさ・・」
「ふふ、ユージ君が領主になって発展したもんね?」
「ああ、それも信長様やクリス、コルトン家など様々な人たちのおかげだよ。」
「そういうところもユージ君らしいね。」
アイリスはそう言うと髪をかき上げ街の風景を眺めていた。
金髪が街灯にきらきらと輝いて美しい。
「ねぇユージ君、雷竜国から帰ったら、また歴史博物館に行ってみない?今度は別のところ。」
「ああ、いいよ。俺は歴オタだし。」
「れきおた?」
「歴史が好きで他の事に無頓着な奴の事さ。俺は故郷では歴オタだったんだ。」
「ふふ・・じゃあ私もだね?」
こんな美少女が歴オタだったら歴オタは大喜びだろうな。いやそもそも歴オタの範疇に入るんだろうか?アイリスは勉強もできるし、普通に人付き合いもできるし。
「じゃあそろそろ戻ろうか?」
「ああ、そうだな。」
何か言いたいことがあったのかと思ったけどそうでもないみたいだ。
俺達は帰りの道を今度は海岸線に沿って歩きながら帰路についた。
「そういえば前にユージ君が暴漢から守ってくれたことがあったよね?」
「あれは守ったなんてもんじゃないよ。ただ突っ立ってただけだ。」
「でも嬉しかったよ?」
「うーん、そう言ってくれるとありがたいけど・・」
「でももう今は暴漢なんてきたら一瞬で倒しちゃいそうだね?」
ああ、そうか。言われてみれば色々な戦いを通じて恐れはなくなってきた気がするな。
「一瞬かどうかはわからないけど、今度はもう少し格好よく守ってやれるかもな。」
「ふふ。期待してるよ。」
俺達はそんなことを話しながら官邸に戻った。
俺達は学園に集合していた。
「よし、じゃあアイズ、エリス、頼む。」
俺、アカネ、アイリスはそれぞれアイズ、エリスに乗り込むとライン・ビーチに向かった。
「楽しみね。ライン・ビーチがどう変わっているか。」
アカネが言う。
「ああ、俺も楽しみにしているんだ。クリスがうまくやってくれていると思うんだけど。」
ものの十数分でライン・ビーチについた。
「おお、ユージ様、アカネ様!お待ちしておりましたぞ!」
官邸の前に降り立つと早速クリスが駆け出してきた。
「どうだ?ライン・ビーチの状況は?」
「はい、コルトン家、国からの支援金、他投資などが集まって一変しましたぞ。まずは荷物を置いてから街を案内いたしましょう。」
俺達は荷物をおくと早速街に繰り出してみた。
さびれた漁村風だったライン・ビーチの街が一変していた。
メインストリートには店が立ち並び、観光客らしき人でにぎわっている。
どうやら、俺の考え通りの街に近づいているようだな。
海に足を向けてみると砂浜が整備され、美しい白浜の海岸線が続いていた。
遠くに目を向けると海に潜ったりしていて遊んでいる人々の姿が見える。
「この通り、すっかりライン・ビーチも変わりました。観光客が落としていくお金で街の収益もうなぎ上りです。」
クリスがほくほく顔で言う。
「そうか、そりゃ何よりだ。」
「あとはより店を誘致することと、ビーチを整備して海岸線を美しくしていきます。」
「うん。まだまだ改良点はありそうだ。夜になったらまた話し合おう。」
俺達はいったん街に戻った。
ハンナ先輩の親父さんがやっているインディーズ・カフェ出張店が見えたのでそこで昼食を取ることにした。
「おお!ユージ君!」
ダムド父さんが忙し気に立ちまわっていた。
「調子はどうですか?」
「いやぁおかげで商売繁盛だよ!もう本店よりこっちの方が儲かるくらいだ!」
嬉しそうに答える。
「ロームの街の店の方は大丈夫ですか?」
「ああ、そっちもコルトン家に居候になっていたときの料理人が来てくれてねぇ。僕が出していた料理よりうまいんじゃないかな!」
アハハと笑う。
「この分だとここに三号店を出すことになりそうだよ。嬉しい悲鳴だね!」
お店には五人ほどの従業員が忙しそうに立ち働いていた。
「なんか・・規模が本店より大きいですね。」
「ああ、コルトン家が出資してくれたからね。でもこの分だとすぐに回収できそうだよ。あ、それじゃ僕は仕事に戻るから!」
ダムド父さんは忙しそうに厨房に戻っていった。
「じゃあ、我々も何か食べますか。」
クリスが促す。
「そうね・・あ、シーフードがやっぱり充実してるわね!じゃあ、私このエビの料理を食べてみようかしら。」
アカネがいう。
「私は・・このヒラメのムニエルにしようかな。」
アイリスはそっちか。
「僕はお腹がふくらむならなんでもいい。量が多いのがいい。」
「アイズは色々食べてみたらいいんじゃないか?お金はあるんだし・・。」
「いや、もちろんここは私が持ちますよ。経費で落とせますので。」
クリスが慌てたように言う。
「そうか・・じゃあお言葉に甘えるか。」
「あら。このお刺身って美味しそうですわ。生でお魚を食べるんですのね。」
エリスが興味を持ったようだ。
「ああ、ロームはご老公の影響で色んなものがこの世界に入って来てますから。生ですが美味しいですよ?ショーユというものにつけて食べるんです。」
クリスが説明する。
「雷竜国では魚料理はありませんもの。ではこちらにしようかしら。」
俺達はそれぞれ魚介類に舌鼓を打って食事をたのしんだ。
・・・
食事が終わると俺たちはいったんクリスと別れ、今度はダースのお父さんのの店に顔を出してみた。
「やぁ!ユージ君だね!僕はドワル・ガンビル。ダースの父だよ。今回はありがとう!」
「ユージです。お店の調子はどうですか?」
「それがねぇ・・最近徐々に海に潜る楽しみを覚えてくれる人が増えていてね。経営状況も良くなっているんだ。今は魔獣討伐くらいで戦争なんて少ないからね。武器屋からこっちに鞍替えしようかと思ってるくらいさ。」
「そうですか。実はもう一つ考えがあるんですが。」
「ほう、なんだい?」
「僕のいた国ではサーフィンというんですが、波に乗る遊びです。これも故郷では大流行りで国際大会が開かれているくらいなんです。」
「さーふぃん?領主様がいうことだ。やってみようかなぁ?」
「是非。それもまた人気事業になると思いますよ。」
「それはどういったものなんだい?」
そうか・・確かサーフィンの板ってポリウレタンとか使ってるんだっけ?この世界にはそんなものないよな?
「まずは木材を加工していくのがいいと思います。水面に浮くのでそれから徐々に材質を工夫していったらいいかと。」
「ほう。木材か。」
「初めは調整に大変だと思いますが、これも流行ると思いますよ。」
「波に乗るのって楽しいのかい?」
「僕の知り合いは楽しいと言ってました。毎週末に海にいくくらいで、釣りと双璧をなすくらい若い人には人気のスポーツです。色んな技があるみたいでハマるみたいですよ。」
「そうか・・じゃあちょっと工夫してみるとするか。」
「ええ、是非。」
俺達はダースの親父さんの店を出ると街を散策した。
「それにしても本当にユージの国って色々楽しそうね。もう何回も言った気がするけど。」
アカネが言う。
「ああ、資源もあるし、そのおかげもあるんだろうな。この国も石油があればもっと変わるんだと思うけど。」
「せきゆ?」
「ああ、よく燃える黒い液体の資源があるんだ。それによって俺の世界の経済状況は一変したくらいさ。戦争まで起きてる。」
「それって火をつけると燃える黒い水でしょ?黒水のことじゃないかしら?確か北の方に出るって聞いたことがあるわ。」
「確か雷竜国にも出る場所がありましたわ。」
エリスが言う。
そうなのか!それじゃだいぶ文化が進みそうだな。
「石油があれば電気を作ることも可能になる。そうか、信長様は八割方準備ができていると言っていた。もしかしたら既にそこに目をつけているのかもしれないな。」
「石油ってそんなにすごいの?」
「ああ、俺も良く知らないんだけど、確か新しい材質のものを作ったり、燃料にもなるから自動で動く馬車なんかも作れるんだ。」
「そうなの?馬がいらないってこと?」
「俺のいた世界では既に馬は車っているのに変わっている。そして戦争にも使われるし、飛行機っていう空を飛ぶ乗り物にも使われてるんだ。」
「ユージのいた世界ってすごい進んでるのね。」
「私も行ってみたい!」
アイリスが言う。
「ああ、アカネやアイリスが行ったら驚くだろうな。その代わりドラゴンとかいないし、人間族と動物しかいないから、種族は少ないけどな。」
アカネやアイリスが行ったらアイドルと勘違いされそうだな・・
「僕は自分で飛ぶからヒコーキはいらない。」
アイズが対抗心を燃やして言う。
「はは、ドラゴンが空なんか飛んでたら大騒ぎだよ。もっともスピードはアイズやエリスとそんなに変わらないんじゃないかな。」
「私、本気出せばもっと早く飛べますわ!」
おっとエリスにも対抗心が芽生えたようだ。
「まぁいずれにせよ、この世界じゃまだまだ先の話だよ。資源があってもそれを精製する技術も必要になってくるしな。俺の世界では文化が進み過ぎて環境破壊とかが起きて人が住む場所がなくなってきたりもしてるんだ。動物も絶滅しそうになってる種類もいるしな。」
「なんか・・あんまり発展して欲しくなくなってきたわ。」
アカネが言う。
「うーん、そこは難しいところだな・・文明は発展しはじめるとあっと言う間だけど、それによる弊害もあるし・・ここみたいな美しいビーチは守っていきたいしな。」
「でもやっぱり、ユージの国には一度行ってみたいわ!」
「私も!」
「僕も!」
「私も興味ありますわ!雷竜国の発展に役立つかもしれませんもの!」
皆興味津々のようだ。
「まぁゲートがどのくらい人を通せるのかわからないけどな。できるなら一緒に行こう。」
「ゲートって不思議よね・・ユージの話だと事故を除いたら開かれることはないんでしょう?」
アカネが疑問を呈す。
「うーん、そうだな。始めは奇襲とかを恐れて開かないのかもしれないと思っていたけど、もしかしたらここの文化を守るためっていう何かの意思もあるのかもな。」
「そうね・・ここみたいな美しい景色がなくなるのは嫌だわ。」
「それは本当に俺の世界でも問題なんだ。文化は発展すればするほど自然破壊に影響をあたえるし、一度便利さを知っちゃったら中々人間あとには戻れないしな。」
「難しい問題ね・・」
「まぁとりあえずこの世界ではまだそんな心配は必要ないだろう。さてそろそろ官邸に戻るとするか。クリスが待っているだろう。」
官邸に戻ると、クリスが新しい使用人を紹介してくれた。
「ユージ様、こちらが新しい使用人のハリー、ジョニー、レイです。」
「ハリー・ミッチェルと申します!よろしくお願いします!」
小柄な青年だ。敏捷そうだな。12歳くらいだろうか。
「ジョニー・ベイツです。以前は地方政府で文官をやっていました。」
中肉中背の男だな。年のころは30歳前後だろうか?有能そうだ。
「レイ・モアです。以前は衛兵をやっておりました。こちらでは官邸の警備にあたっております!」
こちらは大柄な20代後半のいかにもがっちりとした体つき、なるほど、警備の人員も必要だよな。
「さあ、それじゃ皆、皆さんに飲み物でもお出ししてくれ。」
クリスが言うと早速ハリーが厨房に飛んでいった。
見た目通り俊敏な感じだな。
出された飲み物は冷たい飲み物だった。
あちこち出歩いていたのでこれはありがたい。
俺はふと思いついて、
「もう一杯たのむ」
と言ってみた。
すると今度は温めのお茶を持ってきた。
俺は更に「もう一杯」と頼んでみた。
今度は熱いコーヒーが出てきた。
これは・・
秀吉が石田三成と出会ったというエピソードが思い出されるな。
確か相手の喉の渇き具合をみとって温いお茶から徐々に熱いお茶に変えて言ったんだったか。
やるな・・
俺はクリスに
「あのハリーと言う子、見どころがあるかもしれない。目をかけてやってくれ。」
と伝えておいた。
俺達はその後、今後の様々な事を話しあってから食事をした。
夜のとばりが落ちたころ。
俺が部屋で休んでいると、
「ねぇユージ君。ちょっと散歩に行ってみない?」
とアイリスがやってきた。
俺に断る理由はない。
「ああ、ちょっと夜の街を見たいと思っていたんだ。行こうか。」
俺達は街の方へ歩いて行ってみた。
木でも燃やしているのか幻灯がともっている。
これはこれで情緒があって美しいな。
店はまだ開いているところが多く、あちこちで客引きが行われている。
賑やかだな。
これが俺の街か・・なんか感慨深いな・・
「ユージ君、何考えてるの?」
アイリスが聞いてくる。
「ああ、ちょっと街が美しいなって思ってたんだ。これが俺の街かってさ・・」
「ふふ、ユージ君が領主になって発展したもんね?」
「ああ、それも信長様やクリス、コルトン家など様々な人たちのおかげだよ。」
「そういうところもユージ君らしいね。」
アイリスはそう言うと髪をかき上げ街の風景を眺めていた。
金髪が街灯にきらきらと輝いて美しい。
「ねぇユージ君、雷竜国から帰ったら、また歴史博物館に行ってみない?今度は別のところ。」
「ああ、いいよ。俺は歴オタだし。」
「れきおた?」
「歴史が好きで他の事に無頓着な奴の事さ。俺は故郷では歴オタだったんだ。」
「ふふ・・じゃあ私もだね?」
こんな美少女が歴オタだったら歴オタは大喜びだろうな。いやそもそも歴オタの範疇に入るんだろうか?アイリスは勉強もできるし、普通に人付き合いもできるし。
「じゃあそろそろ戻ろうか?」
「ああ、そうだな。」
何か言いたいことがあったのかと思ったけどそうでもないみたいだ。
俺達は帰りの道を今度は海岸線に沿って歩きながら帰路についた。
「そういえば前にユージ君が暴漢から守ってくれたことがあったよね?」
「あれは守ったなんてもんじゃないよ。ただ突っ立ってただけだ。」
「でも嬉しかったよ?」
「うーん、そう言ってくれるとありがたいけど・・」
「でももう今は暴漢なんてきたら一瞬で倒しちゃいそうだね?」
ああ、そうか。言われてみれば色々な戦いを通じて恐れはなくなってきた気がするな。
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こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
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