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3 出会いと予感
それから、ものすごい速さで王都滞在の準備が進められた。
突然、話を聞かされた弟たちに、仕事はどうするのかと文句を言われるかと思ったけれど、特に何も言わず送り出してくれた。
ちょっと憐れむような視線を向けてきた弟の顔を思い出すと腹立たしい。きっと、フィルとの関係が私の勘違いだったと聞いて憐れんでいるのだろう。
それでも、農家の手伝いをあの子たちに任せられるようでちょっと安心した。
そしてフィルにも、しばらく王都で過ごすこと、婚約おめでとう、とメッセージを送り、私は叔母さまと共に王都へと出発した。
*
「ああ、やっと見えてきたわ!」
領地を出発して七日。途中、街で宿泊しながらやっと到着した王都は、高く長い外壁に囲まれた美しい街だ。
街中へ入るためには門を通らなければならず、馬車や歩く人々の行列が長く続いている。
「アレックスがいてくれて全然退屈しなかったわ」
向かいに座る叔母さまは、たっぷり置かれたクッションに身を沈めながらグラスで果実水を飲む。とてもじゃないけれど長距離を馬車で移動しているようには見えない。
「私よりこの馬車のお陰でしょう? すごく乗り心地がいいわ」
「亡くなった夫が、私が苦労することなく領地を行き来できるようにって注文してくれたのよ。野営になってもこのままベッドになるし、何かあってもとても丈夫だから心配いらないわ」
「護衛もたくさんついてるしね」
窓の外に視線を向けて、並走する護衛騎士を見る。侯爵家の紋章が刺繍されたマントを纏った彼らがいるだけで、十分にその威力を発揮している。
父とは年の離れた妹であるビルギッタ叔母さまは、七年前、王都のテーラーで働いていたところをバーンズ侯爵に見初められ、後妻として嫁いだ人だ。
当時、初老を迎えた侯爵に色目を使った財産目当ての悪女だと、叔母さまは様々な噂を立てられていた。けれど出会ってすぐに結婚した二人は仲睦まじく暮らし、二年前、侯爵は穏やかに天寿を全うした。
その後、王都のタウンハウスといくつかの財産を相続した叔母さまは、いくつかのレストランやショップを経営しながら暮らしている才女だ。
(自分を見つめ直す、か……)
私は今後、あの領地で生きていくと思っていた。フィルと二人で領地のために働くのだと思っていた。
でも今、そうじゃない未来が始まっている。
私はいったい、何をして生きていくんだろう。
長い列に並び動かなくなった馬車の中で話していると、前方から大きな音と人々の声が聞こえてきた。窓の外では人々が同じ方向を見て何やら騒いでいる。
「馬のいななきが聞こえるわ。どうしたのかしら」
「ねえ、何があったの?」
様子を見てきた騎士が窓に近付き、叔母さまへ状況を説明する。
「前方で荷馬車同士がぶつかり、積み荷が崩れ落ちたようです。馬が暴れている」
「まあ」
「騎士団員がまだ駆け付けていないので、近付かないほうがいいでしょう」
「でも、早く馬の興奮を押さえなければ危ないわ」
列には徒歩の人も含まれている。さっき、小さな子供を連れた女性だって歩いていた。
「私、見てくるわ」
「え、ちょっとアレックス!?」
「大丈夫、叔母さまはここで待ってて!」
「ちょっと!」
騎士には叔母さまのそばを離れないように言い残して、私は素早く騒ぎが起こった前方へと向かった。
人ごみをかき分けて向かった先では、大破した馬車とひっくり返った馬車、大量の積み荷が周囲に散乱していた。
そばでは混乱に乗じて積み荷を盗っていこうとする人々を、御者だろうか、木の棒を振り回して威嚇し、大騒ぎになっている。
もう一方の馬車の御者は、怪我をしているのだろう、道端で肩を押さえてうずくまっている。近くにいる人が声を掛けて、門まで騎士を呼びに向かっていた。
(馬が興奮してるわ)
大きな音と人ごみに驚いた引馬が、ひっくり返った馬車に繋がったまま前足を高く上げて、いなないている。
「落ち着かせないと、逃げてしまうわ」
まだ集まっていないのだろう、二人しかいない騎士団員は人々を規制するのに手が塞がっていて、馬にまで気が回っていない。この人込みと散乱した馬車の荷物では、道が塞がっていて馬でここまで駆けつけるのも時間がかかりそうだ。
(でも、他の騎士が来るのを待っていては、いつあの子たちが暴れ出すか分からないわ)
「ちょっとごめんなさい、通して!」
見物している人々の中をなんとか進み、道の反対側へ出る。
興奮して血走った目をした馬を宥めるように両手を見せて声を掛ける。
「大丈夫、落ち着いて。大丈夫よ」
前脚を高く上げて興奮し、後ろ脚を蹴り上げて繋がった馬車を蹴る馬は、こちらの言うことを聞く気配はない。その様子を見る人々から悲鳴のような声も上がり、馬は益々落ち着きを失っていく。
「そんなことをしてはあなたが怪我をしてしまうわ。落ち着いて、ほら、大丈夫」
ゆっくり近づいて馬の首に触れる。鼻息荒く首を振るのを、辛抱強く撫でていると段々と落ち着きを取り戻してきた。
「いい子ね、さあ大丈夫よ」
首を撫でながら手綱を掴んで辛抱強く撫でていると、突然また積み荷が大きな音を立てて崩れた。その音に驚いた馬が、前脚を高く上げる。
「危ない!」
「――っ!」
咄嗟に掴んでいた手綱を引こうとする私の背後から、腰を掴まれて後ろに引っ張られた。馬から離されて、大きな塊が目の前に立ち塞がる。
「下がっていろ!」
それは、私よりもはるかに背の高い、大きな騎士だった。
彼は「どうどう!」と、興奮する馬を宥め、力強く手綱を引いて制御している。その慣れた手つきに感心していると、離れた場所にいる馬も後ろ脚を蹴り上げて暴れだした。近くにいた人の悲鳴が響く。
(危ないわ!)
「あっ、おい!」
とっさにスカートの裾を持ち上げて駆け出す私に、背後から騎士の声がしたけれど構っていられない。周囲に人もいるのだ、このままでは大事故になりかねない。
「安全な場所まで馬を移動させましょう! あなたはその子を繋いだら、あっちの子をお願い!」
「!?」
振り返って大きな騎士へそう叫び、他の馬を宥めるためにその場を離れた。
*
「いい子ね、もう大丈夫よ」
それから、私と騎士は二人で事故現場から離れた中通りに馬を集めた。近所の人にお願いをしてバケツに水をもらい、馬へ飲ませる。首を撫でても動じず、すっかり興奮は冷めたようだった。
そこへ最後の一頭を連れた先ほどの騎士が現れた。手綱を道端にある木に縛るのを見計らって、バケツの水を手渡す。
「よかったわ、怪我がないようですね。これをその子にも与えてください」
「ああ、すまない。ありがとう」
騎士は受け取ったバケツを馬の足元に置き、水を飲む馬の首を撫でると、改めて私に向き直った。
「――ご協力感謝する」
そう言って胸に手を当てて騎士の礼を執る彼は、十歳くらいは上だろうか。背が高くて大きいうえに無表情だからか、迫力がある気がする。
「いいえ、被害が出なくてよかったです。御者の方は大丈夫ですか? お怪我をされているようでしたけれど」
「私の部下が医者のもとへ連れて行った。怪我人はどうやら彼だけのようだ」
(部下。やっぱり隊長職とかかしら)
迫力があるのは顔と身体つきのせいだけではないらしい。
「ここはもう部下に任せるので、――よろしければ、お送りしましょう」
そう言って差し出された手に、はっと馬車の存在を思い出す。いけない、かなりの時間が経ってしまったかもしれない。
「お構いなく! 馬車を待たせているので大丈夫です」
「では馬車まで……」
「ご親切にありがとうございます。でも、まだ事故現場は片付いていないみたいだわ。どうぞ、お仕事に戻られてください」
「――」
何やら眉間にギュッとしわを寄せた彼は、難しい表情で視線を足元に落とした。
「本当にすぐそこですから。それに、こう言っては不謹慎かもしれませんけれど、この子たちのお世話ができて楽しかったわ」
「この子たち?」
私の言葉にふと顔を上げた彼は、青い瞳を丸く見開いた。私のヘーゼルとは違う、まるで海のようなきれいな瞳だ。髪と同じ銀色のまつ毛がその瞳を取り囲んでいて、とてもきれい。
「ええ。大きな音に興奮して驚いただけだわ。賢くていい子たちです。ね、あなたたち、あとでたくさん飼い葉をもらえればいいわね」
近くにいた栗毛の馬の首を撫でると、明るい色のしっぽをふわりと振った。
「もう行かなければ、きっと心配してるわ。それでは騎士さま、どうぞお気を付けて」
本当に、時間を忘れてしまった。叔母さまが心配している。
まだ何か言いたげな騎士にさっと素早く膝を折り、私はその場を走るように立ち去った。
突然、話を聞かされた弟たちに、仕事はどうするのかと文句を言われるかと思ったけれど、特に何も言わず送り出してくれた。
ちょっと憐れむような視線を向けてきた弟の顔を思い出すと腹立たしい。きっと、フィルとの関係が私の勘違いだったと聞いて憐れんでいるのだろう。
それでも、農家の手伝いをあの子たちに任せられるようでちょっと安心した。
そしてフィルにも、しばらく王都で過ごすこと、婚約おめでとう、とメッセージを送り、私は叔母さまと共に王都へと出発した。
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「ああ、やっと見えてきたわ!」
領地を出発して七日。途中、街で宿泊しながらやっと到着した王都は、高く長い外壁に囲まれた美しい街だ。
街中へ入るためには門を通らなければならず、馬車や歩く人々の行列が長く続いている。
「アレックスがいてくれて全然退屈しなかったわ」
向かいに座る叔母さまは、たっぷり置かれたクッションに身を沈めながらグラスで果実水を飲む。とてもじゃないけれど長距離を馬車で移動しているようには見えない。
「私よりこの馬車のお陰でしょう? すごく乗り心地がいいわ」
「亡くなった夫が、私が苦労することなく領地を行き来できるようにって注文してくれたのよ。野営になってもこのままベッドになるし、何かあってもとても丈夫だから心配いらないわ」
「護衛もたくさんついてるしね」
窓の外に視線を向けて、並走する護衛騎士を見る。侯爵家の紋章が刺繍されたマントを纏った彼らがいるだけで、十分にその威力を発揮している。
父とは年の離れた妹であるビルギッタ叔母さまは、七年前、王都のテーラーで働いていたところをバーンズ侯爵に見初められ、後妻として嫁いだ人だ。
当時、初老を迎えた侯爵に色目を使った財産目当ての悪女だと、叔母さまは様々な噂を立てられていた。けれど出会ってすぐに結婚した二人は仲睦まじく暮らし、二年前、侯爵は穏やかに天寿を全うした。
その後、王都のタウンハウスといくつかの財産を相続した叔母さまは、いくつかのレストランやショップを経営しながら暮らしている才女だ。
(自分を見つめ直す、か……)
私は今後、あの領地で生きていくと思っていた。フィルと二人で領地のために働くのだと思っていた。
でも今、そうじゃない未来が始まっている。
私はいったい、何をして生きていくんだろう。
長い列に並び動かなくなった馬車の中で話していると、前方から大きな音と人々の声が聞こえてきた。窓の外では人々が同じ方向を見て何やら騒いでいる。
「馬のいななきが聞こえるわ。どうしたのかしら」
「ねえ、何があったの?」
様子を見てきた騎士が窓に近付き、叔母さまへ状況を説明する。
「前方で荷馬車同士がぶつかり、積み荷が崩れ落ちたようです。馬が暴れている」
「まあ」
「騎士団員がまだ駆け付けていないので、近付かないほうがいいでしょう」
「でも、早く馬の興奮を押さえなければ危ないわ」
列には徒歩の人も含まれている。さっき、小さな子供を連れた女性だって歩いていた。
「私、見てくるわ」
「え、ちょっとアレックス!?」
「大丈夫、叔母さまはここで待ってて!」
「ちょっと!」
騎士には叔母さまのそばを離れないように言い残して、私は素早く騒ぎが起こった前方へと向かった。
人ごみをかき分けて向かった先では、大破した馬車とひっくり返った馬車、大量の積み荷が周囲に散乱していた。
そばでは混乱に乗じて積み荷を盗っていこうとする人々を、御者だろうか、木の棒を振り回して威嚇し、大騒ぎになっている。
もう一方の馬車の御者は、怪我をしているのだろう、道端で肩を押さえてうずくまっている。近くにいる人が声を掛けて、門まで騎士を呼びに向かっていた。
(馬が興奮してるわ)
大きな音と人ごみに驚いた引馬が、ひっくり返った馬車に繋がったまま前足を高く上げて、いなないている。
「落ち着かせないと、逃げてしまうわ」
まだ集まっていないのだろう、二人しかいない騎士団員は人々を規制するのに手が塞がっていて、馬にまで気が回っていない。この人込みと散乱した馬車の荷物では、道が塞がっていて馬でここまで駆けつけるのも時間がかかりそうだ。
(でも、他の騎士が来るのを待っていては、いつあの子たちが暴れ出すか分からないわ)
「ちょっとごめんなさい、通して!」
見物している人々の中をなんとか進み、道の反対側へ出る。
興奮して血走った目をした馬を宥めるように両手を見せて声を掛ける。
「大丈夫、落ち着いて。大丈夫よ」
前脚を高く上げて興奮し、後ろ脚を蹴り上げて繋がった馬車を蹴る馬は、こちらの言うことを聞く気配はない。その様子を見る人々から悲鳴のような声も上がり、馬は益々落ち着きを失っていく。
「そんなことをしてはあなたが怪我をしてしまうわ。落ち着いて、ほら、大丈夫」
ゆっくり近づいて馬の首に触れる。鼻息荒く首を振るのを、辛抱強く撫でていると段々と落ち着きを取り戻してきた。
「いい子ね、さあ大丈夫よ」
首を撫でながら手綱を掴んで辛抱強く撫でていると、突然また積み荷が大きな音を立てて崩れた。その音に驚いた馬が、前脚を高く上げる。
「危ない!」
「――っ!」
咄嗟に掴んでいた手綱を引こうとする私の背後から、腰を掴まれて後ろに引っ張られた。馬から離されて、大きな塊が目の前に立ち塞がる。
「下がっていろ!」
それは、私よりもはるかに背の高い、大きな騎士だった。
彼は「どうどう!」と、興奮する馬を宥め、力強く手綱を引いて制御している。その慣れた手つきに感心していると、離れた場所にいる馬も後ろ脚を蹴り上げて暴れだした。近くにいた人の悲鳴が響く。
(危ないわ!)
「あっ、おい!」
とっさにスカートの裾を持ち上げて駆け出す私に、背後から騎士の声がしたけれど構っていられない。周囲に人もいるのだ、このままでは大事故になりかねない。
「安全な場所まで馬を移動させましょう! あなたはその子を繋いだら、あっちの子をお願い!」
「!?」
振り返って大きな騎士へそう叫び、他の馬を宥めるためにその場を離れた。
*
「いい子ね、もう大丈夫よ」
それから、私と騎士は二人で事故現場から離れた中通りに馬を集めた。近所の人にお願いをしてバケツに水をもらい、馬へ飲ませる。首を撫でても動じず、すっかり興奮は冷めたようだった。
そこへ最後の一頭を連れた先ほどの騎士が現れた。手綱を道端にある木に縛るのを見計らって、バケツの水を手渡す。
「よかったわ、怪我がないようですね。これをその子にも与えてください」
「ああ、すまない。ありがとう」
騎士は受け取ったバケツを馬の足元に置き、水を飲む馬の首を撫でると、改めて私に向き直った。
「――ご協力感謝する」
そう言って胸に手を当てて騎士の礼を執る彼は、十歳くらいは上だろうか。背が高くて大きいうえに無表情だからか、迫力がある気がする。
「いいえ、被害が出なくてよかったです。御者の方は大丈夫ですか? お怪我をされているようでしたけれど」
「私の部下が医者のもとへ連れて行った。怪我人はどうやら彼だけのようだ」
(部下。やっぱり隊長職とかかしら)
迫力があるのは顔と身体つきのせいだけではないらしい。
「ここはもう部下に任せるので、――よろしければ、お送りしましょう」
そう言って差し出された手に、はっと馬車の存在を思い出す。いけない、かなりの時間が経ってしまったかもしれない。
「お構いなく! 馬車を待たせているので大丈夫です」
「では馬車まで……」
「ご親切にありがとうございます。でも、まだ事故現場は片付いていないみたいだわ。どうぞ、お仕事に戻られてください」
「――」
何やら眉間にギュッとしわを寄せた彼は、難しい表情で視線を足元に落とした。
「本当にすぐそこですから。それに、こう言っては不謹慎かもしれませんけれど、この子たちのお世話ができて楽しかったわ」
「この子たち?」
私の言葉にふと顔を上げた彼は、青い瞳を丸く見開いた。私のヘーゼルとは違う、まるで海のようなきれいな瞳だ。髪と同じ銀色のまつ毛がその瞳を取り囲んでいて、とてもきれい。
「ええ。大きな音に興奮して驚いただけだわ。賢くていい子たちです。ね、あなたたち、あとでたくさん飼い葉をもらえればいいわね」
近くにいた栗毛の馬の首を撫でると、明るい色のしっぽをふわりと振った。
「もう行かなければ、きっと心配してるわ。それでは騎士さま、どうぞお気を付けて」
本当に、時間を忘れてしまった。叔母さまが心配している。
まだ何か言いたげな騎士にさっと素早く膝を折り、私はその場を走るように立ち去った。
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