聖女はちきゅうさん。

hikumamikan

文字の大きさ
6 / 19

六 擦り傷なんぞ唾かションベンじゃ。

しおりを挟む
「これはまた大層な」
「ジャイアントボアですわ」

「えっ、まさか素手で・・・」
「えいっ!」
スドッ。
ブギイイィー・・・ドサッ。
すれ違いざまに手刀を首筋に打ち込んだ。
よろよろと十歩ぐらい歩いてジャイアントボアは倒れ込んだ。
「おりゃあー」
ズドン。
私は止めを刺して(あくまで手刀で)ジャイアントボアをインベントリーヘしまった。


「あっ見えましたよ姐御」
「海辺の町を出てから3日かよ。遠いなあ」
「まあこんなものですよ」
「クミルタンって読むんだよな」
「そうですねクミルタンです」

「どんな町か知ってるか?」
「いえ私も初めてです」


冒険者ギルド証を門番に見せると。
「ほうカノンの出身か」
「登録したのがカノンってだけよ。ちょっと川に落ちた事故で記憶が無くってね」
「そりゃまた大変だな。早く記憶が戻ると良いな」
「有り難う」

「こっちの嬢ちゃんはまた珍しい。北の東端の国から来たんだね。こっちの国は気に入ったかい」
「気候も良くて気に入ってるわ」
「そいつは良かった。ほいっ、通ってくれ」


「姐御はカノンからアプターに来たんですね」
「まあ歩いて半日だし、アプターの方が大きいから、依頼も多かったしね」
「ここクミルタンへ来ようと思ったのは?」
「ああそれな、アプターに着いた当日に宿で寝てたら女神のヤロウが夢に出て来てな、何処でも良いからカブナ信教の教会で登録するように言われたんだ」
「えっ教会に登録ですか?」
「ああ私は回復と治癒の魔法が使えるからな」
「えっえっええ~」
「なんだよう、そんなに珍しいか」
「そりゃ貴重な人材ですよ。治癒魔法なんて。回復は割といますが治癒は少ないです」

治癒は少ないのか・・・。
聖女って言うのは止めとこう。


「随分ぼろっちいな」
「カブナ信教は信徒が少ないですから」
「ふ~ん」

私達はぼろっちい教会の扉を押し開けた。
ギィ~と重厚な扉は音を立てて、日の光を薄暗い教会の拝殿を照らして開いた。
「直ぐに拝殿が有るんだな」
「こじんまりした教会なのでそうなのでしょう」

「いらっしゃいませ。お祈りですか」
「はい」
「それでは前の席にて座ってお祈り下さい」
長机が左右に五列づつと、椅子が一つの机に三つずつ有る。
計三十人しか座れない。
これは本当に信徒が少なそうだ。

私達が席に向かおうとすると。
突然扉が開いて、いかにもな怪我人に肩を貸して、冒険者らしいのが入って来た。
「ぐうう・・・」
「シスター治癒してくれ、街道でジャイアントボアに襲われたんだが、他所じゃ高くて金が払えねえ」
「ちょっと見せてね」
そう言うとシスターは怪我人を教会の床に寝かせて治癒魔法を幹部に当て始めた。

「ふう・・・これ以上は無理ね。止血と傷口はきれいにしたけど、薬を塗らないと化膿するかもね。お薬持ってる?」
「ここに来るまでに使っちまったよ」
「困ったわね・・・今はうちにも無くてね」

「・・・姐御」
「うん」

「ポーションなら持ってるわよ」
しゃがんでいた怪我をしていない男の方が私を見上げたが、・・・金がねえんだ。
「・・・自作のポーションだからお金はいいわ」
「「「じ・さ・く・?」」」
「お嬢様は錬金術師か薬師様ですか?」
「正確には違うけどポーションは作れるよ」
「いや流石に素人のポーションは・・・」
「なら治癒魔法をかけてあげるわ」
「「「えっ!」」」
「あなたは治癒魔法を使えるのですか」
「回復と治癒それに洗浄が使えるよ」
再生と浄化は一寸不味いと思ったので言うのを止めておいた。
特に再生は先程のシスターの治癒を見る限りヤバそうだ。
「だが先程シスターに治癒はかけて貰ったし」

「う~ん・・・失礼だけど私の方が治癒魔法レベルは私の方が上だと思う」
「そっそうなんですか、それなら是非お願いします」
「貴方はいいかな」
「・・・わかった。頼む」


シスターの時より強く青白い光の放たれた治癒魔法。
それにより傷が完全に治ってしまった。
「「「・・・・・・凄い」」」

「これで良いかしら?」
「有り難う御座います」
しかし未だ怪我人は顔色も悪く意識が朦朧としている。
「う~ん、ちょっと回復も強めにかけましょうか」
そう言って私は再生魔法を黙ってかけた。
血の量を再生させる為だ。
もちろん回復もかける。
「・・・これを」
私は怪我をしていない男にポーションを渡そうとインベントリーから出した。
このポーションは私が暇な時薬草から作った物で、女神から貰ったピッチャーの水を使ったポーションだ。
あの水は綺麗だし失くならない不思議な水なので、インベントリーにしまって見てみると、聖水と成っていたのでびっくりしたものだ。
ポーション作りにはドンピシャだった。
「いっ良いのか?」
「いいよ、飲ませてあげて」
男は未だ意識が朦朧としている男にポーション瓶のコルク栓を開け飲ませた。


「う~ん・・・ふう~。あれ・・・」
怪我人はその後歩けるまでに回復して、私達は何度も何度もお礼を言われて、彼らの帰るのを見送った。


「あっそうだシスターお祈りして良いですか」
「あっああ、どうぞどうぞ」
「それとシスター私、教会に治癒師として登録したいのだけどよろしいでしょうか」
「・・・はっはい、もちろんです」


お祈りが終わって治癒師登録をする。
「この魔石で作った登録版に手を当てて頂くと自動に登録されます」
私はその魔石版に手を当てた。

魔石に文字が浮かぶ。
「せっ、聖女!!」
シスターが少し大きな声で叫んだ。
なんかマズッたか、わたし。

「あっあの内緒でお願い」
「で、でも聖女様なら国で保護されますよ。お金も死ぬまで生活出来る分貰えますし。今もこの国には4人いらっしゃいます」
「いや飯食う分は自分で魔物を狩って稼げるから。それよりも自由に暮らしたいからね」
「・・・そうですか。実はカブナ神は創造神にもかかわらず、それを信じていない人が多く、信徒も少ない上に聖女もこの信教にはいません。あなた様が初なのですが」
「この教会には聖水とか有ります?」
「あっいえ、聖水は御座いませんが、加護の有る井戸なら御座います」
「その水は今有ります?」
「私共はそれを水瓶に移して使用しております」
シスターはチラリと部屋の片隅の水瓶を見た。


「・・・あの水瓶からですか?」
「あっはい。毎日信徒の方に井戸から汲んで貰いますが・・・」

「ちょっと失礼」
私は女神から貰ったピッチャーで水瓶を満水にすると(時間かかったよ)薬草を浸けて、無・気・浄化洗浄・合成の秘術・回復・治癒・再生の各魔法を同時に使い、永遠に腐敗しない総合薬のポーションを造り出した。

「シスター」
「はい?」
「これは特殊なポーションです。人体の全ての異常に対処する薬です。永遠に腐らない魔法を掛けました。一滴ずつで効きますのでお使い下さい」
「はっ、はいっ。有り難う御座います聖女様」

「では登録有り難うシスター。これで失礼します」
私は教会を出る前に土魔法で新たな水瓶を側に作って置いた。(勿論合成の秘術なんかを使い陶器に変えてだけどね)
シスターは驚いてたけど、知らん振りして出た。


教会をあとにした道すがら。
「姐御・・・手に擦り傷が」
「あっ本当だ」
私はペロッと傷をなめた。
「いや姐御ポーションとか塗ったら」
「んっ、こんなもんションベンか唾つけりゃ治る」
「あははそっちの聖女ですか」

「・・・何の事?」
「あっ、いや」


────────────────────

やっと涼しく秋の風が頬に当たる様に成って来ました。
お気に入りして下さった方、有り難う御座います。
暑くてバテ気味でしたし、夏風邪を貰ったかと薬を飲んで凌ぎました。
文字数が減ってるのはそうした訳では無くて、一話々の文字数がどれ位が読みやすいのか探ってる為です🤣。

あ~鰻でも食べようかな「すき家だけど」。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...