聖女はちきゅうさん。

hikumamikan

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十 異世界お決まりのジャポニカ米登場。あっ、餅米もね。

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「ったく、盗賊がやたら多いね。」
「こないだ迄内戦状態だった国だからね」
「そうなの?」
「お嬢ちゃん達はどっから来たの」
「うちは遥か遠い国だと思う」
「思うって・・・」
「記憶が曖昧なんだよね」
「そうか、人には言えない事もあるさね」

言える訳が無い。
地球の日本から来ました。
一度死んで神様に蘇生されて、若返ってますが50歳手前のオバンですなんて、言える訳が無いし言いたく無い。

ああそうだよ、セーラートシマーだよ。
悪いか!。

セーラー服と年増聖女なんて映画にも成りゃしない。

「私は北東の端の半島国から来ました」
「あんたも随分遠くから来たんだね。今はこの国はきついけど元は良い国だったんだ、願わくば嫌いに成らないで欲しいけど・・・」


「あれ?・・・街道にはオークとか滅多に出ないって聞いたけど」
「姐さん、お金に成るから狩っちゃいましょう」
「・・・だねえ~」

とりゃー。
バシュ。
でりゃあ。
ドシュ。
ザンッ、ごしゅっ、ブシュ、ズドッ。

「いやあフォンシーヌは腕を上げたねえ」
「姐さんの剣術を見てますから」
「私のは我流だよ」
「前に剣聖の精霊と手合わせしてるの見たのが大きかったですよ」
「ああ、伊勢守さんだね。取り敢えず収納してッと」
ポッ、ポッ、ポポポポッ。

「・・・姐さん後ろ」
「んっ?」
後ろを振り返ると、ギルドのウルチさんと馬車の馭者の方がポカンとしてた。
「?・・・大丈夫でしたか」
「「あっ、はい」」
「そう、それは良かった」
「剣の腕も凄いけどマジックBOX持ち・・・ですか」

「まあね、旅をするのに重宝してるよ」
「いやはや羨ましい。しかも6匹もオークが入るなんて」
「あはは、神様に感謝ですね」


「見えて来ましたね。あのオルクスの町の北に有る湿地帯が、お米の栽培地ですよ」

「ああ~」
「今日はここで野営ですね」
町に着いたけど門が閉まってた。
オークの襲来がなけりゃ間に合ったかな?。
仕方無く野営の準備をして朝を待つことにした一行。


翌日の朝。
朝食中に提案された。
「このままナツコさんの所へ行こうと言う話になりました。町に入っても意味が有りませんし、それならそのまま町を迂回して、農場へ行った方が良いとの事でして」
「別に構いませんよ。フォンシーヌは」
「私も構いません」
それならと私等はそのまま農場へ向かった。

「でも帰りには町に寄りますよ。商業ギルドに行きませんと成りませんし」
「「ああ成る程」」


暫く馬車で行くと大きな湖と湿地帯が見えて来た。
稲は刈られているので最早無い。

小川の側に水車小屋が何軒か有る。
ガタゴトと音を立てて中では臼が回っていた。
脱穀用の臼なので米粒が落ちてくる。
その横では女の人が鞴の板を踏んでいた。
フシューと、風が籾殻を飛ばしている。
「姐さんあれは何をしてるんでしょうかね」
「ああ玄米の殻を飛ばしてるんだね」
「その通りです。流石ですね」
「いや日本じ・・・少しは知ってるから」
「・・・あの女の方がナツコさんです」

「あら!、いらしてらしたの」
「ええ今着きました」
「もうこの袋でおしまいですから、そこの東屋で待ってて貰えますか」

私達が東屋でお茶をして暫くしたらナツコさんがズタ袋を担いでやって来た。
「随分力持ちですね」
何キロ有るんだろ?。
俵では無いから30キロくらいかな。
徐に側に積まれていたズタ袋の山に乗せたナツコさんが口を開いた。
「この袋を醸造所まで今年もお願いね」
「はい分かりました」

「お酒を造るにしては少ないですね?」
「あっ、ああ試作だから、酒米もそんなに無いしね。粒の小さい飼料様は沢山有るんだけど、あれだといまいちなんだよ」
「あの、その飼料のお米って売って貰えますか」
「ン、良いけどどうすんの」
「精米して食べるんです」
「えっ、精米?。あれ精米すんの」
「はい」
「はあ~良いけど、うちで精米すんならお金貰うよ」
「はい出来たらお願いします。流石に個人で精米は難しいので」
「なら後で弟に言っとくよ。なんぼ程要るのかな」
「出来たら六十俵・・・あっ、その袋で120程欲しいのですが」
「・・・六十俵って、あんた東の果ての海洋国出身かい」
「へっ・・・」


「いやなにね、俵(ひょう)って単位はあの国独特のもんだからね。24石だね、解った弟に言っとくよ。精米するから、そうだねえ金貨1枚欲しいな」
「それで充分です。有り難うございます」
日本での1/3以下だよ。
あの精米方法でそれだから安いよね。

あっ、インベントリーで分離したら・・・。
オークが解体出来るんだからねえ。
まっ、良いか。


相手が醸造所の人だから何も言わなかったのだけど・・・。
ウルチさんから私の知ってる知識をナツコさんに話して欲しいと頼まれた。
素人知識で申し訳ないが、知ってる範囲でお伝えした。

成る程ねえ元々糖分の有る麦芽とかとは違う考え方なのね。
一度に仕込むと変質しやすいのか。
本職相手には面映ゆいが、お米の醸造の歴史自体が浅かったので、私のスマホからの知識でも少しは役に立った。


少し疑問に思った事をナツコさんに聞いてみた。
「なぜ味噌が有るのに醤油が無いのですか」
「えっ・・・」
「味噌を作る段階で上澄みであったり、下に溜まる赤黒い液体なんですが・・・」
「えっ・・・もしかしてあれ飲めるの?」
「いえいえ、飲みはしませんが、色々な料理に使えますよ。そもそも醤油を取る段階で味噌が生まれたと思うのですが・・・」
「えっええ~」
「もしかして捨ててた・・・とか」
「あんなもの食えたもんじゃ無いでしょ」
「いやはや味噌が食べられるんだし・・・」

驚愕の事実だった。
醤油は捨てられていた!?。

実はナツコさんの実家は味噌を作っていたのだ。
何故にあれが捨てられたかと言うと、どうやら最初の頃に味噌を作った人があれを飲んで死んだらしいのだ。
塩分の摂りすぎだよそりゃ。
海水を飲むのと一緒ってもんだよ。
なにしてんのさ昔の人よ。

「娘を嫁にくれと言った男に、娘の父親があの赤黒い液体を一気飲みしたらなと・・・」
「そりゃ塩を一気に摂取したら死ぬでしょうが!」
「あっ・・・」

「コホン、程々にすれば物凄く万能な調味料なんですよ。因に味噌は大豆と米が主原料なんですが、こちらでは麦と大豆ですよね。それは私の国では醤油の主原料です」


酒米を運搬する間にナツコさんちの使用人に、実家から溜まりを取って来て貰った。
酒米の護衛中は何事も無く平穏に終わる。

オークをストレージ内で分別して、生姜とトウモロコシ焼酎と溜まり醤油で焼いている。
精米して貰ったお米を炊いてもいる。
真水に5日泳がせた鯰をさばいていたので、少し貰ってトウモロコシ焼酎に浸けてから、砂糖醤油で蒲焼きにした。
確か鯰ってウナギに少し似てるって聞いたから。
でも皮はウナギより食べづらく臭みも有る。
5日真水に泳がされていたし、トウモロコシ焼酎に浸けたから・・・べっちょ無い無い。
皮除いたから・・・べっちょ無い。
後は簡単に醤油でお吸い物を作ったよ。


ナツコさんちの人や馭者さんそれにウルチさん達も、私の醤油料理に驚嘆してたよ。
うん、醤油は偉大だ。
私の様な料理下手でも出来るのだ野田阪神。


帰りはオルクスの町に寄って、馭者さんとウルチさんが商業ギルドで、ナツコさんの依頼遂行の料金を貰った。

「あれっ、私達の依頼はナツコさんからじゃ無いのですか?」
「ああ、あれは冒険者ギルドからの依頼だね。安くてごめんね。後々の昇格に便宜図って貰えるから勘弁してね」
「ランクが上がり易く成るのは有難いです」


オルクスからの帰り・・・。
「また盗賊かよ、ほんまに多いよな」
「内戦で負けた方の兵士が殆どです」
「奴等は傭兵稼業しか出来ないから、用済みに成ったらこのざまですよ姐御」
「冒険者に成って魔物倒しゃええやん」
「その腕が無いんですよ」
「いやいや、人より対峙しやすいでしょ」
「皮の硬さとか力とか人の方が殺し易いですからね」
・・・何か違う気がするけど。


仕方無いので、悪いが8名の盗賊は瞬殺させて貰った。
帰ったら長ドス研ぎ直さないとな。
今度から魔法で殺らせてもらう為に、魔法の練習をしようかな。


研ぎ代馬鹿にならないって・・・。
ああ、私の思考もこの異世界に染まったか。


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ゴッ、ゴールドエクリプス!。
あっすいません🙏。
ついエリザベス女王杯の事が・・・。
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