聖女はちきゅうさん。

hikumamikan

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十四 歩き巫女。

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 六話で文が数行消滅してつじつまの合わない所が有ったので、直しておきました。
 申し訳御座いません。
 校正はちゃんとしないといけませんね😰。

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 神々が生きとし生けるものに憑依したものを巫(かんなぎ)と言い、山や川等の地形や岩とか木に憑依したものを甘南備(かんなび)と言う。

 巫女は神の言葉を伝えるものとしての依代。
 生き物で無い物は御神体とか言われる。

 歩き巫女はかんなぎだが、実際に神託を賜り伝えられる者は神子に成る。
 所謂使徒。
 人で無いものには神龍等がいる。
 だけど本当は殆どが紛い物。

 聖女はひじり魔法が使える。
 ひじりとは徳がある事を言う。
 主に治癒を得意とする魔法に長ける。
 後は浄化で、穢れを鎮める魔法だ。
 徳があると言う事は人々から敬われる事なので、世のために成る魔法使いの女性が聖女。

 俗に光魔法と言われるが、厳密には違う。
 光魔法は素粒子系の恐ろしい魔法だ。
 闇も光の一部なので、これ等の魔法を操れる者は既に人ではない。
 故に聖魔法より光魔法の方が強者である。
 只、明かりでない光魔法を操れるのは神の類いだけ。


 彼女(ミズキ)は使った事も無いから、神聖魔法(攻撃用)は光魔法で有る事を知る由もない。
 はっきり言ってしまえばミズキは事代主。

『ふふふ。水戸肛門を世に出しただけよ』
 (いや水戸黄門だと思うぞ)



 そんなお馬鹿な女神に色々貰ってしまったミズキは、山脈の裾の町オーバンで宿を取っているが、実はこの町は主神の教会のこの国での総本山でも有った。


 私が今いるのはボンノアール教の教会だ。
 ボンノアールは薬師神らしい。
 結構な数や品種のポーションを売っている。
 カブナ教とは偉い違いの賑やかさ。


「なあ~頼むよ助けてくれよお~」
「そう申されましても流石にこの傷は無理で御座います」

 何やらとんでもない怪我人が運び込まれたみたいだ。
「姉御・・・」
「うん、いちおう診てみるよ」


内蔵の一部が抉られて瀕死だった。
「これは私でも無理と違うかな」
「冒険者風情が何を言っている」
「あっ、神官長」

何やら偉そうなおっさんが出てきた。

「少し治癒魔法が使えるからとか、少し薬が作れるからとか、出しゃばって迷惑を掛ける冒険者は立ち去れ」
「何を言うか!、姐御は聖女だぞ」
「ほう~、仮にも聖女と偽れば死刑に値するのを知っての事か」
「ほっ本当に聖女なんだから」

「出来る限りの治癒魔法を掛けてみるけど、駄目だったらごめんね」
そう連れの冒険者に理って魔法を掛けようとした瞬間に肩を掴まれたので、反射的に投げ飛ばしてしまった。
仕方無いので啖呵を切ってみせた。

「カブナ教の聖女たる私に手を掛ける無礼は許さんぞ!」
「えっ、カブナ教」
「カブナ教だって」
「あのオンボロ教のか」
「おのれえー、カブナ教ごときの紛い物が私に何をするか!」
「神官長殿そのお言葉は今すぐ撤回なさいませ、おそれ多くもカブナ神様は主神であらせられます」
直ぐ側にいたシスターが注意したが。
「うるさいわっ!」
神官長はそのシスターを殴り飛ばしてしまった。

だがその直後騒動で多くの民衆がいる目の前で、眩く光と共に女神が私の前に降臨した。
「ミズキよ治療を急げ間に合わぬぞ。この馬鹿は私に任せろ」
「はい、お願いいたします」
そう言って私は腹の抉れた冒険者の治療に専念した。

「内蔵よ何とか修復してくれ、神の加護を」
私は何度も何度も治癒を重ねが卦した。

その間私をこの世界に呼んだ女神は神官長を張っ倒して、神官職を剥奪した様だ。
因みに殴り倒されたシスターの治療もしてくれた。


「なっ治った・・・はあはあ」
そう内蔵の修復が出来たのだ。
「うむ、欠損しておったが何とかなったのう。大したものじゃ」
「いっいえ、女神様の御加護です」


「姐御大丈夫ですか?」
目を開けたその場で見たものはフォンシーヌの情けなさそうな顔。
どうやら私は気を失っていたらしい。
しかしフォンシーヌの側には、あの時神官長に殴り倒されたシスターと、何やら高貴そうな見知らぬ女性が立っていた。

「カブナ創造神の使徒様、私目の信者が失礼を働いた事をお詫びいたします」
んっ・・・私目の信者?。

ガバッ。
「えっ、ボンノアール・・・様?」
「はい」
「本当に」
「はい」
「いやあ~お美しい。あのババアとは偉い違いでんな」
ガアアァ~ン。
「って、てぇ~。痛いだろこのくそ女神」
『誰がハバアじゃ。お前こそババアでは無いか』
「むっ、ぐっ」
言い返せぬ、悔しい。
「主審様とお仲がよろしいのですね」
「いっいえ、別に」
「ウフフ」
本当にボンノアール様は品がよろしいわ。

「此度の信徒の失礼の詫びと、患者をお助けに成ったご褒美に、私目から薬師の証成る・・・まあ御印みたいな物ですが、受け取って貰えますか?」
「よろしいのですか・・・その薬師のなんたらっての」
「ウフフ、むしろ貰ってもらわねば、私がカブナ様に怒られまするゆえ」
「有り難く頂きます」
「冒険者カードにも提示されますから、薬師ギルドやあらゆる教会そして貴族や、更に王族にも手出し御免と成ります」
「えっ」
「と言うか、創造神様の使徒様の時点で天下御免ですけどね」
「私共の神官長はその事すら御存知無くて申し訳御座いません。カブナ神の聖女と言うのは全聖女の頂点と成りますので」
「そっ、そう?」
「はい」
「因みにあやつは神官スキルを剥奪したゆえ、既にこの教会から破門を言い渡されておる。二三日中に出て行くで有ろうよ」
はあ~、まっどうでもよいわな、あんな暴力神官。


3日して魔力が回復した私は、お世話に成ったボンノアール教会をお暇した。


「ここがカブナ教会・・・ボロいな」
『悪かったな』
「ふふふ。その内金が貯まったら寄付するよ」
私が階段を上り玄関に着くと。
ずらり・・・いやいや4人だけどね。
神官長とシスター3人に迎えられたよ。
「よくおいでくださりました聖女様」
「いやいや、此方こそカブナ様にはお世話に成っております。ミズキと申します。何卒よしなに」

マジでボロかったので、教会の彼方此方を色々な魔法を組み合わせ修復し、更に水瓶3つ分の極上ポーションを置いて、一週間の滞在の後に山脈方面に出立した。

と、言いたいが。
ボンノアール女神にお願いされて、ボンノアール教会にもポーション瓶を一つ置いて出立した。
いやいや、あの人(女神)薬師神なんだけど。
何でやねん。

現在ボンノアール教会には聖女はいないらしい。
なので高品質のポーションは作れないのだとか。
世の中神も仏もありゃしない。


何でカブナ教会は信者が少ないのか、カブナ教会のシスターに尋ねたら。
カブナ神はやたら神罰を与える神らしい。
酷い国では邪神扱いなのだとか。
でも勿論創造神なのでそんなしょうもない事は気にも止めないのだとか。
何か分かるわその性格。


「あ~、やっちまったなあ」
「何ですか今の?」
「神聖魔法だな」
「はあ~」
「私の持つ最大の攻撃魔法なんだよね」
「何故にぶっ放しました?」
「何ね今の浅い洞窟がね、瘴気が溜まっててダンジョン化しつつ有ったんだよ。それでぶっ潰したわけ」
「そう言えばここまでやたらクレイジーオークやガッツブルなんて、おかしな魔物が沢山出て来ましたもんね」
(お肉いっぱいでウハウハでしたけど)
「しかもドロップ品落としたから変だと思ったんだよ。そしたらこれだろ、危なかったよ本当に」
「魔物が溢れる前で良かったです。ですけどこの大穴・・・魔物の巣に成りますよね」
「それなんだけど・・・」


「あはは、信じられません。貫通しちゃいました」
「いやいや、危なかったよ。まさかこんなでかい山貫通寸前まで穴空くとか」
「とんでもない魔法ですね」
「いやあ~助かったよフォンシーヌ。あんたの水脈感知とかガス感知は良い魔法だねえ」
「これ迄殆ど役に立たなかったんですけどね」
「もしかしてダンジョンには最適な魔法とちゃうか」


私とフォンシーヌは溢れる水や崩落に悩まされたが、何とか排水路とか土壁強化魔法何かを駆使し、ガス換気の機能をつけた魔石やライトを出す魔石を埋め込んだりして、10日目に山の反対側に到達した。

事前に討伐した魔物の半分の肉を消費したけどね。
そしてトンネル内のトイレなんて事にも気がついた。
勿論宿泊施設も作った。
多分通過するには半日掛かると思うからね。
おそらく世界初のトンネル温泉宿泊施設じゃないかなアレ。
蒸気の排出には生き物が入り込まない様に苦労したけど。
そこはあんた魔石に魔力込めてね。


いやあ~、参った参った。
山の反対の商業ギルドにトンネルの事報告したら大事になっちゃって。

私この町に何の目的で来たのか忘れちゃったんだよね、ほんま。
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