上 下
14 / 14

青い海原群れ飛ぶウツボ?。

しおりを挟む
 拠点の港町に戻った僕達は護衛依頼の達成金を分配した。
 そして今度は冒険者と商業、両ギルドと子爵様の依頼で一週間被災地への物質運搬やら、人員の配送なんかを請け負った。

 その間土木作業の関係者は馬車を連ね現地に続々到着して、インフラ整備と復旧に力を注いだ。
 結果4ヶ月くらいで完全復旧したみたい。
 異例の速さだった様だ。
 僕らも何度かその間Uちゃんで往き来したので、完全に被災地と拠点の港町ではUちゃんは認識されている。



 ∗∗∗モルトパーク邸宅∗∗∗

「・・・魔法伝達装置ですか」
「そうだ。君の・・・何だ、空飛ぶゴーレムに付けられないか。まあ置くだけで良いのだがな」
「Uちゃんです。正式にはUS-2ですけど」
「ゆうえすつう・・・」
「そうです。因みにゴーレムでは有りません」
「えっ、ゴーレムじゃないのか?」
「ええ、どちらかと言うと・・・神の御神器。神のうつわと言うべきでしょうか」
ガタッ。
「かっ神の器・・・」
「ええ、神様から授かった物ですから」
「そっ・・・その神の名を聞いても良いか」
「アルバさん・・・先輩冒険者の方によると時空神ザルウォン様ではないかと」
「最高神ザルウォン。いつも時空の狭間を旅していると言われている。色々な物を造り出すので創造神とも。何れにしてもこの世界の皇神(すめらぎのかみ)と言われているな。加護を受けし者・・・あっいや、君はそんな性格では無さそうだ」
「・・・?」
「・・・・・・知らぬか。その加護を受けた者は王に成れる」
「成りません」
「だろうな」
「・・・」
「・・・」


「それで魔法伝達装置の設置とは、どういう事でしょうか」
「ああ、そうだったな。各組合や役所に領主邸、私の様な代官邸そして王城には全て設置されている。大事な通信網だ」
「そっそんな畏れ多い物を・・・」
「前の地震の件で話し合われた結果なのだ。各港を繋ぐ客船やある程度の船には端末が積まれている。無論漁船にもだ。金が無くて積んでいない船も多いがな。そんな船は沿岸部にしかいないので、遭難しても発見されやすいから、代わりに回りの船から信号が送られる。・・・判るだろ」
「緊急遭難救助に従事する訳ですね」
「話が早くて助かる。勿論冒険者ギルドとか各組合の仕事中でも構わん。そちらには国から通達を出して特別任務として処理して貰う。だから護衛とかの任務中に成るので、君の依頼料は安くなるが、それは国が補填する」
「理解しました」
「個人的な依頼中でも失敗扱いには成らんし、団体行動中でも君の依頼料は安いので、依頼主の負担にも成らん様にする。・・・だから、びっくりするくらい安いと思うが、月々補填するので気にはしなくて良いので、あの娘とも所帯は持てるだろう」
「・・・」
「仲が良い事はギルドでも有名だぞ。その内自然とやや子も授かるだろうから生活は心配要らん」


確かにウーヌとは・・・そんな風に成れたらと夢見る事も有る。
ウーヌもまんざらと言うより、その何・・・誘われている様な言動も有る。
ウーヌは前に彼氏がいた事も有り、性交渉も経験が有るらしい。
でも色々有り別れたと聞いた。
僕は正直彼女としたいし(やってないよ)安定した収入が有れば、勿論夫婦に成りたい。
僕は夢精、所謂精通を経験しているから子作りは可能だ。
この世界では十五歳と言う成人の年齢に達して結婚も出来る。
だから安定収入が有れば、ウーヌにプロポーズしたい。

だが僕の冒険者のランクだと安定収入には程遠い。
彼女は気にしていないけど、そんな訳にはいかない。
だいいち僕には家が無い。
借家も無い状態で安宿暮しだからね。

前世では有り得ない状況に戸惑っている。

でも救難活動で収入が得られるなら・・・。
召喚や送還で遭難者も収容出来るし、何とか成りそうで有る。


「・・・・・・臨時的に人手が必要な時は冒険者を雇えますか?」
「臨時で無くとも正規で良いのではないか」
「僕が何らかの事情で死ねば神器も消えると思うので、それは同時に雇った人の失職に繋がります。何せ他には無い能力ですから」
「そっそうか・・・そうだな。では人手が必要と判断したならその都度雇うと言う事か」
「そうなりますね」
「う~ん・・・。ちょっと領主様に相談してみるか。あっ、救助隊としては明日からでも要請が有れば出来るか?」
「はい、出来ます」
「そうかでは今月は支度金と言う事で先ずはこれを」

そう言うとモルトパーク子爵は僕に金貨20枚をくれた。
「今月は給金では無くて、救助隊の仕事用の支度金となる。来月からは正式な給与と成るので契約書にサインをして貰えるか」
「はい」
「そうか。お~い契約書持って来てくれ」
子爵は執事さんに契約書を持って来る様に伝えた。

そして改めてウーヌも呼ばれて二人とも、領主直轄の救助隊任務要員として契約する。
人手が必要な時は領主の使用人が当面は参加する事で落ち着いた。


金貨20枚だと贅沢しなければウーヌと二人で4ヶ月は暮らせる。
金貨1枚で大体の感じだと2万5000円から3万円くらいだ。
5000円の誤差は日本だと大きいのだが、この世界割と大雑把な物価と言うか何と言うか。
兎に角そんな感じだ。


取り敢えず借家を探さないとね。


でも借家はあっさりと決まった。
領主であるボルドール侯爵から空き家の一つを月に銀貨5枚の格安で貸して貰えたのだ。
日本だと家賃五千円である。

借家に引っ越した(とは言え身一つなのだが)その日にウーヌが押し掛けてきて、一緒に住む事に成ったので、取り敢えず殴られる覚悟でウーヌの両親に挨拶に向かった。
あっけらかんとしてた。
飯さえ不自由しなけりゃ良いと言われ、孫を早く見せろとも。
いやいや、未だ結婚報告教会にしてないし。
・・・まあ同姓時代って事だね。


朝早く寝ていた僕達は慌てて支度をして子爵邸宅に向かった。
あっ夕べは別に・・・あれだから、してないから。
魔法伝達装置はUちゃんに装備されてて、Uちゃんから念話が飛んで来たのだ。
海洋事故って言うか旅客船と魔物が交戦中らしいので、直ぐ様Uちゃんを召喚し僕達二人をUちゃんに送還した。

航路なので方角さえ判れば一直線だ。
沿岸から10キロだろうか、東に20分飛んだところでそれらしき船影が見えた。
「Uちゃん魔物を機銃掃射でお願い」
『了解』


大きなウツボの様な魔物だったが、機銃掃射であっさりと片が付いた。


怪我人が二人いたのでUちゃんに送還して町に運ぶ。
船の損傷は軽微で航行に問題なしなので、そのまま航路を西へ行き僕達の港町に寄港するらしい。

取り急ぎ怪我人の報告を子爵にしたら、海運ギルドの病院が港に有ると言う事で、そちらに向かう。


港の突堤から少し離れた海面に着水して、突堤に怪我人と共に送還した。
僕から目線なので機内に行くのも陸に行くのも送還と言ってる。
ややこしい。

しばらくしたら、担架の様な台車を引いて病院の職員が現れた。
魔法伝達装置で病院の場所を聞いても僕にはピンと来なかったので仕方無い。

怪我人の運ばれた先は目の前の建物だった。
大きな建物だけど、僕はずっと漁猟庁舎だと思ってた。
怪我人も大した事はなかったので良かったよ。


それから一度Uちゃんの機体に戻って救難活動の成功を子爵様に報告してから、Uちゃんの中で朝飯を取った。
白米に味噌汁と御新香と焼き魚だったね。


一息ついてもう一度突堤からUちゃんを送還して、歩いて家に帰る事にした。
家を借りたから少し要る物を町で揃えたかったのだ。
家具も少しばかり注文しときたかったし。

そしたら途中で子爵の馬車ともう一台の馬車にに出会った。
もう一台は海運ギルドの馬車だった。
改めて子爵様と海運ギルドのサブマスターに報告する形で家に帰る事に成った。


でもあの巨大ウツボ回収してUちゃんの格納庫何だけどどうしよう(汗)。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...