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モ○ラの歌。

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7日目は工芸の町。
織物から手工芸そして本格的な魔道機械。
魔道機械は値段がとんでもないので、冒険者なんかには手が出ない。
外から眺めるだけだった。
護衛の商人さんすらスルーしてる。

人も多く集まるので食べ物も美味しい。
「皆さん宿は決まった所を押さえて有りますので、今日はそちらノンノン亭でお休み下さい。今向かいに見えるあの宿ですね。それまでは自由行動です。それでは我々は少しあちこちで商談をして参ります」

「宿を手配してくれるから助かるね」
「うん」
「まあこれが護衛任務の良い処だな」

「ちょっと川の水が下がったな」
「う~ん、まあ最近は降ってねえからなあ」
「だけどいつもそんなに変わんなかったぜ」
「どうなんだろうね」

「今の近くの川の事だよね」
「うん、雨が少ないとか言ってたね」
「いつもはでも変わらないとも言ってたな」
「アルバさん明日はいつ出発ですか?」
「う~ん、朝か昼かどっちにするか悩んでたな」
「僕は朝一の方が良いと思います」
「何でだ?」
「地震が来るかも知れません」
「何故そう思うんだ」
「いつもは変わらない川の水位が下がったからです」
「どういう事マリフ」


「意外と水と地震て関係すると思ってます。僕は昔(前世)不思議な地震に有った事が有るんです。
地震を表すのに震度5とか4とか6とか有るんですが、震度5って割と強い地震なんですけど、場合によっては建物が倒れます。
震度6か7は危険で7は確実にヤバいです。
その時は震度5だったのですが、震源地は山地一つ越えた町でした。

不思議なのは僕の町よりは遠くの町が割と揺れたのに、実は僕の町は全く揺れなかったんです、
直線距離なら近くて隣町と言っても良い距離だったのにです。
僕の住む町は地盤が堅くて元々揺れには強いのですが、震度5で揺れないのは流石に有りません。
実はその震源地には川が流れていて、太古の地溝帯も有ったんです。
地溝帯と言うのは地面の巨大な裂け目みたいな物です。
だから太古からの断層なので崩れ易くもあります。

ここで問題なのは水の流れが地下に空洞を作って、断層の一部がそこへ落ちたのでは無いかと言う事です。
先ず震度5で全く揺れないってあり得無いんです。
そして周りもそれ程の揺れと被害が無かったんです。
流石に震度5は塀か何か倒れてもおかしく無いのに。
と言うかそこだけだったんです。
余震も有りませんでした。
僕の推測では有りますが、落盤みたいな地震としか考え様が無いんです」

「つまりあれか水位が下がったのは底に空洞が出来たからか?」
「それともう一つ、火山って地下から溶岩や水蒸気が吹き出しますよね。
あの溶岩生成には地下の水分が関わるんです。
実は地下の凄く深くには高熱の物質が流れているんです。
まあ溶岩みたいな物です。
実はそれが上昇して来て水分が係わると、その水分の圧力で、地面の断層を崩壊させる事が有るんです。
お湯が沸騰して鍋の蓋が持ち上がるじゃ無いですか、あの蓋が地面と思って貰うと分かるかと・・・」
「ざわざわ」「ざわざわ」「ざわざわ」。

「あっ、脅してすいません。可能性の話です」
「まあ転ばぬ先の杖だからな、町の皆にも注意を呼び掛けるよ。君らは何処へ行くんだい」
「ああ俺らはキルギストゥだな」
「気を付けてな」
「ああ」


いちおう用心と言う事で次の日は早朝の出発に成った。

2日してキルギストゥの町が見えて夕方になっので、ここで広場で野営と言う事に成った。
竈を組もうとしたその時強い揺れに襲われた。
全員が立てずに座り込む程の揺れだった。
おそらく震度5近くだと思う。
この日は馬を宥めたり大変な夜に成って、まともな食事もなく、黒パンをかじって水を飲む夕飯に成った。
テントは立てずにマントと毛布で仮眠を交替で取った。
幸いにキルギストゥへの道は何ともなく、町も被害は軽微だった。
一部厩舎とかが倒れてはいたが。


朝に町に入ったので夕方には荷物の積み替えは終わっていた。
持ち帰るのは予定通り米と豆と硝子クズ。何気に硝子クズは重かった。
積み荷は済んで明日は休みとなり、宿でたんまり寝坊出来た。

のは良いのだが、冒険者ギルドと商業ギルドから緊急依頼が商隊に入った。


「ダイカスの町に寄る隊に食糧支援の要請だ」
「困ったなうちの馬車にはもう積めないよ」
「う~んどうしよう、護衛が担ぐか」
「あの~、僕のゴーレムに積めますが」
「えっ良いのか」
「ええ元々遭難救助の機体ですから。ただ突然荷が消えると変に誤解されそうで、何せ送還する訳ですから」
「なら町の外でゴーレムに積み替えは」
「それなら信頼して貰えるかと」

商業ギルドから馬車で町の外まで運んで貰える事になり、外の街道でUちゃんを出すと流石にびっくりされた。
そして荷物に手をかざし荷物を送還したら二度びっくりされた。
そして機体の倉庫に案内したら三度びっくりされた。
そしてUちゃんを送還したらまたまた、またもやびっくりされた。

いや、さっき召喚したやん。


こうして僕たちはダイカスへ向かった。

ダイカスへ着くと建物がかなり壊れていたが、死者や負傷者はかなり少なかったらしい。
事前の僕の話が効を奏したみたいだ、良かった。

ただ支援物資は近くの孤立した村へ送って欲しいとの事。

どうも地理的に着陸は難しく、投下による受け渡しに成りそうなので、箱の回りに藁を沢山巻いて貰う作業にギルドから人を頼んだ。

乗り込むのは冒険者ギルドのサブマスに職員4人、商業ギルドの職員2人、それにアルバさんのパーティーと僕とウーヌの6人。
総勢13人。
まあ自衛隊員なら1人多いがそうでは無いので関係ない。

「「「「「「「「「「「うおおおお~」」」」」」」」」」」
グオンッ、グオンッ、グオオ、ブロロ~。
「飛んどる、飛んどるどお~」
「スッゲエ~」
「「「「「「「「「おお~」」」」」」」」」


「ちょっと滑走はガタガタしましたが無事に飛べて良かったです」
「いや凄いなこれ」
ちょっと滑走路が街道なので心配だったが、無事に離陸出来た。
かなりバウンドしたから、少し長めの滑走に成ったよ。

飛んでから直ぐ側に着水可能な川が有ったので、帰りはあそこにしよう。
あの街道より安全だ。

流石に飛行艇、ものの数分で村の上空に差し掛かった。
下では大騒ぎだ。
拡声器で呼び掛ける。
「只今より支援物資を投下致します。少し場所を広く開けてお待ち下さい。お願いいたします」
これを三回叫んでから最小速度と低空飛行で格納庫から藁巻きの箱を投下した。

負傷者が5人いたので、Uちゃんには暫く旋回して貰い10人で担架を5つ持ち、村へ召喚して貰った。
怪我人を担架に乗せてUちゃんには送還して貰う。
怪我人はそのままベッドに寝かした。

「マリフわざわざ投下しなくても村へ召喚したら良かったよね」
「あっ」
「街道で滑走しなくても、空中に旋回して貰って、送還したら良かったな」
「あっ・・・」
飛行艇は乗ってから動かす概念だったのが崩壊してしまった。

ここは魔法の世界なんだと、やっとこさ思った次第だ。
自分の概念が覆る1日と成ったよ。


着水は不要だった。町の入り口へ担架の負傷者ごと召喚して貰い、Uちゃんを送還した。
何て便利な飛行艇。
多分前世のUS-2より凄いぞ、Uちゃん。


「まるで巨大な蛾に乗ってる気分だな」
アルバさんの一言に怪我人を運びながら、モ○ラにザッピ○ナッツの歌が聞こえた気がする。

うん、Uちゃんは正義の味方だもん。


「こら!、マリフ。ぼーとしてたら怪我人落とすよ」
「ごっごめん」
ウーヌに叱られて足首も挫かない様に慎重に歩いた。


僕が一番ダメダメやんか・・・。


この地震では死者8人、怪我人23人だった。山側では地割れも有ったし、岩等の崩落も多数有って、山地の村の被害が大きかった。
3つの領地にまたがる大きな地震だった。
震源地が人口密集地で無かった事も幸いしたかも知れないが、亡くなった方の冥福を祈った次第だ。


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石川県等の被災された方にこれからの頑張りと、亡くなられた方へのお悔やみを申し上げます。
立ち眩みかと思う揺れで長かったので、かなり大きな地震は咄嗟に分かりました。
これからは南海地震に備えないといけませんね。
おそらく近いうちに来るでしょうから。
もう天災に関しては頑張って気を付けてるしか、仕方無いですもんね。

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