僕はユウちゃんに恋をして空を行く。

hikumamikan

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土手の柳は蟹任せ。

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この町の河口には大きな堤が築かれている。
小規模な川が四つ有って、内二つは合流している。
どの川も堤が有るが、この合流している地点からの堤は大きい。

所謂天井川で未だこの世界の技術では川底の砂を取って、平地より低くする何て事は無理なのだ。
だから堤を高く大きくする。
側には柳が生えているが、柳は元々水辺を好む。
柳の葉は落ちて水中に溜まれば毒だが、川に溜まっても水が流れているので問題ない。
だから川側には自然とヤナギ科の木が生えている。

川から小さな蟹が時たま上がって柳の根方で、泣いて、いたりはしない。

そんな柳のウロに蟹を見つけた。

何故にウロに?。

「マリフなにしてんの」
ビクッ。
「なんだあウーヌかあ」
「何だとは何よ」
「いやあ、あはは。蟹がね、柳のウロに入ってて、珍なと思って」
2人してウロの蟹さんを眺めた。
2人で顔を近付けたせいか、2人とも顔が赤くなった。

「ウーヌ明日はどんな仕事受けようか」
「そうそうさっきね、ギルドの昼ご飯で済ませたんだけど、護衛の依頼が有ったの。
ん~と考えてたらアルバさんに有ってね、マリフも含めてこの護衛受けようかって成ったの」
「アルバさんのところは何人参加するの?」
「4人よ。だから私達含めて6人ね」
「何処まで行くの」
「森へ行く方の(森は既に解禁されている)門を出て10日掛かる町でキルギストゥって所」

10日とは随分距離が有る。
日本なら江戸から京都迄で歩いて14日なので、馬車だともっと行くかな。
500キロ以上有りそうだ。

「馬車だけど荷物が有るから徒歩と同じ速度よ」
おおう、伊勢くらいに縮まった。

「荷物は何?」
「大半は塩らしいよ」
「そうなんだ。帰りは?」
「豆とお米それに硝子クズ」
「硝子クズ・・・」
「溶かして色々な容器にするの」
「へえ~」
もしかしてUちゃん内のアレ・・・高く売れるかも。
そう言えばヘネシーの容器を子爵様も侯爵様も珍しそうに見てたなあ。
何の変哲も無い一番安いブランデーのビンだけど。

Uちゃん内のアレとは料理用ワインの空ビン。
何故か知らないけどゴロゴロしてた。
誰が料理してたのかな?。

「後ねえ途中に工芸品の町が有るのよ。そこでは色々な装飾品が買えるそうよ」
「そうなんだ。それじゃあウーヌに合う髪飾りとかブローチとか買ってあげるよ。余り高いのは無理だけど」
・・・ちょっと下心あり。

柳の下で交わした約束は僕の心拍数を上げた。
「本当に、嬉しい。でも程々の値段にしようね。将来も有るし」
「そうだね先も有るからお金貯めないとね」
人目が有るからキスとまではいかなかったけど、多分人目が無かったら抱きしめてキスを交わしてた。
ちょっと長く見つめ有った。
何となく将来を誓い合った気がする台詞。

「あっ、色々買わなくっちゃ」
「そうだね10日だと色々いるね」
「肉や野菜はUちゃんに入れて貰える」
「もちろんだよ、後水とミルクに玉子もね」
まあそれらは既に入っているのだが、何となく気恥ずかしくて会話を合わせた。

何故かしら指を何度か絡め合わせててを握っている。
ウーヌの気持ちは分かっているけど、何となくウーヌの気を惹きたくて、髪飾りとかの口任せを吐いてみた。

『土手の柳は 風任せ  好きなあの娘は 口任せ』
僕の頭の中にはなんとも古い歌が浮かんだものだ。
この歌、大江戸出世歌と言う。
前世の母が歌つていた。

口任せと言うがウーヌへの気持ちは本物だ。
もっとお金貯めてウーヌの御両親に認めて貰わないと、そんな先の事を考える程に。

でもこれって僕の初恋なんだよね。
初恋って実らないって言うけど、それは信じたく無い。

ふと村下さんの歌が浮かんだ。
あれはかなり淡い恋の歌。
5月の歌。

今は・・・。
ビューと寒い風が吹く。
「あ~外套と厚手のマントが要るわね」
「そうだね」
『ご主人様私のロッカーに防寒具と寝袋有りますよ』
『寝袋はこの世界の夜営では使えないね』
『そうでした。魔物の襲撃が有りましたね』
『有り難うUちゃん。外套だけ使わせて貰うね』
『はい羽毛入りですよお』
おお語尾伸ばして、Uちゃんアピールが凄い。


いよいよ今日は護衛任務での出立の日。
馬車は3台で僕とウーヌは真ん中の馬車。
体重の軽いウーヌは幌の上。
僕は後ろの昇降台に鎮座。


昼間の道中はギルとマルに街道脇の林や草むらを進んで索敵して貰う。
これだけでもかなり気が落ち着く。
それでも例外は有るもので、崖の道に差し掛かって猿の魔物に襲われた。
ギルとマルはそれぞれ馬車隊の前後に配置した為に、真ん中の僕達には間に合いそうも無かった。

ウーヌは流石であっと言う間に3匹を斬った。
僕はと言うと生活魔法で牽制しつつショートソードを振るうも、猿の魔物に傷すらつけられない。
他の馬車も何匹か襲っていたので此方に護衛は割けなかった。
ウーヌが5匹目を斬った時に漸くギルとマルが駆けつけた。
そしたら頭上でUちゃんが崖の上の猿の魔物に機銃掃射して、彼等は全滅した様だ。

結局僕は一匹も倒せなかった。


「申し訳ありません、役立たずで」
「いやいや、あの銀狼と空飛ぶゴーレム君の召喚術だろ。あれには本当に助かってるから」
「そうよ、マリフの剣は未熟だけど召喚術は天下一品なんだから」
「それは・・・余り喜べ無いよ」
「「「「あっはは」ワハハ」クスクス」ぷっ」


商人さんはあの猿の魔物の大群相手に怪我すらしなかった事を褒めてくれた。
いやそれは護衛としては・・・。
召喚術で助かったのは事実だと言ってくれたのがせめてもの慰め。

帰って少しは剣術を鍛えなきゃ駄目だな。

今更である。

野営地で Uちゃんご飯を振る舞いご機嫌取りをする。
役立たずのせめてもの行いだ。
Uちゃんご飯は最大で44人分出せる。
これは隊員12人プラス32人別に人が乗れるからだが、その他にインスタント食品が支援物資として多数積み込まれている。
ラーメンやカレーそして缶詰に乾パンその他、粉ミルクに液体ミルク(保存用)それから生活用品が一通り。

神様がUちゃんやギルにマルを与えてくれたのに感謝だ。
後は少し痛いけど、スキル(足首挫き)もね。
挫く度に使える魔法が増える。
実は猿の魔物との戦闘中に少し挫いた。
さてさて今夜はどんな魔法をお願いしようかな。

夜警の後の仮眠で身体強化の魔法を願ったら、成長段階なので駄目と夢で言われた。
代わりに投擲術の魔法を神様がくれたよ。
朝起きたら横に投擲ダガーが十本有った。
夢で見たのは確か投げても繰り返しUちゃんに戻って来るダガーの筈。
つまり召喚すればいくらでも投げられる無限ループ。
なんてチートな贈り物。
これで僕本体の武闘技術が有ればね。
トホホ。


護衛旅の5日目、とんでもないゴブリンの数に襲われた。
50匹はいたと思う。
相手が弱くて助かった。
ゴブリンじゃ無かったらゾッとする。
今度は僕も活躍したよ。
何と投擲で十匹倒した。
ウーヌが6匹。
アルバさん達が30匹。
数匹は森に逃げて行った。

「凄いなマリフ・・・でもそのダガーどうしたんだ?」
「あっ・・・実はUちゃんの中に有ったのを思い出して」
「マリフ・・・あんたいつの間に投擲術習得したのよ」
「あっ・・・その~」

「マジか」
「マジ?」
「嘘~」
「そんなの有り」
「まあ・・・マリフだからねえ。空飛ぶゴーレム持ってるし」
ここでアルバさんがとんでもない事を。

「若い美麗の白く裾を引くような長い服を纏った男神。・・・当てはまるのは時空神ザルウォン。・・・なんだけど、彼の神は能力で他の神を凌駕していて、事実上の主神。つまりはこの世界の創造神と言われているんだよなあ。ただ放浪の神で時折旅人を救ったり、道端で行商をしてたり、他の世界を旅したりと、他の神にこの世界を任せっぱなしらしいから、余り信者はいない。所謂残念神なんだよね」
「って事はマリフは他の世界でそのなんだ・・・ザル何とかに救われたって事?」
「そうなるね」
「ザルに救われた」
「「「「ぷっ」」」」
「ちょっ、不敬ですよ」
「「「「「今の無しで」」」」」


ズルーオーンとか何とか似た名前の神が前世に居たような・・・。
拝火教だったっけ?。


『そうだね。ゾロアスターを助けたからね』
そう言って6日目の夢に現れたのは、あの日僕をこの世界に連れてきた神様だった。

それから夢の中で色々な話をした。
彼(神)は異世界を旅するのが趣味らしい。
僕は海に落ちて死んだ事。
その肉体を模してこの世界に構築された事。
(・・・だから足を挫くのか)
この世界では僕は弱いので、足を挫く度に魔法かスキルの発動契機を与えた事。
面白いので僕を観察している事。
(面白いって・・・)
加護が多数有るのは、他の神が面白がって付与した為で有る事。
(女の子に見惚れて足を挫いて海に落ちた阿保は見た事無いらしい。・・・いや反論出来ないけど)
因みに主神の加護持ちは世界で僕だけらしく、それは誰にも視る事は不可能だとか。
スキルUS-2飛行艇召喚はオマケらしい。
(いやいや、凄いオマケなんだけど)

色々なチートがあるけど、僕自身はこの世界では最弱に近い存在なんだとか。
ああ、前世の身体を模したらね、そりゃあ。

因みに主神の加護が有るから、何が有っても僕は寿命まで死なないらしい。
・・・・・・「ハア~?」。
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