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12皿目 祠の呪石
しおりを挟む「はぁ、はぁ!! クソォ!! あいつら、何も知らないくせにぃ!!」
長の家から飛び出したムラサキは一人、アンデット達の攻撃を軽い身のこなしで避けて先に進む。
しかけておいた毒矢や石などの罠は痛みも感じない、魔法などの特殊な攻撃でないと有効ではないがムラサキは魔法が使えない。
「ちぃ!! けど、あの石さえあれば!! アタシだって、魔法でも呪術でも使えるんだぁ!!」
吠えながら森の先にある祠を目指す。だが、足元から出現したアンデットに足を取られて大きく転んでしまった。
「くぅ、そう…」
体中に傷ができ痛みで涙が出る。
(こんなところで死ねるか…バァバが、残してくれた呪石があれば、こんなアンデットどもなんか…)
荒い息を吐きながら祠へ進む。
首からかけていた、どこかの国の紋章が入った証を落とす。
この証は難破した船で発見された赤子だったムラサキが唯一持っていた物だった。
呪術により本当の家族を失い、魔法の才能もなく島の人間達に役立たずと罵声が飛んでも、育ての親である長であるバァバだけがいつも自分に優しかった。
(バァバ…)
傷ついた体を無理に動かし祠の奥にある巨大な紫色の呪石を見つける。
呪石には呪術が記憶されており、この石さえあれば誰でも呪術が扱える。
だが石に記憶できる術は必要な生贄の数に比例している。巨大な呪石の制作にどのくらい多くの命が使われていたかムラサキは知らなかった。
ムラサキはバァバが残してくれた遺産に触れようとしたが。
ウァァァ…
「う、うぁぁぁあ!?」
呪術師たちの怨念が宿った巨大呪石から不気味な声を出す骸骨が現れた。
骸骨は巨大な鎌を持ち、その正体を知る冒険者たちなら例え目の前にお宝があったとしても逃げ出していた。
骸骨の正体はアンデット達の上位種であり、あらゆる生命を鎌で狩り、命を貪る「死神」だった。
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