50 / 83
7話
缶詰5日目 揺れる気持ち【7】
しおりを挟む
ここで電話すればと森山君に引き止められたけど、自分の部屋に帰った。
新井さんといるのがやっぱり気まずいし、森山君にもドキドキしっぱなしだしで、一人になりたかった。
はあ。ようやく気が抜けた。
ベッドに腰かけて息をついた。
さっきは森山君にドキドキしっぱなしで、心臓が壊れちゃいそうだった。
夏目さんを好きなのに、森山君の魅力に腰が砕けそうになった。
こうやって夏目さんを忘れていくのかな。森山君だけを好きになっていくのかな。
本当にそれでいいの?
夏目さんを忘れられるの? 七年ずっと思って来たんだよ。
入社三年目の時、企画書が通らなくて落ち込んでると、夏目さんは親身になって話を聞いてくれた。それから忙しい中、通る企画書の書き方を丁寧に教えてくれた。
夏目さんに言われた通りに書いてみたら、初めて自分の企画が通って、嬉しくて堪らなかった。報告しに行ったら、夏目さんに頭を撫でられた。
よくやったなって言ってくれた笑顔が本当に私の事を喜んでくれてる表情で、心を掴まれたんだ。
あれからずっと夏目さんを見て来た。
会社が大きくなっても、夏目さんは夏目さんで、全然偉そうじゃなくて。
煮詰まってると、笑わせてくれて、コーヒーを淹れてくれて、話をいつも聞いてくれて……。
何かあれば相談しろよって、いつも言ってくれた。直属の上司でもないのに。
スマホを握りしめ、夏目さんの名前を表示させた。
おととしの忘年会で撮った時の、ちょっと酔ってて、普段より緩い表情を浮かべている夏目さんが表示される。
一番のお気に入りの写真。やっぱり夏目さんが好き。
そう思った時、スマホが振動した。
新井さんの名前にドキっとした。
「春川さん、今夜お時間を頂けませんか?」
電話に出ると、新井さんの涙が混ざったような声にびっくりする。
森山君と何かあったんだろうか?
「新井さん、まだ森山君の部屋?」
「ホテルを出て駅に向かってる所です。会社に戻らないといけないので」
鼻水をすすり上げながら、新井さんが言った。その様子に泣きながら外を歩いている姿が浮かんで、心配になる。
「新井さん、大丈夫?」
「何がですか」
「いや、その」
泣いてるのかなんて聞きづらい。そんな事を聞ける程、私と新井さんは親しくない。
「今から地下鉄に乗るんです。その前に返事を下さい」
新井さんは急いでるような感じだった。
「今夜ね。うん、そうね」
頭の中で予定を確認する。シナリオが予定通りに進んでるから、七時には終わるだろう。
「七時半ぐらいだったら時間が取れると思うけど」
「ありがとうございます。じゃあ、お酒の飲めるお店こっちで探しておきます」
「ありがとう。森山君にも声をかけようか?」
「それはやめて下さい。春川さんと二人だけでお話ししたいので」
スマホ越しの新井さんの声が硬くなった気がする。
森山君とやっぱり何かあったんだろうか。
「うん、わかった。私、一人でいくね」
「よろしくお願いします」
電話はそこで切れた。
今夜か……。
新井さん、一体どういうつもりで私に声を掛けたんだろう。
あまりいい話ではない気がする。
新井さんといるのがやっぱり気まずいし、森山君にもドキドキしっぱなしだしで、一人になりたかった。
はあ。ようやく気が抜けた。
ベッドに腰かけて息をついた。
さっきは森山君にドキドキしっぱなしで、心臓が壊れちゃいそうだった。
夏目さんを好きなのに、森山君の魅力に腰が砕けそうになった。
こうやって夏目さんを忘れていくのかな。森山君だけを好きになっていくのかな。
本当にそれでいいの?
夏目さんを忘れられるの? 七年ずっと思って来たんだよ。
入社三年目の時、企画書が通らなくて落ち込んでると、夏目さんは親身になって話を聞いてくれた。それから忙しい中、通る企画書の書き方を丁寧に教えてくれた。
夏目さんに言われた通りに書いてみたら、初めて自分の企画が通って、嬉しくて堪らなかった。報告しに行ったら、夏目さんに頭を撫でられた。
よくやったなって言ってくれた笑顔が本当に私の事を喜んでくれてる表情で、心を掴まれたんだ。
あれからずっと夏目さんを見て来た。
会社が大きくなっても、夏目さんは夏目さんで、全然偉そうじゃなくて。
煮詰まってると、笑わせてくれて、コーヒーを淹れてくれて、話をいつも聞いてくれて……。
何かあれば相談しろよって、いつも言ってくれた。直属の上司でもないのに。
スマホを握りしめ、夏目さんの名前を表示させた。
おととしの忘年会で撮った時の、ちょっと酔ってて、普段より緩い表情を浮かべている夏目さんが表示される。
一番のお気に入りの写真。やっぱり夏目さんが好き。
そう思った時、スマホが振動した。
新井さんの名前にドキっとした。
「春川さん、今夜お時間を頂けませんか?」
電話に出ると、新井さんの涙が混ざったような声にびっくりする。
森山君と何かあったんだろうか?
「新井さん、まだ森山君の部屋?」
「ホテルを出て駅に向かってる所です。会社に戻らないといけないので」
鼻水をすすり上げながら、新井さんが言った。その様子に泣きながら外を歩いている姿が浮かんで、心配になる。
「新井さん、大丈夫?」
「何がですか」
「いや、その」
泣いてるのかなんて聞きづらい。そんな事を聞ける程、私と新井さんは親しくない。
「今から地下鉄に乗るんです。その前に返事を下さい」
新井さんは急いでるような感じだった。
「今夜ね。うん、そうね」
頭の中で予定を確認する。シナリオが予定通りに進んでるから、七時には終わるだろう。
「七時半ぐらいだったら時間が取れると思うけど」
「ありがとうございます。じゃあ、お酒の飲めるお店こっちで探しておきます」
「ありがとう。森山君にも声をかけようか?」
「それはやめて下さい。春川さんと二人だけでお話ししたいので」
スマホ越しの新井さんの声が硬くなった気がする。
森山君とやっぱり何かあったんだろうか。
「うん、わかった。私、一人でいくね」
「よろしくお願いします」
電話はそこで切れた。
今夜か……。
新井さん、一体どういうつもりで私に声を掛けたんだろう。
あまりいい話ではない気がする。
11
あなたにおすすめの小説
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
ソツのない彼氏とスキのない彼女
吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。
どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。
だけど…何故か気になってしまう。
気がつくと、彼女の姿を目で追っている。
***
社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。
爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。
そして、華やかな噂。
あまり得意なタイプではない。
どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。
2月31日 ~少しずれている世界~
希花 紀歩
恋愛
プロポーズ予定日に彼氏と親友に裏切られた・・・はずだった
4年に一度やってくる2月29日の誕生日。
日付が変わる瞬間大好きな王子様系彼氏にプロポーズされるはずだった私。
でも彼に告げられたのは結婚の申し込みではなく、別れの言葉だった。
私の親友と結婚するという彼を泊まっていた高級ホテルに置いて自宅に帰り、お酒を浴びるように飲んだ最悪の誕生日。
翌朝。仕事に行こうと目を覚ました私の隣に寝ていたのは別れたはずの彼氏だった。
歩く15億の花嫁~契約婚約から始まるオフィス・シンデレラ~
YOR
恋愛
恋愛経験ゼロの女性×三人の男たち。じっくりと心の変化を描く、じれキュン・スローストーリー。
亡き祖父の遺言により、巨大財閥の氷の御曹司・神谷瑛斗の「担保」として婚約させられた水野奈月。
自分を守るために突きつけたのは、前代未聞のルールだった。「18時以降は、赤の他人です」
「氷」の独占欲:冷酷な次期当主、神谷瑛斗。
「太陽」の甘い罠:謎めいた従兄弟、黒瀬蓮。
「温もり」の執着:庶民の幼馴染、健太。
「影」の策略:瑛斗を狂信的に愛する、佐伯涼子。
四人の想いと財閥の闇が渦巻く、予測不能な権力争い。
戦場のようなオフィスで、恋を知らない不器用な女性が、最後に選ぶ「本当の愛」とは――。
【物語の歩み(Time Line)】
第1日目: 絶望の契約。15億3000万で売られた夜。(第1話〜第2話)
第2日目: 神谷家への移住。(第3話〜第6話)
第3日目: 嵐の初出勤。(次回予告:健太との再会、そして瑛斗による強奪)(第7話〜第18話予定)
――奈月の日常が崩壊してから、まだたったの三日。
第4日目: これからどうなるかお楽しみに(第19話〜)
ちょっとだけ、軽く大人な恋愛描写含みます。苦手な方は、ご注意ください。
※完全にフィクションです。登場企業とは一切関係ありません。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】
その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。
片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。
でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。
なのに、この呼び出しは一体、なんですか……?
笹岡花重
24歳、食品卸会社営業部勤務。
真面目で頑張り屋さん。
嫌と言えない性格。
あとは平凡な女子。
×
片桐樹馬
29歳、食品卸会社勤務。
3課課長兼部長代理
高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。
もちろん、仕事できる。
ただし、俺様。
俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
【全16話+後日談5話:日月水金20:00更新】
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる