バイバイ、課長

コハラ

文字の大きさ
23 / 28
バイバイ、課長

《3》

しおりを挟む
 
 家の中に通された。    
 薔薇がよく見えるリビングのソファに座ってコーヒーを頂いた。  
 彩さんは向かい側に座り、観察するように私を見た。 

「あの、お父様から私の事を伺ってるというのは」  
 もしかして幽霊になった課長が今までの事を話したのかもしれない。課長は彩さんの近くにいるのかもしれない。期待に胸が高鳴る。 

「やる気のある社員がいるって島本さんの事いつも褒めてたんですよ。会社の話はあまりしない人でしたけど、私も就職したら島本さんにみたいに一生懸命頑張りなさいってよく言われました」  

 彩さんが私の顔を見てハッしたように眉をあげた。 

「あの、父の葬儀で泣いていましたよね」 
「えっ、はい」 
「島本さんって、父の恋人だったんですか?」 

 えっ! こ、恋人……。 

「とんでもございません! 課長とはそのような関係ではありません。仕事でよくお世話になったので、つい泣いてしまったんです。課長は部下に手を出すような人ではありません」 
 課長の名誉の為、全力で否定した。 

「そうですよね。すみません。実は私、結婚したい人がいて、その人が二十歳も年上だから父に反対されていたんです。年の差で反対していた父が島本さんみたいなお若い方と恋愛関係になる訳ないですよね」 
「その通りです。ありえませんよ。私と課長も二十歳年が離れてますから」 
「でも、好きになったら年齢差なんて関係ないと思いませんか?」  

 彩さんが真剣な表情を浮かべた。 

「私にはわかりません。年上の人を好きになった事ないですから」  

 課長の為にそう言わなければいけない気がした。  
 彩さんがフッと笑った。 

「今朝、夢の中に父が出て来たんです。そして『彩の気持ちはよくわかったよ。心から好きな人と結婚しなさい』って言ってくれたんです。夢だから私の願望かもしれないけど」 

 胸が熱くなった。  
 課長はやっぱり彩さんの所にいたんだ。旅立つ前に夢枕に立って想いを伝えたんだ。

「願望なんかじゃありませんよ。きっと課長が、お父さんが彩さんを心配して最後の言葉を伝えに来たんですよ」
「そう言っていただけると気持ちが楽になります。それでね、その夢の中で父が最後に言ったんです。『島本くんによろしく』って。それであなたが訪ねて来たものだから、つい呼び止めてしまいました」 

 また涙が浮かんだ。 
 課長の家に足が向いたのは課長に呼ばれたのかもしれない。 
 課長は私にもメッセージを残してくれたんだ。  
 人差し指で涙を拭って、何とかこみ上げてくる感情を抑えた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の幻華 -死にかけ皇帝と胡乱な数日間ー

丹羽 史京賀
キャラ文芸
 瞬 青波は大昔に滅んだ王族の末裔で、特殊な術を受け継いでいた。  その術を使い、幼馴染みで今は皇帝となった春霞の様子を見守っていたが、突然、彼に対して術が使えなくなってしまう。  春霞が心配で、後宮で働き始める青波。  皇帝が死にかけているという話を聞くが、相変わらず術は使えないまま……。  焦る青波の前に現れたのは、幽体となった春霞だった!?  こじらせ皇帝×ツンデレ術師=恋愛コメディ

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

氷の上司に、好きがバレたら終わりや

naomikoryo
恋愛
──地方から本社に異動してきた29歳独身OL・舞子。 お調子者で明るく、ちょっとおせっかいな彼女の前に現れたのは、 “氷のように冷たい”と社内で噂される40歳のイケメン上司・本庄誠。 最初は「怖い」としか思えなかったはずのその人が、 実は誰よりもまっすぐで、優しくて、不器用な人だと知ったとき―― 舞子の中で、恋が芽生えはじめる。 でも、彼には誰も知らない過去があった。 そして舞子は、自分の恋心を隠しながら、ゆっくりとその心の氷を溶かしていく。 ◆恋って、“バレたら終わり”なんやろか? ◆それとも、“言わな、始まらへん”んやろか? そんな揺れる想いを抱えながら、仕事も恋も全力投球。 笑って、泣いて、つまずいて――それでも、前を向く彼女の姿に、きっとあなたも自分を重ねたくなる。 関西出身のヒロイン×無口な年上上司の、20話で完結するライト文芸ラブストーリー。 仕事に恋に揺れるすべてのOLさんたちへ。 「この恋、うちのことかも」と思わず呟きたくなる、等身大の恋を、ぜひ読んでみてください。

“熟年恋愛”物語

山田森湖
恋愛
妻を亡くし、独りで過ごす日々に慣れつつあった 圭介(56)。 子育てを終え、長く封じ込めていた“自分の時間”をようやく取り戻した 佳奈美(54)。 どちらも、恋を求めていたわけではない。 ただ——「誰かと話したい」「同じ時間を共有したい」、 そんな小さな願いが胸に生まれた夜。 ふたりは、50代以上限定の交流イベント“シングルナイト”で出会う。 最初の一言は、たった「こんばんは」。 それだけなのに、どこか懐かしいような安心感が、お互いの心に灯った。 週末の夜に交わした小さな会話は、 やがて食事の誘いへ、 そして“誰にも言えない本音”を語り合える関係へと変わっていく。 過去の傷、家族の距離、仕事を終えた後の空虚—— 人生の後半戦だからこそ抱える孤独や不安を共有しながら、 ふたりはゆっくりと心の距離を縮めていく。 恋に臆病になった大人たちが、 無理をせず、飾らず、素のままの自分で惹かれ合う—— そんな“優しい恋”の物語。 もう恋なんてしないと思っていた。 でも、あの夜、確かに何かが始まった。

お前が愛おしい〜カリスマ美容師の純愛

ラヴ KAZU
恋愛
涼風 凛は過去の恋愛にトラウマがあり、一歩踏み出す勇気が無い。 社長や御曹司とは、二度と恋はしないと決めている。 玉森 廉は玉森コーポレーション御曹司で親の決めたフィアンセがいるが、自分の結婚相手は自分で決めると反抗している。 そんな二人が恋に落ちる。 廉は社長である事を凛に内緒でアタックを開始するが、その事がバレて、凛は距離を置こうとするが・・・ あれから十年、凛は最悪の過去をいまだに引き摺って恋愛に臆病になっている。 そんな凛の前に現れたのが、カリスマ美容師大和颯、凛はある日スマホを拾った、そのスマホの持ち主が颯だった。 二人は惹かれあい恋に落ちた。しかし凛は素直になれない、そんなある日颯からドライブに誘われる、「紹介したい人がいるんだ」そして車から降りてきたのは大和 祐、颯の息子だった。   祐は颯の本当の息子ではない、そして颯にも秘密があった。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー

i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆ 最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡ バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。 数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

処理中です...