神様がくれた時間―余命半年のボクと記憶喪失のキミの話―

コハラ

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2話

憧れのスローライフと思わぬ再会<6>

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「お客様?」

 襟のある白シャツにこげ茶色の腰巻エプロン姿の希美が首を傾げる。胸元にある名札には『倉田』とあった。

「……一名です」

 喉の奥から絞り出した声で答えると、「こちらになります」と希美に連れて行かれる。希美は僕に全く気がついていないよう。

 案内されたのは白いパラソルが建てられた中庭のテラス席だった。
 とりあえず木製の丸テーブルの前に腰を下ろす。希美が水とメニューを置いて立ち去る。立ち振る舞いは完全に初対面の客に対するものだった。

 一瞬、記憶を戻した希美が僕を追いかけてきたのかと思ったが、違うようだ。
 テラス席からそっと店内に視線を向けると、希美は忙しそうに料理を運んだり、客の案内をしていた。
 動き方を見ても希美だ。東京にいるはずの希美がなぜこんな場所で働いているのだろうか? イラストレーターの仕事はどうしたのだろう? ここで働いているとしたら、希美もこの町に住んでいるのだろうか?
 次々と疑問が湧いてくる。希美を呼び止めて聞きたい衝動に駆られるが、出来ない。僕が誰かということ希美に話す訳にはいかない。

 しかし、気になる……。

 店内で働く希美と目が合うと、こちらにやってくる。

「お決まりでしょうか」

 そう聞かれてシーフードカレーが食べたくて来たことを思い出す。

「シーフードカレー」
「かしこまりました」

 メニューを持って希美がテーブルを離れた。
 病院で希美に会ってから一ヶ月以上が経つ。
 もう二度と会うことはないと思っていた希美とこうして会うことが出来て、少しだけ涙ぐんだ。
 良かった。希美は元気そうだ。

 目尻に浮かんだ涙を人差し指で拭い、笑顔で接客する希美を見つめる。
 そう言えば、希美は学生時代はファミレスでバイトしていたと言っていた。その経験があるからか、カフェ店員がしっくり来ている。

 広い店内に響く〝いらっしゃいませ〟〝ありがとうございます〟という希美のソプラノの声を聞きながら、希美の声を久しぶりに聞けた喜びでいっぱいになった。

「お待たせしました。シーフードカレーです」

 希美がシーフードカレーをトレイに載せてこっちにやって来た。
 僕の前に置かれた出来立てのシーフードカレーからは湯気が出ていた。

「ご注文は以上でおそろいでしょうか?」
「はい」
「ごゆっくりどうぞ」

 希美が僕に一礼して立ち去る。
 呼び止めたくなるが、我慢してその後ろ姿を見送った。

「いただきます」

 手を合わせてから、出来たてのシーフードカレーをいただく。海老、イカ、アサリが入った見た目も豪華な欧風カレーは魚介の味がよく出ていて、口に入れた瞬間、笑みが浮かぶ。東京でもこんなに美味しいシーフードカレーは食べことがないかもしれない。
 予想外に美味し過ぎてあっという間に平らげた。
 もう少しゆっくり食べれば良かった。
 この場から離れたくなくて、ついそんなことを思う。

 希美の方を見ていたら視線が合い、希美がこちらにやって来たから、ドキッとした。
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