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3話
客とカフェ店員<3>
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「お待たせしました。カルボナーラです」
希美が料理を届けてくれた。
卵と濃厚なチーズの香りが食欲をそそる。
「ごゆっくりどうぞ」
希美に答えるように頷き、カルボナーラを口に運ぶ。クリーミーな味だが、ビリっとした黒コショウがアクセントになっていて美味かった。希美が好きな味と聞いて納得だ。希美は黒コショウが効いた料理が好みで、希美の作るポテトサラダは黒コショウが効いていて美味かった。
チョコレートケーキとコーヒーを持って来てくれた時に希美にカルボナーラの感想を伝えようと思っていたが、チョコレートケーキとコーヒーを持って来たのは、僕をこの席に案内した男性店員だった。
「ご注文は以上でお揃いですね」
男性店員に聞かれて頷いた。
希美に会えなかったのは残念だったが、ほろ苦いチョコレートケーキも美味しくいただいた。
もしかしたら会計の時に希美に会えるかもしれないと思い席を立った。
しかし、レジに立ったのは希美よりも若い女性だった。希美は休憩時間なのか、店内にいないようだった。
「お客様、どうされました?」
店内に視線を向けていたら、女性に聞かれた。
「あ、すみません。お会計はこれで」
希美にもらった食事券を使うのがもったいなくて、現金で支払った。
「丁度いただきます。ありがとうございました」
女性店員に丁寧にお辞儀をされ、店を出た。
道路を挟んだ向こう側が海なので、外に出ると潮風を感じる。青空をカモメが灯台に向かって飛んでいく。その光景が一枚の絵画を見ているようで美しい。来た時も同じ景色を見ていたはずなのに、希美に会っただけで、世界の全てが普段より輝いて見える。希美に再会してわかったが、僕はかなり希美が好きだ。
ウキウキとした気持ちで駐車場の砂利を踏みしめる。楽しくて石を蹴りたい衝動に駆られるが、他の車に傷をつけたら困るので我慢した。
この日を境に週四日、凪で昼を食べることが僕の楽しみになった。
希美はいつも笑顔で出迎えてくれて、僕が店に行くことを喜んでくれているようだった。
希美と少しだけ言葉も交わすようになり、今日はいい天気ですねとか、今日のおすすめは何ですか? という当たり障りのない会話をした。希美と言葉を交わすと毎回心が満たされ、生き返るような心地になった。おかげで体調も良くなった。希美が僕にとっては一番よく効く薬のようだ。
*
「王手」
藤原さんが得意げに言った。
今日はホスピスの藤原さんの病室で将棋を指している。
病室は家族も泊まれるようになっているので、広めだ。窓際に椅子とテーブルがあり、そこで藤原さんと対局していた。
「参りました」
打つ手がなくなり、素直に頭を下げる。
藤原さんに負けたことが悔しかったので、リベンジに来た訳だが、敵わなかった。
「この間よりはマシになったじゃないか」
パジャマ姿の藤原さんがクックッと笑う。
「勉強して来たんですけど、敵いませんでした。またリベンジに来ます」
「楽しみに待ってるよ。ところで、君もホスピスの患者なのか?」
藤原さんが僅かに眉を寄せ、こちらを見る。
「ええ、ステージ4のガンです」
「そうか。それは辛いな。まだ若いのに。結婚は?」
希美のことが浮かぶ。
希美が料理を届けてくれた。
卵と濃厚なチーズの香りが食欲をそそる。
「ごゆっくりどうぞ」
希美に答えるように頷き、カルボナーラを口に運ぶ。クリーミーな味だが、ビリっとした黒コショウがアクセントになっていて美味かった。希美が好きな味と聞いて納得だ。希美は黒コショウが効いた料理が好みで、希美の作るポテトサラダは黒コショウが効いていて美味かった。
チョコレートケーキとコーヒーを持って来てくれた時に希美にカルボナーラの感想を伝えようと思っていたが、チョコレートケーキとコーヒーを持って来たのは、僕をこの席に案内した男性店員だった。
「ご注文は以上でお揃いですね」
男性店員に聞かれて頷いた。
希美に会えなかったのは残念だったが、ほろ苦いチョコレートケーキも美味しくいただいた。
もしかしたら会計の時に希美に会えるかもしれないと思い席を立った。
しかし、レジに立ったのは希美よりも若い女性だった。希美は休憩時間なのか、店内にいないようだった。
「お客様、どうされました?」
店内に視線を向けていたら、女性に聞かれた。
「あ、すみません。お会計はこれで」
希美にもらった食事券を使うのがもったいなくて、現金で支払った。
「丁度いただきます。ありがとうございました」
女性店員に丁寧にお辞儀をされ、店を出た。
道路を挟んだ向こう側が海なので、外に出ると潮風を感じる。青空をカモメが灯台に向かって飛んでいく。その光景が一枚の絵画を見ているようで美しい。来た時も同じ景色を見ていたはずなのに、希美に会っただけで、世界の全てが普段より輝いて見える。希美に再会してわかったが、僕はかなり希美が好きだ。
ウキウキとした気持ちで駐車場の砂利を踏みしめる。楽しくて石を蹴りたい衝動に駆られるが、他の車に傷をつけたら困るので我慢した。
この日を境に週四日、凪で昼を食べることが僕の楽しみになった。
希美はいつも笑顔で出迎えてくれて、僕が店に行くことを喜んでくれているようだった。
希美と少しだけ言葉も交わすようになり、今日はいい天気ですねとか、今日のおすすめは何ですか? という当たり障りのない会話をした。希美と言葉を交わすと毎回心が満たされ、生き返るような心地になった。おかげで体調も良くなった。希美が僕にとっては一番よく効く薬のようだ。
*
「王手」
藤原さんが得意げに言った。
今日はホスピスの藤原さんの病室で将棋を指している。
病室は家族も泊まれるようになっているので、広めだ。窓際に椅子とテーブルがあり、そこで藤原さんと対局していた。
「参りました」
打つ手がなくなり、素直に頭を下げる。
藤原さんに負けたことが悔しかったので、リベンジに来た訳だが、敵わなかった。
「この間よりはマシになったじゃないか」
パジャマ姿の藤原さんがクックッと笑う。
「勉強して来たんですけど、敵いませんでした。またリベンジに来ます」
「楽しみに待ってるよ。ところで、君もホスピスの患者なのか?」
藤原さんが僅かに眉を寄せ、こちらを見る。
「ええ、ステージ4のガンです」
「そうか。それは辛いな。まだ若いのに。結婚は?」
希美のことが浮かぶ。
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