神様がくれた時間―余命半年のボクと記憶喪失のキミの話―

コハラ

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6話

夫の本心が知りたい<5>――Side希美――

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 自宅マンションに帰ると、一人では抱えきれず姉に電話した。姉はすぐに出てくれた。

『のんちゃん、どうしたの?』

 姉の声を聞いたら、気持ちが緩んで、泣きながら佐藤さんのことと、佐藤さんが倉田涼介だったことを話した。

『え、え、え? 佐藤さんが涼介くん?』

 私の説明を聞くと、姉の戸惑った声が返ってくる。姉が戸惑うのも当然だ。でも、姉に話したことで頭の中で現状が整理された。

 つまり、私の夫、倉田涼介は今、南房総市で暮らしていて、佐藤海人という偽名で私に会っている。偽名を使っているのは、私に記憶がないことを知っているからだろう。そして、倉田涼介だと名乗らないのは、私の夫としては会いたくないということだ。

 夫の弁護士にも時々連絡をするが、夫は何があっても私に会いたくないそうだ。
 でも、偽名の佐藤海人としてだったら会ってくれる。

 これってどういうこと……?


「夫は、夫という立場で私に会いたくないから偽名を使っているんだと思うけど、なんでだろう?」

 姉がうーんと唸ってから口にする。

『偽名を使ってでも、のんちゃんに会いたいってことかな? あれ、涼介くん、もしかして、かなりのんちゃんのことが好きなの?』

 姉の言葉を聞いて、頬が熱くなる。

「好きなら離婚することないじゃない。夫として私に会えばいいのに」
『それもそうね。浮気したから、のんちゃんに合わせる顔がないのかな』
「……夫は本当に浮気したのかな?」

 佐藤さんとして会った印象しかないけど、彼が浮気するような人には見えなかった。それに私に対して好意のようなものも感じるし……。他の女性に心を持っていかれているようには思えない。彼の家に干してあった洗濯物からは女性の気配も全く感じられなかったし。

『浮気は嘘だったって言いたいの? なんでそんな嘘をつくのよ』
「私と離婚したいから」
『なんで離婚したいのよ?』
「それは……わからない」

 浮気が理由じゃなければ、夫はなぜ私と離婚したいのだろう?
 ため息をついた時、頭の中にアルファベットと数字が羅列された白い紙が浮かんだ。その数値を見て、酷くショックを受けたような気がする。でも、どんな内容だったか思い出せない。あの紙は一体何だったのだろう?

 ため息をつくと、姉が急に大声で話す。

『いいこと思いついた! のんちゃんも、涼介くんが偽名を使っていることを利用して、涼介くんを調べればいいのよ』
「このまま知らないふりをしろってこと?」
『そうよ。涼介君を泳がせて、離婚の原因を聞き出すのよ。のんちゃんは涼介君と友達になったんでしょ? 友達には話してくれるんじゃない』

 離婚の理由を探るには確かに正体を知らないまま接触にした方がいいかもしれない。
 姉の案に乗ることにした。

「わかった。今度は私が彼を騙して離婚の理由を聞き出す」
『スパイみたいで面白そう! 経過報告よろしく!』

 姉はノリノリでそう言うと電話を切った。
 電話の後は早速、彼にメッセージアプリでメッセージを送った。魚将で飲んだことが楽しかったのと、またどこか遊びに行きませんかと誘ってみた。すると、彼から【映画とかどうですか】と返って来た。丁度見たい映画があったことを思い出し、その作品が観たいと言うと、彼も観たかったと返して来た。それで、次の週の日曜日に映画を観る約束をした。

 木更津まで出ないと映画館がないので、彼が車を出してくれることになった。車での往復二時間と、映画館で彼と話すチャンスはある。映画が終わった後はランチに誘おう。映画館が入っている木更津のショッピングモールには飲食店もそれなりに入っているから店探しで困ることはないだろう。

 少しでも彼と一緒に過ごせるように当日の計画を練った。
 予定外だったのは、その日、凪が臨時休業で、彼と映画に行くことが井上さんに知られてしまったこと。木更津のショッピングモールに行くことをオーナーシェフの美穂さんに話していたのを聞かれたのだ。それで、映画の話になって、井上さんも私が観たいと思っていた作品が気になっていたというから、つい、今度観に行くと言ってしまった。

 映画を観に行く日、自宅マンションのエントランスで井上さんと青山君に掴まり、そのまま彼との待ち合わせ場所のコンビニまでついて来た。後は流れで井上さんと青山君も一緒に行くことになった。

 それでも彼と話す機会はあると思っていたが、なぜか彼と二人きりになろうとすると、青山君に邪魔された。仕方なく、レストランで夫の話をした。彼の反応が見たかったからだ。
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