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8話
最終話<3>
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成田空港から飛行機に乗り、十三時間後にパリのシャルルドゴール空港に到着した。
まずは予約したホテルに行き、チェックインする。
空港からはタクシーでパリ市内の中心部にあるホテルまで向かう。料金は二種類あり、セーヌ川の右岸か、左岸で料金が違い、左岸の方が少し高めだった。予約したホテルはセーヌ河右岸にあり、ちょっと得した気分になる。
タクシーには一時間ほど乗り、目当てのホテルに到着。冷房の効きすぎたタクシーからようやく解放され、外に出ると肌に感じる暑さが心地良かった。今日のパリは30度の気温があるが、日本より暑くは感じない。
周囲には歴史を感じさせる石造りの6階建ての建物が並び、都会でありながら高層ビルがないことが何だか新鮮だった。
スーツケースをガラガラと引きながら、ホテルに入り、レセプションカウンターで慣れない英語を話して、チェックインする。
部屋は6階のスイートルームを取った。これが最初で最後のパリ旅行になると思ったから、かなり奮発した。
希美にはスイートルームだとは話していなかったから、部屋についた途端、目を丸くして驚いていた。
「えー! 涼くん、すごーい!!」
リビングもベッドルームもバスルームも豪華な造りで、全ての窓からはエッフェル塔がよく見える。
希美は嬉しそうにリビングとベットルームを行ったり来たりする。僕はソファに座り、そんな希美を幸せな気持ちで見ていた。
部屋で少しのんびりした後は希美とホテル周辺の散策に出た。
まずはエッフェル塔に行こうということなり、セーヌ河沿いにあるチェイルリー公園を歩いた。公園の東側にルーブル美術館があり、西側にエッフェル塔があった。
公園内には夏季限定の移動遊園地も出来ていて、希美が観覧車に乗りたいと言い出したので、寄り道をした。観覧車の代金は15ユーロで支払いは現金のみだった。僕が払い、希美と一緒に観覧車に乗る。中は蒸し暑いかと思ったが、扉の隙間から自然の風が入って来て、そうでもなかった。
頂上まではゆっくりと進み、パリ市内を見渡すことが出来た。
「すごいね。私たち今、パリにいるんだね」
頂上についた時、希美が噛みしめるように言った。
「そうだな。パリに来ちゃったな」
向かい側に座っていた希美が僕の隣に座る。
「涼くん、連れて来てくれてありがとう」
希美に抱きしめられた。
誰も見ていないと思うがちょっと照れくさい。
「写真撮ろう」
希美がスマホを取り出し、こっち側に向ける。
「レンズここだからね。ここ意識ね」
希美に言われてレンズに視線を向ける。
「ニッ」と希美が言った合図に合わせて口の端を上げた。撮れた写真を見ると、僕はぎこちない笑みを浮かべていたが、希美はすごくいい笑顔だった。希美が素敵に映っていれば問題はない。
観覧車を降りたあとは今度こそエッフェル塔に向かった。
エッフェル塔の写真を何枚も撮り、最後は偶然居合わせた日本からの観光客に頼んで、希美とのツーショットを撮ってもらった。
エッフェル塔があるコンコルド広場の先には高級ブランド店が並ぶ有名なシャンゼリゼ通りがあり、
ルイヴィトン、エルメス、ティファニー、ブルガリなどの高級店を見て、偶には僕も男らしい所を見せようと思った。
「欲しいものがあったらプレゼントするよ」
「えー、いいの? 高いよ」
心配そうにする希美を引っぱって、高級店を次々と見て周る。でも、希美はもったいないと言って、買おうとはしなかった。そういう控えめな所が希美らしい。
「それより、お茶しよう。疲れた」
希美に連れられて、カフェに入った。金髪碧眼のお姉さんが出て来て、僕たちは奥の席に案内された。メニューは全部フランス語で書かれていたけど、クロックムッシュとクロックマダムと、カフェオレはわかり、カフェオレとクロックムッシュをオーダーした。
注文したのは希美で、不慣れな感じのフランス語の発音が可愛かった。
「フランス語、話せたんだ」
店員が立ち去った後に聞いた。
「凪で美穂さんに教えてもらったの。美穂さん、パリに住んでいたから、フランス語出来るの。実は青山君のお父さんはフランス人らしいよ」
希美と一緒にいる時に青山の名前はあまり聞きたくなかったが、彼の彫りの深い顔立ちを思い浮かべ、父親がフランス人だというのもわかる気がした。
料理が来るまで希美のフランス語教室が始まり、トイレはトワレットゥ、入り口はアントレ、出口はソルティ、イエスはウィー、ノーはノンということを教わった。
早速に希美に教わったフランス語でトイレはどこか聞いたら、ちゃんと通じて、何だか嬉しかった。
カフェを出た後はホテルの方向に戻りながら、セーヌ河沿いを散歩する。河の近くは心地よい風が吹いていて、歩くのに丁度良かった。
僕の隣で、「あの建物可愛いね」と連発する興奮気味の希美を見ているだけで幸せになった。
希美とパリに来れて本当に良かった。
まずは予約したホテルに行き、チェックインする。
空港からはタクシーでパリ市内の中心部にあるホテルまで向かう。料金は二種類あり、セーヌ川の右岸か、左岸で料金が違い、左岸の方が少し高めだった。予約したホテルはセーヌ河右岸にあり、ちょっと得した気分になる。
タクシーには一時間ほど乗り、目当てのホテルに到着。冷房の効きすぎたタクシーからようやく解放され、外に出ると肌に感じる暑さが心地良かった。今日のパリは30度の気温があるが、日本より暑くは感じない。
周囲には歴史を感じさせる石造りの6階建ての建物が並び、都会でありながら高層ビルがないことが何だか新鮮だった。
スーツケースをガラガラと引きながら、ホテルに入り、レセプションカウンターで慣れない英語を話して、チェックインする。
部屋は6階のスイートルームを取った。これが最初で最後のパリ旅行になると思ったから、かなり奮発した。
希美にはスイートルームだとは話していなかったから、部屋についた途端、目を丸くして驚いていた。
「えー! 涼くん、すごーい!!」
リビングもベッドルームもバスルームも豪華な造りで、全ての窓からはエッフェル塔がよく見える。
希美は嬉しそうにリビングとベットルームを行ったり来たりする。僕はソファに座り、そんな希美を幸せな気持ちで見ていた。
部屋で少しのんびりした後は希美とホテル周辺の散策に出た。
まずはエッフェル塔に行こうということなり、セーヌ河沿いにあるチェイルリー公園を歩いた。公園の東側にルーブル美術館があり、西側にエッフェル塔があった。
公園内には夏季限定の移動遊園地も出来ていて、希美が観覧車に乗りたいと言い出したので、寄り道をした。観覧車の代金は15ユーロで支払いは現金のみだった。僕が払い、希美と一緒に観覧車に乗る。中は蒸し暑いかと思ったが、扉の隙間から自然の風が入って来て、そうでもなかった。
頂上まではゆっくりと進み、パリ市内を見渡すことが出来た。
「すごいね。私たち今、パリにいるんだね」
頂上についた時、希美が噛みしめるように言った。
「そうだな。パリに来ちゃったな」
向かい側に座っていた希美が僕の隣に座る。
「涼くん、連れて来てくれてありがとう」
希美に抱きしめられた。
誰も見ていないと思うがちょっと照れくさい。
「写真撮ろう」
希美がスマホを取り出し、こっち側に向ける。
「レンズここだからね。ここ意識ね」
希美に言われてレンズに視線を向ける。
「ニッ」と希美が言った合図に合わせて口の端を上げた。撮れた写真を見ると、僕はぎこちない笑みを浮かべていたが、希美はすごくいい笑顔だった。希美が素敵に映っていれば問題はない。
観覧車を降りたあとは今度こそエッフェル塔に向かった。
エッフェル塔の写真を何枚も撮り、最後は偶然居合わせた日本からの観光客に頼んで、希美とのツーショットを撮ってもらった。
エッフェル塔があるコンコルド広場の先には高級ブランド店が並ぶ有名なシャンゼリゼ通りがあり、
ルイヴィトン、エルメス、ティファニー、ブルガリなどの高級店を見て、偶には僕も男らしい所を見せようと思った。
「欲しいものがあったらプレゼントするよ」
「えー、いいの? 高いよ」
心配そうにする希美を引っぱって、高級店を次々と見て周る。でも、希美はもったいないと言って、買おうとはしなかった。そういう控えめな所が希美らしい。
「それより、お茶しよう。疲れた」
希美に連れられて、カフェに入った。金髪碧眼のお姉さんが出て来て、僕たちは奥の席に案内された。メニューは全部フランス語で書かれていたけど、クロックムッシュとクロックマダムと、カフェオレはわかり、カフェオレとクロックムッシュをオーダーした。
注文したのは希美で、不慣れな感じのフランス語の発音が可愛かった。
「フランス語、話せたんだ」
店員が立ち去った後に聞いた。
「凪で美穂さんに教えてもらったの。美穂さん、パリに住んでいたから、フランス語出来るの。実は青山君のお父さんはフランス人らしいよ」
希美と一緒にいる時に青山の名前はあまり聞きたくなかったが、彼の彫りの深い顔立ちを思い浮かべ、父親がフランス人だというのもわかる気がした。
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早速に希美に教わったフランス語でトイレはどこか聞いたら、ちゃんと通じて、何だか嬉しかった。
カフェを出た後はホテルの方向に戻りながら、セーヌ河沿いを散歩する。河の近くは心地よい風が吹いていて、歩くのに丁度良かった。
僕の隣で、「あの建物可愛いね」と連発する興奮気味の希美を見ているだけで幸せになった。
希美とパリに来れて本当に良かった。
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