雨宮課長に甘えたい

コハラ

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佐伯リカコとの約束

《4》

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課長は十分でチャーハンと、卵スープを作ってくれた。課長にくっつきながらその手際の良さに感心する。

課長は大学生の時から一人暮らしをしているそう。家事はけっこう好きで、特に料理が好きだそうだ。土日に自分でお惣菜をまとめて作って、冷凍しておくと教えてくれた。

「なんか、お母さんみたい」

私の感想に課長が苦笑いを浮かべる。

「やっぱり? 俺もちょっとそう思う。さあ、食べよう」

ソファ前のローテーブルの上は今、課長が並べた二人分のチャーハンと卵スープがある。出来立ての湯気が流れていて美味しそう。

「いただきます」

しっかりと手を合わせてからいただいた。

うわっ、チャーハン、パラパラで美味しい! 刻んだ紅しょうがと醤油とごま油の加減がいい。だけど、紅しょうがあったかな?

「あの、課長、紅しょうがはどこから?」
「冷蔵庫の卵を入れる所の脇に小袋のがあったよ」

あっ、今週、牛丼をテイクアウトしたんだ。その時に紅ショウガを使わなくて取っておいたんだった。

墓穴掘った。恥ずかしい。

「美味しくなかった?」

恥ずかしさにスプーンを持つ手を止めると、課長がこっちを見る。

「いえ、とっても美味しいです。その、紅しょうがを取っておくなんて、所帯じみた所をお見せして恥ずかしいというか」

課長がクスクス笑う。

「紅しょうがとか、お弁当のソースとか、お醤油とかをとっておく奈々ちゃんに俺は好感持てるよ」

ソースもお醤油も残ってしまって、捨てるのがもったいなかったから、卵コーナーの所に置いておいた。

課長に全部見られていたのか。課長、冷蔵庫の中よく見ているんだな。

「あ、ごめん。気分を害したかな。食材を探していたから、いろいろと見てしまって」

「いえ、別に」

恥ずかしさを誤魔すように卵スープの入ったお椀を手に取る。

「奈々ちゃん、卵スープはまだ熱いよ」

課長に心配される。

もう課長、まだ猫舌ネタを。

「だから、そんなに猫舌じゃありませんって。いつまでそのネタで引っ張るんですか。昨日、旅館で茶わん蒸しを食べていた時は完全にスルーしたくせに」

「それは」と課長が気まずそうな笑みを浮かべた。
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