魔法学園のFPSプレイヤー

青空鰹

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第1話

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セレス先生は俺が学校にいる間に泊まる部屋の場所を案内して貰っているけど、どうもおかしいような気がする。

「あのぉ~、セレス先生?」

「はい~、何でしょうかぁ~?」

「俺が泊まる部屋に案内しているんですよね?」

「ええ~、そうですよぉ~」

「男子寮過ぎたんですけど? ・・・・まさか女子寮に行くんですか?」

「違いますよぉ~」

違う? なら何処に連れていくつもり何だ?

「着きましたぁ~! ここがアナタが寝泊まりする部屋でぇ~す!」

セレス先生の指のさす方向を見ると、一軒の小屋が目につく。

「何でこんな所に小屋があるんですか?」

「はい~。ここは元は監督寮ですぅ~。今は使われなくなったので、取り壊しの予定をしてたんですけどぉ~、アナタが入学をすると聞いたので中止になりましたぁ~」

「え! 俺の為だけにですか?」

俺の為にこの小屋を取っておく意味が何かあるのか?

「はいぃ~。お姉さまの手紙にはぁ~、アナタが使い勝手が良いと書いていたのでぇ~、何かあれば頼もうと思いましてぇ~、ここに住んで貰う事にしましたぁ~」

「な、なるほど」

クソッ!? アリスのヤツ余計な事を手紙書いたな。

「お荷物置いたら自由行動ですよぉ~、学園を見学するも部屋で休むのもOKですぅ~。はいこれが小屋の鍵ですよぉ~」

「ありがとうごさいます、セレス先生」

セレス先生が差し出している鍵を受け取りポケットの中に入れる。

「後、明日の入学式には遅れないようにして下さいねぇ~。それでは私は理事長へ戻りますねぇ~」

「セレス先生、ありがとうごさいました」

「いいえ~」

そう言いながら来た道歩いて戻って行くの彼女を見送った後に、俺は小屋に入って行く。




家に入って部屋の中を回って見たが悪くはない。むしろ良い小屋だと思える。キッチンとダイニングの隣に寝室があり、近くにトイレとお風呂がある。理想的な一人暮らしが出来る小屋。と言うよりか家。

家具はある程度揃っているから買う必要性はないな。それに掃除もしてあるみたいだから必要なし。先ずは洋服とかそう言うの全部しまうか。

そう思いながらテキパキと作業をしていると、ドアを叩く音が聞こえてくる。

「はい!」

「オオー! すまないが開けてくれないか? 手が塞がっていてドアを開けないんだ!」

「あっ、分かりました!」

慌てて玄関のドアを開けて見たら、そこには両手で荷物を抱えた男性が立っていた。

「荷物持ちますよ」

「悪いな。重いから気を付けろよ」

目の前の人が持っている荷物を受け取り玄関の隅に置く。

「ふぅ、確かに重いな。箱の中に何が入ってるんですか?」

「学園からの支給品、学生服とカバンと教科書。それに筆記用具にノートだ。俺も明日の準備で忙しいからもう行くぞ。始業式遅れるなよ」

「はい、ありがとうごさいました」

「ん、それじゃあな」

男の人はそう言いながら手を振った後に、学園がある方向に歩いて行くを見送る。

「よいしょっと!」

玄関の側に置いた箱をリビングに持って行く。

中身だけじゃなくて箱自体重い。段ボールがどれだけ優秀か改めて分かったよ。さてと、この宝箱みたいな見た目の中身を開けて確認しよう。

箱を開き中身を取りだして品物を並べていく。

学生服、カバン、教科書、筆記用具、ノート・・・・よし、全部あるな。学生服はハンガーに掛けて教科書は勉強机に置いとこ。明日の使う訳じゃないしね。一応、筆記用具とノート数冊は入れておこう。箱は・・・・学園側に処分してもらうか。

そんなこんなとやっていると、丁度お昼時に荷物整理が終わり。休憩の為に椅子に座り窓の外を見る

・・・・やっと、荷物整理が終わったぁ~。昼飯どうしようかな~?

「レーション出して食べるか。久しぶりにお米食べたいし」

白米とカレーを取りだして準備に取りかかろうとした所で、何か声が聞こえてくるので手を止める。

「何だ? 怒鳴り声みたいな感じだな。見に行ってみよう」

レーションをテーブルに置いたまま、外に出て声のする方に行く。




「・・・・何だあれ?」

男子寮と女子寮の間で何故か人だかりが出来ていて、少し離れているこの場所でも話が聞き取れるぐらいに声を張っているし、まぁ、いいや。とにかく行ってみよう。

野次馬達の間を抜けて行き、何とか見える位置を確保して見てみると1人の女子と4人の男子がにらみ合いをしていた。

「だから、貴方とは付き合ってません! もう婚約も解消したんですから関わらないで下さい!!」

「俺はそんな事を認めてねぇつってんだろ! おとなしく俺の女になりやがれ!!」

「無理です! 私は始めからアナタに興味なんてなかった!! お願いですから、もう関わらないで下さい!!」

「テメェ~~~!!」

一体何があったんだ? ・・・・周りに聞いて見るか。

「なあ、キミ?」

「ん、何?」

良かった。隣にいた男子が俺に振り向いてくれた。

「これ、どういう状況なのか分かるなら説明して貰えればありがたいんだけど」

「ああ、別に構わないよ。ざっくり説明でいいんならな」

「俺も手短な説明の方が良いんでよろしく」

「あっちにいる女子が[ハルライト子爵家]のご令嬢、向こうにいる男子の中で茶髪のヤツが[ダンブルス伯爵家]の三男。この前に、あの三男がダンブルス家の領地で平民達との間で一触即発になりかけるほどの問題を起こしたのを切っ掛けに、両家の間で話し合って婚約破棄が決まったんだ」

あらま、アイツそんな事をしてたんだ。

「未練がましく追っかけてるって訳ね。しかも手下を連れてね」

「そう言う事、まったく彼は昔っから変わってないな。自身が家から追い出されてないのは、この学園に入学出来たからなのに分かってないのかな?」

え? コイツ、もしかしてアイツと知り合いなのか?

「お前、もしかしてアイツと知り合い?」

指をさしながら聞くと彼は頷く。

「バッツとは、あ! 彼の名前ね」

「ああ」

「彼とはジュニアスクールで一緒だった。魔力は強い方だったんだけど、魔法は優れてなかったんだ。しかも、自分の身分を傘にかけてやりたい放題だったから退学させられたんだ。退学してから、その後はロクな噂が絶えないんだよ」

「今も昔も変わらずのボンボンだった。って事ね。まぁ、ああやって、取り巻きを作らなきゃ何も出来なさそうなヤツっぽそうだし、マトモじゃなさそうな顔してないな」

「本当にキミの言う通りだよ」

彼は呆れながら首を左右に振る。

「おい! そこの貴様ら!!」

さて、この事態を鎮圧する為に先生を呼びに行かないと。

「さてと、俺は先生を呼んでくるよ。話してくれてありがとね」

「あ、そう? 分かったよ。じゃあね」

「テメェら、俺の話を無視してんじゃねえ~~~!!?」

話してくれた男子学生に手を振りながら向かおうとすると、何故か問題の中心人物が叫び始める。

「ん、何だ?」

「何だじゃねえんだよ!! テメェら俺を誰だと思ってやがる」

「ん? ・・・・ああ、ダンブルス伯爵家の三男のバッツ・ダンブルスとさっき知った。名前以外知らない」

「なぁ?」

突っ掛かって来た本人信じられない顔をして、周りの人達はヒソヒソ話を始める。

「僕の方は彼より君の事を知っているよ」

「ふん! なら後悔する前に謝るんだな」

「何を言ってるんだい? 後悔するのは君の方だよ」

「なんだとぉ?」

おっと、そのまま言葉を返すとは、やるなコイツ。

「ウィーレン魔法学園では身分を使うのは禁止。厳罰に課せられてるのは知らないとは言わないよね?」

「ヘッ! そんなもん知るか。たかが学園一つが俺を止められる筈がねえ! 【我が内に眠る蓮獄の炎よ。その姿を現し、我が敵を灰にする炎と成せ】フレイムストーム!!」

自分の目の前に大きな火柱を出現させると、周りいたギャラリー達は火柱から叫びながら逃げ惑う。

「ハッハッハッハッ!! 喰らいたくないなら今すぐそこで俺様に謝るんだな」

・・・・ホントにコイツ馬鹿だ。

「ホント、こんなんだから君は舞踏会とかに出れないんだよ」

「な、何だと!」

彼の言葉を聞いたバッツは額に青筋を立て始める。

「あのさぁ~、お前がそれを放つ気なら、その前に俺がお前の体に風穴開けるぞ」

腰のホルスターに刺しているSIG GSR(45ACP使用)を抜き、スライド引っ張った後、バッツに向かって構えると彼は頬を吊り上げる。

「そんなもんで俺様を、なぁっ!?」

一触即発の状態の所に、突然水が火柱に飛んで行きぶつかると、バッツの魔法で作った火柱を霧散させる。

「だ、誰だ!?」

「誰だではない。君は一体何をしているんだ」

声のした方向を見ると学生服を着た女子1人と男子3人たちが歩いてくるではないか。

「て、テメェ。俺の邪魔をしやがってぇ~!!」

「ウィーレン魔法学園では、基本的に魔法を使う事は禁止されているのは事前に話している筈だが、どう言うつもり事なんだ?」

「あぁ? それがどうしたんだよ。俺はダンブルス伯爵家の三男のバッツ・ダンブルスで、偉いんだぞ!! 学園が俺様を止められる訳がない」

「身分を使うのも禁止の筈だろ? キミを生徒指導室に連れて行かなければならなくなった。大人しく付いてきた方が身のためだ」

「ウルセェー!? テメェを先にぶっ潰してからな、覚悟しておけ!!」

うわぁ~、ここまでくると呆れるわぁ~。

「まったく、こんな人は始めて見るな。[ウォーターボール]!」

彼女の手から水の球体を出すと、一直線にバッツの顔に飛んで行き、ぶち当たり、彼は何も言わず倒れてしまった。その光景を取り巻き達は唖然とした顔をしながら立ち尽くしていた。

もう、大丈夫かな?

俺はそう思ったのでマガジンを抜いてスライド引っ張って弾薬を抜き、空撃ちしてからマガジンを入れ、銃のホルスターに戻して様子を見る事にした。

「キミたち、こうなりたくなかったら生徒指導室に付いてくるんだ」

その言葉を聞いたバッツの取り巻き達は、はい。と言って素直に従う。恐らく、足掻いても勝てないと判断したんだろう。

「ウィル、彼を頼む」

「分かりました会長」

彼女は、バッツを抱え何処かに持っていかれるのを見送ると、俺達の方に歩いてくる。

「キミ達、危ないところだったね」

「ありがとうございます。でも、一番被害を被ったのは彼女じゃないかな?」

俺はそう言いながら、ハルライト子爵家の女の子を指さす。

「僕もそう思います。何たって彼女は彼に追いかけられて、こうなったんですから」

「そうか、分かった。後の事は私達がやるからキミ達は自由して大丈夫だ」

彼女はそう言った後、ハルライト子爵家の女の子の方へ行く。

「自由か、昼飯食べに帰ろう」

お昼食べてないからなぁ~。本当にお腹減った。

「もう、行くのかい?」

「ああ、用はなさそうだからな。そんじゃあね」

「ちょっと待って、キミの名前を聞きたいんだけど良いかな?」

俺は振り返り彼に自分の名前を教える。

「シュン・カミカワ、それが俺の名前だ」

名前を教えた後に彼の言葉を何も聞かず、自分の家に帰り翌日の始業式に備えるのであった。
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