1 / 15
1.聖騎士さまの笑み(脅迫)
しおりを挟む
最近、何を考えていたとしても、必ず二言目にはこう思っている。
聖騎士怖い。
「……たかが魔物如き、とはいえ、湧いて出るのを踏み潰すのも、そろそろ飽き飽きしてきましたね。徹底して始末してしまいましょう」
どんな台詞を言っていたとしても、口許にはごく優しげな笑みが浮かんでいるのが怖い。
まるで天の御使いの如く、清らかに輝いて見えるのが怖い。
「ディルティーナ? 周りに被害を出さないよう、結界を強化してくれますか」
「は、はいっ」
彼に視線を向けられた途端、私はびくんと全身を跳ねさせ、木の棒か何かになったかのように真っ直ぐに硬直した。
だが、固まっている暇はない。口をもごもごと動かし、宙に魔法式を描いて発動させる。一回で済むよう、正確に、そして的確に。
「終わりました」
「よく出来ました」
サフィード様は薄く微笑む。
その足元から、白くぼうっと光る粒子が群れなして飛び上がり、神聖文字を重ね合わせた陣を形作る。彼が篭手に包まれた手を挙げると、光は全てその掌に吸い込まれて一層眩く輝いた。
白く整った横顔が、光を受けて浮かび上がる。
次の瞬間、ダン! と音を立てて、サフィード様は掌を地面に叩き付けた。四方に光の筋が広がり、滅びの白い光が周囲の大地を覆い尽くす。滅びの光、それは聖騎士たちに言わせれば、浄化の光というらしいのだが。
(怖い。浄化が行き過ぎてて怖い)
この「浄化」とやらは、彼が指定した範囲の地表上にある全ての生命を殺すのである。魔物だろうが動物だろうが、植物だって、地衣類だって逃げられない。当然だが人も死ぬ。
「人まで殺すのはやり過ぎなのでは……?」
一度、勇気を奮って意見を述べてみたことがある。
サフィード様は、それはそれは優しい眼差しで私を見下ろすと、
「善悪を判定するのは神の領域で、一介の聖騎士である私が関わるべきものではありません。生命は平等なのです」
つまり、「生きてるものは平等に皆殺しだ」と言われた。
やばい。
(聖騎士って、皆、サフィード様みたいなのかな)
不幸にして、いや、幸いと言うべきなのか、私はサフィード様以外の聖騎士を知らない。他の聖騎士までこうだったら、今頃魔物は根絶やしにされて、この国は朝晩必ず聖騎士様に感謝の祈りを捧げないと生きていけない聖なる地獄になっているだろう。
「ディルティーナ?」
「……はっ! な、何でしょうか、サフィード様」
「返事が遅いですね。何を考えていたのでしょう?」
「い、いえ、サフィード様の神聖魔法は本当に素晴らしいなと考えておりました」
「それは賢明な返答ですね」
サフィード様の水色の瞳が、微笑みを湛えながら私を見下ろしている。
サフィード様はいつも笑っているけれど、その笑みには様々な温度差があり、バリエーションがある。今、私に向けているのは、「脅迫の笑み」だ。
「貴方は一度、間違えてしまいましたからね。経験から学んで、言動に深みが増したようですね。素晴らしいことです」
意訳:もう一度裏切ったら、全身の骨を砕いて殺しますからね?
「……は、はい」
寒気が止まらない。
私の元婚約者は、本当に恐ろしい人だ。
聖騎士怖い。
「……たかが魔物如き、とはいえ、湧いて出るのを踏み潰すのも、そろそろ飽き飽きしてきましたね。徹底して始末してしまいましょう」
どんな台詞を言っていたとしても、口許にはごく優しげな笑みが浮かんでいるのが怖い。
まるで天の御使いの如く、清らかに輝いて見えるのが怖い。
「ディルティーナ? 周りに被害を出さないよう、結界を強化してくれますか」
「は、はいっ」
彼に視線を向けられた途端、私はびくんと全身を跳ねさせ、木の棒か何かになったかのように真っ直ぐに硬直した。
だが、固まっている暇はない。口をもごもごと動かし、宙に魔法式を描いて発動させる。一回で済むよう、正確に、そして的確に。
「終わりました」
「よく出来ました」
サフィード様は薄く微笑む。
その足元から、白くぼうっと光る粒子が群れなして飛び上がり、神聖文字を重ね合わせた陣を形作る。彼が篭手に包まれた手を挙げると、光は全てその掌に吸い込まれて一層眩く輝いた。
白く整った横顔が、光を受けて浮かび上がる。
次の瞬間、ダン! と音を立てて、サフィード様は掌を地面に叩き付けた。四方に光の筋が広がり、滅びの白い光が周囲の大地を覆い尽くす。滅びの光、それは聖騎士たちに言わせれば、浄化の光というらしいのだが。
(怖い。浄化が行き過ぎてて怖い)
この「浄化」とやらは、彼が指定した範囲の地表上にある全ての生命を殺すのである。魔物だろうが動物だろうが、植物だって、地衣類だって逃げられない。当然だが人も死ぬ。
「人まで殺すのはやり過ぎなのでは……?」
一度、勇気を奮って意見を述べてみたことがある。
サフィード様は、それはそれは優しい眼差しで私を見下ろすと、
「善悪を判定するのは神の領域で、一介の聖騎士である私が関わるべきものではありません。生命は平等なのです」
つまり、「生きてるものは平等に皆殺しだ」と言われた。
やばい。
(聖騎士って、皆、サフィード様みたいなのかな)
不幸にして、いや、幸いと言うべきなのか、私はサフィード様以外の聖騎士を知らない。他の聖騎士までこうだったら、今頃魔物は根絶やしにされて、この国は朝晩必ず聖騎士様に感謝の祈りを捧げないと生きていけない聖なる地獄になっているだろう。
「ディルティーナ?」
「……はっ! な、何でしょうか、サフィード様」
「返事が遅いですね。何を考えていたのでしょう?」
「い、いえ、サフィード様の神聖魔法は本当に素晴らしいなと考えておりました」
「それは賢明な返答ですね」
サフィード様の水色の瞳が、微笑みを湛えながら私を見下ろしている。
サフィード様はいつも笑っているけれど、その笑みには様々な温度差があり、バリエーションがある。今、私に向けているのは、「脅迫の笑み」だ。
「貴方は一度、間違えてしまいましたからね。経験から学んで、言動に深みが増したようですね。素晴らしいことです」
意訳:もう一度裏切ったら、全身の骨を砕いて殺しますからね?
「……は、はい」
寒気が止まらない。
私の元婚約者は、本当に恐ろしい人だ。
43
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる