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まとめて全員捨てる私

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 私は、ドサッと荷物(赤太郎、青次郎、闇落ち発明家、処刑王子)を地面に投げ落とした。

 適当に。

(この辺りの地面なら乾いてるっぽいし、少なくとも溺死はしないよね)

 洞窟の出口はもうすぐそこだ。

 ひとかたまりになって転がってる連中の間から、くぐもった呻き声が聞こえたけれど、私は無視してすたすたと出口に向かって歩き始めた。

 太陽の光が眩しい。抜けるような青い空が広がる。

 これで終わった。魔王戦も、私の役割も、たぶんゲームも。

(これからどこへ行こう?)
(おっつかれさま~!)

「?!」

 唐突に脳内で声が鳴り響いて、私はぎょっとした。レベルカンストの猛者である私が気付かない相手が現れるなんて、なにごと……でも、その相手の姿をまじまじと見て、私はとっさにメイス(僧侶用の武器として与えられたやつだ)の柄に掛けた手を下ろした。

「女神様」
(あったり~!)

 やけに元気よく、ノリノリな返事が返ってくる。

 20代ぐらいに見える綺麗なお姉さんだった。人外のように整った顔立ちだとか、眩しい後光を放っている上に多少透けてるとか、そういう相手を「綺麗」と呼べるならだけど。

 ふわふわと微笑んで、女神様は言った。

(よく役割を果たしてくれたね~! 貴女を指名して良かったよ~)
「私は、全然、良くなかったですけど(激怒)」
(えっ、本当にストレス溜まってるね? これから人間の国全体に啓示を送って、魔王が倒されたことを伝えるんだけど、貴女も一緒に啓示を送ってみる? 国王陛下とか、人間のみんなに言いたいことを言っちゃって?)
「はい、是非」





 そして女神様のありがたい啓示が、全世界、全人類に向けて放たれたのだった。

(みんな~! 魔王は倒れたよ! 完全に消滅したから、もう1000年は安全だと思う、良かったね~! ちなみに魔王は、僧侶として派遣されたリルカちゃんが一人で倒したらしいよ。凄いね、リルカちゃん!)
 ※リルカは私の名前です

「凄くないです。レベルカンストだったので魔王なんて一撃でした。でもなんでレベルカンストだったのかというと、他のパーティメンバーが戦ってくれなかったからです。完全に役立たずでした。そのくせ、私が戦ってるといちいち文句つけてくるし、いつまでも仲間同士で喧嘩してるし、本当に本当に最悪なパーティでした! 無理矢理女神様の神託でパーティに参加させられて、王様の権力に逆らえなくて、他のメンバーの罵詈雑言と役立たずっぷりに耐えて、もうこんなの沢山です!」
(リ、リルカちゃん、怒ってるね~)
「怒ってます! 怒ることも許されず耐えるとかもう沢山なので、今後一生、こいつらに関わりたくないです。幸いレベル上がったお陰で私、滅茶苦茶強いんで。一人で十分に生きていけるんで。王様のご褒美とかも要りません。一生関わって来ないでくれればそれでいいです! 私のことは放っておいて下さい!」
(そのお願い、聞き届けました~! リルカちゃんには今後、静かな暮らしをお約束しま~す! ではでは、これで全て解決ねっ!)

 ……こうして私は、遥か辺境の地に小さな家と庭と家畜小屋を貰って、新しい暮らしを始めたのでした。

 女神様にも色々文句を言いたかったのだけど、割と快適に暮らせているのでまあいいかな。

 こんな暮らしがずっと続けばいいと思う(フラグ)
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