黙っている現場から 放課後ディサービス

こさ

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第二話 「断れない場所で、断らせる方法」

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放課後等デイサービスは、
こちらから「利用をお断りします」とは言えない場所だ。

建前は、支援。
本音は、制度。

だから現場には、
別の技術が育つ。
相手に、自分から辞めてもらう技術だ。



彼女を、アヤと呼ぶことにする。
ASDのある女性。
何年も、個別支援で関わってきた。

親の要求は高い。
高いというより、終わりがない。
支援内容、関わり方、職員の配置。
「うちの子には、もっとできるはずでしょう?」

その日は、些細なことが引き金だった。
駐車場が、空いていなかった。

それだけで、怒鳴り声が上がった。
現場の空気が、一瞬で凍る。

「どういう管理をしてるんですか」
「配慮が足りないんじゃないですか」

その場にいた職員は、誰も反論しなかった。
できなかった、ではない。
しなかった。

後日、社長が動いた。
表向きは、冷静に。
でも、結論はすでに決まっていた。

――この利用者は、切る。

ただし、こちらからは言わない。
言えない。
だから、環境を変える。

「これからは、別の職員が担当します」
「社長は現場に入れなくなります」
「今まで通りの支援は、難しいかもしれません」

丁寧な言葉で、
期待だけを、静かに削っていく。

アヤとその親が望んでいたのは、
社長そのものだった。
肩書き。
決定権。
特別扱いの象徴。

それを外す。

すると、答えは早かった。

「それなら、もう結構です」

辞めると言ったのは、相手のほうだ。
書類上も、そうなる。
誰も責められない。
誰も汚れない。



それを見ていた私は、
はっきり理解した。

ああ、これがやり方なんだ。

直接拒否はしない。
嘘もつかない。
ただ、望まれない形に整える。

社長は悪役だった。
迷いも、ためらいもなく、
人を切る判断をした。

でも同時に、
それが、この場所の生存戦略でもあった。

同じことは、これまでもあった。
そして、これからも、きっとある。

名前を変えて。
理由を変えて。
同じ手順で。

放課後等デイサービスは、
優しい顔をして、
ちゃんと選別をする。

私は、
それを忘れないように、書いている。
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