ふれていたい、永遠に

たっこ

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番外編

美月さんはお見通し✦side秋人✦終

 気になってキッチンに行こうとパジャマを着ていると、蓮が走って戻ってきた。
 スマホを手にして操作し、耳に当てる。
 え、今何時だよ? どこに電話?

「あ、美月さん! あのごめんなさい! 来るとき大根買ってきてくださいっ!」

 おいおい、お前はこんな早朝に何を言ってんだ?

『はぁぁ?! 大根?! 今何時だと思ってんのっっ!!』

 美月さんの怒鳴り声がハッキリと漏れ聞こえた。

「ごごごごめんなさいっっ! でももう起きる時間ですよね? 秋さんが喉痛めちゃったんですっっ! 大根が必要なんです! お願いします!」
  
 喉と大根がどう繋がるのか俺にはさっぱり分からないが、「そうなんです!」「え、作って来てくれるんですか?!」と話しているところをみると美月さんには通じたようだ。
 電話を終えると、安堵したような表情のあと、まだ少しだけ泣きそうな顔で俺を見た。

「美月さんが、はちみつ大根作って来てくれるって。あとのど飴も頼んだよ」
「はち――――」
「だめ!」
「……ん」

 はちみつ大根、そういえば子供の頃にばあちゃんが作ってくれた記憶がある。懐かしい。
 ……っつうか、美月さんがこんな早朝に作ってくれるのか……。なんか申し訳なさすぎる……。
 
「今日は喋らずにちょっとずつ水分補給して、はちみつ大根のシロップ舐めて、のど飴も舐めてね。……治るかな……大丈夫かな……」

 不安そうに俺をそっと抱きしめる蓮に、ちょっと大袈裟に言いすぎたかな……と反省した。
 こんなに必死になってくれると思わなかった。嬉しすぎるし可愛すぎるし、マジでどうしよう。
 お礼が言いたいのに喋ると怒られるから、俺はお礼の代わりに、マスクを顎までずらし蓮に濃厚な口づけをした。

「んっ……」

 一瞬驚いたように声を漏らす蓮が、ますます可愛い。
 首に腕をまわして深く奥まで、何度も舌を絡めた。
 あんなにしたのにまた蓮が欲しくなる。また後ろの奥がうずき始めて慌てて唇を離した。

「秋さん……」

 顔を赤らめて息が上がり始めてる蓮の耳元に、俺はなるべく喉を使わずにささやいた。

「愛してるよ、蓮」
「……俺も、愛してる……。喉……ごめんね」

 大丈夫の気持ちを込めて、背中をトントンする。
 蓮は身体を離すと俺のマスクを口に戻し、額に優しいキスをした。


 迎えの時間になると、美月さんがわざわざ部屋まで来てくれた。
 
「はいこれ、はちみつ大根ね。三時間くらいしたら液がサラサラになるから、それ舐めてみてね。それとのど飴ね」
「あり――――」
「ありがとうございます、美月さん。朝早くにすみませんでした」

 蓮は、俺の言葉をわざとさえぎってお礼を言って、頭を下げた。
 頭を上げた蓮の俺を見る目が、まるで子供を叱る親のように、メッと言っている。あまりに可愛くて口元が笑ってしまった。

「あーいいよいいよ、家にあった大根切ってはちみつかけただけだから。まったく、朝から何事かと思ったわよ」
 
 美月さんは俺の顔をじっと見て、「風邪引いちゃった?」と聞いてきた。
 若干ギクッとしたが、コクンと頷いた。

「治るといいね。お大事にね。私はまたてっきり、蓮くんが夜どうし抱きつぶして喉痛めたのかと思ったわ」

 美月さんがニヤッと笑う。目が、本当はそうなんでしょう? と言っている。
 ……ああ、もうバレバレなんだな。
 そりゃそうか。もし本当に風邪だったら、蓮が必死に早朝から電話なんかしてなかっただろう。自分のせいだから、あんなに必死だったんだ。
 蓮を見ると、本当に嘘のつけないヤツだなと笑ってしまうくらいに真っ赤な顔だ。

「あ、あ、あの、ちが」
「うんうん。風邪なのね。はいはい。ほら、早く行くよ」

 赤面したまま連れて行かれる蓮を見送りながら、美月さんには本当にもう頭が上がらないな、と苦笑した。


 
end.


 
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