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番外編
デートしたいっ!✦side秋人✦3
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「何から行く?」
「秋さんはどれがいい?」
「んー、なんでもいいけど……」
「俺もなんでも楽しみだけど……」
「絶叫系は外せねぇっ!」
「絶叫系は絶対っ!」
声がハモって目を見合わせた。吹き出して声をあげて笑った。
「よーし! 絶叫系行くぞっ!」
「よっしゃー!」
途中でポップコーンを買って列に並ぶ。
子供の頃はこの時間が長くて苦手だったが、蓮と一緒だとあっという間に時間が過ぎた。
アトラクションも絶叫系好き同士、もう最高に楽しいっ!
二ヶ所目の行列に並んでいると、後ろから「あの……」とコソッと声をかけられた。
「はい?」
振り返って返事をすると、子連れの父親らしき人が俺の耳元にこそっと言った。
「キャストさんに言えば、裏から入れるんじゃないですかね?」
「え?」
意味が分からずきょとんとしてしまった。
詳しく聞けば、俺たちは芸能人だから裏ルートで入れば? ってことらしい。
「いやいや、僕たちそんな大騒ぎになるほどの有名人じゃないので」
「え、充分騒がれてますけど……写真も撮られまくってますよ?」
まわりを見ると、言われた通り確かに写真をパシャパシャ撮られて想像以上に騒がれていた。
蓮との時間を邪魔されなかったので全く気にならなかった。俺の気になる基準は、蓮との時間が減るか減らないかだということに今やっと気がつく。
「あの、すみません」
蓮が男性に向かって頭を下げた。
「まわりの皆さんにご迷惑かけて本当に申し訳ないです。でも……できればこのまま並びたいです。ダメでしょうか」
蓮の低姿勢な態度に、男性は慌てて顔の前で両手をふった。
「いやいやいや、あの、私達は全然迷惑じゃないですよっ」
するとまわりからも「迷惑じゃないです」「むしろ大歓迎!」と声が上がる。
男性はすまなそうな顔で頭をかいた。
「いや……あまりに遠慮なしに写真をとられていて気の毒になってしまって。余計なことを言っちゃったかな……すみません」
「そんな、謝らないでください。お気遣いすごく嬉しいです。ありがとうございます。写真は、いつものことなので大丈夫です」
男性の思いやりに胸がジンとして、自然と笑顔になった。なんていい人なんだろう。
芸能人だからといって本当に裏から入れるのかは分からないが、わざわざ伝えてくれた彼のその思いやりに感動した。
「いつものことか……そうですよね」
男性はバツが悪そうに困った顔になってしまった。
彼の横で大人しくじっと俺たちを見守っている、十歳くらいの少年を見て男性にたずねる。
「お子さんですか?」
「ええ、そうです」
「こんにちは」
挨拶をすると元気な返事が返ってきた。
「こ、こんにちは! 初めまして!」
蓮も元気な少年に嬉しそうに「こんにちは」と声をかけた。
少年は俺たちを知っているようで、キラキラした目で俺と蓮を交互に見ている。
これだけ騒いで無断で写真を撮る大人に囲まれて、それでも大人しくしているこの子が一瞬で大好きだと思った。
「君のお父さん、すごく優しくて格好良いね」
「うん、僕のお父さん、すごい格好良いんだっ」
蓮も「本当にすごい格好良いね。すごい良いお父さん」と誉めまくると、男性は真っ赤な顔で照れていた。
二人とはアトラクションが終わったあと、握手をしてサインをあげて別れた。
どこに書く? と少年に聞くと帽子と答えたので二人で書いてあげた。学校で自慢する! と大喜びでこっちまで嬉しくなった。
「いいお父さんとめっちゃ可愛い子だったな?」
「うん本当だね。おかげで自分まで優しくなれる気分」
「いや、お前はそれ以上無理だろってくらい優しさの塊だけどな?」
「えっ、優しさの塊? それは秋さんの方でしょ?」
何言ってるの? って顔でびっくりしている。
いや俺じゃなくてお前だろ、と脳内でツッコミを入れた。
そろそろ昼食をと思ったが、レストランも行列だった。子供の頃の記憶しかないので色々と驚く。そりゃそうだよな、と諦め気分で俺たちは行列に並んだ。
とはいえ、蓮といると行列の疲れすら感じない自分に半日で実感していた。
だから疲れてはいないが、そろそろ限界だ。何がって、蓮が足りない。側にいるのにベタベタ出来ない状態が長すぎて、もう『蓮ゲージ』が空っぽだった。
くっつきたい。ベタベタしたい。もうまわりなんか気にせずイチャイチャしたい。まさかここまで蓮不足になるとは思いもしなかった。
ため息がとまらない俺に、蓮が心配そうな顔をする。
「秋さん疲れた?」
その言葉にハッとした。
なんで思い付かなかったんだ。それだ。
「ん、疲れた。ちょっと寄りかかっていいか?」
「いいよ、もちろん」
ふわっと笑う蓮の笑顔と、トンと寄りかかった肩から『蓮ゲージ』がちょっとだけ回復する。
……足りないな。全然足りないな。
俺は調子に乗って蓮の肩に頭を乗せた。
「あ、秋……っ」
「あー疲れたー癒されるー」
おふざけモードだよ、とまわりにアピールした。
めっちゃフラッシュを浴びたが気にしない。だってこれは、おふざけだから。
でもまだゲージは二割程度……。もうため息がとまらなかった。
「秋さんはどれがいい?」
「んー、なんでもいいけど……」
「俺もなんでも楽しみだけど……」
「絶叫系は外せねぇっ!」
「絶叫系は絶対っ!」
声がハモって目を見合わせた。吹き出して声をあげて笑った。
「よーし! 絶叫系行くぞっ!」
「よっしゃー!」
途中でポップコーンを買って列に並ぶ。
子供の頃はこの時間が長くて苦手だったが、蓮と一緒だとあっという間に時間が過ぎた。
アトラクションも絶叫系好き同士、もう最高に楽しいっ!
二ヶ所目の行列に並んでいると、後ろから「あの……」とコソッと声をかけられた。
「はい?」
振り返って返事をすると、子連れの父親らしき人が俺の耳元にこそっと言った。
「キャストさんに言えば、裏から入れるんじゃないですかね?」
「え?」
意味が分からずきょとんとしてしまった。
詳しく聞けば、俺たちは芸能人だから裏ルートで入れば? ってことらしい。
「いやいや、僕たちそんな大騒ぎになるほどの有名人じゃないので」
「え、充分騒がれてますけど……写真も撮られまくってますよ?」
まわりを見ると、言われた通り確かに写真をパシャパシャ撮られて想像以上に騒がれていた。
蓮との時間を邪魔されなかったので全く気にならなかった。俺の気になる基準は、蓮との時間が減るか減らないかだということに今やっと気がつく。
「あの、すみません」
蓮が男性に向かって頭を下げた。
「まわりの皆さんにご迷惑かけて本当に申し訳ないです。でも……できればこのまま並びたいです。ダメでしょうか」
蓮の低姿勢な態度に、男性は慌てて顔の前で両手をふった。
「いやいやいや、あの、私達は全然迷惑じゃないですよっ」
するとまわりからも「迷惑じゃないです」「むしろ大歓迎!」と声が上がる。
男性はすまなそうな顔で頭をかいた。
「いや……あまりに遠慮なしに写真をとられていて気の毒になってしまって。余計なことを言っちゃったかな……すみません」
「そんな、謝らないでください。お気遣いすごく嬉しいです。ありがとうございます。写真は、いつものことなので大丈夫です」
男性の思いやりに胸がジンとして、自然と笑顔になった。なんていい人なんだろう。
芸能人だからといって本当に裏から入れるのかは分からないが、わざわざ伝えてくれた彼のその思いやりに感動した。
「いつものことか……そうですよね」
男性はバツが悪そうに困った顔になってしまった。
彼の横で大人しくじっと俺たちを見守っている、十歳くらいの少年を見て男性にたずねる。
「お子さんですか?」
「ええ、そうです」
「こんにちは」
挨拶をすると元気な返事が返ってきた。
「こ、こんにちは! 初めまして!」
蓮も元気な少年に嬉しそうに「こんにちは」と声をかけた。
少年は俺たちを知っているようで、キラキラした目で俺と蓮を交互に見ている。
これだけ騒いで無断で写真を撮る大人に囲まれて、それでも大人しくしているこの子が一瞬で大好きだと思った。
「君のお父さん、すごく優しくて格好良いね」
「うん、僕のお父さん、すごい格好良いんだっ」
蓮も「本当にすごい格好良いね。すごい良いお父さん」と誉めまくると、男性は真っ赤な顔で照れていた。
二人とはアトラクションが終わったあと、握手をしてサインをあげて別れた。
どこに書く? と少年に聞くと帽子と答えたので二人で書いてあげた。学校で自慢する! と大喜びでこっちまで嬉しくなった。
「いいお父さんとめっちゃ可愛い子だったな?」
「うん本当だね。おかげで自分まで優しくなれる気分」
「いや、お前はそれ以上無理だろってくらい優しさの塊だけどな?」
「えっ、優しさの塊? それは秋さんの方でしょ?」
何言ってるの? って顔でびっくりしている。
いや俺じゃなくてお前だろ、と脳内でツッコミを入れた。
そろそろ昼食をと思ったが、レストランも行列だった。子供の頃の記憶しかないので色々と驚く。そりゃそうだよな、と諦め気分で俺たちは行列に並んだ。
とはいえ、蓮といると行列の疲れすら感じない自分に半日で実感していた。
だから疲れてはいないが、そろそろ限界だ。何がって、蓮が足りない。側にいるのにベタベタ出来ない状態が長すぎて、もう『蓮ゲージ』が空っぽだった。
くっつきたい。ベタベタしたい。もうまわりなんか気にせずイチャイチャしたい。まさかここまで蓮不足になるとは思いもしなかった。
ため息がとまらない俺に、蓮が心配そうな顔をする。
「秋さん疲れた?」
その言葉にハッとした。
なんで思い付かなかったんだ。それだ。
「ん、疲れた。ちょっと寄りかかっていいか?」
「いいよ、もちろん」
ふわっと笑う蓮の笑顔と、トンと寄りかかった肩から『蓮ゲージ』がちょっとだけ回復する。
……足りないな。全然足りないな。
俺は調子に乗って蓮の肩に頭を乗せた。
「あ、秋……っ」
「あー疲れたー癒されるー」
おふざけモードだよ、とまわりにアピールした。
めっちゃフラッシュを浴びたが気にしない。だってこれは、おふざけだから。
でもまだゲージは二割程度……。もうため息がとまらなかった。
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