記憶喪失から始まる、勘違いLove story

たっこ

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25 月森との夜 ※

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「……月森?」

 シャワーを出ると、月森の姿が見当たらない。俺の部屋にもトイレにもいない。
 え……どういうこと?
 まさか、怖くなって逃げた……?
 嘘だろ……?
 一瞬で血が引いて身体が凍りつく。

 その時、玄関の開く音が響き、ハッとして振り向いた。
 そこには息を切らしながら戻ってきた月森が、慌てて靴を脱いでいた。

「あ、先輩、えっと……っ」

 月森は俺に気づくとパッと顔を赤く染め、手にしている物を背中に隠す。

「す、すみません、ちょっと買い物に行ってて」

 近づいてくる月森を思わず抱きしめた。

「……ばか」
「え、あの、先輩?」

 月森の胸に顔をうずめ、ホッと息をつく。

「怖くて逃げたのかと思った……」
「え!」

 月森が俺の肩をつかんで身体を引き離し、真剣な眼差しを向けた。

「絶対ないです! そんなこと! ありえません!」
「……うん、よかった」
「ごめんなさい先輩。心配させちゃって」
「……買い物って、何?」

 月森の手に下がっているエコバッグを見ると、「えっと……」と言いよどんでバッグを渡してきた。
 受け取って中を覗き、一瞬で察した。
 中には、これから使う大切なものがセットで入ってた。じわじわと羞恥が込み上げてくる。

「俺、経験ないんで、買ったこともないから家になくて。その……黙って買いに行くのは悩んだんですけど、でもローションは絶対必要だから」

 俺はハンドクリームとかそんなんでいいかなと適当に考えてた。月森がちゃんと考えてくれたことが嬉しくて胸がくすぐったい。
 それに、月森は初めてなんだ。
 俺はどうなんだろう……初めてなのかな。初めてだと……いいな。
 目が合うと恥ずかしくて、照れ隠しに月森をバスルームに押し込んだ。



「先輩、俺……手の震えが止まらない……」
「うん、俺も……」

 シャワーを終えた月森と二人で俺のベッドに腰をかけた。
 帰宅した時の勢いのままベッドに入ればよかったと後悔しかけた時、月森の震える手が伸びてきて、俺を腕の中に閉じ込めた。
 耳に月森の息がかかる。包まれる身体に熱が伝わり、心臓が早鐘を打つ。
 今から月森と……。やばい……心臓壊れそう……。
 
「先輩……」
「うん?」
「本当に……いいんですか?」
「月森こそ、本当にいいの?」
「お、俺は……っ、もう何度も想像で先輩を抱きました……っ」
「っはは、まじか。すごいね」
 
 俺はゲイだと自覚もなかったし、好きだとわかった途端に失恋だったから想像もできなかった。
 男同士は後ろを使うってことくらいしかわかってない。
 
「じゃあ……任せちゃってもいい? 実は俺、やり方よくわかってないんだよね」
「も、もちろんです。あの……シミュレーションは完璧なので、任せてください」

 言い方にツボって笑いが漏れる。
 ひどく緊張した月森と見つめ合うと、震える手がそっと頬に触れた。
 それだけでゾクゾクと全身にしびれが走って、思わず目をつぶる。
 なんで……どうして……? ベッドの上だから……?
 これからするって思ってるから……?

「ん……っ……」

 月森の手が頬からうなじへとゆっくりとすべり、またゾクゾクと全身が感じた。
 やばい。やばすぎる……。
 頭がキャパオーバーになってる間に唇をキスでふさがれ、月森はすぐに舌を絡めてきた。

「……んぅ、……ぁ……」

 しびれが脳まで達して頭が真っ白になっていく。
 さっきまでのキスとは感じ方が違う。なぜか下半身に熱が集まっていく。全身が性感帯にでもなったかように、キスだけで俺は感じていた。
 どうして……なんだこれ……。
 思えば俺は、目覚めてからずっと、一人でなんかやってない。そういうこととは無縁だった。

「は……っぁ、つき……もり……」

 キスがやばいくらいに気持ちいい。もっと深くほしい。俺は月森のうなじをグッと引き寄せた。
 キスだけなのに、もう俺のそこは充分に硬い。
 これじゃまるで人生初の勃起の気分だ……。
 とんでもなく羞恥に襲われる。いい大人がなんだこれ。恥ずかしすぎる……っ。

 頭がぼうっとしているうちに、気づけば俺はベッドに寝かされていた。
 月森が何度も「好き」を繰り返し、とろけるようなキスをし続ける。
 シャツの裾から手が入り込み、腹を撫でられてビクッと身体が震えた。ゆっくりと撫で上げる月森の手が胸の突起をとらえ、指の腹でくすぐるように撫でる。

「んん……っ、ぁっ……」

 予想外に気持ちがよくて声が漏れる。

「あ……っ、ま、待って月森……っ」
「先輩……?」
「そ……そこも、触るの……?」

 男なのに?

「ダメですか?」
「い……いや、ダメじゃ……ないけど……」 

 恥ずかしいんだよ……。

「俺は触るだけじゃなくて……舐めたいです」

 月森が、余裕のなさそうな表情で俺を見下ろし、シャツをめくって乳首を口に含んだ。

「えっうそ……っ、あ……っ」
「俺は、先輩の身体、全部にキスしたい」
「ふぁ……っ」

 両方の乳首を舐めていじられたら、もうたまらない。
 頭がぶっ飛びそうなほど気持ちがよくて、声が勝手に口から漏れる。

「あっ、あ……っ、つ、月森、ご……めん、変な声……出る……っ、んっ」

 俺が謝ると、月森はもう一度乳首で俺を鳴かせたあと、はにかむように笑った。

「先輩がちゃんと気持ちいいってわかって嬉しいです」
「……っ」
「俺、初めてだから、どこが気持ちいいのかもっと教えてください。先輩すごい可愛い」
「かわ……っ、そういうこと……言うな……」

 乳首で喘ぐなんて、もう恥ずかしさでいっぱいだ。

 
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