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26 「ごめんなさい」は聞きたくない ※
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月森の愛撫はどこまでも優しくて、俺はその幸せに身をゆだねた。
止まらない恥ずかしい声に乗せて、何度も好きだと伝える。
月森はそのたびに、泣きそうな顔で「好き」を繰り返し、優しいキスをくれた。
ふと、受け身でいる自分に何も違和感がないことに不思議な気持ちになった。
月森に組み敷かれ愛撫されているこの状況に、ただただ溺れて幸せな自分が不思議だ。
話を聞く限り、前の俺が抱かれる側を選ぶイメージが全くない。
でも、前も今も俺は俺だ。母さんによれば根本は変わらないらしい。それなら、これだって同じ選択をするんじゃないだろうか。
そうか……たぶん、きっと前の俺も、抱かれたい側だ。
違和感がないのがその証拠だと思う。
そう考えると、罪悪感が少し減った。
「あっ、そこ……っ、んんっぁ……っ!」
「すごい。本当にあった……いいところ」
たっぷりのローションで俺の後ろを丹念にほぐしながら、月森が嬉しそうに声を上げる。
そこを押されると全身に快感が走った。
なんだ……そこ……っ。やばい……っ。
月森に抱かれたいと、月森の一番近くに行きたいとは思ったけれど、後ろがこんなに気持ちいいなんて想像もしてなかった。
「あぁ……っ、つきもり……っ……」
月森の腕に手を伸ばしてしがみつくと、月森の手が止まった。
「あ、痛い……ですか?」
「……ち、違う。……もう俺、頭バカになりそう……」
「それって、すごくいいってことですか?」
顔も声も本当に嬉しそう。
「……こんなの……よすぎて、怖い……」
俺はもしかして後ろの経験があるのか……そう思ってしまうほど気持ちがいい。
考えても分からないことをつい気にしてしまう。
「なにも怖くないですよ。もっともっと気持ちよくなってください」
「でも、俺ばっかりじゃん……」
「先輩が気持ちいいと、俺も気持ちいいです」
まだ入れてもないのにそんなわけないだろう、そう思った時、硬く反り勃った月森のものが目に入った。
「で……っ」
でっか……っ!
思わず自分のものと見比べた。
全く比べ物にならないほどでかい。あれはやっぱり身体の大きさに比例するものなんだろうか。
いや待って……あれ、入る? 大丈夫……?
一瞬不安がよぎるも、また与えられる快楽に溺れていった。
「あっ、あぁ……っ!!」
目の前にチカチカと星が飛び、腹の上に温かいものが飛び散った。後ろだけでイかされた。それも指でだ。
記憶喪失のせいで、まるでこれが初めての精通のような快感。それはもう、想像以上の。
ぼんやりと余韻にひたってから、ゆっくりと意識がはっきりしてくる。
静かだな……と月森を見ると、ティッシュで俺の腹を拭きながら、どこか顔色が悪く見えた。
「月森……?」
俺の呼びかけでスイッチが入ったかのように、月森の目に涙が浮かぶ。
なに、どうした……?
聞こうとしたが、声にならなかった。
顔色がどんどん悪くなっていく月森に、声をかける勇気が出ない。
俺の腹がすっかり綺麗になると、月森が俺の胸に顔をうずめ「ごめんなさい……」と泣き崩れた。
血の気が引いていく。
また、ごめんなさい、だ。
思い出した記憶の中で月森が言った『ごめんなさい』は、この一週間ずっと頭の中で繰り返されてきた。
月森の『ごめんなさい』は、もうトラウマになりそうだ……。
「なに……ごめんって……」
声が震える。
このタイミングの「ごめん」だ。俺がイくのを見て、やっぱり男なんて抱けないと思った……?
月森の返事が怖い。聞きたくない……。
「やっぱり……ダメです……」
聞きたくないってば……。
「やっぱり……できません……。無理です……」
無理……か。そっか……無理なんだ……。
たぶん月森は、ゲイじゃないんだな……。
深い絶望感に襲われ、息もできない。
喉の奥が焼けるように熱くなり、視界がぼやけた。
俺の胸で声を殺して泣く月森の身体が震えてる。ここまで頑張ってくれたんだ。月森を責める気持ちはない。悲しいけれど、こればっかりは……仕方ない。
「わかったよ……月森。もう泣かなくていいよ……」
そういう俺も、涙声になった。情けない。
なだめるように月森の背中を撫でると、また「ごめんなさい……」と繰り返えす。
「うん。もういいから……」
月森のごめんなさいを聞くのは……もうつらい。だから、もう言わないで……。
そう思った時、月森の口から予想外な言葉が聞こえてきた。
「夢……みたいで……」
「……え?」
なに……夢?
「なんかもう、夢みたいで幸せで……だから最後まで見ないふりをしたかったんです。……でも……やっぱりダメです……」
「見ないふりって……なに?」
男が抱けないって理由じゃない……?
「前の先輩は……俺を好きじゃないのに……。それをわかってて……こんなこと……っ。もし……もし記憶が戻ったら……っ」
月森が、ぎゅっと俺を抱きしめる。
「だから……やっぱり……ダメです……」
なんだ、そっか。無理ってそういうことか。男が無理なわけじゃなかったんだな。
安堵で肩の力が抜けた。
俺だって、前の俺と今の俺を切り離して散々悩んだ。月森だって悩むのは当然だ。
身体を震わせて泣く月森を、俺は優しく抱きしめた。
止まらない恥ずかしい声に乗せて、何度も好きだと伝える。
月森はそのたびに、泣きそうな顔で「好き」を繰り返し、優しいキスをくれた。
ふと、受け身でいる自分に何も違和感がないことに不思議な気持ちになった。
月森に組み敷かれ愛撫されているこの状況に、ただただ溺れて幸せな自分が不思議だ。
話を聞く限り、前の俺が抱かれる側を選ぶイメージが全くない。
でも、前も今も俺は俺だ。母さんによれば根本は変わらないらしい。それなら、これだって同じ選択をするんじゃないだろうか。
そうか……たぶん、きっと前の俺も、抱かれたい側だ。
違和感がないのがその証拠だと思う。
そう考えると、罪悪感が少し減った。
「あっ、そこ……っ、んんっぁ……っ!」
「すごい。本当にあった……いいところ」
たっぷりのローションで俺の後ろを丹念にほぐしながら、月森が嬉しそうに声を上げる。
そこを押されると全身に快感が走った。
なんだ……そこ……っ。やばい……っ。
月森に抱かれたいと、月森の一番近くに行きたいとは思ったけれど、後ろがこんなに気持ちいいなんて想像もしてなかった。
「あぁ……っ、つきもり……っ……」
月森の腕に手を伸ばしてしがみつくと、月森の手が止まった。
「あ、痛い……ですか?」
「……ち、違う。……もう俺、頭バカになりそう……」
「それって、すごくいいってことですか?」
顔も声も本当に嬉しそう。
「……こんなの……よすぎて、怖い……」
俺はもしかして後ろの経験があるのか……そう思ってしまうほど気持ちがいい。
考えても分からないことをつい気にしてしまう。
「なにも怖くないですよ。もっともっと気持ちよくなってください」
「でも、俺ばっかりじゃん……」
「先輩が気持ちいいと、俺も気持ちいいです」
まだ入れてもないのにそんなわけないだろう、そう思った時、硬く反り勃った月森のものが目に入った。
「で……っ」
でっか……っ!
思わず自分のものと見比べた。
全く比べ物にならないほどでかい。あれはやっぱり身体の大きさに比例するものなんだろうか。
いや待って……あれ、入る? 大丈夫……?
一瞬不安がよぎるも、また与えられる快楽に溺れていった。
「あっ、あぁ……っ!!」
目の前にチカチカと星が飛び、腹の上に温かいものが飛び散った。後ろだけでイかされた。それも指でだ。
記憶喪失のせいで、まるでこれが初めての精通のような快感。それはもう、想像以上の。
ぼんやりと余韻にひたってから、ゆっくりと意識がはっきりしてくる。
静かだな……と月森を見ると、ティッシュで俺の腹を拭きながら、どこか顔色が悪く見えた。
「月森……?」
俺の呼びかけでスイッチが入ったかのように、月森の目に涙が浮かぶ。
なに、どうした……?
聞こうとしたが、声にならなかった。
顔色がどんどん悪くなっていく月森に、声をかける勇気が出ない。
俺の腹がすっかり綺麗になると、月森が俺の胸に顔をうずめ「ごめんなさい……」と泣き崩れた。
血の気が引いていく。
また、ごめんなさい、だ。
思い出した記憶の中で月森が言った『ごめんなさい』は、この一週間ずっと頭の中で繰り返されてきた。
月森の『ごめんなさい』は、もうトラウマになりそうだ……。
「なに……ごめんって……」
声が震える。
このタイミングの「ごめん」だ。俺がイくのを見て、やっぱり男なんて抱けないと思った……?
月森の返事が怖い。聞きたくない……。
「やっぱり……ダメです……」
聞きたくないってば……。
「やっぱり……できません……。無理です……」
無理……か。そっか……無理なんだ……。
たぶん月森は、ゲイじゃないんだな……。
深い絶望感に襲われ、息もできない。
喉の奥が焼けるように熱くなり、視界がぼやけた。
俺の胸で声を殺して泣く月森の身体が震えてる。ここまで頑張ってくれたんだ。月森を責める気持ちはない。悲しいけれど、こればっかりは……仕方ない。
「わかったよ……月森。もう泣かなくていいよ……」
そういう俺も、涙声になった。情けない。
なだめるように月森の背中を撫でると、また「ごめんなさい……」と繰り返えす。
「うん。もういいから……」
月森のごめんなさいを聞くのは……もうつらい。だから、もう言わないで……。
そう思った時、月森の口から予想外な言葉が聞こえてきた。
「夢……みたいで……」
「……え?」
なに……夢?
「なんかもう、夢みたいで幸せで……だから最後まで見ないふりをしたかったんです。……でも……やっぱりダメです……」
「見ないふりって……なに?」
男が抱けないって理由じゃない……?
「前の先輩は……俺を好きじゃないのに……。それをわかってて……こんなこと……っ。もし……もし記憶が戻ったら……っ」
月森が、ぎゅっと俺を抱きしめる。
「だから……やっぱり……ダメです……」
なんだ、そっか。無理ってそういうことか。男が無理なわけじゃなかったんだな。
安堵で肩の力が抜けた。
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身体を震わせて泣く月森を、俺は優しく抱きしめた。
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