ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第四章 アルティメット編開始

第662話 OLサツキのアルティメット編のマグノリア邸到着

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 結局マグノリア邸に到着するまで、ユラはサツキを抱えたままだった。時折落ちそうになるのを抱え直す度に軽めだがキスをしてくるので、サツキの脳みそは混乱と幸福感で半ば溶けかかっていた。

 今は別に消えそうになったりしていない筈なのに、何でだろう。それにユラの付けたキスマークがまだ沢山付いたままだから、あれがあるとサツキはこの世界に強く留められるのに。

「ドラゴニア、ただいま」

 ユラが玄関のドアにくっついている門番のドラちゃんに声を掛けると、ドラちゃんが口から小さな火を吐いた。おかえりなさいという意味だろう。

「ドラちゃん、ただいま」

 ユラがようやく降ろしてくれたので、サツキも近付いて声を掛ける。ラムがドラちゃんの元に駆け寄ると、ドラちゃんの顔がでろっと最高に緩んだ。

「ただいま!」

 ラムの声に、ドラちゃんはちろちろと炎を吐きながら自動ドアの様にドアを開けた。主人よりもラム。なかなかの門番っぷりだ。

「数日ぶりなのに久々に感じるな!」

 中は仄暗く、空気が澱んでいる。サツキは窓に駆け寄ると、ユラに声を掛けた。

「風通しするね!」
「おう。あ、風呂、先に入っていいか? 血だらけでさ」
「うん、勿論!」

 サツキ達の為についてしまった血だ。それにこれはユラを慰める一環でもある。サツキがにこやかに頷くと、ユラがまたキスをして言った。

「待ってて」

 あまりにも優しいその言い方に、サツキはドギマギしてしまった。いやここサツキの家だし、待つけど。え?

 ユラが薄く笑うと、風呂場へと消えていった。

 サツキは暫くユラが去った方向を見ていたが、ラムがツンツンと服を引っ張ってきて、自分がまだ風通しの途中だと思い出した。

「あ、そうだよね!」
「ラム、一緒にいる」
「うん? そうだね」

 よく分からないが、サツキは特に気にせずそのまま台所と書斎と寝室の窓を開け放った。外はまだ明るく、風は少し涼しい位で気持ちいい。

 サツキは寝室のクローゼットから、女性用の服一式を揃えて出した。先程変身したばかりなので、明日の夕方まではサツキの姿のままだ。

 ユラと酒盛りをしてユラの話を聞くとなると、かなり長くなりそうだ。ユラが一睡もしていないから途中になってしまうかもしれないから、そのまま寝ても問題なさそうな緩めのワンピースを選んだ。

 ベッドに少し横になってみた。天井には今は星はなく、シンプルな白いペンキが塗られた天井があるだけだ。

 色んなことがあった一日だった。

 死を覚悟した。怖くなってユラに助けを求めたら、本当に助けてくれた。馬鹿サツキ、と言うユラの声が堪らなくて、あんな言い方をされるならもっと無茶をしちゃおうか、なんて思ってしまう。

 アールに対して失恋したというのに、しっかりと前を向いているユラは偉いと思った。サツキは、この世界に留まる為に繰り返されるキスだけでこんなに浮かれて、その差といったら恥ずかしい位だ。

 サツキは天井を見上げながら、心に決めた。

 ユラの話がどんなことであれ、今のサツキの想いを伝えよう。ユラは優しいから、サツキのことを何とも思ってなくても、軽蔑はしないと今なら信じられるから。

 その後のことは、その時に考えよう。

 サツキがこの先に進んで仲間に追いつく為には、ここで一人留まっている訳にはいかないのだから。
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