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1巻
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「……分かりました。いつも美味しいご飯をいただいているので、それくらいはやってもいいです。でも私も女官として自分の仕事があるので、基本自分の仕事を優先します。そのついでに手が空いた時だけです」
ちらっと竜を見ると、いつもの横暴で偉そうな雰囲気はどこにいったのか、ただ安心したように「そうか」と小さく笑みを浮かべていた。竜らしくない姿に、笙鈴は違和感を覚える。
(そんなに氷水様のことが気になるの……?)
相手が笙鈴だったら、きっと竜はここまで心配しない。薄汚い鼠が顔を出さなくなったとしても、皇帝の命令で王城から追放されただけだと考えて済ませてしまうに違いない。
相手が皇族の氷水で、現状この国で唯一皇帝の血を引く直系の娘だから気にかけているのだろうか。それとも笙鈴が知らないだけで、氷水が表舞台に姿を見せないことが、王城内で余程深刻な問題となっているのか。
「じゃあ頼んだぞ、鼠娘」
「鼠娘じゃなくて笙鈴です! いい加減に名前を覚えてください。その代わり、報酬に見合った料理を食べさせてくださいね。いつもより高いお肉やお魚、あと珍味とか」
「……考えておく。だが先に言っておくが、用意するとしてもあくまで成功報酬としてだ。成功もしていない時点で労うことはないぞ。お前が頼みを放り出して雲隠れする可能性だってあるからな」
「雲隠れって……人に頼み事をしておきながら、私が無責任みたいに言わないでくださいよ。傷付きます」
やっぱり断ろうとしかけたものの、氷水のことを話す竜がいつになく真剣だったことを思い出して笙鈴はぐっと言葉を呑み込む。代わりに茶器を傾けて中身を空にすると、「ご馳走様でした」と両手を合わせたのだった。
「じゃあ、また匂いに釣られてやってきます」
「たまには頭や衣服に草やら蜘蛛の巣やらをつけずに来い」
「えー、これでも最近は身綺麗にしているつもりなんですよ?」
初めて会った時、竜に「溝鼠」と呼ばれた原因の一つである葉っぱや蜘蛛の巣は、今はこの建物に入る前に落としている。それに、下級女官なので毎日沐浴することはできないとはいえ、最近はなるべく身体を拭いて襦裙も着替えるようにしていた。
「綺麗にしているつもりなだけだろう。まったく……いいから、次は正面から入ってこい。道は前に教えただろう」
「はーい」
笙鈴は確かに抜け穴を通らずに来られる道を教わっていた。ただ食べるのに夢中だったせいで、ほとんど覚えていない。
だが正直にそう言うわけにもいかず、笙鈴がいい加減に返事をすると、竜は「待て」と立ち上がりながら引き留めてくる。
「今、適当に返事をしたな?」
「そ、そんなことはないですよ……」
「嘘つけ」
竜に鼻を引っ張られて笙鈴は「いたたたたっ……!」と声を上げた。
竜は顔をしかめながらすぐに鼻を離し、小ぶりな包みを押しつけてくる。
「持ってけ。今日作った料理の余りだ」
「もらっていいんですか?」
いつもは土産をくれないので受け取っていいのか戸惑ってしまう。笙鈴が竜と包みを見比べていると、竜は目を逸らしながら口を開いた。
「今日一日何も食べてないと言っていたが、最近、まともに食べていないんじゃないか? そんなことをしていたら、いずれ倒れるぞ」
「もしかして竜さん、心配してくれるんですか?」
「失敗して衛兵たちに捕縛されるだけならいいが、皇帝陛下や氷水……様にまで迷惑をかけるような騒動になっても困るからな。もちろん、俺に面倒をかけられるのが一番迷惑だ」
ふん、と息を吐きながら面白くなさそうに言って、顔を背ける竜。だが竜の意図するところに気付いた笙鈴は満面の笑みを浮かべながら包みを受け取ったのだった。
「ありがとうございます。実はここ最近、まったく食べられない日が続いていたので嬉しいです」
「食事なら提供されるだろう。なぜ食べられない」
ここまで言ってしまったのなら、さすがにこれ以上隠すのは難しいだろう。笙鈴はそう思い、頭を掻きながら素直に白状する。
「あはは……他の女官たちに取られちゃうんです。食べられるのか、捨てられているのかは知りませんが」
「そんな奴がいるのか……」
竜は何か考えている様子を見せる。
だが笙鈴はそれに気付くことなく、竜にお礼を言うと来た道を戻ったのだった。
第二章 氷水
竜から氷水について探るように命じられた次の日の昼過ぎ。笙鈴は自分の仕事が落ち着くと、掃除をするふりをしながら氷水の宮へとやってきた。
(今日、何かあったのかな……)
いつもなら笙鈴に自分たちの仕事を押しつけてくる先輩女官たちが、今朝は朝餉が終わった直後に女官長に呼ばれてどこかに行ったきり戻ってこなかった。それもあって今日は自分の仕事をするだけで済んだので、いつもより早く手が空いたのだ。
(中庭、綺麗……)
赤い柱が並ぶ廊下、落ち葉や花びらの一枚も落ちていない春の中庭。美しい氷水の宮の景色に、笙鈴は目を奪われていた。のどかな陽春の庭では、先程から鶯が鳴き、雀のさえずりが絶え間なく聞こえている。
上級女官と遭遇した時に怪しまれないように雑巾と箒を持って氷水の宮に来たが、どうやらあまり意味はなかった様子だ。さすが皇女の宮だけあって、笙鈴が掃除する必要もなく清潔に保たれている。
(こういうところは掃除も厳しいんだろうな……)
そんなことを考えながら、ついつい庭に見入っていると、幼い少女の声と女性たちの姦しい声が聞こえてきた。
(どこから聞こえてくるんだろう……)
笙鈴は見つからないように中腰になり、声が聞こえてきた方に向かう。建物に沿って歩いている間も、少女と女性たちの話し声は絶えずに聞こえていた。
笙鈴は目的の部屋を見つけると箒を近くの壁に立てかけて、窓から中を覗く。すると椅子に座った可憐な少女の周りで、濃艶な格好をした数人の女官が話しているのが見えた。
どうやらここが氷水の部屋のようだと笙鈴はあたりをつける。
(もしかして、あの子が……)
氷水と思しき華美な礼装に身を包んだ白皙の少女は、長い黒髪を背中に流し、澄んだ色の青い目を伏せて豪華な椅子に座っていた。
(想像以上に可愛い~!)
今は目を伏せているが、微笑んだらきっと牡丹の花のように愛らしいに違いないと笙鈴は思う。自分の弟妹が幼い時もそうだった。
(でも、何か様子が変……?)
氷水の周りにいるのは氷水よりも綺羅を飾った女官たちだ。幼い氷水の化粧が薄いのはおかしなことではない。だがいくつもの宝飾品で身を飾り仕立てのいい襦裙に身を包んだ女官たちの前では、清楚な氷水は霞んでしまっているようにさえ見える。
(女官が主人の氷水様よりも目立っていいものなの……?)
ただ笙鈴の先輩女官たちも汚い仕事は笙鈴に押しつけて綺麗に着飾ることで、できることなら皇帝の目に留まって側妃になろうとしていた。もしかしたら笙鈴がおかしいだけで女官とはそんなものなのかもしれないが、それにしても随分派手だ。
女官たちは氷水の目の前で高価そうな螺鈿細工の装飾がされた箱を開けて、中を見ている様子だ。何かを探しているようにも、物色しているようにも見える。
「氷水様、先程も言った通り、この中にはありませんよ」
「本当にここに入れたんだもん……お母様の首飾り、ここにあったの見たんだもん……どうしてないの?」
「そんなことを言われましても、ねぇ……」
「困りましたわねぇ。氷水様のような青い目だと、普通とは見え方が違うのかしら」
女官たちは氷水を貶すような言葉を臆面もなく口にすると、顔を見合わせてクスクスと笑い合う。
氷水は突然立ち上がって女官から箱を取り上げ、その場に中身をぶちまけた。
「氷水様!」
「本当にこの中に入れたんだもん! 嘘ついてないもんっ……!」
「誰も嘘とは申しておりませんわ! ねぇ?」
氷水を咎めていた女官が他の女官たちに同意を求めると、他の者たちも「そうですわ」と頷く。
その反応がますます癇に障ったようで、氷水は顔を真っ赤にして膨れてしまう。
「それなら、どうしてお母様の首飾りがないの!? 大切なお母様の形見なのに……」
「氷水様は私たちの中に盗人がいると思っているんですね」
「わっ、わたし、そんなこと、言ってない……!」
「酷いですわ。氷水様に盗人扱いされるなんて。私たちはこんなに氷水様に尽くしていますのに」
「やはり西の国の血が流れない者は信用してくださらないのですね」
「…………」
好き勝手な言葉を浴びせられ、皇女にもかかわらずのけ者にするような扱いをされて、氷水は俯いて黙ってしまう。
「何をやっているのですか?」
その時、一際見目麗しい女官が扉を開けて姿を現し、沓音を高く鳴らしながらやってくる。彼女は赤面して今にも泣きだしそうな氷水を見ると、氷水を嘲笑っていた女官たちに冷徹な一瞥を向ける。
「みっともない……外にまで氷水様と、貴女たちの声が聞こえていますよ」
他の女官たちと同じような襦裙姿からして、この女官も同じ氷水付きの女官なのだろう。しっかり手入れのされた黒髪や適度に紅をさした頬、あかぎれ一つない白い手は絵に描いたような端麗さで、加えて大人の女性特有のどこか謎めいた妖艶な雰囲気がある。彼女の鮮麗さは、この室内にいるどの女官よりも際立っていた。痩せ過ぎで手足や髪も最低限の手入れしかできていない笙鈴は到底太刀打ちできそうにない。
唯一、彼女に匹敵しそうなのは氷水くらいだが、この女官が纏う妖美さは氷水が持つ可憐な美しさとは明らかに種類が違う。優美な女官というよりも、花街で男たちに色を売るという妓女のような印象だ。
「峰花、貴女こそどうしてここに……官吏に呼ばれたんじゃなかったの?」
ざわつく女官のうち一人に聞かれ、峰花と呼ばれた女官はそっけなく答える。
「そちらの用事ならもう終わりました。先月辞めた者の代わりとなる新しい氷水様付きの女官として、現在後宮で働く何人か紹介されました。ですが特に相応しい者はいませんでしたから……それで? 貴女たちはここで何をしていたのですか」
峰花はぴしゃりと言い、室内を見渡していたが、やがて笙鈴が室内を覗いている窓にも視線を向ける。目が合いそうになった笙鈴は、慌てて窓の下に隠れた。
(こ、怖~い!)
絵に描いたように顔が整っている分、怒っている時の顔も迫力があった。峰花の厳しい態度に、女官たちだけではなく氷水までもが圧倒されて黙っている。
しばらくして、おずおずと女官の一人が話しだす。
「これはね、その……氷水様が私たちを責めたのです。女官の誰かが氷水様が大切にされていた皇后様の首飾りを盗んだと言いだして……」
「盗んだなんて言ってない! どうしてないのって、聞いただけだもん!」
袂で目を押さえて泣くふりを始める女官を見て、氷水は必死で弁解する。
峰花は溜め息を吐いて他の女官たちに退室するよう伝えると、氷水と二人きりになった。
峰花は氷水に近づいて膝をつくと、彼女の顔を覗き込みながら話す。
「氷水様、もう一度探してみましょう。私も一緒に探します」
氷水は今にも泣きだしそうな顔のまま、峰花をじっと見つめる。
「峰花もわたしが嘘をついたって言うの?」
「そうは申しておりません。もしかしたらどこかに置き忘れただけかもしれませんわ。散歩に行かれたところや、いつもの勉強部屋にでも……」
「お母様の首飾りはどこにも持っていっていないもん! 絶対、ぜっったい、この箱に入れたはずだもんっ!」
「ですが、ここにないのなら他の部屋かもしれませんわ。氷水様が分からなくなっているだけで……」
「本当にあったんだもん……ここから持っていっていないもん……」
一見すると峰花は優しく接しているように見えるが、要は氷水がどこかに置き忘れて、それを忘れているだけだろうと言っているも同然だった。これでは他の女官たちと同じように、遠まわしに氷水を責めているだけに過ぎない。
氷水はやがて表情が曇っていき、小声で何かを呟きだす。外にいた笙鈴には聞こえなかったが、氷水の口の動きから察するに「嘘ついてないもん……」と言っている様子だ。
だがより近くにいる峰花は聞こえているのかいないのか、そっけなく立ち上がる。
「氷水様の大切な首飾りは私たちで引き続き探します。氷水様は皇帝陛下の娘として、しっかり勉学に励んでくださいましね」
「お母様の首飾りが……」
「もうすぐ礼儀作法の先生が来ます。用意ができたら呼びに参りますので、氷水様はここでお待ちくださいませ。箱の中身は私たちが片付けますわ」
「必要ない……自分で片付けるから」
「ですが……」
「いらない! 誰も入らないで! あっちに行って!!」
氷水はこれまでの我慢が限界に達したのか大きな声を出す。いくら相手が自分より年下であろうとさすがに主人の命令には逆らえない様子で、峰花は退出の礼をすると部屋からいなくなった。
一人残された幼い皇女は、両手で顔を押さえて泣きだしてしまう。
「嘘ついてないもん……お母様の首飾り、本当にここにあったんだもん……」
しゃくりあげながらグズグズと泣きだす氷水を見て、笙鈴は胸を痛める。
その時、ふいに傍らで何かが地面に倒れた音がして、心臓が飛び出しそうになる。
見ると笙鈴が壁に立てかけていた箒が、地面に転がっていた。
(しまった!)
中を覗いていたことを咎められる前に箒を持って逃げようとした時、室内から「だあれ?」と声が聞こえてくる。
「誰かいるの?」
軽やかな足音が窓辺に近づいてきたかと思うと、部屋の内側から窓が開け放たれた。
笙鈴はとっさに窓の下に身を隠すと、片手で口元を押さえて息さえも堪えようとする。
(ま、まずい……)
氷水に見つかったらきっと不審者と思われて人を呼ばれるに違いない。そう考えて、笙鈴は慌てた。そうしたら氷水や飛竜の命令で罰を与えられ、後宮を追い出されるかもしれない。
自分だけならまだいい。だが、もし故郷の両親や弟妹にも被害が及んでしまったらと思うと気が気ではない。家族にもしものことがあったら、こんなことを頼んできた竜を一生恨むつもりである。
「誰もいないみたい……」
困惑したような氷水の声に安堵したのも束の間、次いで聞こえてきた言葉に笙鈴は声を上げそうになる。
「この棒、なんだろう?」
その時手元を見て、ようやく気付く。窓から見えるように、箒を縦に持ってしまっていたのだ。
(箒が見えていたら隠れた意味がな~い!)
だが今更、箒を動かすわけにもいかない。笙鈴がおそるおそる頭を上げると、窓から身を乗り出して箒を指先で突く氷水の姿が見えた。床に足がついていないのか、時折身体を揺らしながら、片手で窓枠を掴んだ姿勢で手を伸ばす。
いつ窓から落ちてもおかしくない状態の氷水に、笙鈴は真っ青になる。
(そんなに身を乗り出したら、窓から落ちちゃう……!)
もし氷水が窓から転落し、その場に自分が居合わせてしまったら、問答無用で一家で罰を受けることになるだろう。皇女に怪我を負わせた大罪人とその家族として、最悪は処刑されるかもしれない。そんな大罪を勘繰られるような事態は避けるべきだ。ここはとにかく逃げて、氷水と関わるのは控えた方が賢明だろう。
ただそうは思いつつも笙鈴は、郷里の弟妹たちと同じ年頃の氷水を放っておけなかった。
(落ちてきたら私が支え……いや、でも箒が邪魔だし……それ以前に、畏れ多くも皇女様に触れていいの……? いやいや、今は状況が状況だから少しくらい触っても怒らないよね? 怪我するよりまし! 怒られないと信じたい……)
こんな時、実の弟妹なら注意して止められるのに。声さえ掛けられないのがこんなにももどかしいとは……そう思いながら笙鈴が何げなく上を見ると、じっと笙鈴を見つめる澄んだ青い瞳の少女と目が合ってしまう。
「あっ……!」
氷水と目が合った瞬間、笙鈴は身体から血の気が引いていくのが分かった。
笙鈴はすぐに地面に両手をついて身を伏せる。
「も、申し訳ありません! 決して、決して! 盗み聞きするつもりはなかったんです! ただ庭を掃除しに来ただけなんです!!」
まさか竜に氷水の様子を探るように頼まれたと白状するわけにもいかず、笙鈴は当初考えていた言い訳を叫んだ。
両手と両膝をつき、地面に額を擦りつけて許しを乞う笙鈴に、氷水は戸惑っている様子だ。
「頭を上げて……! おこらないから! お父様にも誰にも何も言わないから!」
氷水の許しを得てそっと頭を上げた笙鈴は、初めてすぐ側で氷水を見つめる。
仙皇国人よりも色素が薄く、ほんのり染まった頬の赤みと相まって、肌の白さが目立つ。豊かな黒髪は春の陽光を浴びて艶やかに輝き、ぱっちりとした目は透明感のある澄んだ水色で、西の国の雰囲気を感じさせる容貌だ。しかし顔立ちは父親似な気がする。故郷で出まわっていた皇帝飛竜の絵姿に、どことなく似ていた。
「お許しいただきありがとうございます、皇女様」
立ち上がった笙鈴が深々と頭を下げて言った後で、氷水は首を傾げる。
「お庭のお掃除に来たの? でも、初めて見る人……」
氷水は少女特有の愛らしい高い声をしているが、どこかか細い。それに年齢よりも幼く見える。身体の発育が同年代の年頃の少女より遅れているからだろうか。もしかしたら皇后が亡くなってから、悲しみに暮れてほとんど何も食べていないのかもしれない。
そんなことを考えながら、笙鈴は答える。
ちらっと竜を見ると、いつもの横暴で偉そうな雰囲気はどこにいったのか、ただ安心したように「そうか」と小さく笑みを浮かべていた。竜らしくない姿に、笙鈴は違和感を覚える。
(そんなに氷水様のことが気になるの……?)
相手が笙鈴だったら、きっと竜はここまで心配しない。薄汚い鼠が顔を出さなくなったとしても、皇帝の命令で王城から追放されただけだと考えて済ませてしまうに違いない。
相手が皇族の氷水で、現状この国で唯一皇帝の血を引く直系の娘だから気にかけているのだろうか。それとも笙鈴が知らないだけで、氷水が表舞台に姿を見せないことが、王城内で余程深刻な問題となっているのか。
「じゃあ頼んだぞ、鼠娘」
「鼠娘じゃなくて笙鈴です! いい加減に名前を覚えてください。その代わり、報酬に見合った料理を食べさせてくださいね。いつもより高いお肉やお魚、あと珍味とか」
「……考えておく。だが先に言っておくが、用意するとしてもあくまで成功報酬としてだ。成功もしていない時点で労うことはないぞ。お前が頼みを放り出して雲隠れする可能性だってあるからな」
「雲隠れって……人に頼み事をしておきながら、私が無責任みたいに言わないでくださいよ。傷付きます」
やっぱり断ろうとしかけたものの、氷水のことを話す竜がいつになく真剣だったことを思い出して笙鈴はぐっと言葉を呑み込む。代わりに茶器を傾けて中身を空にすると、「ご馳走様でした」と両手を合わせたのだった。
「じゃあ、また匂いに釣られてやってきます」
「たまには頭や衣服に草やら蜘蛛の巣やらをつけずに来い」
「えー、これでも最近は身綺麗にしているつもりなんですよ?」
初めて会った時、竜に「溝鼠」と呼ばれた原因の一つである葉っぱや蜘蛛の巣は、今はこの建物に入る前に落としている。それに、下級女官なので毎日沐浴することはできないとはいえ、最近はなるべく身体を拭いて襦裙も着替えるようにしていた。
「綺麗にしているつもりなだけだろう。まったく……いいから、次は正面から入ってこい。道は前に教えただろう」
「はーい」
笙鈴は確かに抜け穴を通らずに来られる道を教わっていた。ただ食べるのに夢中だったせいで、ほとんど覚えていない。
だが正直にそう言うわけにもいかず、笙鈴がいい加減に返事をすると、竜は「待て」と立ち上がりながら引き留めてくる。
「今、適当に返事をしたな?」
「そ、そんなことはないですよ……」
「嘘つけ」
竜に鼻を引っ張られて笙鈴は「いたたたたっ……!」と声を上げた。
竜は顔をしかめながらすぐに鼻を離し、小ぶりな包みを押しつけてくる。
「持ってけ。今日作った料理の余りだ」
「もらっていいんですか?」
いつもは土産をくれないので受け取っていいのか戸惑ってしまう。笙鈴が竜と包みを見比べていると、竜は目を逸らしながら口を開いた。
「今日一日何も食べてないと言っていたが、最近、まともに食べていないんじゃないか? そんなことをしていたら、いずれ倒れるぞ」
「もしかして竜さん、心配してくれるんですか?」
「失敗して衛兵たちに捕縛されるだけならいいが、皇帝陛下や氷水……様にまで迷惑をかけるような騒動になっても困るからな。もちろん、俺に面倒をかけられるのが一番迷惑だ」
ふん、と息を吐きながら面白くなさそうに言って、顔を背ける竜。だが竜の意図するところに気付いた笙鈴は満面の笑みを浮かべながら包みを受け取ったのだった。
「ありがとうございます。実はここ最近、まったく食べられない日が続いていたので嬉しいです」
「食事なら提供されるだろう。なぜ食べられない」
ここまで言ってしまったのなら、さすがにこれ以上隠すのは難しいだろう。笙鈴はそう思い、頭を掻きながら素直に白状する。
「あはは……他の女官たちに取られちゃうんです。食べられるのか、捨てられているのかは知りませんが」
「そんな奴がいるのか……」
竜は何か考えている様子を見せる。
だが笙鈴はそれに気付くことなく、竜にお礼を言うと来た道を戻ったのだった。
第二章 氷水
竜から氷水について探るように命じられた次の日の昼過ぎ。笙鈴は自分の仕事が落ち着くと、掃除をするふりをしながら氷水の宮へとやってきた。
(今日、何かあったのかな……)
いつもなら笙鈴に自分たちの仕事を押しつけてくる先輩女官たちが、今朝は朝餉が終わった直後に女官長に呼ばれてどこかに行ったきり戻ってこなかった。それもあって今日は自分の仕事をするだけで済んだので、いつもより早く手が空いたのだ。
(中庭、綺麗……)
赤い柱が並ぶ廊下、落ち葉や花びらの一枚も落ちていない春の中庭。美しい氷水の宮の景色に、笙鈴は目を奪われていた。のどかな陽春の庭では、先程から鶯が鳴き、雀のさえずりが絶え間なく聞こえている。
上級女官と遭遇した時に怪しまれないように雑巾と箒を持って氷水の宮に来たが、どうやらあまり意味はなかった様子だ。さすが皇女の宮だけあって、笙鈴が掃除する必要もなく清潔に保たれている。
(こういうところは掃除も厳しいんだろうな……)
そんなことを考えながら、ついつい庭に見入っていると、幼い少女の声と女性たちの姦しい声が聞こえてきた。
(どこから聞こえてくるんだろう……)
笙鈴は見つからないように中腰になり、声が聞こえてきた方に向かう。建物に沿って歩いている間も、少女と女性たちの話し声は絶えずに聞こえていた。
笙鈴は目的の部屋を見つけると箒を近くの壁に立てかけて、窓から中を覗く。すると椅子に座った可憐な少女の周りで、濃艶な格好をした数人の女官が話しているのが見えた。
どうやらここが氷水の部屋のようだと笙鈴はあたりをつける。
(もしかして、あの子が……)
氷水と思しき華美な礼装に身を包んだ白皙の少女は、長い黒髪を背中に流し、澄んだ色の青い目を伏せて豪華な椅子に座っていた。
(想像以上に可愛い~!)
今は目を伏せているが、微笑んだらきっと牡丹の花のように愛らしいに違いないと笙鈴は思う。自分の弟妹が幼い時もそうだった。
(でも、何か様子が変……?)
氷水の周りにいるのは氷水よりも綺羅を飾った女官たちだ。幼い氷水の化粧が薄いのはおかしなことではない。だがいくつもの宝飾品で身を飾り仕立てのいい襦裙に身を包んだ女官たちの前では、清楚な氷水は霞んでしまっているようにさえ見える。
(女官が主人の氷水様よりも目立っていいものなの……?)
ただ笙鈴の先輩女官たちも汚い仕事は笙鈴に押しつけて綺麗に着飾ることで、できることなら皇帝の目に留まって側妃になろうとしていた。もしかしたら笙鈴がおかしいだけで女官とはそんなものなのかもしれないが、それにしても随分派手だ。
女官たちは氷水の目の前で高価そうな螺鈿細工の装飾がされた箱を開けて、中を見ている様子だ。何かを探しているようにも、物色しているようにも見える。
「氷水様、先程も言った通り、この中にはありませんよ」
「本当にここに入れたんだもん……お母様の首飾り、ここにあったの見たんだもん……どうしてないの?」
「そんなことを言われましても、ねぇ……」
「困りましたわねぇ。氷水様のような青い目だと、普通とは見え方が違うのかしら」
女官たちは氷水を貶すような言葉を臆面もなく口にすると、顔を見合わせてクスクスと笑い合う。
氷水は突然立ち上がって女官から箱を取り上げ、その場に中身をぶちまけた。
「氷水様!」
「本当にこの中に入れたんだもん! 嘘ついてないもんっ……!」
「誰も嘘とは申しておりませんわ! ねぇ?」
氷水を咎めていた女官が他の女官たちに同意を求めると、他の者たちも「そうですわ」と頷く。
その反応がますます癇に障ったようで、氷水は顔を真っ赤にして膨れてしまう。
「それなら、どうしてお母様の首飾りがないの!? 大切なお母様の形見なのに……」
「氷水様は私たちの中に盗人がいると思っているんですね」
「わっ、わたし、そんなこと、言ってない……!」
「酷いですわ。氷水様に盗人扱いされるなんて。私たちはこんなに氷水様に尽くしていますのに」
「やはり西の国の血が流れない者は信用してくださらないのですね」
「…………」
好き勝手な言葉を浴びせられ、皇女にもかかわらずのけ者にするような扱いをされて、氷水は俯いて黙ってしまう。
「何をやっているのですか?」
その時、一際見目麗しい女官が扉を開けて姿を現し、沓音を高く鳴らしながらやってくる。彼女は赤面して今にも泣きだしそうな氷水を見ると、氷水を嘲笑っていた女官たちに冷徹な一瞥を向ける。
「みっともない……外にまで氷水様と、貴女たちの声が聞こえていますよ」
他の女官たちと同じような襦裙姿からして、この女官も同じ氷水付きの女官なのだろう。しっかり手入れのされた黒髪や適度に紅をさした頬、あかぎれ一つない白い手は絵に描いたような端麗さで、加えて大人の女性特有のどこか謎めいた妖艶な雰囲気がある。彼女の鮮麗さは、この室内にいるどの女官よりも際立っていた。痩せ過ぎで手足や髪も最低限の手入れしかできていない笙鈴は到底太刀打ちできそうにない。
唯一、彼女に匹敵しそうなのは氷水くらいだが、この女官が纏う妖美さは氷水が持つ可憐な美しさとは明らかに種類が違う。優美な女官というよりも、花街で男たちに色を売るという妓女のような印象だ。
「峰花、貴女こそどうしてここに……官吏に呼ばれたんじゃなかったの?」
ざわつく女官のうち一人に聞かれ、峰花と呼ばれた女官はそっけなく答える。
「そちらの用事ならもう終わりました。先月辞めた者の代わりとなる新しい氷水様付きの女官として、現在後宮で働く何人か紹介されました。ですが特に相応しい者はいませんでしたから……それで? 貴女たちはここで何をしていたのですか」
峰花はぴしゃりと言い、室内を見渡していたが、やがて笙鈴が室内を覗いている窓にも視線を向ける。目が合いそうになった笙鈴は、慌てて窓の下に隠れた。
(こ、怖~い!)
絵に描いたように顔が整っている分、怒っている時の顔も迫力があった。峰花の厳しい態度に、女官たちだけではなく氷水までもが圧倒されて黙っている。
しばらくして、おずおずと女官の一人が話しだす。
「これはね、その……氷水様が私たちを責めたのです。女官の誰かが氷水様が大切にされていた皇后様の首飾りを盗んだと言いだして……」
「盗んだなんて言ってない! どうしてないのって、聞いただけだもん!」
袂で目を押さえて泣くふりを始める女官を見て、氷水は必死で弁解する。
峰花は溜め息を吐いて他の女官たちに退室するよう伝えると、氷水と二人きりになった。
峰花は氷水に近づいて膝をつくと、彼女の顔を覗き込みながら話す。
「氷水様、もう一度探してみましょう。私も一緒に探します」
氷水は今にも泣きだしそうな顔のまま、峰花をじっと見つめる。
「峰花もわたしが嘘をついたって言うの?」
「そうは申しておりません。もしかしたらどこかに置き忘れただけかもしれませんわ。散歩に行かれたところや、いつもの勉強部屋にでも……」
「お母様の首飾りはどこにも持っていっていないもん! 絶対、ぜっったい、この箱に入れたはずだもんっ!」
「ですが、ここにないのなら他の部屋かもしれませんわ。氷水様が分からなくなっているだけで……」
「本当にあったんだもん……ここから持っていっていないもん……」
一見すると峰花は優しく接しているように見えるが、要は氷水がどこかに置き忘れて、それを忘れているだけだろうと言っているも同然だった。これでは他の女官たちと同じように、遠まわしに氷水を責めているだけに過ぎない。
氷水はやがて表情が曇っていき、小声で何かを呟きだす。外にいた笙鈴には聞こえなかったが、氷水の口の動きから察するに「嘘ついてないもん……」と言っている様子だ。
だがより近くにいる峰花は聞こえているのかいないのか、そっけなく立ち上がる。
「氷水様の大切な首飾りは私たちで引き続き探します。氷水様は皇帝陛下の娘として、しっかり勉学に励んでくださいましね」
「お母様の首飾りが……」
「もうすぐ礼儀作法の先生が来ます。用意ができたら呼びに参りますので、氷水様はここでお待ちくださいませ。箱の中身は私たちが片付けますわ」
「必要ない……自分で片付けるから」
「ですが……」
「いらない! 誰も入らないで! あっちに行って!!」
氷水はこれまでの我慢が限界に達したのか大きな声を出す。いくら相手が自分より年下であろうとさすがに主人の命令には逆らえない様子で、峰花は退出の礼をすると部屋からいなくなった。
一人残された幼い皇女は、両手で顔を押さえて泣きだしてしまう。
「嘘ついてないもん……お母様の首飾り、本当にここにあったんだもん……」
しゃくりあげながらグズグズと泣きだす氷水を見て、笙鈴は胸を痛める。
その時、ふいに傍らで何かが地面に倒れた音がして、心臓が飛び出しそうになる。
見ると笙鈴が壁に立てかけていた箒が、地面に転がっていた。
(しまった!)
中を覗いていたことを咎められる前に箒を持って逃げようとした時、室内から「だあれ?」と声が聞こえてくる。
「誰かいるの?」
軽やかな足音が窓辺に近づいてきたかと思うと、部屋の内側から窓が開け放たれた。
笙鈴はとっさに窓の下に身を隠すと、片手で口元を押さえて息さえも堪えようとする。
(ま、まずい……)
氷水に見つかったらきっと不審者と思われて人を呼ばれるに違いない。そう考えて、笙鈴は慌てた。そうしたら氷水や飛竜の命令で罰を与えられ、後宮を追い出されるかもしれない。
自分だけならまだいい。だが、もし故郷の両親や弟妹にも被害が及んでしまったらと思うと気が気ではない。家族にもしものことがあったら、こんなことを頼んできた竜を一生恨むつもりである。
「誰もいないみたい……」
困惑したような氷水の声に安堵したのも束の間、次いで聞こえてきた言葉に笙鈴は声を上げそうになる。
「この棒、なんだろう?」
その時手元を見て、ようやく気付く。窓から見えるように、箒を縦に持ってしまっていたのだ。
(箒が見えていたら隠れた意味がな~い!)
だが今更、箒を動かすわけにもいかない。笙鈴がおそるおそる頭を上げると、窓から身を乗り出して箒を指先で突く氷水の姿が見えた。床に足がついていないのか、時折身体を揺らしながら、片手で窓枠を掴んだ姿勢で手を伸ばす。
いつ窓から落ちてもおかしくない状態の氷水に、笙鈴は真っ青になる。
(そんなに身を乗り出したら、窓から落ちちゃう……!)
もし氷水が窓から転落し、その場に自分が居合わせてしまったら、問答無用で一家で罰を受けることになるだろう。皇女に怪我を負わせた大罪人とその家族として、最悪は処刑されるかもしれない。そんな大罪を勘繰られるような事態は避けるべきだ。ここはとにかく逃げて、氷水と関わるのは控えた方が賢明だろう。
ただそうは思いつつも笙鈴は、郷里の弟妹たちと同じ年頃の氷水を放っておけなかった。
(落ちてきたら私が支え……いや、でも箒が邪魔だし……それ以前に、畏れ多くも皇女様に触れていいの……? いやいや、今は状況が状況だから少しくらい触っても怒らないよね? 怪我するよりまし! 怒られないと信じたい……)
こんな時、実の弟妹なら注意して止められるのに。声さえ掛けられないのがこんなにももどかしいとは……そう思いながら笙鈴が何げなく上を見ると、じっと笙鈴を見つめる澄んだ青い瞳の少女と目が合ってしまう。
「あっ……!」
氷水と目が合った瞬間、笙鈴は身体から血の気が引いていくのが分かった。
笙鈴はすぐに地面に両手をついて身を伏せる。
「も、申し訳ありません! 決して、決して! 盗み聞きするつもりはなかったんです! ただ庭を掃除しに来ただけなんです!!」
まさか竜に氷水の様子を探るように頼まれたと白状するわけにもいかず、笙鈴は当初考えていた言い訳を叫んだ。
両手と両膝をつき、地面に額を擦りつけて許しを乞う笙鈴に、氷水は戸惑っている様子だ。
「頭を上げて……! おこらないから! お父様にも誰にも何も言わないから!」
氷水の許しを得てそっと頭を上げた笙鈴は、初めてすぐ側で氷水を見つめる。
仙皇国人よりも色素が薄く、ほんのり染まった頬の赤みと相まって、肌の白さが目立つ。豊かな黒髪は春の陽光を浴びて艶やかに輝き、ぱっちりとした目は透明感のある澄んだ水色で、西の国の雰囲気を感じさせる容貌だ。しかし顔立ちは父親似な気がする。故郷で出まわっていた皇帝飛竜の絵姿に、どことなく似ていた。
「お許しいただきありがとうございます、皇女様」
立ち上がった笙鈴が深々と頭を下げて言った後で、氷水は首を傾げる。
「お庭のお掃除に来たの? でも、初めて見る人……」
氷水は少女特有の愛らしい高い声をしているが、どこかか細い。それに年齢よりも幼く見える。身体の発育が同年代の年頃の少女より遅れているからだろうか。もしかしたら皇后が亡くなってから、悲しみに暮れてほとんど何も食べていないのかもしれない。
そんなことを考えながら、笙鈴は答える。
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