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交際12日目 その顔は反則じゃないですか
しおりを挟むこの日は二人ともまるまる休みが被ったため、初めて日中に出かける。
(ねむ……)
まぶたを叱咤しなんとか目を開けた。
久しぶりの1日オフなのに、ゴツい男と出かけるとか……
というか、出かけるのめんどい。
起きたくない。
と暫くベッドでゴロゴロしていたが、自分から誘った手前、ポーラールは何とか出かける用意を済ませたのである。
(この人はいったいどのくらい前に来てんだ?)
待ち合わせ場所に着くと、シーナはベンチに座って本を読んでいた。
ポーラールも軍人の端くれとして時間厳守をモットーに日々生活している。
今日だって誘ったからには、と30分も前に着いたというのにシーナはすでにそこにいた。
しかも、またそこかしこの女性の視線を一心に集めている。
一定の距離を持ちながらも、シーナの周りを囲むようにわらわら集まっている女性の数からして、シーナはかなり前からそこで待っていたのではないだろうか。
「すんません、また待たせちゃいましたね」
ポーラールが登場したことにより、女性たちは一層色めきたつ。
シーナほどではないにしろポーラールだってなかなかの男前なのだ。
「ほんじゃ、行きますか!」
今日行くのは、ちょっと古くさい動物園だ。
最近、新しいのが近くに出来て客も少ない。
シーナはとにかく人目をひく男なので、あまり人混みには行きたくないというのが本音だ。
それに、獣人である自分も獣形になると完全に白熊のそれである。
たまには客観的に自分の獣形の姿を眺めるのも悪くないだろうと行く先を動物園に決めた。
「リオーネ団長にそっくりっすね」
「あぁ……」
白豹ブースの前である。
一頭のオス白豹が岩の上で寝そべり、
その周りを4頭のメスが囲っている。
白豹の獣人であるリオーネの獣化した姿を一回り小さくして愛嬌を持たせたらこんな感じだろう。
白豹ブースを抜けると、すぐに白熊ブースが見えてくる。
水に潜った後なのか、濡れそばった白熊がぶるぶる体を震わせ、水を弾いているところだった。
「俺のが可愛いっすね。」
「ふっ、、、そうだな。」
ポーラールはガバッと音が出そうな勢いでシーナを見る。口の端に少し笑みを残した彼と目が合った。
が、すぐにいつもの無表情に戻ってしまった。
(すげぇ……シーナ団長が笑ってた)
いまだ信じられない心地でシーナから目が離せないでいると、白熊が「ぐおぅ」と一鳴きし、シーナが先に目を反らした。
シーナは笑顔どころか泣き顔も怒った顔も見せたことがない。
常にその表情に浮かぶ感情は『無』だ。
誰も見たことがないであろう笑顔を目撃して、ポーラールの心臓はドキドキと少しだけ鼓動が早まるのを感じた。
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