紙切り道中異世界見聞録

いんじんリュウキ

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第1章 北条家騒動

予想外の報告

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 食事を済ますと、ユノウを護衛に残して、辰巳たちは大道寺家に戻った。

「奈々様、辰巳様が捕らえた賊の正体がわかりました」

 奈々の部屋に入るや、すぐに侍が報告にやって来たのだが、なぜか浮かない表情をしていた。

「どうしたの? また江戸の者だったんじゃないの?」

「それが……江戸ではなく、河原崎かわらざき様配下の者でした」

「え!? ……そ、それは本当なの?」

 奈々は明らかに動揺している。

「はい、間違いございません」

「……」

「奈々様?」

「わかった。下がっていいよ」

「失礼いたします」

 侍が部屋を出ると、吉右衛門は当然のように問いかけた。

「何やら、良くない情報がもたらされたようだな」

 奈々は心を落ち着けるように、少し間をおいてから口を開いた。

「……はい。実は、先ほど名前の出た河原崎様というのは、氏勝様の守役を務めているお方なんです」

「氏勝様の守役? どういうことだ、この件には小田原も絡んでいるというのか?」

 吉右衛門も困惑する。

 そして二人の様子を見て、辰巳もただならぬことが起きていることを理解した。

「「「……」」」

 状況を飲み込むためか、しばし沈黙が続いた後、吉右衛門が眉間にしわを寄せながら口を開く。

「奈々殿は、河原崎様の人となりを存じておられるのか?」

「はい。誠実で忠義心に溢れるお方で、北条家のことを第一に考えており、私心がないことでも知られています」

「なるほど。となると、これは氏勝様が命じたということなのか?」

 吉右衛門の疑問に対し、奈々は首を横に振った。

「氏勝様は大変に性格のお優しい方で、このようなことをお命じになるとはとても思えません。それに病床の身でもありますし。……ただ、河原崎様が動いているとなれば、氏勝様絡みであることは否定できません」

「うーむ……」

 三人は考えを巡らせたが、答えを導き出すことはできなかった。

「……ここで悩んでいても仕方がない、当事者から直接話を聞こう」

「待ってください。夏や文さんに心当たりがないってことは、私が前に聞いてわかっているじゃないですか」

「それは氏吉様とであろう。氏勝様とはわからないではないか」

「それは、そうですけど……」

 もし何かしら心当たりがあるのであれば、自分が尋ねた時にそのことも言っているはずだと、奈々は思った。

「仮になかったとしてもだ。今より状況が悪化するわけでもないのだから、聞いても損はないだろう」

 結局吉右衛門に押し切られるかたちで、話を聞くために店へ戻ることになった。
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