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第2章 北条家戦争
対空戦の実力は如何に
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「おぉ!」
初めて辰巳の紙切りを見た氏元や家臣たちは、一斉に驚きの声を上げた。
「また面妖なものが現れたな……あれは銃か?」
ヘリコプターを経験していることもあってか、吉右衛門はそれほど驚いてはいない。
「初めまして、小官は知久三郎です」
自走式対空砲は、目の前にいる辰巳とユノウに向かって軍人のような挨拶をした。
「どうも、辰巳です」
「ユノウです」
「今回は、どのようなご用件で小官をお呼びになったのでしょうか?」
「空を飛んでくる敵を倒して欲しいんです」
「了解しました」
「いくつか確認したいんだけど、まずレーダーの範囲ってどれくらい?」
ミリタリーに疎い辰巳と違って、ユノウは専門的なことを質問し始める。
「有効範囲は二〇キロです」
「ミサイルの射程と高度は?」
「射程は一三キロ、最大迎撃高度は六〇〇〇メートルです」
「機関砲は三〇ミリ?」
「はい。口径は三〇ミリで、射程は三キロです」
「なるほどね……オッケーありがとう」
一通り質問が終わったところで、吉右衛門が三郎のそばにやって来た。
「これが、ユノウ殿の申していた専門家なのかな?」
「ええ、こちらが空からの脅威を防ぐ専門家の、知久三郎さんです」
「お初にお目にかかる、私は羽田吉右衛門と申す。こたびの“もののけ討伐軍”の総大将である」
吉右衛門は北条家に対する配慮から、この戦を氏吉討伐ではなく、“もののけ退治”と位置づけていた。
「わざわざのご挨拶痛み入ります。小官は、知久三郎であります!」
辰巳とユノウの時とは、明らかに三郎の対応が異なっていた。
「なんか、俺らの時とちょっと違くない?」
辰巳も挨拶の違いに気づく。
「たぶん、“総大将”だからですよ。軍隊は上下関係がはっきりしてますから、相手の方が序列が上だとわかれば、対応も相応のものになりますよ」
「なるほどね」
説明を聞いて辰巳が納得したのと同時に、三郎のレーダーが反応した。
「レーダーに反応あり。数二、距離二万、方位角左二〇度、高度三〇〇!」
突然三郎が叫び声を上げたので、周囲にいた面々は皆驚いたが、すぐに内容を理解できたのはユノウだけだった。
「なんかがこっちに近づいてきてるみたいですよ」
ユノウは辰巳と吉右衛門と奈々に、内容をざっくりと告げた。
「なんかって何? もしかしてさっきの提灯?」
辰巳の頭にはそれが真っ先に浮かんだ。
「それはまだわかりませんけど、状況的にはその可能性が一番高いでしょうね」
ユノウは三郎が言った方向に向かって双眼鏡を覗き込んだが、距離的にまだ正体を確認することはできない。
「二〇キロ先のものを探知するとは、恐ろしい索敵能力だな」
吉右衛門は三郎に向かって驚嘆の声を上げる。
「お褒めに預かり光栄です」
「秀頼様、我々はどうしたらよろしいでしょうか?」
状況がいまいちよく飲み込めず、氏元や家臣たちは困惑していた。
「まだ敵かどうかはわからんが、敵だった場合に対処できるよう、魔法や弓矢を使えるものを天守閣へ向かわせよ」
「承知いたしました」
指示を受けて氏元たちはバタバタと動き出す。
「飛行物体は針路を変えずに接近中、距離一万九〇〇〇」
三郎は飛行物体の動向を逐一報告していく。
「あ、やっぱあれ提灯だな。……けど、ひとつしか飛んでねぇな」
双眼鏡を覗き込んでいた辰巳は、近づいてくる飛行物体が提灯であることを確認したが、もうひとつの飛行物体の姿は確認できなかった。
「辰巳さん、提灯の近くに白い布みたいなのが見えませんか?」
「布? ……あ、あれか」
ユノウに言われて提灯の周囲を再度見回してみると、細い線のようなものが視界に入ってきた。
「たぶんあれ一反木綿ですよ」
一反木綿は布の妖怪で、一反という名前が示すように一二メートルほどの長さがあった。
「なるほど一反木綿か。確かに飛んでるイメージがあるけど、あれって強いの?」
「どうなんでしょうね。伝承なんかによれば、唐突に顔に巻きついて人を驚かせたり、時には窒息させることがあるらしいですけど、結局は木綿ですからね」
「あんまり強そうな感じはしないよな」
「たぶん、あの二体は攻撃じゃなくて、偵察目的で飛んできてると思いますよ」
二人が会話している間も、二体の妖怪は小田原へ向けてどんどんと距離を詰めていく。
「飛行物体は針路そのままで接近中、距離一万四〇〇〇。まもなく、ミサイルの有効射程に入りますが、攻撃しますか?」
三郎はミサイルの発射許可を求めた。
「待って、三郎さんの実力を家臣の人たちにもちゃんと知ってもらいたいから、もうちょっと近づくまで発射しないで」
今の距離だと相手の大きさなどがわかりにくく、ミサイルの威力が過小評価されるのではないかとユノウは危惧していた。
「大丈夫でしょうか、相手は攻撃してきませんか?」
三郎は当然のように不安を口にする。
「大丈夫大丈夫。キロ単位の射程を持つ魔法なんてそうそうないし、あったとしてもせいぜい一~二キロ程度だから」
「わかりました」
ユノウが言ったように、二体の妖怪は攻撃をする素振りすら見せずに距離を詰め続けた。
「おい、なんか飛んできてるぞ」
「遠眼鏡だ、遠眼鏡を持ってこい」
「提灯が飛んでるのか?」
近づいてくるにつれて肉眼でもその姿を確認できるようになり、徐々に家臣たちはざわつき始めた。
「飛行物体は針路そのままで接近中、距離七〇〇〇」
「三郎さん、ミサイルを発射してください」
ユノウは家臣たちの様子を見て頃合いだと判断し、三郎に攻撃の指示を出した。
「了解」
指示を受けるや、三郎はすぐさまミサイルを発射する。
「わっ!」
「きゃ!」
「おわっ!」
耳をつんざくような発射音に、近くにいた辰巳や奈々をはじめ、ユノウを除いたほとんどの人が驚いた。
発射された二発のミサイルは、攻撃目標に向かって照射されたレーザービームによる照準線に沿って、音速を越える速度で飛翔。あっという間に目標へ到達し、二体の妖怪を爆散させた。
「なっ……」
氏元や家臣たちは、あまりの出来事に唖然としている。
「凄まじい攻撃であったな。あれが味方だと思うと、これほど心強いものはない。三郎殿、空のもののけ退治は貴殿にお任せする」
吉右衛門は三郎のミサイル攻撃に称賛の声を上げた。
「はっ、ご期待に沿えるよう、全力を尽くします!」
表情こそないが、声のトーンで喜んでいることははっきりとわかる。
こうして、空飛ぶ敵を撃つ専門家は、無事もののけ討伐軍に迎え入れられたのであった。
初めて辰巳の紙切りを見た氏元や家臣たちは、一斉に驚きの声を上げた。
「また面妖なものが現れたな……あれは銃か?」
ヘリコプターを経験していることもあってか、吉右衛門はそれほど驚いてはいない。
「初めまして、小官は知久三郎です」
自走式対空砲は、目の前にいる辰巳とユノウに向かって軍人のような挨拶をした。
「どうも、辰巳です」
「ユノウです」
「今回は、どのようなご用件で小官をお呼びになったのでしょうか?」
「空を飛んでくる敵を倒して欲しいんです」
「了解しました」
「いくつか確認したいんだけど、まずレーダーの範囲ってどれくらい?」
ミリタリーに疎い辰巳と違って、ユノウは専門的なことを質問し始める。
「有効範囲は二〇キロです」
「ミサイルの射程と高度は?」
「射程は一三キロ、最大迎撃高度は六〇〇〇メートルです」
「機関砲は三〇ミリ?」
「はい。口径は三〇ミリで、射程は三キロです」
「なるほどね……オッケーありがとう」
一通り質問が終わったところで、吉右衛門が三郎のそばにやって来た。
「これが、ユノウ殿の申していた専門家なのかな?」
「ええ、こちらが空からの脅威を防ぐ専門家の、知久三郎さんです」
「お初にお目にかかる、私は羽田吉右衛門と申す。こたびの“もののけ討伐軍”の総大将である」
吉右衛門は北条家に対する配慮から、この戦を氏吉討伐ではなく、“もののけ退治”と位置づけていた。
「わざわざのご挨拶痛み入ります。小官は、知久三郎であります!」
辰巳とユノウの時とは、明らかに三郎の対応が異なっていた。
「なんか、俺らの時とちょっと違くない?」
辰巳も挨拶の違いに気づく。
「たぶん、“総大将”だからですよ。軍隊は上下関係がはっきりしてますから、相手の方が序列が上だとわかれば、対応も相応のものになりますよ」
「なるほどね」
説明を聞いて辰巳が納得したのと同時に、三郎のレーダーが反応した。
「レーダーに反応あり。数二、距離二万、方位角左二〇度、高度三〇〇!」
突然三郎が叫び声を上げたので、周囲にいた面々は皆驚いたが、すぐに内容を理解できたのはユノウだけだった。
「なんかがこっちに近づいてきてるみたいですよ」
ユノウは辰巳と吉右衛門と奈々に、内容をざっくりと告げた。
「なんかって何? もしかしてさっきの提灯?」
辰巳の頭にはそれが真っ先に浮かんだ。
「それはまだわかりませんけど、状況的にはその可能性が一番高いでしょうね」
ユノウは三郎が言った方向に向かって双眼鏡を覗き込んだが、距離的にまだ正体を確認することはできない。
「二〇キロ先のものを探知するとは、恐ろしい索敵能力だな」
吉右衛門は三郎に向かって驚嘆の声を上げる。
「お褒めに預かり光栄です」
「秀頼様、我々はどうしたらよろしいでしょうか?」
状況がいまいちよく飲み込めず、氏元や家臣たちは困惑していた。
「まだ敵かどうかはわからんが、敵だった場合に対処できるよう、魔法や弓矢を使えるものを天守閣へ向かわせよ」
「承知いたしました」
指示を受けて氏元たちはバタバタと動き出す。
「飛行物体は針路を変えずに接近中、距離一万九〇〇〇」
三郎は飛行物体の動向を逐一報告していく。
「あ、やっぱあれ提灯だな。……けど、ひとつしか飛んでねぇな」
双眼鏡を覗き込んでいた辰巳は、近づいてくる飛行物体が提灯であることを確認したが、もうひとつの飛行物体の姿は確認できなかった。
「辰巳さん、提灯の近くに白い布みたいなのが見えませんか?」
「布? ……あ、あれか」
ユノウに言われて提灯の周囲を再度見回してみると、細い線のようなものが視界に入ってきた。
「たぶんあれ一反木綿ですよ」
一反木綿は布の妖怪で、一反という名前が示すように一二メートルほどの長さがあった。
「なるほど一反木綿か。確かに飛んでるイメージがあるけど、あれって強いの?」
「どうなんでしょうね。伝承なんかによれば、唐突に顔に巻きついて人を驚かせたり、時には窒息させることがあるらしいですけど、結局は木綿ですからね」
「あんまり強そうな感じはしないよな」
「たぶん、あの二体は攻撃じゃなくて、偵察目的で飛んできてると思いますよ」
二人が会話している間も、二体の妖怪は小田原へ向けてどんどんと距離を詰めていく。
「飛行物体は針路そのままで接近中、距離一万四〇〇〇。まもなく、ミサイルの有効射程に入りますが、攻撃しますか?」
三郎はミサイルの発射許可を求めた。
「待って、三郎さんの実力を家臣の人たちにもちゃんと知ってもらいたいから、もうちょっと近づくまで発射しないで」
今の距離だと相手の大きさなどがわかりにくく、ミサイルの威力が過小評価されるのではないかとユノウは危惧していた。
「大丈夫でしょうか、相手は攻撃してきませんか?」
三郎は当然のように不安を口にする。
「大丈夫大丈夫。キロ単位の射程を持つ魔法なんてそうそうないし、あったとしてもせいぜい一~二キロ程度だから」
「わかりました」
ユノウが言ったように、二体の妖怪は攻撃をする素振りすら見せずに距離を詰め続けた。
「おい、なんか飛んできてるぞ」
「遠眼鏡だ、遠眼鏡を持ってこい」
「提灯が飛んでるのか?」
近づいてくるにつれて肉眼でもその姿を確認できるようになり、徐々に家臣たちはざわつき始めた。
「飛行物体は針路そのままで接近中、距離七〇〇〇」
「三郎さん、ミサイルを発射してください」
ユノウは家臣たちの様子を見て頃合いだと判断し、三郎に攻撃の指示を出した。
「了解」
指示を受けるや、三郎はすぐさまミサイルを発射する。
「わっ!」
「きゃ!」
「おわっ!」
耳をつんざくような発射音に、近くにいた辰巳や奈々をはじめ、ユノウを除いたほとんどの人が驚いた。
発射された二発のミサイルは、攻撃目標に向かって照射されたレーザービームによる照準線に沿って、音速を越える速度で飛翔。あっという間に目標へ到達し、二体の妖怪を爆散させた。
「なっ……」
氏元や家臣たちは、あまりの出来事に唖然としている。
「凄まじい攻撃であったな。あれが味方だと思うと、これほど心強いものはない。三郎殿、空のもののけ退治は貴殿にお任せする」
吉右衛門は三郎のミサイル攻撃に称賛の声を上げた。
「はっ、ご期待に沿えるよう、全力を尽くします!」
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