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第2章 北条家戦争
双方進軍す
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翌朝、夜明けとともにもののけ討伐軍は小田原を出立した。
「桃太郎殿は、鬼以外の退治経験はおありなのかな?」
馬上の照之進は、左隣を歩いている桃太郎に向かってそんな質問を投げかけた。
「一度だけ大ムカデ退治をしたことがありますけど、あとは全部鬼ですね」
「拙者も大ムカデ退治を経験したことがあるが、初めて戦った時は難儀したな。なにせ矢がすべて弾かれてしまうのだから、唾が弱点であると気がついておらねば、負けていたかもしれんな」
「私は金太郎さんの助っ人として参戦したので、その辺は大丈夫でしたね。あの人は退治経験が豊富ですから、弱点とかも熟知してるんですよ」
「なるほど。……市丸殿は、どのような退治経験がおありなのかな?」
照之進は右隣へ視線を向けると、戦車の桂市丸に話を振った。
「お恥ずかしながら、僕は実戦経験がないんですよ」
「なんと。では、これが初めての実戦なのか?」
「はい。けど、日夜訓練に勤しんできましたから、足手まといになることは絶対にありません!」
市丸は自信を持って断言した。
そんな三人のやや後ろを、ユノウと奈々が並んで歩いている。
「市丸さんの火力があれば、ある程度の戦力差はカバーできるでしょうね」
ユノウは前を行く市丸に向かって期待の眼差しを向けた。
「似たような姿をしてますけど、桂さんも知久さんくらいに強いんですか?」
三郎と違って、主砲の試射などといったデモンストレーションを行わなかったため、奈々は市丸がどのくらいの実力を有しているのか測りかねていた。
「目的が違うから比較できないけど、強いかどうかって言われれば、同じくらい強いわね」
「やはり強いんですね。……正直に言って、吉右衛門さんから江戸の状況などを聞いた時は、このまま江戸様に攻め滅ぼされてしまうのではないかと思い怖くなりましたが、今はだいぶ希望が見えてきました」
本人が言うように、昼食時に比べて奈々の顔には明るさが戻っていた。
「それは良かった。辰巳さんは他にも切り札を持ってるから、妖怪どもが大群で押し寄せてきたとしても悲観しなくて大丈夫よ」
ユノウが自信満々で話しているなか、当の辰巳はといえば、ワミや三郎とともに最後尾に位置していた。
「辰巳さん、ワミさん、揺れとかは大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
辰巳は三郎の砲塔部分に乗っており、外の様子を見るためにハッチから上半身だけを出していた。
「ええ、私も大丈夫よ」
ワミは砲塔の端の部分に腰かけているが、今回は辰巳と三郎の護衛役を担っていた。
なぜ三郎の護衛まで担っているのかといえば、三郎は対空戦闘に特化しているため、地上部隊に対して無防備に近かったからであり、最後尾に位置しているのも同様の理由からである。
「人を乗せて走ることがあまりないので、揺れが酷くなってきたと感じたら、遠慮せずすぐに言ってくださいね」
三郎は上空の警戒と、二人の乗り心地に神経を使いながら進んでいくのであった。
一方その頃、瀬戸大将率いる江戸の軍勢は、川崎宿を過ぎたあたりにまで進軍していた。
「ここまでは順調だな」
骸骨の馬に跨っている瀬戸大将は、隣で同じように骸骨の馬に跨っている子泣き爺にそう話しかけた。
「そうですな。このまま行けば、今日の日暮れ頃には小田原に到着できるでしょう」
妖怪には疲労というものが存在しないため、休憩を挟まずにぶっ続けで行軍することが可能だった。
「小田原の兵は出てくると思うか?」
「半々といったところでしょうかね。ま、仮に出てきたとしても、我が朧車部隊で一捻りですがな」
朧車は牛車の妖怪で、荷台に浮かび上がっている夜叉の口から火炎弾を放つことができるため、瀬戸大将たちからは戦車的な扱いをされていた。
「確かにお前の言うとおり、出てきたところで影響はないな」
偵察部隊未帰還の報告を聞いて、瀬戸大将は言い知れぬ不安を覚えていたが、五〇体の朧車を先頭にして進む強力な地上部隊と、その上空を覆う飛行部隊の雄姿を見て、その不安は消し飛んでいた。
「江戸での戦いで、侍どもの力量はよくわかっております。あれは我らの敵ではありませんので、小田原も着いて早々に陥落させることができるでしょう」
「もう少しおもしろいことになるかと思ったが、どうやらつまらぬ戦になりそうだな」
瀬戸大将は勝ち誇った顔で豪快に笑うのだった。
「桃太郎殿は、鬼以外の退治経験はおありなのかな?」
馬上の照之進は、左隣を歩いている桃太郎に向かってそんな質問を投げかけた。
「一度だけ大ムカデ退治をしたことがありますけど、あとは全部鬼ですね」
「拙者も大ムカデ退治を経験したことがあるが、初めて戦った時は難儀したな。なにせ矢がすべて弾かれてしまうのだから、唾が弱点であると気がついておらねば、負けていたかもしれんな」
「私は金太郎さんの助っ人として参戦したので、その辺は大丈夫でしたね。あの人は退治経験が豊富ですから、弱点とかも熟知してるんですよ」
「なるほど。……市丸殿は、どのような退治経験がおありなのかな?」
照之進は右隣へ視線を向けると、戦車の桂市丸に話を振った。
「お恥ずかしながら、僕は実戦経験がないんですよ」
「なんと。では、これが初めての実戦なのか?」
「はい。けど、日夜訓練に勤しんできましたから、足手まといになることは絶対にありません!」
市丸は自信を持って断言した。
そんな三人のやや後ろを、ユノウと奈々が並んで歩いている。
「市丸さんの火力があれば、ある程度の戦力差はカバーできるでしょうね」
ユノウは前を行く市丸に向かって期待の眼差しを向けた。
「似たような姿をしてますけど、桂さんも知久さんくらいに強いんですか?」
三郎と違って、主砲の試射などといったデモンストレーションを行わなかったため、奈々は市丸がどのくらいの実力を有しているのか測りかねていた。
「目的が違うから比較できないけど、強いかどうかって言われれば、同じくらい強いわね」
「やはり強いんですね。……正直に言って、吉右衛門さんから江戸の状況などを聞いた時は、このまま江戸様に攻め滅ぼされてしまうのではないかと思い怖くなりましたが、今はだいぶ希望が見えてきました」
本人が言うように、昼食時に比べて奈々の顔には明るさが戻っていた。
「それは良かった。辰巳さんは他にも切り札を持ってるから、妖怪どもが大群で押し寄せてきたとしても悲観しなくて大丈夫よ」
ユノウが自信満々で話しているなか、当の辰巳はといえば、ワミや三郎とともに最後尾に位置していた。
「辰巳さん、ワミさん、揺れとかは大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
辰巳は三郎の砲塔部分に乗っており、外の様子を見るためにハッチから上半身だけを出していた。
「ええ、私も大丈夫よ」
ワミは砲塔の端の部分に腰かけているが、今回は辰巳と三郎の護衛役を担っていた。
なぜ三郎の護衛まで担っているのかといえば、三郎は対空戦闘に特化しているため、地上部隊に対して無防備に近かったからであり、最後尾に位置しているのも同様の理由からである。
「人を乗せて走ることがあまりないので、揺れが酷くなってきたと感じたら、遠慮せずすぐに言ってくださいね」
三郎は上空の警戒と、二人の乗り心地に神経を使いながら進んでいくのであった。
一方その頃、瀬戸大将率いる江戸の軍勢は、川崎宿を過ぎたあたりにまで進軍していた。
「ここまでは順調だな」
骸骨の馬に跨っている瀬戸大将は、隣で同じように骸骨の馬に跨っている子泣き爺にそう話しかけた。
「そうですな。このまま行けば、今日の日暮れ頃には小田原に到着できるでしょう」
妖怪には疲労というものが存在しないため、休憩を挟まずにぶっ続けで行軍することが可能だった。
「小田原の兵は出てくると思うか?」
「半々といったところでしょうかね。ま、仮に出てきたとしても、我が朧車部隊で一捻りですがな」
朧車は牛車の妖怪で、荷台に浮かび上がっている夜叉の口から火炎弾を放つことができるため、瀬戸大将たちからは戦車的な扱いをされていた。
「確かにお前の言うとおり、出てきたところで影響はないな」
偵察部隊未帰還の報告を聞いて、瀬戸大将は言い知れぬ不安を覚えていたが、五〇体の朧車を先頭にして進む強力な地上部隊と、その上空を覆う飛行部隊の雄姿を見て、その不安は消し飛んでいた。
「江戸での戦いで、侍どもの力量はよくわかっております。あれは我らの敵ではありませんので、小田原も着いて早々に陥落させることができるでしょう」
「もう少しおもしろいことになるかと思ったが、どうやらつまらぬ戦になりそうだな」
瀬戸大将は勝ち誇った顔で豪快に笑うのだった。
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